国会質問

第187回臨時国会 参議院本会議(2014年10月 2日)

安倍首相の所信表明演説に対する代表質問 ~ 雇用・労働問題を中心に質す ~

政府が主張する「経済の好循環」の実現には、「雇用の質」の向上による雇用労働者の所得の向上こそが、最も必要な施策であると考える

  10月2日に参議院本会議において、安倍首相の所信表明演説に対する代表質問を行い、特に、雇用・労働問題を中心に安倍政権の考えを質しました。

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内閣総理大臣の所表明演説に対する質問(全文)

  民主党・新緑風会の加藤敏幸です。会派を代表して、とくに雇用・労働問題を中心に総理ならびに関係大臣に質問いたします。まず、冒頭、国会閉会中に水害や火山噴火などの自然災害により尊い命を落とされました方々に哀悼の意を表しますとともに、残されました遺族の皆様や被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。 

1.雇用の質の改善について

  さて、「アベノミクス」と銘打った政府の経済・金融政策が実施されてから1年10カ月が経過しました。この間、円安、株価の上昇、大企業の業績改善などが見られました。しかし、本年4月からの消費税率の引き上げも影響し、4-6月期の国民所得統計ではマイナス成長になり、アベノミクスに対する厳しい評価も出始めております。そして、「第3の矢」である成長戦略の成否に注目が移っています。

  政府が主張する「経済の好循環」を実現するには、何が最も重要であるのか。私は「雇用の質」の向上による雇用労働者の所得の向上こそが、今、最も必要な施策であると考えます。

  マスコミでは大きく取り上げられませんでしたが、9月10日・11日の2日間、「G20の雇用・労働大臣会合」がメルボルンで開催されました。残念ながら塩崎厚生労働大臣は出席されませんでしたが、実は、この大臣会合に対し、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、そして世界銀行という3つの大きな国際機関が珍しく共同で、「G20労働市場の展望、主な課題、政策対応」というタイトルの報告文書を提出しました。この文書は、「G20諸国では依然として雇用の縮小と仕事の質の低下が続いている。労働市場の動きの弱さは消費と投資を制約し、景気回復を脅かし、ほとんどのG20諸国で賃金の伸びは労働生産性の伸びを大きく下回り、賃金と所得の不平等が拡大し、先進国の多くで実質賃金の低迷または下落が見られる。景気回復の基盤は、『仕事』であり、社会の安寧と持続的な成長の基盤として、もっと多くのより良い仕事が必要である」と指摘しています。

  昨年9月のサンクトペテルブルク・サミットの「首脳宣言」も、「生産的でより質の高い雇用を創出することは,強固で持続可能かつ均衡ある成長,貧困削減、及び社会的一体性の向上を目指す各国の政策の核である」と指摘しています。

  そこで、総理は、これら国際会議における雇用に関する「提言」や「宣言」をどのように受け止められているのでしょうか。特に、3つの国際機関の提言について、ご自身の評価とその主な理由をお伺いしたいと思います。併せて、今後、政府としてどのように政策化していくのかについても伺いたいと思います。

2.非正規雇用問題への対応について

  関連して、次の質問をいたします。3つの国際機関の提言は、「安定的な成長を達成するために、経済変動に対し危機的な影響を受けやすい集団や、ぜい弱な人々に対し、雇用機会を増やし、労働生産性や賃金を改善するような政策を講じる必要がある」と強調しています。

  我が国においては、パートタイマ、登録型の派遣労働者、契約社員・嘱託などの「非正規の職員・従業員」や、現在「雇用されている」あるいは職業訓練を受けている障害者などがこの政策の対象者になると考えますが、全体として安定的で良質な雇用が確保されている状況にはありません。とくに障害者の雇用に関しては、全国各地で就労支援事業などが進められていますが、依然として、障害者の自立を保障する一般企業への就労と定着には多くの課題が残っています。

  非正規の労働者は、パートタイム労働者を中心に、昨年まで増加の一途を辿ってきました。現在、企業や官庁や法人・諸団体に雇用されている人は、役員を除くと5,226万人ですが、このうち、約37%の1,922万人が非正規です。まさに3人に1人が非正規ということです。非正規労働者の「雇用の質」を高めるためには、正社員に登用する道を広げ、賃金を均等水準に引き上げるとともに、そのための能力開発を十分に行う必要があります。また労働時間や休暇取得をはじめとする労働条件の改善が必要です。

