2007年〜2008年はフェーズ3にあります。つまり、「新しい亜型ウイルスに感染して症状があるヒトの患者がいるが、
効率よく、持続した伝播(感染の広がり)はヒトの間には見られていない」という状況です。これが、効率的で持続的なヒ
ト−ヒト感染が確認されるとフェーズ4、そして、ある地域に限定しているが感染の発見が遅れれば広範に広がるとフェー
ズ5になります。 このフェーズの指定は世界保健機構の事務局長が行い、WHO、国際社
会、各国政府、産業はこのフェーズ毎に勧告された活動を展開していくことになっていますが、いずれにしても、国際機関
も各国も、フェーズ4を睨みながら準備を行っていると言ってよいでしょう。
とくにWHOは、インフルエンザ・パンデミック対策として、2005
年5月には「グローバルインフルエンザ事前対策計画」を発表、各国への技術的な勧告や国際会議を主催したり、また国際的
なサーベイランスの枠組みやワクチン開発の指針を通して、世界におけるパンデミック対策を主導しています。
4、日本政府・自治体の対策について
日本政府は、1997年5月に「新型インフルエンザ対策検討会」を設置して対策を開始しました。そ
の後、厚生労働省は2004年8月に「新たな新型インフルエンザ対策報告書」をまとめました。この報告書では、全人口の25%が
罹患することを想定し、医療需要に対応できる医療供給体制の検討や治療薬の備蓄目標などを設定しました。 さらに中国・東南アジアにおける鳥インフルエンザのヒトへの感染が明確になった2005年には、
10月に「新型インフルエンザ対策推進本部」が厚生労働省に設置され、「新型インフルエンザ対策行動計画」が公表されまし
た。この「計画」は、サーベイランス、疫学調査、診断・治療、院内感染対策、患者移送、検疫、そして検査室診断のガイド
ラインを示しましたが、その後、政府は省庁間演習を行いながら「計画」の補正を行い、パンデミックフェーズ4以降に向け
ての対応を準備しています。
パンデミック対策は、可能な限り早期に感染を検知し、直ちにワク
チンの開発に着手し、あらゆる手段を講じて感染拡大を最小限にとどめる以外に方法はありません。
このためには、
@ 国境における水際対策を強化し、ウイルスの国内侵入を遅らせる。
A 侵入した場合は早期に封じ込める。
B地域流行になりつつある場合は、国内での流行を遅らせ、全体の患者数を減少させる。
C医学的介入として、パンデミックワクチンの完成と抗ウイルス薬の流通によって国民を守る。
D非医学的介入として、社会距離対策、医療体制の整備、社会機能の維持、情報共有体制、意志決定・指揮命令系統などを整備する。
――など、多数の分野にわたって、具体的な準備をしておく必要があります。
しかし、今日段階では、我が国のインフルエンザ・パンデミック対策は、ワクチン・抗ウイルス薬の備蓄や医療機関の受入体制、交通の整備
や食料備蓄などにおいて万全のものにはなっていません。
そこで政府は、新型インフルエンザへの対応施策をより実効あるものにするために、現国会に「感
染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部改正案」を提出しました。この法案は、新型インフルエンザを、
危険度の高いエボラ出血熱やペストなどと同じく「1類感染症」に相当する感染症と位置づけ、また感染者が出た場合、危険区
域・建物の封鎖や立ち入り制限、交通規制、あるいは強制入院や就業制限、感染者の検疫所での隔離措置などを可能とする内
容になっています。
民主党としても、新型インフルエンザ対策の重要性を鑑み、政府・自
治体の対策がより充実するように、この法案に審議に臨んでいく方針です。
5、ワクチンと治療薬の開発・備蓄の重要性
予防において最も効果を発揮するワクチンについて見てみます。
現在使用されている通常のインフルエンザワクチンには、現在、世界のヒトの間で広く流行しているA型の2種類(A/H1N1ソ連型、A/H3N2香
港型)、およびB型の1種類の計3種類のウイルス成分が含まれているワクチンです。しかし、これらのワクチンは、新型インフルエンザのウ
イルス亜型とは異なりますので、ワクチンの効果は期待できません。
しかし、一定の効果が期待できるワクチンがあります。「プレパンデミックワクチン」と「パンデミックワクチン」の二つです。
「プレパンデミックワクチン」とは、新型インフルエンザウイルスが大流行を起こす以前の段階、つまり「トリ→ヒト感染」の患者または
鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチンです。先進国では、すでにベトナムで流行したA/H5N1亜型のウイルスを基もとにこのワ
クチンを開発し、備蓄を始めています。日本では現在1000万人分の備蓄が行われていますが、パンデミックとなったときのウイルスに効
果は未知数です。但し、少なくとも基礎免疫をつけ、重症化を防止するという期待がもたれています。
もう一つの「パンデミックワクチン」とは、ヒト→ヒト感染を引き起こして
いるウイルスを基に製造されるワクチンで、「プレパンデミックワクチン」より高い効果があると言われています。しかし、
実際に新型インフルエンザが発生しなければ製造することができないため、国民の多くが接種できるまでの期間をどのように
凌いでいくかという大きな問題があります。その準備期間については各国の差異があり、欧米の2〜3ヶ月に対し、日本は6
ヶ月という期間が見込まれています。 また、新型インフルエンザが発生した場合、備蓄されたプレパンデミック
ワクチンには量的な限界があるために、接種の優先順位が問題になります。
厚生労働省は、現在の1000万人分の備蓄に加えてさらにワクチンを増産し、2008年度中に3000万人分を備蓄する方針です。
しかし、1億3000万人は到底カバーできません。そこで、政府は、発生初期において、医療関係者、電気・水道等のライフライン従事者
など、社会機能や社会生活の維持に不可欠な業務に関わる人々から優先的に接種する方針ですが、このことについても、事前に国民的合意を
得ていないと、無用の混乱を起こすことになります。政府の説明機会を増やしていく必要があると考えます。
次に、新型インフルエンザにかかった場合の治療薬について見てみます。こ
の治療薬としては、通常インフルエンザの治療に用いられているノイラミニダーゼ阻害薬が有効であると考えられています。ノ
イラミニダーゼ阻害薬には「タミフル」「リレンザ」(いずれも商品名)の2種類があります。新型インフルエンザの発生に備
えて、政府及び各都道府県ではこの備蓄を行っていますが、タミフルについては、平成19年度中に1,050万人分、都道府
県で1,050万人分、流通備蓄が400万人分の合計2,500万人分、またリレンザについては政府で60万人分が確保さ
れています。
しかし、日本では毎シーズン1000万人分程度の抗インフルエンザウイルス薬
が使用され、通常インフルエンザシーズンの終了後には在庫が数百万人分程度残るにすぎません。現在、厚生労働省では、パ
ンデミックに備えて、約2500万人分の備蓄を計画していていますが、これでは十分とは言い切れません。早急な備蓄体制を整
える必要がある同時に、これらの治療薬が新型インフルエンザに本当に効くかどうかは解明されていませんので、実際にパン
デミックが起こった際に、ウイルスの特徴と流行の変化を早くとらえ(サーベイランス)、早急に臨床情報を集約して、迅速
な治療対策や新薬開発を推進する体制を整えていくことが重要であると考えます。
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