国会質問

第189回通常国会 経済産業委員会(2015年4月17日)

中小企業に対する支援策について質問

  4月16日、経済産業委員会において、「官公需の中小企業者の受注確保に関する法改正案」の審議が行われ、50分にわたり政府関係者に質問しました。

  宮沢経済産業大臣に対しては、中小企業が賃上げを実施するための環境整備について、また、金融庁に対しては、「中小企業金融円滑法」終了後の中小企業への経営改革・経営力強化支援策の経過と評価について質問しました。
  
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○加藤敏幸 おはようございます。民主党・新緑風会の加藤敏幸でございます。

  ただいま議題となりました官公需中小企業受注確保法改正法案並びに二法につきまして質問をいたします。

  中小企業をめぐる経済環境をどのように改善をしていくか、これは我が国にとっても大変重要なテーマであり、経産委員会としても極めて重要な事項であると、こういう視点に立ちまして、いろいろな角度から御質問をいたしたいと思います。

  実は、一年前の3月17日の経済産業委員会におきまして、アベノミクスの成否に関わる春の賃上げ、これをめぐって当時の茂木経産大臣と議論をいたしました。そのときの論点でありますけれども、一つは、企業競争力、国際競争力の維持と我が国の賃金水準引上げ、これどう兼ね合いを持つのかという、こういう視点。二つ目は、賃上げにおいて、いわゆる実質賃金、あるいは可処分所得、こう言われておりますけれども、このレベルを確保するにはどうすればいいのか。三点目は、賃上げが、中小企業やさらには増え続ける非正規雇用の皆さん方に対しいかに波及させていくかという課題。これは、主婦層のパートタイマーの皆さんが健保の扶養者資格を得るために労働時間を調整して収入を減らす、こういう勤務の実態もあるという問題も含めて議論をいたしました。四つ目が、政府が景気浮揚のために民間企業に賃上げを要請し、税制上の優遇措置などで賃上げの環境整備をするといった側面と、賃金コストの低減化や労働の流動性を図るような、いわゆる新自由主義的な労働政策を進めようとする側面、これらが項目、内容においては相反する内容になる、こういうところの政策スタンスについて議論をさせていただきました。

  本日は、地域の中小企業の活性化に関わる法案審議ということですので、中小企業におけるいわゆる賃上げの問題について、まず冒頭、二、三御質問申し上げたいと思います。

  そこで、議論を少し正確にするために、僣越ながら資料を御用意いたしました。お手元にある資料1は、昨年と一昨年の賃上げ結果について、経団連、連合、そして厚生労働省のそれぞれの集計を、これは経済産業省の方でまとめられたものをそこに記載しています。傾向としては同じでありますけれども、それぞれの集計対象の属性によって賃上げ額のあるいは賃上げ率も差が出ているということでございます。

  例えば昨年の賃上げに関しては、3月末段階と6月末の最終集計段階とでは数字が大きく違っているということを示しております。

  賃上げ集計のデータというのは、続々と集計対象が増えていくわけでありますから、集計時期によって差が出てくるということは、これは当然認識されております。あくまでも、言わばサンプル調査的な側面を持っている。ただ、サンプル調査というのは無作為抽出という意味合いがありますけれども、この調査は無作為抽出ではないということであります。しかし、全数調査ではないということも当然であります。例えば、資料2の脚注にありますように、連合調査というのは、本年、今年は262万人を対象にしていますけれども、これは全雇用者の5%にしかすぎない、5%をカバーしているにしかすぎない。

  経済産業省としてもここのところを注意されないと、いわゆるそういう指標をもって、上がったと、仮に賃金が上がった下がったと言ったところで、その数字が仮に良かったとしても、全体5千万を超える雇用労働者の賃上げ実態とは相当距離がある、差があるということ、非常に重要なポイントでありまして、この点について、まずデータ、資料の見方ということについて、大臣、どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 幾つかのデータがあるということは承知をしておりまして、私は極力国会等で答弁するときには、やはり中小企業も入っているということで、連合の数字を極力使わせていただくこととしております。