  そこで、まず政府として、非正規雇用の「質の改善」をどのように図っていかれようとしているのか、総理にお伺いしたします。

  また厚労大臣には、これまで取られてきた非正規雇用の対策の要点を説明され、併せて、今後の政策の改善点について、特に女性・若者の視点にたった対応策を説明していただきたいと考えます。また、障害者雇用のさらなる改善に向けての政策についてお伺いいたします。

  今回の総理の所信表明演説には、「雇用」という言葉は僅か1カ所しかありません。しかも、規制緩和の対象となる「岩盤規制」の一つとして取り上げられているのです。まさに今の政府の姿勢が正直に表れています。

  先ほど紹介いたしました3つの国際機関の提言とは大きなギャップがあります。アベノミクスの「第3の矢」、すなわち成長戦略の要は雇用者所得の改善、実質賃金の上昇にあると私は確信いたします。この点は、労働市場の規制緩和と併せ、今後、大いに議論を展開すべきだと考えます。

3.格差是正の重要性について

  次に、格差の問題に関し質問します。

  格差問題は、フランスの経済学者のトマ・ピケティーの著書『21世紀の資本論』が欧米で一大センセーションを巻き起こしていることもあり、国際的にも大きな政策テーマとなっています。ピケティーは、過去300年にわたる租税データをもとに格差の分析を行なったわけですが、「資産の世襲化」を伴って今世紀末まで資産格差は拡大し続けると予測し、社会の安定と均衡ある成長のために、今こそ累進課税と資産課税を強化して格差拡大を食い止めるべきだと主張しています。

  今日、我が国においてもあらゆる場面で格差拡大の弊害が出ており、ピケティー教授の言う「資産格差」もじわじわと拡大しつつあります。また、労働の場においては、「正規と非正規」、「男性と女性」、「都市と地方」との間に顕著な所得格差が存在しています。これまでは、比較的平等な賃金体系や、税制・社会保障による所得再分配機能によって格差は一定程度抑えられていましたが、いまや労働市場の変化や金融市場の変化により格差が拡がり、その結果、相対的貧困層も増大しています。

  2013年国税庁の「民間給与実態調査」によれば、非正規雇用者の賃金は対前年比で0.1%減少し、正規雇用者との年収格差は5万円増えて305万円となりました。

  所信表明では、多くの企業で賃金がアップしたとご自分の成果のごとく喜んでおられましたが、実質賃金が向上したかどうか、あるいは賃金の格差が縮小しているのかどうかが重要なのであります。

  安倍総理は、格差是正策を含めた政策的対応についてどのように考えられているか伺いたいと思います。

  これに関連し、首都圏をはじめとする大都市と地方との間の格差拡大ということにも触れたいと思います。今回、内閣改造で「地域創生担当大臣」というポストを設けられ、石破大臣が就任されました。今日、地方の人口減少を食い止め、地域経済、地域産業を活性化させ、地域を我が国全体としての成長の原動力にするということは重要な施策であります。

  石破担当大臣は「今の日本国の姿は、敗戦後長い時間をかけて形作られたものであり、地方と第一次産業の潜在力を生かせないまま今日を迎えた」とブログに書かれていますが、やはり地域・地方の潜在力を生かすには、ひとえに「人」の力にかかっていると考えます。とくにこれからは、地域の女性・高齢者・障害者の活動の場を如何につくるか、そこに「質の高い」雇用・労働の場をいかに準備するかが重要だと考えます。さらには、治療を続けておられるガン患者の方々にも雇用の場を含む社会参画を支援していく施策が必要ではないでしょうか。

  「問題は地方・地域で起こっている」わけです。地域の活性化に関し、「雇用の確保」と「格差是正」との関連について、石破担当大臣のご意見を伺いたいと思います。

  また、格差問題・貧困問題に関連し、文部科学大臣にお伺いします。最近、三食を満足に食べられない、あるいは必要とされる栄養を十分に摂取できていない子供達が増えているとの調査結果が出ています。大臣はその実態をどのように認識され、また教育行政としてどのような対応策を考えておられるのでしょうか、お伺いします。

