労働契約および労働時間規制に関する法案が、1月25日から始まる国会に提出される見込みです。事務・技術労働者(ホワイトカラー)の一部を労働基準法の労働時間規制、時間外手当の支払い義務の適応からはずす「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」の導入を含む労働時間法制の改正、労働契約の締結や変更、運用のルールを定めた「労働契約法」の新設などがその内容です。
これらの項目については、国の労働政策審議会(労働条件分科会)で1年以上をかけて審議されましたが、労使の委員間での意見の隔たりは大きく、昨年12月27日にまとめられた報告書も、労働者側・使用者側の異論が各所に付記されたものとなりました。
特に争点となっている「ホワイトカラーエグゼンプション」についてですが、多くの職場で適切な労働時間管理が行われず、長時間・過密労働が慢性化し、さらには不払い残業の是正勧告を受ける企業も後を絶たない、このような状況で労働時間規制の保護から除外される労働者を増やすことは、問題を放置し、一層深刻な状況をつくることになると思われます。
賛否は具体的な法案要綱を見てからの判断になりますが、審議会報告に基づく限り「反対」と言うことです。
そもそも、この制度は日本における労働契約関係の現実を顧みないものです。ホワイトカラーが自由度の高い働き方をしている米国の制度を参考にしたと言いますが、米国では労働者と使用者が、職務構成、責任範囲を明示した契約を結び、その契約履行にあたっては働く側も対抗力をもった実効的な「契約関係」が確立していて、これがこの制度のベースになっています。日本にはこのような土壌はありません。職務範囲の規定ひとつとっても、日本では明文化されていたとしても包括的なもので、具体的な目標設定については個々人単位ではなく、チーム単位で定められているのが一般的です。隣の人の仕事が遅れていても、職務契約に無い仕事には関わらないという米国と違い、チームの目標達成のためには他人の仕事や飛び込みの仕事もカバーし、その結果、無制限に仕事が増えてしまうのが現状です。使用者との対等性にも大きな違いがあります。日本では強い労働組合があるか、飛びぬけて優れた職業能力でもないと、日常の職務の実態(労働契約の履行)に不服があっても使用者への対抗力をもっての交渉などはできません。このようなもとでの制度の導入は、使用者の労働時間管理責任の放棄を容認し、一層の労働強化をもたらす事につながります。
ホワイトカラーの働き方を変えるために必要なことは、労働時間規制除外の拡大ではなく、働く側が、実質的に対等に使用者と交渉できるルールを明確にし、その権利を確立することです。労働組合を作れば、より体系的・継続的にその権利を行使できますが、たとえ個人であってもこの権利行使が妨げられることがない、そういう労使のルールを確立しなければなりません。
与党内には、「ホワイトカラーエクゼンプション」の導入については世論の反発が大きいことから、参議院選挙への影響を考慮し、選挙後に先送りすべきという意見も強く、今国会での提出は見送られる可能性もあります。都合の悪いことは先送りし、選挙後であれば多少の反発はあっても数の力で押し通せばいい、との姿勢はまさに国民を愚弄するものです。
→参考資料 民主党の目指す労働契約法と労働時間法制(中間報告)(PDF 56KB)
|