  そうした意味で、連合でもまだまだ5%しかカバーしていない、ほかのものがあるということは重々承知をしておりまして、そういう方たちの中で、やはり我々接触する中小企業、零細企業の方からは、まだまだ大変厳しい、賃上げをできる環境ではないと、こういうことを個々に聞くことも度々ございます。そういう中で、私どもとしましても、やはり一つは経済全体を良くしていくということ、そしてもう一つは、しっかりと全体が良くなったものが、きっちりとした転嫁が行われて中小企業・小規模事業者にもそれが広がっていくというようなことをしっかりやっていかなければいけないと思っております。

  4月2日に政労使がございましたけれども、その場で、昨年に比べて今のところいい数字が出ているということが連合会長からお話がありました。一方で、古賀会長も含めて組合の代表の方からは、これからまさに中小が始まるのでそこはしっかり対応していきたいと、私からしますと決意表明をされたというふうに受け止めましたけれども、そういうことを我々としてもしっかり応援していかなきゃいけないなと思っております。

○加藤敏幸 全くそこにおきましては意見の差はないわけですから、中小企業においてもまさにベースアップができるような環境をいかにしてつくっていくかと、そういうような意味で政労使会議を今活用されているということだと思います。

  資料1の方のこれを見ていただきますと、厚労省、経団連、連合の資料も含めて14、15年度が高い数字を持っているということで、これはこれで非常に関係する皆さん方は努力をされたと思います。ただ、そこの脚注にありますように、経団連、月例賃金は、原則として東証一部上場、従業員500人以上、主要21業種大手247社が対象かつ集計可能な109社の結果と、こういうことになっておりますし、厚生労働省は、これは月例賃金につきましては、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業が対象だと、それで集計可能な314社と。

  労働組合のある企業がということは、今、組織率は約17%、18%と言われていますから、これ、5人に4人は労働組合に加入していないという、まさにほとんどの方が労働組合とは縁のない状況にある中でその方々の賃金交渉というのはどうするのかと、こういうところも含めて、連合におりましたとき賃上げ局長をやっていましたので、なかなか厳しい、正直言ってこの波及効果を上げていくことの難しさに1990年代から悩んできたわけですよ。春闘は終わったとか春闘終えんだとか随分マスコミからは言われまして、なぜ終わったのかということの最大の理由は、波及効果がほとんどない、大手クラブの賃上げでしょと、とても地方それから中小、まして零細には行き届かないと、こういうことでありました。

  ただ、そうはいいましても、たしか1990年代は、電話が掛かってきまして、中小企業の経営者ですけれども、今年は幾ら、どの程度賃上げすればよろしいでしょうかという問合せが来るんですよ。うちは組合もないし、従業員の皆さんにも一生懸命やってもらっているんですけれども、今年はどの程度賃上げすればよろしいでしょうかと経営者が直接電話で聞きに来るんですよ。そのときに、私どもは、相場としてはこの程度が大体行っていますから、その程度賃上げされたら言わば従業員の皆さん方も過不足のないことになるのではないでしょうかということで、言ってみると、交渉しない企業は経営者自身が相場ということを頭に入れながら賃上げを回答してきたというのが90年代の話でした。

  2000年代になってからは、言ってみればデフレ時代ですから、そういうことはもうほとんどなくなって、賃上げということ自体がこの世の中から消えたような、そんな雰囲気の場面で、労働組合のないところではなかなか、言わば賃金デフレという状況に陥ったということであります。

  話を本来に戻しまして、昨年の賃上げ率は全体で2.07%、連合の調査です、これが300人未満の企業では1.76%。消費者物価、昨年は2.7%の上昇でしたから、実質はこれ1%の実質賃金の低下ということであり、かつ労働組合があって比較的恵まれた企業を対象とした調査でこの数字ですから、集計に表れない小規模事業所の労働者やまた2,000万人の非正規労働者のことを考えると、5,300万雇用労働者の賃上げの実態というのは購買力を引き上げるということにはまだまだ不十分ではないかと、このように思うわけであります。