4.労働法制の改正(改悪)について

  次に、雇用問題に関連し、労働法制の改正について質問します。

  政府・与党は、この臨時国会と来年以降の国会において、労働法制の3つの改正を目指していると聞いております。

  第1は、現在、職種や派遣期間が限定されている労働者派遣について、その制限を取り払い、あらゆる職種で永続的に労働者を派遣することができるという改正。

  第2は、特定の職務で一定の所得があれば残業代を支払わなくともよいとする「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入。

  そして第3は、不当労働行為による解雇であっても金銭でこれを解決することができる

――とするものです。

  これらの労働法制の改悪とも言える動きは、小泉政権以来、続いてきた新自由主義的な政策の延長線上にあるものです。我が国の労働法は労働市場を硬直化させ、労働移動を阻害し、企業の自由な活動を制約し利益を低下させるものとだ、という考え方です。もちろん、このような考え方は断じて認めるわけにはいけません。

  今回の3つの労働法制の改悪は、国際競争が激しくなる中で、少しでも賃金コストを下げ、長時間の勤務ができることを可能にし、容易に人員整理ができる環境を作りたいとする経営者側の要求を満たすものです。このような新自由主義的政策の行き着くところは、「格差の拡大」であり、「雇用の質の劣化」であり、「中間所得層の縮小」であり、「国民生活の窮乏化」であります。個別企業の利益追求としては合理的であっても、国全体としては「個人消費」という「根太」が抜け落ち、成長どころか景気失速になりかねません。

  これは、いわゆる「合成の誤謬」であります。政府の役割はマクロ経済の健全な発展のために、公平・公正な競争条件の整備に心がけ、各種の社会保障制度や雇用労働政策の充実によって国民生活の底上げをはかり、もって全体として経済の上昇を実現することにあります。安定・安心を脇に置き、労働者をフライパンで煎り上げるが如き施策は、我が国が長年築き上げてきた「ものづくり日本」の基盤を浸かすものであり、自民党の皆さんの「伝統的保守政治」の目指すものではありません。

  昨今、飲食業において、ひどい労働基準法違反が常態化していることが明らかになり、従業員の反発によって店舗が休業に追い込まれたという事件が世間の耳目を集めました。一部の企業で「労働基準法」があって無きが如き無法状態にある中で、労働者保護ルールの規制緩和は法違反をいっそう助長することになります。ルールを無視する経営者が若い従業員を使いつぶすようなことは決して許されません。

  そこで、厚労大臣にお伺いしますが、厚生労働省は労働者保護を優先されるのか、それとも使用側の利益追求を優先されるのか、その基本姿勢をお答え下さい。また、労働基準法を踏みにじる悪質な経営者に対して、今後、どのような監督行政を展開されるのか、伺います。厚生労働大臣の任務は、液状化に近い状態に陥った労働現場の見直しにあると考えます。

  また建設現場等での人手不足の影響もあって、建設業の労働災害は3年連続で増えていることが報告されています。厚労大臣には、労働災害の現状と、これを防止するための決意を伺いたいと思います。

  関連して、安倍総理大臣にもお伺いします。総理は、一方で経済成長のために労使に賃上げ要請しておきながら、他方で、正規雇用を派遣に切り替えてコストダウンする、あるいは「ホワイトカラーエグゼンプション」という残業代を浮かせてコストダウンを促す政策を推進されようとしています。このことは、まさに矛盾した政策ではありませんか。ご説明下さい。そして、労働の質を低下させ、過重な労働を課し、「働きがいのある人間らしい労働」いわゆるディーセントワークとは逆の方向をめざす法改正を本気でやろうとされておられるのか、あらためてその真意を伺いたいと思います。

5.「女性活躍政策」の問題点について

  安倍内閣は、女性の活躍を「成長戦略の中核」と位置づけ、「育児休業3年」「待機児童を5年でゼロに」「まずは上場企業に女性役員を1人」などの目標を掲げられています。女性の社会進出を促し、女性が活躍できる環境作りをするという政策は評価したいと思います。しかし現在、働いている多くの女性がどのような状態におかれ、どのような問題点や苦しみを抱えているのかを把握し、その解決策を実行することの方が重要ではないでしょうか。

