国会質問

第189回通常国会 経済産業委員会(2015年6月18日)

発明者のインセンティブ維持への配慮、中小企業における特許戦略への影響、不正競争防止法改正案の実効性などについて確認

  6月18日、経済産業委員会において、「特許法などの一部を改正する法律案」「不正競争防止法の一部を改正する法律案」に対する審議が行われ、80分にわたり宮沢経済産業大臣および伊藤特許庁長官をはじめとする政府関係者に質問しました。

  質問では、「職務発明の法人帰属」という政策転換の意図、発明者のインセンティブ維持への配慮、中小企業における特許戦略への影響、営業秘密侵害に関わる罰金額引き上げの犯罪抑止効果 などについて説明・見解を求めました。

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○加藤敏幸 おはようございます。民主党・新緑風会の加藤敏幸でございます。質問に立つ機会が多くなりました。本日もいろいろな視点から質問をしていきたいと思います。

  会期末も押し迫りまして、そういう状況下で、委員会運営につきましてもいろいろと御相談しながら、国会での議論の充実度を高めていくと、こういう視点で各委員、皆様方もいろいろと御質問があろうかと思います。若干重複していくこともあろうかと思いますが、それぞれの立場、視点、それぞれ少しずつ違うと思いますので、御答弁の方もよろしくお願いをしたいと思います。

  知財戦略だとか特許、これを議論し始めると大変いろんな要素があって簡単には終わらない、相当複雑になってくると。いろんな意味で、例えばTPP含めていろいろ議論が行われていることも確かですので、これはこれとして、この経産委員会としても引き続きいろんな場面で議論が必要ではないのかと、こういうふうなことを考えております。

  その中で、本日は、議題となっております主要なテーマの中の職務発明の帰属ということについて、まず冒頭御質問したいと思います。

  職務発明におきまして企業側、従業員側のバランスの取れた利害調整ということにつきましては、2004年の特許法改正において一定の法改正が行われ、それなりの到達点にあったのではないかと、このように理解をしてきております。従業員側、使用者側、この両当事者の自主的な取組という手続重視の措置がとられまして、また対価の算出に関する技術もそれぞれ各企業レベルにおいても向上してきており、職務発明の対価に関する訴訟は余り起こっていないというのも現実であります。ただ、起こっていないのは制度がよく理解されていないからだとかいろんな見方があることも事実です。このような状況の下で、産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の審議経過を得て今回の特許の法人帰属という政策展開がなされているわけであります。ただ、この経過を見ますと、経営側の問題意識といいましょうか、こちらの方が相当高く、強く打ち出されているという印象が強いと思っております。

  小委員会の報告においては、経営の皆さん方は、商品開発や発明に関する研究活動に多くの従業員が関わり、また周辺の特許の活用など、発明のプロセスが複雑化し、対価の算出コストが増しているんだと。また、大学研究機関などとの共同研究が増える中で、権利の承継手続、これも複雑化していることなどを挙げておられますけれども、しかし本音を言えば、加えて、訴訟リスクを軽減あるいは報奨金などの対価このものをある程度射程に入れたいというんでしょうか、そういうふうな意図があることも事実だと思います。また、当然、対価請求権の撤廃という主張点も委員の中には強くあったというふうにも聞いております。

  そこで、政府としてはこれら産業界の意見をどのように受け止められているのか、また法人帰属への方向転換について、立法事実についてどのように説明されるのか、また多くの研究者や技術者の皆さん方は今回の法改正に重大関心を持っておりますので、当事者が納得いくような、そういう説明はどうなのかということについてまずお伺いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 加藤委員御指摘のとおり、平成16年、2004年の特許法の改正以降、職務発明の対価をめぐる訴訟の件数は減少いたしました。予見可能性というのは一定程度高まったものということを認識をしております。

  一方で、今産業界の意見としておっしゃいましたけれども、グローバル化が更に進むとか、更に製品の高度化、複雑化が進むとか、また共同研究等々といったようなものがたくさん出てきているといった意味でいろいろな変化があったことも事実であります。

  そして、こういうことを背景にしまして、産業構造審議会においていろんな議論が行われてまいりました。そして、おっしゃるように、産業界の生の声というのは、職務発明については自分の権利としたい、そして対価についてはそんなに縛られたくないというのが生の声であったわけでありますけれども、私どもといたしましては、やはり二つの点が大事だと思っておりまして、一つは、これは産業界の立場からしても権利の帰属が不安定にならないようにするという配慮はやはり必要だろうというふうに思っております。一方で、もう一点としまして、やはり発明のインセンティブといったものが発明者側にあるということが大変大事なことだろうというふうに思っております。

