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加藤としゆき
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column──コラム

 

若者の職業能力開発と『ジョブ・カード制度』 

2007. 12.21 

 1、職業教育の充実とフリーター対策

  12月10日、NHKで中継された決算委員会において、わが国の「ものづくり力」を保持していくためにも、職業教育・キャリア教育の充実が不可欠であることを関係大臣に訴えました。少子化が進んでいる我が国においては、製造業をはじめとする産業発展に不可欠な技術者・技能者をどのように確保し、その能力をいかに高めていくかが大きな課題となっています。

  決算委員会では、青少年の職業意識の向上と職業選択に関する支援措置に議論が集中しましたが、実際には、中学・高校における職業教育カリキュラムを充実させることの他、不況期に正社員として採用されず職業能力の開発機会に恵まれなかった若年者に対して、いかに質の高い職業訓練の機会を提供していくか、という点も重要な政策論点となっています。

  若者のフリーター問題は、長期間続いた平成不況における企業のリストラ策が新卒者の新規採用の抑制に重点から置かれたため、大学や高校の卒業生が正社員として就職できなかったり、希望しない職種に仕方なく就いたため早期に退職し非正規になったことなどによって発生した問題です。その期間は、有効求人倍率が1.0以下であった1993年から2005年で、「就職氷河期」とまで言われてきました。

  アルバイト・パート労働・派遣といった就業形態で働く若者は、賃金・労働時間あるいは福利厚生面などにおいて低い労働条件で働かざるを得ないという問題の他に、職業能力を身につけるべき時期に実務経験を積むことができずに、職業能力を向上させる機会に恵まれなかったというもっと大きな問題を抱えています。このことは社会全体としても大きな損失でもあり、長期不況から脱した今日、これらの若者にあらためて職業能力をつけていく政策は国家的な政策課題の一つにまでなってきました。
その政策の一つが、決算委員会の2日後の12月12日、有識者による「ジョブ・カード構想委員会」が具体的施策をまとめ政府に報告した「職業能力形成システム」(通称「ジョブ・カード制度」)です。この新制度について、以下、説明とコメントしたいと思います。

2、ジョブ・カード制度の内容と運用
 「ジョブ・カード」制度は、フリーター・非正規の若者、子育てを終えた女性、母子家庭の母親などを対象に、政府の誘導策によって企業や教育機関で職業訓練を受けてもらうというものです。そして、訓練終了後は「職業能力証明書(ジョブ・カード)」を発行してもらい、その後の就職活動に活用してもらいます。その手順について説明します。(表参照)、
  
@訓練を希望するものは、厚生労働省のホームページから「ジョブ・カード」を取得する。

Aこれに必要事項を記入し地域のハローワークやジョブカフェに出向く。ここで、キャリア・コンサルタントによって訓練プログラムの参加について相談し、有効と判断された場合に訓練への参加を誘導してもらう。

B企業が実施する「職業能力形成プログラム」、または、大学・専門学校などが実施する「実践型教育プログラム」で訓練を受けることになる。なお、企業での訓練は、次の三つのパターンがある。

A.「有期実習型訓練」――能力開発機会に恵まれなかった者を対象に、現場におけるOJTとOFF−JTの組み合わせ実習

B.「実践型人材養成システム」――35歳未満の者が対象であるが、基本的には新規学卒者を対象とした現場実習

C.「日本版デュアルシステム」――平成16年度から開始された制度で、主としてフリーターなどを対象に、民間教育訓練機関の行う座学と企業での実習の組み合わせ訓練

C訓練が終了した後、企業から実習の評価を記した「評価シート(職業能力証明書)」を交付してもらい、また学校などでの「実践型教育プログラム」の修了者には「履修証明書」を交付してもらう。これにもとづき、ハローワークなどで「ジョブ・カード」に教育訓練歴、取得資格などを情報を書き込んでもらい、本人がこれを保持して就職活動に活用する。

 

 表:ジョブ・カード制度における就職までの流れ

手   順

対応先など

@ジョブ・カードを入手  

当初は厚生労働省のホームページから入手。 その後は、「中央ジョブ・カードセンター」のホームページで。

A基本的項目を記入し、「キャリア・コンサルティング」を受け、訓練プログラムの参加を誘導してもらう。

ハローワーク、ジョブカフェ、民間職業紹介機関など

B3ヶ月〜2年間の訓練を受ける。(企業で受ける訓練は有給。)

企業、教育機関

C訓練終了後に、「職業能力証明書」、「履修証明書」の公布を受け、キャリア・コンサルティングなどを受けながら、「ジョブ・カード」の記載内容を充実させる。

ジョブカフェ、民間職業紹介機関などハローワーク

Dジョブ・カードを就職活動に活用。あるいは訓練を受けた企業に就職する。

企業など

 以上、プロセスを見ますと、ジョブ・カード制度は、企業での訓練実績や学校における職業教育の成果などについて社会が客観的な評価を与えようとするもので、広範な人々が活用できる制度として普及していけば、フリーターなどの就職活動において大きな効果をあげることが期待できます。
  すでに、政府はこの制度を有効に機能させるために、平成20年度予算編成において、今年度予算の倍になる200億円の概算要求を行っています。

 

3、「ジョブ・カード制度」の課題

 政府は「成長力底上げ戦略」の一つとして、鳴り物入りでこの「ジョブ・カード制度」の導入をはかろうとしていますが、この制度を有効に機能させるためには、幾つかの課題が残っています。
  第一は、民間企業の協力をいかに取り付けていくか、ということです。決算委員会の質疑において取り上げたように、正社員においてでさえ企業内職業訓練機会が減らされている現状のもとで、実務経験のない若者を受入れ長期に亘って賃金を支給しながら職業訓練していくことは、企業にとってはかなりの負担となります。現時点で、このジョブ・カード制度への協力を表明している企業もありますが、今後、いかにして多くの民間企業の協力を得ていくのか、行政の力強い誘導策が必要となるでしょう。
  第二に、この「ジョブ・カード制度」が能力評価の客観的な基準として社会的に認知されるよう、制度の運営、記載内容、評価基準など十分配慮していくことが重要であると考えます。この際、訓練を終えた人を採用する側の考え方が優先されるでしょうから、今後、企業の採用担当者などから制度の円滑な運営にあたってきめ細かい対応について意見を聞くべきだと考えます。
  第三には、とくに経済的に厳しいフリーターや母子家庭の母親などは、実際に訓練を受ける時間的・経済的な余裕がないことから、民間を活用した制度では利用しづらいということがあります。基本的には、一定の生活補償をしながら公的機関で職業訓練を実施するほうが望ましいと考えます。さらに就職に当たっても公的部門で優先な採用をはかっていくなどの措置が考えられるべきでしょう。但し、我が国の財政状況や行政改革の方向からすれば、多くの職業訓練施設を建設したり、雇用を多く吸収できる公的事業を増やすということにはなりませんので、政府や自治体は行政コストを考慮しながら、職業能力の開発と再就職へのきめ細かい施策を講じていくことが必要だと考えます。

   

 

 

 

 

 
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