  現在、雇用されている女性労働者は2,406万人ですが、そのうち53.9%の1,296万人がパート、派遣、契約社員、役所などの臨時職員などの非正規雇用労働者です。当然、賃金をはじめとする処遇は正社員・正職員に比べかなり低く、多くの方が、職場では差別的な扱いを受けたり、パワハラをはじめ様々な嫌がらせを受け、これらに耐えならが、紛争処理機関に訴えることもなく、生活のために一生懸命に働いておられます。もちろん正社員・正職員の女性も同じような問題を抱えおられると思いますが、とくに、非正規のシングルマザーの多くは職業能力を高めるチャンスもなく、貧困層に陥っているという状況にあります。所信表明演説では触れられていない、女性の労働現場における「不都合な真実」が多くあるのです。

  確かに、キャリアを積んだ女性社員を役員に登用したり、職業能力をもった主婦を再就職させることも重要ですが、現在働いている女性労働者の生活と労働環境・労働条件を改善する政策も優先的に対応されるべきだと考えますが、総理のお考えをお聞かせ下さい。

6.好循環を支える賃上げを

  繰り返しになりますが、経済の好循環を生み出す最も重要な要素は、雇用者所得の改善であります。すなわち、5,226万人の雇用労働者の実質賃金の改善こそが重要であり、個人消費を支える原動力であります。

  そこで、厚生労働大臣に伺います。ここ10年間の雇用労働者の実質賃金の動向について、簡潔にお答え下さい。また、春の労使交渉が、賃金上昇として成果につながる雇用労働者の範囲、すなわち波及効果についてお答え下さい。また、自主・自律であるべき労使交渉に厚労大臣としてどのような考え方で臨まれるのか、踏み込んだ対応をされるのか、あるいは旗振り役に徹するのか、今後の労働行政への影響を踏まえ、お答え下さい。

  結論を言えば、好循環を生み出すだけの雇用者所得の改善向上、あるいは実質賃金の確保は簡単ではありません。労使の賃金決定メカニズムにおいて、近年、波及力の低下が指摘されています。ずばり、来年の賃上げは今年以上に厳しく難しいと言えます。特に、非正規雇用労働者、あるいは中小企業・零細企業、地方の企業では一層厳しいものとなるでしょう。

  このことを踏まえ、好循環を支える雇用者所得の改善にむけての総理の方策と決意をお伺いします。

  最後に一言申し上げます。経済とは「経世済民」、あるいは「経国済民」の略だと教えられましたが、大切なことは、済民の「民」とは誰なのかということです。29日の所信表明演説は、バラ色に満ちた、甘い香りのする情緒たっぷりの安倍カラーそのものでした。

  問題は、総理の視野にある「民」の姿であります。自民の「民」と民主の「民」は同じものではないこと、そして、この違いを今後とも真剣に、しつこく明らかにしていくこと、すなわち、民主党は、生活者・納税者・消費者、働く者の立場、「民」の立場に立ち、共に支え合う「共生社会」を目指し、全力をあげ現政権と対峙していくことを申し上げ、質問を終えます。ありがとうございました。


< 安倍首相と関係閣僚の答弁 >

安倍晋三内閣総理大臣 加藤敏幸議員にお答えをいたします。

  雇用に関する国際機関の提言等についてお尋ねがありました。御指摘の国際機関によるレポート及び首脳宣言は、生産的でより質の高い雇用の創出の重要性を訴えており、これは、女性や若者を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指す安倍内閣の方針と合致するものと考えます。政府としては、働く方の希望に応じた柔軟で多様な働き方を可能としつつ、労働環境や処遇の改善等を図ることによって質の高い雇用を確保してまいります。

  非正規雇用の質の改善についてお尋ねがありました。安倍内閣としては、景気の好循環が生まれ始めている中、これを雇用の拡大や処遇の改善につなげていくことが重要と考えています。その上で、非正規雇用については、賃金が低い、能力開発機会が乏しいなどの課題があるため、キャリアアップ助成金などの支援により処遇改善を進めるとともに、正社員を希望する方々に対して正社員への転換を推進します。こうした取組により、非正規雇用の方々の雇用の質の改善に取り組んでまいります。