  諸外国におきましてはいろんな例があって、アメリカにおきましては、まさにアメリカ社会らしく、いわゆる職務発明制度の権利については発明者にあるけれども後は契約でやってくれということ、インセンティブについても何ら法的な制約がない、まさに契約で発明者と企業側が対等の立場でしっかりやっていくと、こういうのがアメリカでございますが、一方で、イギリス、フランス、中国などにおきましては、その職務発明の特許における権利は初めから企業に帰属する、一方で当然のことながらインセンティブについても法定化していると、こういう状況が世界にあるわけですけれども、日本の、まあ結論といたしましては、やはり職務発明の対価が最初から企業にあるということは、例えば中小企業等々を考えても、なかなか日本の実情には沿わない。しかし、ある意味では、働く側も納得した上で契約において特許を企業側に原始帰属させるという合意があるのであれば、それはそれで認められる。

  一方で、インセンティブにつきまして、やはり大変大事なものでございますから、今回は、これまでの2004年の改正に加えましてインセンティブの範囲を少し広くするとともに、インセンティブを決める手続についてガイドラインというものを作ることを法定させていただきまして、発明者側、従業員側も納得できる形でインセンティブを決めていただく手続を取っていただくということを今回法案の中に盛り込ませていただいたところであります。

○加藤敏幸 実は、いわゆる発明に関わる従業員という人たちを束ねて、意見を聞いてという場面はなかなか難しいんですよね、そういう機会は少ないんです。第一、特許そのものに関わっているという人たちも少ない。雇用労働者、ざっと言って5千万のうちの何万人がこのことに関わっているのかというと極めて少数派で、年金とか医療保険とかだと、身近な自分のことだと皆さん盛り上がりますがね。しかし、企業の中にあっても、正直言って製造部門の皆さん方にしてみると、あんまり、もう自分のことではない遠い世界の話というか、優秀な人たちの話だなと、こういうことで、なかなかそこが、直接、当該の従業員、発明に関わる従業員の意見をどう聴取するかということは難しい手続だと思うんですよ。

  そういうことで、例えば、そんな部分も含めて組織化している連合さんの御意見とかをヒアリングする中で、最終的にいろいろ意見はありますけれども、まあ妥当ではないかという御判断もあったというふうには聞いているわけです。

  そこで、そうは言っても、その立法事実は何なんだとか、いろんなことをしていくと結構とがった議論も中にはあって、最終的にそういう総合判断をされているということでいったときに、私たちは、そのとがった部分も含めて、あるいは先ほど質問の中でも言われていました、いろいろ課題があるということを見据えて、そういうところをきちっと解明をすべきだと。この委員会で最後までガイドラインが明らかになるわけじゃないんですから、それを含めてどこまで議論が詰まっていくのかということ、非常に大事なことだと思っています。

  それと、もう一つ付け加えますと、この先ガイドライン等の質問をいたしますけれども、いずれにせよ、使用者側に極めて偏った制度も、それから従業員、発明を行う従業員の方に偏った方式も、いずれにしてもマイナスがあるということなんです。企業側に偏ったことになると、やっぱりペイ、払っていくものは最小化したいということになると思うんです、そうなると従業員側はもうやっていられない、程々でいいとは言いませんがね、意欲が減退することもある。では、発明者の権利が強固に確立されるとなると、会社としても先々に何億と言われてもしようがないから、設備投資だとか研究開発投資の部分を小さくしていこうということになる。

  そうなると共に良くないということから、ベストなところはどこなのかということをあくまでも探っていくと。それの答えというのは、あくまで企業ごとでいわゆるどういうインセンティブ体系をつくっていくかと。それが関係する人たちにどれだけ理解をされて、そのことがいわゆる企業の中における知財あるいは発明、このことが活性化するということにつながる方法でなければならないという、そういうテーマだと思っていますので、これから議論を進めていきたいと思います。