  連合さんも、3月31日の集計、去年は6,495円でしたけれども、7月1日の最終集計になりますと5,928円ということで、これは定昇も込みの平均賃上げ方式ということですけれども、言わば500円ほど下がってしまうという傾向は、なかなかこれは難しいし、これから先回答される水準というのは決して、初発の大手企業、トヨタさん始め日立、パナソニックとか、そういう有名な企業の賃上げ水準を超えるということはまずあり得ないということでありますので、大体今年の結果がほぼ見えてきたということであります。

  安倍内閣というのは、賃上げに関して歴代最も熱心な内閣であると、来年はどうするかわかりませんが、そう感じております。それは当然のことながら持続性を持った景気回復ということで、昨年10月の本会議で質問を申し上げましたように、雇用者所得を支えて、それがいわゆる個人消費をしっかりと支えていくという構造をつくらなければ経済の回復が安定化しないということは、これは当然のことであります。そこで大事なのは、やはり中小企業に働く皆さん方、そしてもっと大事なことは、地場産業、地場における賃上げ、このことを非常に大切にしていくということであります。

  そこで、中小企業の経営が、いろいろないわゆる取引上の関係で、労賃という形で決まってしまうんですよね。では、それを5,000円引き上げてということが、中小企業の経営者がそれをするということは結局その部分だけはキャッシュアウトですから負担が増えてしまうということで、そう簡単に、世間がやっているからうちもということにすぐはなかなかならない。

  そしてまた、賃上げをすると、取引業者の方から、発注して、いや、おたくそんなに余裕があるならば単価下げてもらえませんかと、こういう話があります。今年は、そういう単価を引き下げるということについても相当政労使の中でも議論されたということですので、そこ一つ評価されるところではあると思いますけれども、なかなか中小企業の経営者の置かれている立場というのは難しいということであります。また当然、賃上げをするという、経営上の議論でいけば、労働生産性の向上とかあるいは売上げの増だとか、そういうふうな部分がなければ、なかなかこれは経済的には、賃上げばかりやっていてもこれは破綻しますから、裏付けとしての労働生産性の向上なり付加価値の増大、つまり売上げが増えていくとか、そういうことが必要である。

  それから、サービス業が結構多いということでいくと、なかなかこのサービス業における労働生産性の向上だとかいうのは非常に難しい部分はあるわけですね。物づくり産業で自動車とか電気というのはある種、労働装備率を上げていくとか、結構いろいろ工夫をして一人当たりの労働生産性の向上は図れますけれども、サービス業においてそれをつくり上げていくというのはなかなか難しいと、そういう実情もあるということで、サービス業にあっては本当にどういう支援を経産省として中小企業対策としてやっていくのか、これはなかなか大臣自身もいろいろと知恵を絞られているのではないかと思っております。

  そういう問題意識に立って、中小企業支援ということで、まさに賃上げができるような環境づくりをどうしていくのかということを踏まえて、是非、大臣にこの辺りの見解あればお伺いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 多岐にわたる御質問だったわけですけれども、まず、中小企業にも、まさに大企業、特に円安でかなり利益が上がっている大企業の利益を回すということは大変大事でございまして、御指摘がありましたように、政労使におきましても、たしか昨年の暮れにそういう方向で努力してほしいということをしっかりと合意をいたしました。そして、例えばその結果、大手自動車メーカー等々につきましては、今年もある意味では改善の結果出てきたものについては下請の方に全部回すというようなことをされたと聞いておりますし、また、一次下請の会社自身も更に下の下請にその辺を広げていくような政策を取るというようなことが出てきておりまして、少し動き出したのかなという思いがいたします。また、非正規につきましても一部の企業では賃上げを実施するということでありまして、こういう波が更に広がっていかなければいけないというふうに思っております。