  賃金格差是正のための政策対応についてお尋ねがありました。三本の矢の取組により、今年の春闘での賃上げ率が過去15年間で最高となるなど、経済の好循環が生まれ始めています。一人当たり名目賃金に雇用者数を乗じた国民全体の所得、賃金である雇用者所得は、昨年4月以降、上昇基調にあります。一方、今般の物価上昇により、まだ賃金の上昇を実感しづらい状況であることも事実であります。御指摘の正規、非正規の年収の差が拡大したとの点は、その大宗が正規雇用者の給与上昇に起因するものでありますが、非正規雇用者と正規雇用者との処遇の差の改善も重要な課題と考えております。このため、キャリアアップ助成金などにより、非正規雇用者に対し処遇改善や正社員への転換の支援を進めているところであります。こうした取組を更に進めながら、政労使会議において、賃金上昇に向けた取組や、非正規労働の正規化、処遇改善などを議論するとともに、成長戦略を確実に実行し、景気回復の実感を全国津々浦々に届けてまいります。

  労働者派遣や労働時間に関する制度改正についてお尋ねがありました。労働者派遣法の改正については、派遣労働者のキャリアアップを促進することなどを目指すものであり、正規雇用を派遣に切り替えるとの御指摘は当たりません

  また、新たな労働時間制度については、希望しない人には適用しない、職務が明確で高い職業能力を持つ人材に絞る、さらには、賃金が下がることのないようにするという三原則の下、検討を進めています。ホワイトカラーの方々を広く対象とする、いわゆるホワイトカラーエグゼンプションとは異なるものであり、その導入は考えていません。このように、安倍内閣としては、全ての人々が生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくという一貫した方針の下、これらの取組を進めているところであり、労働の質を低下させ、過重な労働を課すとの御指摘は全く当たりません。

  女性の労働環境等についてお尋ねがありました。安倍内閣が推進している女性の活躍推進に当たっては、全ての人々が生きがいを持って働くことができる社会の実現が必要と考えています。このため、男女を通じた長時間労働の是正を進めるとともに、子育て環境の整備や、非正規雇用で働く方の処遇改善等を着実に進めることにより、働くことを希望する全ての女性が安心して働くことができるよう取り組んでまいります。

  雇用者所得についてお尋ねがありました。先ほどお話をさせていただきましたように、三本の矢の取組により、経済の好循環が生まれ始めています。有効求人倍率も22年ぶりの高水準となっております。今年の春闘で賃上げ率は過去15年で最高となっております。また、一人当たりの名目賃金に雇用者数を乗じた国民全体の所得、賃金である雇用者所得は、昨年4月以降、上昇基調にあります。一方、今般の物価上昇により、まだ賃金の上昇を実感しづらい状況にあることも事実であります。このため、設備や研究開発、そして人材への投資促進や規制改革などによって労働生産性を向上させるとともに、政労使会議での議論を通じ、経済の好循環実現に向けた環境整備を図り、賃金が毎年しっかり増えていく状況を実現してまいります。

  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

塩崎恭久厚生労働大臣 愛媛県の先輩でもあります加藤敏幸議員から、5問頂戴をいたしました。

  まず、非正規雇用対策や障害者の雇用促進についてお尋ねがございました。若者や女性を含む非正規雇用労働者の雇用対策については、これまでも、わかものハローワーク等を通じたフリーターの就職支援、パートタイム労働法に基づく均等・均衡待遇の確保等の推進、キャリアアップ助成金による正社員転換や処遇改善を行う企業の支援などの取組を行ってきたところでございます。

  また、今後は、労働力人口の減少が進む中で、若者や女性、障害者を含む全ての方々が生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくことが一層重要になっていると認識しております。このため、若者については、次期通常国会への法案提出を目指し検討に取り組むほか、正社員を希望する非正規雇用の方に対して正社員実現加速プロジェクトによる正社員転換を強力に推進するとともに、女性については、女性の活躍推進のための新法において、各企業が行動計画策定の際に参照する指針において、非正規雇用から正規雇用への転換等に関する効果的取組等を盛り込む方向で検討しております。

  また、障害者については、平成25年に改正いたしました障害者雇用促進法の施行に向け、雇用労働分野における障害のある方への合理的な配慮を定めた指針の策定などに取り組んでまいります。