  さて、訴訟リスクという課題についてです。これもずっといろいろ議論をされてきました。職務発明規程などを定めておけば、社員が行った発明は会社に帰属するということであれば、そこで決着が付くということです。しかし、そこで決着が付かないということは、ある種相当ではない、不満だ、不足だと本人は思っている。あるいは後発的に発生する利益について、私の分け前を何とかならないのかと。そういう争いが出てくると、そのこと自体は企業サイドが言われるとおり、そんな訴訟リスク、訴訟の手間暇掛けてできない、そんな暇じゃないんだと。そんな暇があるならもっとお客さん開拓したいという、それも正しい経営の判断なんで何とかしたいなということだと思うんです。

  それで、そういう問題の根本的対応策について、これは特許庁ということよりも経済産業省の立場で、産業立国あるいは我が国の産業を発展させていくということからいくと、事業に貢献した技術者を正当に評価し処遇する仕組みについて、もう少し日本の企業社会のコンセンサスを進めてほしいと思うんです。

  私も、まあ出来の悪いエンジニアでしたから申し上げますけれども、やっぱり余り大事にされていないねと。要するに給料は安いなと。もうちょっとエンジニア大事にしてよというのは正直言って共感をしているし、昨日代表質問された礒崎さんも同じような思いがあったというふうに思います。別に被害者意識を持っているということじゃなくて。

  なぜこういうことになってくるのかというと、例えば、大学の学部でどこが人気があるのかといったら医学部なんですよ。それは、その後の稼ぎというものも大きな、経済的な所得が大きな影響を与えていると思うんですよ。業界ごとで、例えばマスコミ業界の人たちが一体どういう処遇を受けているかとか、あるいは金融界はどうかとか。それはもちろん雇用の安定だとか総合的な視点をもって最終判断はされますけれども、やはりそこのところを、この技術者だとか発明に関わる人たちだとかと言われている職能の方々を社会的にどう位置付けていくかということです。正直言って、縁の下の力持ち、御苦労さんと、お言葉でありがとうということではないと思うんです。だから、そこのところをきちっと対応していくことが、逆に言うと知財力を高めていくということにもつながると。誰も全員のことということではないんですけれども、処遇について今の日本の企業社会の風土の中に反省すべきこともあるし、改善してほしいと思います。

  正直言って、ちょっとけちけちしたところがあると。この辺のところを、大臣のお考えもお伺いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 なかなかお答えしにくい御質問だったわけですけれども、訴訟が少ない日本は社会でありますけれども、一方で2004年以前においては訴訟が起きたりというようなことがある。一方で、企業の中ということになりますと、これは恐らく痛しかゆしじゃないかと。ガイドライン作りましても基本的には企業の中で労使間で決めていただくということになるわけですが、労を全体として考えると、一部の人だけに余りにも大きな利益が出るような合意というのは、ほかの方からすると俺たちも少しは汗かいているのにみたいな話が恐らくあって、一方で研究された方、まさにダイオードなどを研究された方からすれば自分の功績が大変大きい、だからかなりというふうなところで、会社で働いている従業員の中でのバランスをどう取るかみたいな話も恐らく出てくるし、また、研究者と言われる方だけではなくて、現場でもいろんな新しいアイデアが出て特許ということもあって、恐らく幅広い方にもいろいろ参加していただかなければいけないということで、これはまさにガイドラインを作りますが、各社においていろんなことを考えていただいて、またそういう成功例みたいなものを我々はほかの会社にもお知らせするというようなことをやっていかなければいけないんだろうと思っております。

  一方で、かつて、まさにバブルの前からバブルの頃と言っていいと思いますけれども、やはり圧倒的に金融関係とか商社というものの所得が高くてメーカーが低い、したがって、メーカーでアメリカに留学行った人がかなりの数、金融関係の同期の人の話を聞いて金融関係に転職してしまうなんということが随分あったわけですけれども、ここのところかなりメーカーの方も待遇が良くなってきているということは私は大変すばらしいことだと思っておりますし、また一方で、出過ぎたまねかもしれませんけれども、政労使というようなところで、ここ二年ほど、ともかく会社も利益を上げてもらった上でそれをしっかりと従業員に還元すべきだということを働きかけてきているということも少し一助になるのかなというふうに思っております。

  そして、今年の1月には関係省庁と業界団体トップなどで構成する技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議というものを開きまして、そこにおきましても、情報漏えいの予防策として、スキルのある従業員を能力主義、成果主義に基づき適正に評価する人事制度を構築し処遇するということの必要性について合意をしたところであります。