  一方で、サービス業ということにつきましては、なかなか大変、こうなってくると、サービス業の生産性を上げていく、また利益を増やしていくということは大変大事な政策になっておりまして、これは中小企業だけに限った話ではありませんけれども、昨日も産業競争力会議がございまして、サービス業の生産性向上に向けて、経産省が中心になるわけですけれども、各省それぞれのサービス業を持っているわけなんで、この生産性の向上に向けて力を合わせていこうということで、ある意味では第一歩を切っております。

  一方で、例えば生産性の中で、卸売、小売といったところにつきましては、大手はそこそこですけれども、やはり中小零細といったところが生産性が低い、各国に比べても低いという問題があって、この辺をどうしていくかということは地方創生といった観点からも大変大事なことだと思っております。

  先日も月刊誌を読んでおりましたら、東大指数というものがあるようでありまして、これは、いわゆる物価につきましてPOSのデータを全部各地読み込んで、いわゆるスーパー等々、生鮮食料品、スーパーで売っているものですから、食料品と衣類といったものが数字が日々出るような指数のようですけれども、昨年の4月、消費税を上げたときにはかなり上がった、消費税分以上に上がっているけれども、やはりその後、物が売れなくなったということでこの指数がまた低くなっているというようなものがあって、ああ、そうなのかなと思って読んでおりました。

  やはり、恐らく我々のようなバブル前を知っている人間からしますと、物が上がり始めるということはまた来年も上がるということだから、来年買うよりは今年の方が安いんだよという意識がある意味ではあるわけですけれども、なかなか、それを経験していない方からしますと、ともかく久しぶりに物価が上がって萎縮してしまったというのが今の状況かなと。やはり、必ず物価が上がっていくという状況を示して、そういう状況に皆さん、消費者が慣れていただくということが、恐らくサービス業、特に小売、卸といった段階でいいますと大変大事な政策でありまして、ここのところ、いわゆるコア、コアコアの辺の物価につきましても少し上がり方が少なくなっているというのは心配なことでありますけれども、この辺をしっかり政策として後押ししていかなければいけないと思っております。

○加藤敏幸 そこで、いわゆるインフレマインドを少し取り戻してということも日銀総裁も少しそういう考え方を言われていて、言えば消費行動が、もう少し、もっと言うと、気楽ということではないのですが、スムーズに前に動くようなことをつくっていくことが、今言われたことを含めて、あると思います。

  そこで、私が申し上げたいのは、例えば法人税の減税あるいは復興特別法人税の課税廃止とか、ある種インセンティブを経営者にぱっとして、したのだから賃上げぐらいしたらどうかねと、こういうふうな動きが去年もたしかあったと思います。これは、評価はいろいろ分かれるところもありますけれども、ある種非常に分かりやすいし、先ほど申し上げましたように、経営者から見ると、最初にキャッシュアウトするわけですから、その最初の賃上げをしていくときの負担感というのは大きい。それを理屈上は減税で原資があるからという言い方も、それはそれである種一歩前に出た説得性があると思います。

  ただし、例えば法人税を払っている中小企業ってどのぐらいあるんですかね。ちょっとその辺のところを少し教えていただきたいです。

○宮沢洋一経済産業大臣 たしか、私も税の担当を大臣になる前はやっておりましたので、約7割強がたしか赤字の企業だったと思います。

○加藤敏幸 ということは、7割強の中小企業の皆さんは法人税減税については当面メリットがないということですね。

  法人税減税するから賃上げをしたらどうかとか、あるいは、財務大臣が、ちょっと不適切かも分かりませんが、そんなにたくさんお金をためて、企業はどうするんですかと、守銭奴という言葉を使いましたけれども。これについては、同僚議員である柳澤光美議員が本年のいわゆる所信表明に対する質疑の中で、その言い方について、考え方は賛成だと。それは働く者の立場でいって、企業が内部留保、取りあえず内部留保でためていくということは決して経済全体にとってプラスじゃないじゃないかと。やっぱり適切に配分をしていくし、配分の中に働く人たちに対する配分もやっていくことによってそれがいわゆる個人消費を支えていくという、経済の循環をつくるという意味で賛成だという言い方で非常に勇気ある発言をされましたし、実は、言葉の使い方はともかく、考え方としては同感です。