  労働法制の見直しについてお尋ねがございました。労働法制の見直しに当たっての政府の基本姿勢は、働く人たちの立場に立った上で、一人一人の意欲や能力が一層発揮されるようにして、生産性の向上を図っていこうというものでございます。日本再興戦略改訂2014においても、働き方改革の進め方として、まず働き過ぎ防止のための取組強化が大前提であるとされており、これまでも、労働基準法などの違反が疑われる事業場には監督指導を積極的に行い、重大な法令違反については厳正に対処しているところでございます。さらに、喫緊の課題となっております長時間労働対策を一層強力に展開するために、厚生労働省に私自身を本部長とする長時間労働削減推進本部を設置をいたしまして、昨日その第一回会合を開催をいたしました。その中で、著しい過重労働や悪質な賃金不払残業等の撲滅に向けた監督指導の強化、休暇の取得促進を始めとした働き方の見直しに向けた企業への働きかけの強化に省を挙げて取り組んでまいります。

  建設業における労働災害についてお尋ねがございました。建設業における休業四日以上の労働災害は、新設住宅着工戸数の増加等を背景として3年連続で増加し、本年も8月までの速報値で昨年同期比で1.7%増加をしております。こうした状況を踏まえ、厚生労働省では、本年8月、産業界全体に対して労働災害防止に向けた緊急要請を行っており、建設業においては、国土交通省、業界団体と連携をし、安全パトロール等を行うことにより労働災害防止措置の徹底を図っております。今後とも、建設業の労働災害防止対策をしっかりと進めてまいります。

  実質賃金の動向と春の労使交渉の波及効果についてのお尋ねがございました。過去10年間の実質賃金の動きを見ますと、平成17年、18年、22年、23年はプラスないしは横ばいですが、それ以外はマイナスとなっております。一方で、三本の矢の取組により、経済の好循環が生まれ始めております。今年の春闘では、連合の調査によれば、賃上げ率が過去15年で最高となり、経済産業省の調査によれば、中小企業・小規模事業者で65%で賃上げが実施されるなど、大企業のみならず、中小企業・小規模事業所で働く方々にも賃金上昇の動きが広がっていると認識をしております。こうした春闘の結果等を反映をし、名目賃金について、昨年後半から所定外給与や賞与が堅調に推移する中で、ここのところ所定内給与の回復が統計上も表れてきており、春闘の結果は確実に波及しているものと認識をしております。

 労使交渉への対応についてのお尋ねがございました。具体的な賃金の水準は個別企業における労使間の交渉を通じて決定されるものでございますけれども、経済の好循環を確固たるものとするために、労使を取り巻く課題について政労使が大所高所から議論を行う政労使会議が再開をされております。政労使会議での議論を通じ、経済の好循環の実現に向けた環境整備が図られることを期待をしております。以上です。

石破茂地方創生・国家戦略特別区域担当大臣 加藤議員より、地方における雇用と大都市と地方の人口格差についてのお尋ねをいただきました。

  地方創生に取り組むに当たりましては、国民が安心して働き、希望どおり結婚し子育てができ、将来に夢や希望を持つことができるような魅力あふれる地方を創生するとともに、地方への人の流れをつくることを基本目標としております。

  問題は地方、地域に起こっているとの議員の御指摘はまさしくそのとおりでございまして、このことを踏まえまして、地域の活性化を図りますためには、各地域の創意工夫を生かした良質な雇用機会の創出や、地域経済を支える人材を育成する取組、東京一極集中を是正し、地域経済を支える人材を地域に積極的に呼び戻す取組が重要であると考えております。これらの実現に向け、大胆な施策を強力に実行してまいります。その際、女性、高齢者、障害をお持ちの方々、疾病をお持ちの方々、加えて若い方々、そういう方々に対するきめ細かい配慮をしてまいりたいと思います。以上でございます。

下村博文文部科学大臣 加藤議員から、必要とされる栄養を十分に摂取できていない子供たちへの対応についてのお尋ねがありました。

  最近、特にそのような調査結果が出ていることを承知をしております。家庭環境や経済状況にかかわらず、子供の食事、栄養状態を確保すること、重要な課題であります。このため、学校給食費につきましては、就学援助制度等による補助を行い、低所得世帯への支援を実施しているところであります。また、文部科学省といたしまして、学校給食の普及充実及び学校教育や家庭教育の中で適切な栄養摂取による健康の保持増進に努めております。今後とも、これらの取組を通じて、子供の食事、栄養状態の確保に更に努めてまいりたいと考えております。