  なかなかこれすぐにできる話ではないと思いますけれども、従業員間のバランスといったものも必要な中で、やはりそういう優秀な方を、特に技術系の方についてしっかりと正当な評価を行うということが、我が国社会にとっても、恐らくその会社自身にとっても大変大事なことだということを我々としてもやはりしっかりと企業の方にもお話をしていきたいと思っております。

○加藤敏幸 このテーマについては、今後とも経産省、経産大臣の御活躍を期待したいと思います。少し時間が掛かると思いますけれども、引き続きよろしくお願いします。

  さて、そこで、インセンティブって何なんだと、この課題について少し議論をしていきたいと思います。

  先ほど大臣も言われましたように、一人でやっているんじゃないよと、みんなの協力があってのことだという辺りは日本の企業はうまくできているんです。これは私も経験しましたが、社長表彰受けたら必ずペーパーウエートが私のような管理部門まで配られるんです。自分は何に貢献したかなと思っていると、上司から技術管理でよくやってくれたなとか言われたりして。そういう文化、これは非常に大事なことだと思うんです。チームを大事にするとか、あるいはすり合わせの技術体系の中でお互いに知恵を出し合ったり、あるいは改善活動、小集団、パートさんまで提案をしてくるとかいうことをもって物づくりの総合力というのは支えられてきたと。そういう視点から、あいつだけ随分もらっていいなとか、そういう怨嗟の的になるような状況はできるだけつくりたくないということで、そういう意味でインセンティブの分散化、インセンティブの広い範囲の配分ということで、企業の中における一つのモラルとモラールを維持してきたということも事実なんです。

  そこで、インセンティブをどう考えていくのかといったときに、やはり対価として、そこは大きいと思うんです。企業の知財担当の方々のアンケートからも、幾ら払うかということについては非常に役割が大きいと。今回、インセンティブ等、たしかストックオプションとか海外留学だとかいうことも例示をされておられましたが、やはりインセンティブをどう捉えるのかということは、業種、業界、それから個別企業による多様性の中で、どう考えていくかというのはそれぞれ企業が考えるべきだと。そのとおりですけれども、まあ言っても、相場を大事にする日本企業ですから、どういう感じなのかという、相場的、水準的な議論ということも大きいと思うんですよね。

  例えば電機業界でいうと、日立さんはあれだけもらっているのにうちは低いんじゃないかと。これ、大体大学のゼミが全部分散していきますから、大体同窓会したときにもめたりするので、できるだけそういう話はしないと。出張旅費の精算に至っても、おまえのところ随分何か優しいねとか、こちらは実費だけとか。

  意外とそういう部分で不満が醸成されるという部分があって、産構審でやると言われていますけれども、意外とこれは難解な仕事だなと、直感的になかなか難しいよと。だから、手続だけの話ならともかく、今言った相場的な部分の水準を考えていくと、なかなか難しいこともある。

  そして、加えて、退職者というものをどう扱うのと。意外と特許の果実というのは、例えば何年か先ということが多いんですよね。産総研に行って聞きますと、十年間は死の谷だと、ほとんど何もない。ところが、十年過ぎてきて社会的にその技術に着目されると、それでうまくいきそうだなといったら期限が切れるとか、そういうふうなこともありますけれども、退職者自身をどういうふうに捉えるのか。それから、クローズド戦略を取ったときに、そのことの発明に関わった人をどうするのかと。

  それから、最後にもう一つ、チームではない個人に依存するケースがあるんです。チームでやっているからうまくいったということもありますけれども、変わり者が事態を打開するというケースも多々ありましたし、私も目撃してきました。よくあいつがおってくれたなと、早く辞めていたらちょっとどうにもならなかったと。

  この種の話は、壁にぶち当たると結構どうにもならなくなる。人海戦術では無理と。幾ら人手を掛けても解決できないということは、例えばソフトウエアも含めてあるんです。それを、変わり者とは言いませんけれども、そういう人たちがある瞬間、ドリルで穴を空けたようなことをやってくれる、正直言って彼の功績ということというのは結構大きいケースも、まあ1%ぐらい、2%ぐらいあるような、経験的に言って。