  そこで、やはり経産省が、これから中小企業を本当に、賃上げということが発生をして、そして中小企業の皆さん方というのは地場産業が多いですから、地場における賃上げが少しでも動き出すということが、ある種これから先の経済を持続的に成長させていくときの非常に重要な視点ではないかということで、賃上げ、経営者に対する賃上げのインセンティブを政策的につくっていく必要があるのではないか。

  したがって、税制の問題もあるし、所得拡大促進税制の拡充だとか、また、あるいは雇用を増やさないことの言い訳に、これはアンケートによると、中小企業経営者は特に、人を雇えば社会保険料の事業主負担が重い、あるいは賃上げすれば連動する部分があるとか、非常にそこのところを言い訳的に使われる方も多いということです。例えば社会保険料の事業主負担をどういう形で援助、補填するかということも含めて、雇用につながる、賃金拡大につながるような政策、誘導政策ということが非常にいいのではないかという思いもありますので、この辺のところを、経産省の方、何かお考えがあればお願いします。

○高木陽介経済産業副大臣 今委員御指摘のとおり、地域において厳しい経営環境に置かれている中小企業、そして小規模事業者に賃上げの動きを広げていくためには、今言われた政策的なインセンティブ、これを付与していくことを通じて賃上げを促進、また環境整備を図ることは重要だと、このようには認識をしております。

  税制面におきまして、先ほども御指摘されたように、従業員の賃金増加を促す所得拡大促進税制について、昨年度に引き続き、平成27年度の税制改正においても要件緩和による更なる拡充が措置され、より中小企業・小規模事業者が利用しやすくなってまいりました。

  また、事業者における社会保険料の負担、これが一番大きいと思うんですけれども、雇用者としての義務でもございますし、一方でその負担の軽減は制度の根幹の変更若しくは膨大な国費の投入に直結しかねない、こういうことも考えられると思います。そういう負担の在り方については、インセンティブを働かせるというこの一点だけではなくて、制度全般の見直しの中で議論が必要だと、このようにも考えております。

  経済産業省として、小規模事業者の販路開拓を応援する小規模企業持続化補助金において、社会保険に加入している事業者が新たに従業員を雇用する場合は、補助上限額を50万円から100万円とする特例を設ける等の措置も講じております。

  こうした取組についても積極的に進めることによりまして、地域の中小企業・小規模事業者、これらを賃上げしやすい環境の整備、こういうのを努めてまいりたいと思いますが、今御指摘の社会保険料の問題、これは本当に制度全体として考えていかなければいけないと、このように考えております。

○加藤敏幸 社会保障制度については税一体改革という大きな宿題もあると思っていますから、それも視野に入れて、社会保険料をそのままディスカウントするということを主張する気はありません。長年にわたってこの社会保障体制というのを築き上げたし、先輩は先輩で払い込んでいる人もいるし、それから後輩は後輩で将来払わなければならないし、世代間の公平感だとか、これは規模間の問題だとか、それから高い賃金を取っている部長さんと新入社員との公平感をどうするかという、山のような課題意識の中で国民的合意をつくっていくということですが、これは経済産業委員会ですから厚生労働委員会とは少し違う視点からの議論をと考えております。

  そこで、一つだけ確認をしておきたいのは、対日投資促進政策ということがございます。日本再興戦略の中で、世界で一番企業が活動しやすいビジネス環境を整備すること、これはよく総理も予算委員会だとかいろんな場面で言われています。世界で一番、まあ一番がいいのか二番がということになるとまた別の議論になりますからそれはどうかと思いますけれども、より企業活動がしやすい、そしてそれが対日投資ということを促進するということは非常に重要なことだと思いますし、産業競争力強化法あるいは国家戦略特区法、薬事法、再生医療新法、そういうふうな立法措置だとか、ジェトロの対日投資相談ホットラインの設置など、いろいろ工夫をされております。

