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加藤としゆき
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column──コラム

 

序 章
希望立国、ニッポンへ。大人も、子供も、夢と希望を語れる国へ。
第1章
日本外交のグランドマップ
第2章
地球規模の課題解決に向けて
第3章
二酸化炭素排出策縁に植林活動のすすめ
第4章
簡素で骨太な租税制度をめざして
第5章
モノづくり大国ニッポンの戦略
第6章
地方モノづくりの再生と革新
第7章
起業家精神とクリエイティビティ重視の社会へ
第8章
人と地域を元気にするコミュニティビジネスと社会起業家
第9章
公共サービス協働の時代に
第10章
雇用格差社会是正へ
第11章
仕事生活の質を豊かに
第12章
次世代再生への道
第13章
究極の年金一元化
第14章
日本版EHRで医療新生
第15章
憲法改正で国会改革を
終 章
若林秀樹の「希望立国、ニッポン」実現への15の突破口

 

 

書評 若林秀樹編著 (日本評論社)

「希望立国、ニッポン15の突破口」

2006.10.25

 

 先輩議員である若林秀樹さんが「希望立国ニッポン15の突破口」を編著・出版された。若林さんの5年に亘る政策活動の集大成とも言うべき政策提言集である。
 本書が扱う政策分野は、@平和と国際協調を求める外交政策、A「モノづくり」力の強化と産業・地域振興、B生活と雇用を安定させる税制・社会保障・雇用政策の改革、C地球環境の保全、D憲法改正――の5点に集約できるが、400ページに及ぶ大著のため、忙しい人は関心あるところをピックアップして読むことになろう。しかし、15の政策提言は相互関連性があり、また日常においても役立つ情報も満載されているので、できれば全編通読に挑戦したいところである。
  さて、この政策提言の底流にあるものは、「勤労者の生活の向上」と「平和と国際社会への貢献」である。まさに若林さんが情熱を傾けられてこられたテーマであるが、執筆者の間にもその思いが十分に共有されており、編者としての役割は十分に果たされていると言える。
  以下、私なりに気になったところや特筆すべき論点について紹介したい。

1、国際平和と日本の役割

 このほど内閣が変わったが、まず新政権の国際政治、外交、安全保障政策が気になるところである。

  若林議員と第1章担当の東芝労組の八木氏は、ともに一等書記官としてワシントンの日本大使館に勤務した経験がある。二人は、外交という高い次元の現場にありながら、常に勤労者の目線から、国際社会における我が国の責務や国際平和へのリーダーシップのあり方など考えてきたはずである。

  小泉前政権による日米関係を過度に重視した外交政策が、「日米かアジアか」という二元論的な外交政策の軸を定着させてきた。これに対して、提言はこの単純な二元論を排し、総合的視点からのアジア外交のあり方、あるいはNPOをはじめ民間を活用した開発政策が強調されている。何よりも「人間の安全保障」をめざす国際協調政策の推進については、誰もが共感できるテーマであると考える。

2、モノづくり政策について

 「モノづくり」は、私自身の政治活動の中心的テーマでもある。本書の第5章「モノづくり大国ニッポンの戦略」、第6章「地方モノづくりの再生と革新」、また非正規労働者の問題と絡めた第10章「雇用格差社会是正へ」において具体的な分析・提言が行われている。

  製造業の復権は雇用の海外流出を防ぐことのみならず、疲弊した地方経済を活性化させ、技術力をさらに高め常用雇用の拡大の契機になる。このためには、我が国の技術力や製造現場の技能をより高度化していくことが強く求められる。また、団塊の世代の大量退職の前に「モノづくり」に関わる技術・技能を確実に継承させることも重要である。

  しかし、モノづくり力の強化は意欲をもつ労働者の雇用が安定してこそ為されるものであり、まずは不安定雇用の問題を解決することが不可欠である。この際、労働市場を直接コントロールする法整備が必要となるが、小林氏が提案されている「非正規労働者一括保護法」は一考に値するものと考える。

3、少子・高齢化社会と財源問題
 
 少子化対策とこれに関連する社会保障政策については、国民の英知を結集して制度改革をはかる必要がある。本書では、医療、年金、保育、税制など広い範囲にわたり、福祉国家存続のためのグランドデザインが描かれている。具体的には、所得税・消費税の改革、年金目的消費税の導入、幼稚園・保育園一元化、電子医療記録システムの導入など、重要かつ実効性ある提言が示されている。

  これら提言の多くは財政問題を伴っているので、今後は戦略的な資源配分のあり方について議論を深める必要があろう。幸いにして、今日、高齢者対策から子供・若年者対策に政策の重点を移すべきではないかという考えが強まりつつある。ただ、こういった考え方が一般的に受け入れられるかどうか、さらなる国民的議論が必要となろう。

4、社会的共生とNPO

 本書の第2章、3章、8章、9章では、NPO(民間非営利組織)やNGO(非政府組織)の活動の重要性が取り上げられている。内容的には、ODA(政府開発援助)、環境対策、公共サービス、社会起業などであるが、おそらく「社会的共生」が共通するキーワードであろう。

  政府・自治体にとっては、行政経費の効率化、あるいは人手不足となる分野の活性化をはかるためにも民間組織の活動は不可欠になっている。行政の限界をカバーする民間団体の活動は、必ずや政策推進エンジンの一つになっていくものと確信するが、一方で民間団体は財政面やスタッフ面で多くの課題を抱えている。本書で取り上げられている様々なNPOへの支援施策の実現が望まれるところである。

5、憲法改正の地平

 本書の最終章は「憲法改正で国会改革を」として、憲法改正に関する民主党と若林議員の考え方が紹介されている。
安倍新政権の憲法改正への意欲は強く、臨時国会では「憲法改正手続法案」の審議も本格化しよう。民主党内にも様々な主張があるが、憲法改正についてほぼ意思統一はできていると思われる。

  若林議員は、新憲法には、「国際社会における日本の位置付けを重視した国際化」と「家族機能の低下による弊害をなくするための家族再生」という二つの視点が必要だと強調されている。また、参議院の決算・条約審査機能や行政監視機能の特化などを挙げられ、参議院の機能見直しによって国会改革を実現すべきだ、と強調されている。

  しかし、依然として憲法改正の最大のテーマで、しかも最も国論を二分して憲法改正を実質的に困難にしているは、安全保障政策、とりわけ集団的自衛権をめぐる論点である。民主党では「制約された自衛権の明確化」という取りまとめをしているが、今後、自民党との論戦の中でどこまで耐えられるのか、予断は許されない状況である。若林議員が言われるように、今後は憲法改正に関していかに世論を喚起するかが重要となろう。

(この書評は、電機連合NAVI 2006年10月号に寄稿したものです)

 
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