  そのことも含めて、ちゃんとこのインセンティブを考えていく仕組みを、そういう幅を持っておかないと難しいのかなという気がしますけれども、この辺、長官、いかがですか。

○伊藤仁特許庁長官 インセンティブのガイドラインの設計の仕方でございます。

  この特許法案では、付与の義務付け、発明者との協議あるいは意見聴取などの手続を中心にしたガイドラインを法定化するということを規定しているわけでございますけれども、委員御指摘のとおり、実際には個別に、個々の企業によってそのインセンティブの設計の仕方も、これまでも違っておりますし、技術あるいは見ているマーケットによってそこも大きく違ってくる部分があるかと思います。

  したがいまして、そこの多様性といいますか、各企業の自主性といったようなものをできるだけ引き出す必要があるかと思っています。

  他方で、さはさりながら、ほかはどういうものがあるのかということについての情報は、これは半分企業秘密みたいな部分もあるものですから、なかなか公開されていない企業の方が多数でございますが、今後、中小企業などにおいて普及していくということも考えますと、どういう工夫をいろんな企業がされているのかといった事例についてできるだけ材料を集めさせていただいて、それも類型化をするような形で、こういう場合にはこういう形で合理性があると、こういうようなことをお示しして、それをガイドラインで実際にそれに沿って作る場合には、職務発明規程を作る場合には参考にしていただくというような方法が一番ある意味では必要なのではないかなと思っておりまして、この事例集あるいは情報提供といったようなことの中で様々な、委員御指摘のようなチームでやる場合、あるいは個人でやる場合、あるいは退職者について企業によってどういう対応をされているのか、まとめて最後辞められるときにお払いするケースもありますし、一定期間様子を見ながら報奨金のようなものを払っているケースもあるというふうに承知しておりますけれども、これも多分それぞれの製品なり技術の特性に応じて一番いいやり方を設計されているはずだと思っておりますので、そういった事例を調査しながらやっていくことが必要だと思っています。

  いずれにしても、法案が成立いたしますと、産業界、労働界それから学識経験者から構成される産構審できちっと意見を聞いてやりますので、大企業だけでなくて、中小企業あるいは大学のような取組についてもその中で視野に入れて、実態に対応したようなものを作っていきたいというふうに考えておるところでございます。

○加藤敏幸 それで、長官、いつ頃までに大体このまとめを作られようとしているのか、ここちょっと言っていなかったんですけれども。

○伊藤仁特許庁長官 法律におきましても一年以内に施行するということになっておりますので、施行してすぐにこのガイドラインがまとまるように、この法律が成立していただきましたらば早速にも検討を始めさせていただいて、法律施行後、遅滞なくこのガイドラインが公表できるような形で検討を進めていきたいというふうに思っております。

○加藤敏幸 精力的に、これはガイドラインを早く明らかにしていくということも大事じゃないかなと思います。

  さて、四点目といたしまして、このガイドライン策定における参加ですよね。先ほど法的拘束力につきましては答弁がございましたので、もうそれは、裁判所の判断にも影響を与えるというし、むしろそのことで整理が付いていくということで、この場で明快にどうだこうだということではありませんけれども、立法の意思、考え方もそうあってほしいということで、紛争防止という意味で一つ位置付けが明らかなのではないかと。

  これ、職務発明の扱いというのは労使間課題だと思うんです。このときの労というのは、労働組合という組織化されたということでなく、いわゆる従業員たる身分の人たちの集合体と使用者との関係であると。

  そこで三点確認させていただきたいのですが、第一は、このガイドラインを産構審でということですから、このときの労働者代表の参加が保証されるべきではないかということであります。労働法制は、これは先進国においては三者構成で議論をしていくというのがスタンダードだということであります。ただ、産構審はそういう理屈でつくられた審議会ではございませんけれども、この労働者、従業者を代表する者をどのように扱っていくのかという点が第一。

  二つ目は、企業内における、法人内における契約や勤務規則等についてということでございますけれども、残念ながら労働組合の組織率が20%を切っているということでございますので、80%余の企業において労使が対等の立場でこの議論ができるのか。言わば労働協約、就業規則を労使がきちっと議論できているところは20%に届かないという状況の中で、8割を超える部分についてどのように考えていかれるのか。

  そして、これに関連しますけれども、第三に、使用者側と従業員代表とが締結する、労働関係法は特に多いんですけれども、要請されておりますいろんなことがありますが、従業員代表を選定していくプロセスが結構問題が起こっていると。例えばよく見ると総務部長が代表者になっていたりと、これは古典的なケースですけれども、そこのところは本当に、真に従業員を代表するという機能を持っているのか、現実的なのかということもありますので、この辺のところを、三点にわたって見解をお願いしたいと思います。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  まず、ガイドライン策定に当たっての労働者代表の参加の件でございますけれども、法律でも産業構造審議会の意見を聴いてガイドラインを策定し公表するということになってございます。