  そこで、約3年前、五重苦というふうに言われましたよね。人件費が高いとか為替が高いとか、日本の物づくり産業含めて、経営者が本当に大変なんだということを非常に主張されたということであります。世界で一番企業活動がしやすいということは、見方を変えれば、為替の問題は別にして、日本国内の経営者が何重苦だと言っているその苦しみが一つ一つ解消されていくということと似た解決策だと思います。

  一番重要なのは、日本の人件費が高いということについては、交渉のたびに、これ30年間耳たこぐらいに言われてきたことなんです。挨拶代わりに、いや日本の人件費は高い、確かに高いことは高い。しかしここ20年間ある種賃金デフレでしたから。それから、中国だとか途上国、韓国も含めて、国際的な競争相手の国のカントリーにおける賃金水準が上がってきたとかいろいろ動きがございますけれども、日本に投資するときに、日本の人件費が高いじゃないかということが対日投資の阻害要因になり得るのかと。これ、日本列島の賃金下げるからおいでよと、投資してくださいというのではやはりちょっと話の順番が違うねと、本末転倒のところもある。

  それからもう一つ、逆の見方をすれば、今政労使こぞって賃上げに努力をしています、日本国としては賃金上げるんですということを今やっていますというときに、対外投資を考えているいろんな企業が仮にあったとしたときに、日本政府は賃上げ政府なのかと、そういうところに投資するということはいかがなものかという議論が発生するかも分からない。

  したがって、整理をしてほしいというのは、人件費の問題について、やはり世界で一番活動しやすいという環境とそことは違うフェーズの問題だということならそういう発信をしていただきたい。対日投資される企業から見ても、購買力をやっぱりきちっと確保し、支えるんだと、だから日本に来ていただいても、日本国内における購買力がアップするという意味で、日本の市場、マーケットの魅力が増すという意味で、これは対日投資される企業にとってもプラスではないかと。その辺のところが、非常に安倍内閣、キャッチフレーズが上手ですから、嫌になるほどうまいところもございまして、それはそれとして効果的だけれども、そこは少し一段掘り下げた解釈ということからいくと、丁寧な説明とか必要ではないかと思いますが、この点はどうですか。

○宮沢洋一経済産業大臣 恐らく、ここ2年ちょっと、安倍内閣になってからの動きだけをまず申し上げますと、結局、円安にこれだけ振れた結果、ドルベースでの人件費というものは格段に低くなってきている、2%、3%の賃上げを大きくのみ込むようなベースで下がってきていると、こういうことだろうと思っております。そして、やはり日本の人件費が高いと言われてきたことも確かですけれども、ここ数年間で特に中国を中心に人件費が上がってきているという中で、決して相対的に今、日本の人件費が高いということではないと思っております。

  そして、五重苦とか六重苦と言われていたときも、私の記憶ですと、人件費が高いというよりは、人件費、労働関係でいいますと、これは民主党からは怒られる話ですけれども、外国企業からは、労働の特に解雇等々という制約問題があるということは外国企業からは指摘されてきてと、こういう話なんだろうと思っております。

  そして、今後もちろん為替というものは動くわけですから、常にドルベースで相対的に相当低いということでは恐らくないわけでありまして、恐らく、労働のコストということからしますと、やはり今、日本の労働者、労働力というものは大変高い質だと評価をされておりますので、この質を更に高めていくという努力がこれから最も大事なこと、そういうことによって日本の、まあほかの要素は対日投資の促進にありますけれども、やはりそういうことがコスト、労働のコストといった意味ではやっていかなければいけないことだろうと思っております。

○加藤敏幸 人件費が高いというワンパターンを乗り越えていくということで、スイスははるかに日本より高いですから、その代わり物価も高い。これは賃金と物価の関係はいろいろなモデルがあるということですが。

