3、共聴施設のデジタル化の問題
地上デジタル放送にむけて準備が進む中、議員事務所に問い合わせや問題指摘の意見が多いものは、共聴施設の改良工事とこれに伴う負担のあり方に関するものです。
現在、共聴施設は内容的に、@辺地共聴施設、A集合住宅共聴施設、B都市受信障害共聴施設、の三つに分けられますが、それぞれの問題点や課題をみてみます。
(1)辺地共聴施設の改良
現在、山間部や離島など地形的な問題によりテレビ電波を受信できない難視聴地区には辺地共聴施設が設置されています。その施設は2種類有り、一つはNHKの難視聴解消施設に住民組合が民放の受信設備を併設している共同施設(約8500カ所)。もう一つが、住民組合が独自に民放受信設備を運用している施設(約11000カ所)です。しかし、これらの施設はデジタル放送用のUHF電波の送受信ができないため、設備そのものの改修や周辺のケーブルテレビとの接続などが必要になってきます。このための住民の経費負担は一軒あたり3万5000円から32万3000円もかかるとされています。現在、辺地の市町村はデジタル放送の難視聴を何とか避けたいと様々な対策を講じており、また政府も2007年度から負担軽減ための補助金制度を運用していますが、さらなる支援策の充実が求められています。この点については、山間へき地を抱える市町村の首長や議員の方々からも支援策強化の要請をいただいておりますが、私も積極的に行政の対応を求めていきます。
(2)集合住宅共聴施設の対応
マンションなど共同住宅のほとんどは屋上に共同アンテナを設置し各戸に電波を配信するシステムになっています。関係業界団体の調査によると、4階建て以上のマンションの約70%で、デジタル化に向けた改修の必要があることが明らかになりました。また、そのうち大規模改修が必要となるマンションは7.6%と推計されており、この場合は一世帯あたり数万円の費用がかかると見込まれています。
マンションの全住民にとっては、共聴施設の改修費用を共同で分担することになりますが、選択肢としてケーブルテレビへの切り替えという方法もあり、住民全員の合意形成をはかるためには、管理組合を中心にかなりの調整努力が必要になると思われます。この調整に失敗すれば、各戸がベランダにUHFアンテナを取り付けるという異様な風景が出現することになります。
(3)都市受信障害共聴施設の問題
都市受信障害共聴施設の場合は、問題解決への道が一段と複雑化します。この共聴施設は、高層ビルによる電波障害対策として、ほとんどが高層ビルの所有者が施設を設置・運用していますが、地上デジタル放送はアナログ放送より電波障害が少なくなるという特性から、問題は一挙に複雑化します。つまり、高層ビル所有者は、地域の電波の受信状況が良ければ共聴施設を運用しなくてもよく、このサービスから撤退しようとするからです。そうすると、共聴施設で受信している各家庭は三つの選択肢を迫られます。
第一は、あくまでも受信障害の発生を前提にデジタル化の前に高層ビル管理者に設備の更新を要求する方法。第2は、地上デジタル放送が始まってから電波障害の具合を調査し、この結果から問題があれば設備更新を要求する方法。そして第3が、電波障害は起きないということを見越し、各家庭が自らの負担でアンテナ・受像機の購入でデジタル受信のために自己負担する方法です。
いずれにせよ、総務省は都市受信障害共聴施設については、住民と高層ビル管理者との当事者間の話し合いによる解決を期待しています。但し総務省は無用の混乱を避けるために、負担のあり方に関する一応のガイドラインを示しています。これによると、例えば、第3の選択肢で示したように、高層ビル側が電波障害は生じないとして共聴施設を撤去し戸別受信方式に切り替えた場合には、一般的なUHFアンテナ設置費用の3万5000円を超える金額については高層ビル側が負担する、というものです。しかし、このようなガイドラインが果たして双方の理解が得られるのかどうかは不明です。各地で住民とビル管理者の間のトラブルが多発する懸念が残ります。
4、著作権問題とダビング10
7月4日から、地上デジタル・衛星デジタル放送のダビング10という制度がスタートしました。これは、テレビのデジタル放送に関して無制限の複製を制限するという著作権を守るための規制するものです。
デジタル放送では、従来のアナログ方式に比べて画質の劣化が無いために、受信者によるコピーを際限なく許せば映画などのDVD販売等に影響することが予想され、2002年4月のデジタル放送の開始時点からコピー・ワンス規定という厳しいコピー制限制度を採用してきました。
しかし、視聴者からは1回のダビングでは少な過ぎるという不満の声が高まり、政府の審議会で著作権者団体、放送業界、メーカー、消費者団体などの間で調整が行われてきました。そして北京オリンピックを目前に、9回までのコピー(オリジナルを併せ10個の放送データが手元に残る)を認めるということになり、7月4日に新たな制度がスタートを切りました。
この制度は、デジタル放送の完全移行に向けた準備段階において、国民の著作権に関する意識の向上に資する制度になると考えられます。
なお、このダビング10に関連し、我が国では、「私的録音・録画補償金制度」という制度の見直し作業も進められています。これは「著作権法」にもとづき、家庭内などで音楽などの著作物を私的に使用することを目的とした録音・録画に対し権利者への補償金を支払うことを定めた制度です。具体的な補償金の支払い方法は、MDレコーダやオーディオ用CD-R、DVD-Rなど政令指定を受けた特定機器・記録媒体を購入する際に、当該の補償金を商品価格に上乗せして消費者が支払うというものです。録音については1993年6月から、録画については2000年7月から実施されていますが、現在、著作権団体は、対象機器の拡大(HDD内蔵型レコーダーなど)をはかろうとしています。これに対し、「多くの消費者はこれらの機器を使い、音楽や番組を時間をずらして、または場所を変えて視聴しているだけ(タイムシフト・プレイスシフト)で、著作権者の経済損失をもたらしてはいない」という観点で、家電メーカーは補償金の拡大に反対を表明しています。現在も文化庁が調整役になって両者の間で調整が行われていますが、デジタル機器・媒体への補償金の課金問題はデジタル放送への完全移行に伴なって派生してくる課題の一つなので、今後ともフォローしていきたいと考えます。
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