  具体的な検討の場としては、今回の制度の議論もしていただきました産業構造審議会の知的財産分科会の下にある小委員会を想定しておりますが、現在の委員構成においても、産業界の代表に加えまして労働組合の代表者、それから労働法関係の学者、それから大学等の研究者の方にも複数参加していただいております。ガイドラインの検討、審議に当たっては、こうしたバランスに十分配慮しまして、加えて現場の労働者とかあるいは研究に従事されている方の意見をしっかりと伺っていきたいというふうに考えております。

  それから、御指摘いただきました企業の中の従業員というものの代表性という点におきまして、労働組合の組織率が低いとか、あるいは誰がそれを代表して議論するのかといったような実態があることを踏まえて、効果的な発明のインセンティブが決定されるような協議とかあるいは意見聴取の適正な在り方といったようなものをガイドラインの策定に当たっては十分に配慮して検討していきたいというふうに考えております。

以上です。

○加藤敏幸 次に、派遣労働者など社外研究者の扱いについてです。私の同級生はほとんどリタイアしているので、社長をやっている人と私だけがまだ仕事をしているんですが、話をすると職務上特許を扱った人が多いんです。

  それで、いろいろ聞きましたけれども、一つ指摘されたのは、従業員だけじゃないよ、社員だけがやっているんじゃないんですと、結構専門的な派遣労働者が参加してくれている場合もあるんですよと。これは派遣の中でも専門的な、派遣法の元々の一丁目一番地ですから、専門性のある方がやっぱり来ておられますと。これはバイオもそうなんですよね、バイオとかそういったものを含めて。そういう人たちが関わったときに、社員以外の参加者の位置付けをどういうしていくのか。

  と同時に、請負の方もおられると。請負の方は指揮命令下に置いてはいけないし、パーテーションをしてとかそういうふうな、これは労働関係の法の要請ですけれども。しかし、現実、ものを開発していくというプロセスで、ここのパーツは、この部分、ユニットについてはA社さんにその後の製造もお願いするので、そこに係る技術の人に来ていただき会議に参加していただく、そこで打合せをするということも現実的にはそれは多々あるんです。そういう場面においてそことの関係もどうするのかと。製品そのものはほとんどそちらの方のAという企業での製造工場で、製造現場で作っていくというプロセスの中で作り込まれていく、そのプロセスで発生した発明ということもこれは大いにあり得るわけだということを含めて、そういう関係をどのように整理をされていくのか。

  大学との共同研究などにおいては、結構これは最初に契約事項として明定いたしますので、ここのところは余りないんですけれども、先ほど言ったように、ある種、種々の関係、力関係が、使用者と従業者という関係とむしろ違った意味で、古典的に言えば親会社、子会社とかそういうふうな関係がつくられている場面での発明というものをどういうふうに考えていかれるのかということについて、長官、いかがでしょうか。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  派遣労働者あるいは請負労働者といった関係で実質的に企業の中で発明に係る業務をしているといった場合に、その派遣先で言わば普通の従業者等と同じ扱いにするかどうかというところは、いろんなケースがあるかと思います。これについて、実態を勘案して判断されなければいけないということだと思っておりますので、一律にルールとして決めるというのは難しいと思っておりますが、他方で、委員御指摘のとおり、各企業において派遣労働者と、あるいは派遣元企業との間で、関係者の間で一定の何かの取決めをあらかじめ結んだ上で、職務発明の取扱いということも明確にしていくことが必要だろうというふうには考えております。

  したがいまして、今後検討しますガイドラインの中においても、産構審の意見を聞きながら、こういった派遣のような形で職務発明をする場合にどういった扱いをするべきかといったような点についても記載をしていきたいというふうに考えております。

○加藤敏幸 なかなか難しい課題で、簡単にうまくまとめられるかどうかについては余り楽観はしていないんですけれども、しかし、そういう視点からの議論も大いにしてもらって、問題点を惹起していただきたいと、こんなふうにも思います。

  次に、中小企業における特許対策ということで、これは宮本委員の質問と重複する部分がありますので、端的に、中小企業の知的財産戦略をどのように支援していくかということだと思うんですよね。その点だけに限って啓発活動をしていく、知財支援センター窓口等で現実的にやっていくということで、これはこういうことなんですけれども、啓発は大事だと政務官の方からお答えがあって、それもそのとおりだなと思います。