  それから、今大臣、日本の労働力の質ということを言われましたけれども、賃金にはある種労働力に対する投資という側面があります。賃金水準が低い非正規の皆さん方は自分の能力を高めることにお金を使うということには、なかなかならないわけであります。昔はインハウスという形で企業内での教育訓練に相当お金を掛けて、早い話、学校では大して勉強しなくてもいいと、入社さえしていただいたらいっぱしのエンジニアに育成しますという企業もたくさんありました。しかし、今は随分それは薄れてきて、即戦力を期待する企業は、教育に対しても相当実戦力を求めるため、インハウスでの教育訓練投資というのはここ20年ずうっと落ちてきているということでございます。国家百年の計とは言いませんけれども、ある程度賃金水準が高いということが労働の質を支えていくことの根幹となります。ここ20年間、賃金デフレということで安いことを求めたという時代であり、それは隣に中国という大変巨大な、デフレのブラックホールと言った人がおられますけれども、相当にきつい、そういう固まりがある中で、日本は賃金が下方にずり落ちるような傾向があったわけです。これから労働力が減っていくという中にあって、女性の就労率も上げていただくとかいろいろ策はありますけれども、一人当たりの労働の質を高めていくということに集約するような政策を是非お願いしたいと思います。

  最後に、労使交渉に政府がここまで応援をするということはある種めったにないことであるし、いつまでもやるということでもないと思います。

  それで、労使交渉というのは、これはマーケットを背景に自立的な交渉をやるということが建前であります。なぜこのことを申し上げるかというと、恐らく、生産労働人口が減少していくという流れの中で復興事業を開始すると、熟練工が払底をして労賃が上がっていくとかそういうことが局地的に起こるということも含めて、労働力をどう確保するかというフェーズに何年か後入ってくると。

  政府の政策がよろしきを得れば、経済は比較的緩やかに回復していくということになれば、当然のことながら人手の問題という、人材確保というところに大きな焦点が移ってくると、これは人件費の高騰要因になる。政府が旗を振らなくてもどんどん賃上げということについて強い動きが出てくるとなると、今度はやはりコストプッシュ型のインフレというリスクもいずれどこかで遭遇する可能性がある。

  我が国が一番賃上げしたのは、いつでしたか、1974年、33%でしたね。これは、列島改造ブームから第四次中東戦争、それから石油が来なくなってという一連の流れの中で33%の賃上げ。これはもう大変なことだということで、その前の年は20%でしたから。それで、当時は福田総理、赳夫さんの時代だったかとおもいますが、そのときの狂乱物価というのを福田赳夫さんが名前を付けられたというようなことでございました。

  実は、このときに、こういう物価上昇、そしてそれが後追い賃金交渉、賃上げ、それがまた物価上昇の原因になるという、こういうことでは国民生活は駄目ではないかということで、労働界は金属労協を中心にいわゆる経済整合性論ということで、これは経済成長に見合った賃上げにしようではないかと。このスパイラルなコストプッシュ型のインフレをどこかで断ち切らないといけない。そのことは誰が最初に切るんだといったときに、労働界が切ろうということで、実は、これはもう世界の労働組合の歴史の中でも唯一です、労働組合が賃上げの抑制をしたと。日経連が当然それに合わせて賃上げガイドラインということで、1975年が15%以下、76年以降は一桁台と。見事にこれは、まあ労使が合意していますから、それに収れんをしていくということで、ハイパーインフレだとかいうその事態を日本は回避することができたということがあるわけです。

  このとき政府は、賃上げ勘弁してくれと、賃上げ抑制と。普通は賃上げ抑制の方に政府は働きかけをするわけですね。

  そうすると、一々交渉事に政府がああだこうだと、手取り足取りということをいつまでもやるということは決して健全な労使関係でもないし政労使関係でもないと思うわけであります。最初のこの慣性をつくるために、大きな石を動かすために、みんなでこぞって力を出してやろうというこのステージはステージで結構ですけれども、やはり経済産業省の立場としては、ここら辺りに一定の、ある種の見識を持って、距離感を持って対応すべきところはすべきということも必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○宮沢洋一経済産業大臣 1974年というのは大変よく覚えておりまして、私自身が74年の4月に大蔵省に入りました。ちょうどその前に、73年にオイルショックがあって、あのとてつもない物価上昇と、それこそトイレットペーパーがなくなるというようなものがあった結果、たしか4月に入ったときは57,000円の月給だったのが、年末に人事院勧告の結果、70,000円を超える月給になった記憶がございます。

