公共事業の発注の不正により、昨年秋から、福島、和歌山、宮崎の各県知事が順次逮捕され、また大手ゼネコンによる談合事件も次々に摘発されている。知事が逮捕された県では後任知事を選ぶ選挙が実施され、福島県では民主党の佐藤雄平・前参議院議員が、また宮崎県では無党派でタレントの「そのまんま東氏」が当選した。国民から集めた税金が不正に支出されている自治体の政治腐敗に対して、市民から厳しい裁断が下されたわけである。
なぜ談合が起きるのか
これまで様々な防止対策が講じられ、また罰則の強化も行われてきたが、それでも依然として贈収賄による不正発注や談合事件が後を絶たない。これは、公共事業を発注したり官庁が物品調達をする際に、必ずや「政官業癒着」という構造問題が頭をもたげてくる地域が依然として残っているからである。
このことをもっとも象徴するのが、官制談合である。公共事業などの発注者、つまり国や自治体や特殊法人などの受注者が業者間の談合を仕切るのである。具体的には、発注業務を担当する職員が入札予定価格を事前に漏らしたり、あるいは受注調整に直接関与し、入札における適正な競争を妨害するのである。こういった官制談合が行われると、落札価格はおしなべて予定価格の95〜98%程度で揃うのである。入札時に適正な競争が行われれば、経験的には予定価格の20%以上、落札額が低下すると言われている。つまり、発注機関としては、本来なら少なくて済む支出をプラスして支出しなければならないのである。また、知事や市長が業者側から金品を受け取ったり、あるいは選挙時に応援を得る見返りに業者側に便宜を与えるという贈収賄は、まさに「政官業の癒着構造」の典型であり、民主主義を否定する行為でしかない。
官制談合は防止できるか
このほど、公正取引委員会は、国土交通省発注のダム付設水門工事に関して官制談合が行われたとして、国土交通省に「入札談合等関与行為防止法」(以下、「官制談合防止法」と称す)を適用し、このことが新聞紙上を賑わしている。今回の措置は、昨年12月に成立した改正新法が適用されないため、国土交通省は、発注者として内規の見直しなどの改善措置を講じるのみに止まる。
民主党は、かねてより同法の実効性に大きな問題があったため、独自の「官制談合防止法案」を策定し、政府・与党に迫ってきた経緯がある。内容的には、@刑法の談合罪の構成要件は談合をしたものを対象とする、A公務員が談合に関与した場合は罰則を科し、3年以下の懲役刑とする。B官制談合防止法の談合関与について、談合の恐れをしりながら防止措置を取らないことも含める――などの公務員の談合関与を徹底的に防ごうとするものである。
こういった民主党の議員立法活動もあって、ようやく政府は昨年秋の臨時国会に「官制談合防止法改正案」を提出し、これを成立させた。内容的には民主党案を大きく汲み取り、談合をそそのかした発注機関職員への刑事罰(5年以下の懲役又は250万円以下の罰金)の適用、関与した職員への損害賠償及び懲戒事由に関する調査結果の公表などである。
新法では、新たに刑事罰が織り込まれたが、今後、この法律がどれほどの実効性をあげるのかは現在のところ予測できない。私は、参議院の国土交通委員会の委員として、公共事業予算の約8割の6兆円近い工事を発注する国土交通省に対し、公共事業の発注の公正さと透明さを徹底的に追求していきたいと考えている。
「天下り」の規制と入札制度の改革
もともと官制談合は、関与した職員が業者から何らかの便宜をはかってもらうというケースより、そのほとんどが「官庁の天下りを確保するための民間事業者への便宜供与」という動機が背景にある。公務員集団が持つ「天下り先の確保」というインセンティブは法令違反さえも厭わないという強力さを持つ。したがって、「天下り」規制のいっそうの強化、あるいは退職にかかわる公務員制度の改革など、根本的な対策も必要となってこよう。
併せて、この旧来からの「天下り先」確保というシステムを改革するとともに、談合や官制談合が起きない入札制度の改善も重要となっている。談合は官制談合を含め、官である発注者側が業者を選定し、限られた業者間で競い合わせる「指名入札」制度のもとで起こりやすいである。つまり入札参加者が少数に限られるので調整がやりやすいのである。これを防止するためには、業者を限定しない一般競争入札が望ましい。
一般競争入札に対しては、これまで@入札参加者が多いため手続きのための経費がかかる。A過剰なディスカウントが横行して品質が保障されない――などの否定的見解が支配的であったが、長野県や宮城県など、先行した一部の自治体ではこの問題を克服し、落札率の大幅引き下げに成功している。当然、政府調達においては納入業者に特別の専門性や機密保持能力を問われる分野もあるので、この一般競争入札は比較的に多くの事業者が参入しやすい分野で実施されることになろう。
今日では、国としてもこの方法を推奨し、昨年度は、国は受注金額が2億円を越える工事では原則として一般競争入札を実施した。この結果、落札率の平均は、15年度94.26%、16年度93.91%、17年度91.41%であったものが、18年度は88.89%へとさらに低下した。また今回3人の逮捕者を出した全国知事会は、昨年末に予定価格1000万円以上の工事を原則として一般競争入札とし、できるだけ早く指名競争入札を廃止するという方針を打ち出している。
談合防止と議会・市民の役割
談合の防止にむけ、当面はこれらの国、自治体の努力を見守っていきたいが、これらの施策は決して万能であるとは言えない。とりわけ知事自らが関わった談合や贈収賄事件、あるいは国土交通省による直轄事業における官制談合事件を見ると、発注側の長や現場管理者がいかに大きな権限を持っているかということが明らかになってくる。私たちとしては、罰則のいっそうの強化を求めたり、法令遵守・倫理の確立という官の精神風土を醸成させるなど、発注者側の責任者や担当者の個人的・組織的思惑が働かない仕組みを求めていく必要はあるが、基本的には、議会や市民が公共工事の発注から官制まで監視し、不正を許さない姿勢を強く示すことが一番の談合防止方法であると考える。
行政権限のコントロールは、基本的には民主主義的な方法しか効果を上げることができないと確信するものである。
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