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加藤としゆき
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column──コラム

医療制度改革の問題点 

2006.7.4

1.高齢者の負担増による財政対策

 先の国会の会期末直前の6月14日、医療制度改革法案(「健康保険法等改正案」、「医療法等改正案」など12本の法改正案)が成立しました。
 その主な内容は、
@高齢者の窓口自己負担を引き上げる(表1.参照) A療養病床に入院する70歳以上の高齢者は食費・居住費として、2.4万円の負担から調理コスト費と光熱水費も加算した5.2万円に引き上げる、 B老人病院と呼ばれている「療養病床」を6年かけて38万床から15万床に減らし、この中で介護型の療養病床(現在13万床)は廃止する、C2008年度からは現行の老人保険制度を廃止して「75歳以上(後期高齢者)と「65〜74歳(前期高齢者)」の2段階の高齢者医療制度に再編し保険料負担を課す――などです。


 

表1 高齢者の窓口負担の増額

年 齢 ・ 所 得

現 行

H18年10月〜

H20年4月〜

@69歳以下

3 割

3 割 

 3 割 

A70歳〜74歳

 1 割

 1 割 

 2 割 

 同・現役並み所得者

 2 割

 3 割 

 3 割 

B75歳以上

 1 割

 1 割 

 1 割 

 同・現役並み所得者

 2 割

 3 割 

3 割 

(参考)現役並み所得者とは…課税所得145万円以上の高齢者
現役並み所得となる世帯の収入(年収ベース)
                       改正前       改正後
 ○高齢者夫婦2人世帯の場合 約620万円以上→約520万円以上
 ○単身世帯の場合        約480万円以上→約380万円以上

 

2.高齢者の負担は限界にきている

 この法案のめざすところは、高齢者人口の急増の伴う医療費の膨張に対し、その伸び率を極力抑えて公的な医療保険制度を維持しようとするものです。しかし、その手段は、もっぱら自己負担増による高齢者の受診抑制と入院制限が中心になっています。
 確かに、国民医療費が増大していけば、いずれは健康保険の財政が持たなくなっていきますから、将来の過大な負担増を避けるために、今から何らかの手を打つ必要はあります。しかし、単純に医療サービスの質を落としたり、高齢者に過度の負担を求めるということでは、あまりにも稚拙すぎる政策だと考えます。
 とくに、高齢者世帯の場合、昨年の税制の改正によって老年者控除と公的年金控除の上乗せが廃止され、本年度から、これに連動して住民税の大幅増税と国民健康保険料・介護保険料が大幅に引き上げられ、家計が大きく圧迫されている状況を配慮しなければなりません。(表2参照)
  医療費は、高齢者の増加に比例して増えていきますが、医療における高齢者の負担のあり方については、限界にきている高齢者世帯の生活実態、あるいは高齢者特有の健康状態などを十分に参酌して結論をだすべきだと考えます。

 

 

表2.高齢者世帯における所得税・住民税・国民健康保険料等の負担増
  (大都市生活者・76歳・妻と二人暮らしの男性をモデル)

@住民税の増加

平成17年度

平成18年度

年金収入

 277万円

 277万円


公的年金等控除

  144万円

120万円

老年者控除

   48万円

  0円

社会保険料控除

   29万円

 27万円

配偶者扶養控除

   38万円

   38万円

基礎控除

   33万円

   33万円

課税標準額
※住民税の控除額は所得税と異なります。

  0円

59万円

住民税額(県民税・市民税)
4,000円
31,100円
A公的負担の増加

平成16年

平成17年

平成18年

所得税

0円

42,000円

47,250円

住民税

4,000円

4,000円

31,100円

国民健康保険料(夫婦分)

210,000円

210,000円

245,000年

介護保険料(※見込額)

50,000円

50,000円

70,000円

 合 計

264,000円

306,000円

393,350円

平成15年→平成17年度の負担増総計
129,350円

 


3.本来の医療制度改革のあり方

 今回の医療保健制度の改革のもう一つの問題点は、今後の医療制度のあり方について十分な将来見通しをたてていないということです。
まず、改正議論の前提となった医療費の将来見積もりが過大であったことが指摘されました。政府は、19年後の2025年には、医療給付額が現在の2倍の56兆円になると見積もっていましたが、実は、この試算は都合のよい数字を使って機械的に計算したものであることが国会の審議の中で明らかにされました。まさに、危機意識を煽って、当面の負担増について理解してもらおうとするやり方です。このような情報操作は国民や国会を欺くものです。
 私たちは、医療保険の財政問題だけでなく、今日、医療現場が抱える様々な問題を解決していくことが優先されるべきだと考えます。例えば、産科・小児科・救急医療では医師・スタッフ不足によって患者への対応ができない危機に直面しているという事実があります。医師や看護師の不足は、過重労働によって医療事故を招くことにもなり、まさに命に直接関係してくる問題がなおざりにされているのです。さらには、国民健康保険の保険料を支払うことができずに保険証を没収された無保険者の増大、病院の経営危機に伴うサービスの低下、地方のガン患者が大都市の病院を渡り歩く「がん難民」の問題など、緊急に解決すべき問題は山積しています。
 さらに、今回の法改正における高齢者向けの「療養病床」の大幅削減と居住費・食費の大幅引き上げは、リハビリ中の高齢者を病院から追い出す政策であり、公的な老人ホームの増設や在宅介護支援制度の充実なしにこの施策を強行しますと、いわゆる「介護難民」と言われる、行き場のない高齢者が増えていくという深刻な事態に陥ってしまいます。
 いまこそ患者や国民の立場にたった医療制度の抜本的に改革を行うべきです。幸いにして、がん対策につきましては、今国会の会期末に、民主党が提出した「がん対策基本法案」が与党案と調整され、議員立法として成立しました。
しかし、全体としては、政府・与党に、患者の視点に立った医療制度改革を進める意欲は見受けられません。今回の法案でも、政府は、老人医療制度の改革として、75歳以上を対象とする高齢者医療制度の創設を謳っていますが、これも高齢者の健康と命を守るという視点ではなく、あくまでも高齢者に対して、いかに保険料と自己負担を課していくかという視点にたったものです。さっそく2008年度から、75歳以上の高齢者に対して、現在子供の扶養になっている人も含め保険料支払いの義務が課せられます。
 高齢化に伴って急増していく国民医療費に対して、国民一人ひとりも自分自身の健康の維持・増進に努力していく必要があります。特に成人病や生活習慣病と言われる疾病は、日常の健康管理によってある程度防ぐことができるものです。しかし、国民の健康の管理と治療水準の維持、そして医療負担の軽減化・平準化をはかる保険制度の維持についての最終責任は政府にあることは言うまでもありません。
 民主党としても、引き続き、医療制度改革に対する改革理念を掲げ、国民の健康と命を守ることについての強い信念を持ち続けながら全力を尽くしていきます。

──加藤としゆき

 
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民主党参議院比例区第3総支部