  そういう中で、今の状況というものはやはりある意味で決して正常ではないことは確かだろうと思っております。ただ、やはりしっかりとデフレを克服していかなければいけない。成長戦略の軌道に乗っけていかなければいけない。

  さらに、先ほど労働者の質という話をさせていただきましたけれども、私、慶応大学の清家さんとよくお話をするんですけれども、清家さんも、日本の労働力の質というのは大変高い、それも世界から評価されている、そしてその一番の要因はOJTだと、オン・ザ・ジョブ・トレーニングが一番効いていると、こういうことを言っております。私もそのとおりだと思っておりまして、OJTというものが減ってきているということは実は大変危惧をしておりまして、恐らくOJTはある意味では賃金、人件費に入ってくるんだろうと思います。外部委託するとそれは委託費になるわけですけれども。しかし、やはりそういった意味でも賃金を上げるということは今大変大事なことだと思っております。

  ただ、そうした意味で、決して、我々がこれだけ口を挟むというのは正常でないということはよく分かっておりまして、ただ、やはり我々がともかくやらなければいけないことは、賃上げができる環境をまさに経済成長などでどうやってつくっていくかということに最大限力を注いでいかなければいけないと考えております。

○加藤敏幸 本日は金融庁にお越しいただいていますので、中小企業政策の資金繰りの問題について金融庁にお伺いしたいと思います。

  資料にあるように、中小企業金融円滑化法の期限到来に当たって講ずる総合的な対策ということで、これは金融庁が作られた資料をお持ちしました。

  この円滑化法の評価は二つあると思います。非常に時宜を得て、いや、助かった、よく助けたということと、助ける必要のないものまで助けて、それは淘汰を遅らせたのではないかという厳しい意見も含めてあると思います。

  これを、円滑化法を終えるに当たって、金融庁としてこういうふうにいろいろやるよということを言われたので、ここのところを少し簡潔に総括していただければと思います。

○西田直樹金融庁総務企画局審議官 お答えいたします。

  先生御案内のとおり、平成25年の3月末に、円滑化法の期限到来に当たりまして、中小企業庁さんと連携いたしまして、ここにありますこの総合的な対策というのを講じたところでございます。

  金融庁では、その一環として監督指針あるいは検査マニュアルというものを改正いたしまして、金融機関の役割ということで、一つは借り手である中小企業等の状況をきめ細かく把握して、円滑な資金供給や貸付条件の変更に努めること、もう一つは、コンサルティング機能をしっかりと発揮することを通じて、中小企業等の経営改善に向けた取組というのを支援するということを明記いたしまして、金融機関の取組というものを促してきたところであります。

  そうした中、例えば貸付条件の変更につきましては、中小企業からの申込みに対する実行の割合を見ますと、円滑化法の期限到来後も九割を超える水準で推移しております。一方、中小企業の経営改善支援あるいは事業再生支援につきましては、一定程度の進捗は見られるわけですけれども、やはり今後、その取組というものを更に一段と、一層強く強化していくことが重要ではないかと考えています。

  金融庁といたしましても、中小企業等の経営改善、あるいは生産性向上、あるいは経営力の強化の支援というのは大変重要な課題だと認識しておりまして、今後とも引き続き金融機関がその金融仲介機能というものを十分に発揮しまして、いろんな、この資料にもありますように、外部支援機関とも連携を図りながら、また中小企業庁さんがやられている中小企業支援施策も活用しながら経営改善支援というものに積極的に取り組むよう促していきたいと考えているところでございます。

○加藤敏幸 そろそろ時間でございますし、また次回に機会が得られるということもございますので、今日の質問はこれで終わりたいと思います。

  ありがとうございました。