  ただ、そういうことで中小企業と特許と知財ということが本当に前に進むのか、あるいはどういうふうに進めていくのか、これは業種によって相当差がありますけれども、本当にそれをしなければならないということなのか。使用者帰属にならなかった場合は社員に権利が帰属するということで、企業側は発明者への対価の支払を避けることができるという、これも一つの解決策ではありますけれども、ただ、中小企業の知的財産戦略という視点から、やっぱり今特許庁として何かお考えがあるのか。先ほど政務官からお話をしていただいたという当面の政策以外で、長期的にどのように考えておられるのか、あればお願いします。

○伊藤仁特許庁長官 今回、中小企業団体の方からも一律に法人帰属にするということについての混乱についての指摘がございましたので、言わば選択できるような形にしたわけでございますけれども、もちろんその中で、個々の企業の判断の中で決めていくべきものだとは思いますが、やはり職務発明規程を整備することで、企業の中でどういう場合にはインセンティブが出るのかということの透明性が高まりますので、小さな企業であったとしても、それによって従業員の方がどういったことを提案していったらいいんだろうかということに対する意欲が高まることは当然あると思っております。

  したがって、イノベーションを進めていく、中小企業の活力をイノベーションにつなげていくという点からも、この職務発明が現在2割程度しか中小企業において普及されていないという数字は、決して高い数字ではないと思っておりまして、これを是非引き上げていくべきだろうというふうに考えております。

  これは時間は掛かるかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたガイドラインなどにおいて、こういった事例で、中小企業においても職務発明規程を設けて成功している企業が複数ございますので、そういった事例なども公にしながら、先ほど政務官から御説明させていただきました具体的な個別の支援、その手前で全国規模のような説明会をして、まずそういったことの重要性について気付いていただく、啓発させていただくといったようなことをまずしながら、これはやっぱり大事だというふうに気付いていただいた企業には専門家なりを派遣させていただいて、具体的な作り方を御支援するといったような形をしながら拡大していくということが我々としても必要だろうというふうに考えているところでございます。

○加藤敏幸 大企業は、まあ大企業と一くくりにしますけれども、この問題は随分現実にやってきたんですよ。だから、例えば相場、出願一件につき2万円ぐらいなものなんですわ、ざっと言って。その後、それぞれ算式があってというふうなこととか、結構苦労しながらやってきたわけで、ただ、中小企業については結構未開拓な分野だと思っているんです。

  今言われた対策は、政務官の答弁も含めて、それは是としてしっかりやっていただきたいということと、視点的に言えば、もうちょっとレベルとかパワーを二、三倍にするとかいう意味での取組だとか対策がないと、中小企業における知財というものをこれは国の力として、もっと言えば成長戦略として、グローバリゼーションの中でどうやってという、これは非常に産業政策的にも大きいんですよね。

  中小企業政策について随分いろいろ議論してきましたけれども、知財という視点から、ただ、中小企業にしてみたらこれは重荷ですよ。こんなこと一々、そうでなくたって忙しい、知財までやらなければならないのかと。だけど、そこのところがこれから企業にとってある種の生命線になる場合もあるということで、ここのところは、答弁は今日はともかく、これから背負っていただいて、来年ぐらいにまた質問しますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

  次に、特許特別会計における繰越金につきまして、今、約2千億円繰越金が計上されております。繰越金についてはシステム構築に関する費用として積み立てているとされておりますけれども、このシステム構築というのはなかなか難しいもので、これは企業の中においてもいろいろシステム構築、スタートは簡単なんですけれども出口が難しい、結構厄介な仕事なんです。このことについて、どのような情報システム投資を考えておられるのか、よろしくお願いします。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  特許行政において、この情報システムというものはコストの低減、それから質の向上という点で非常に重要であると思っております。

  2013年、平成25年に特許庁業務・システム最適化計画というものを策定いたしまして、2022年度までの十年間に向けてシステム自体の構造を見直すことと、それから政策的課題として優先的にシステム対応すべきもの、これを同時並行的に進めるという計画を立てて進めております。

  まず、システムの構造の見直しの部分でございますけれども、特許庁のシステムというのは電子出願、遡ること25年前、平成2年に世界で初めて電子出願システムというものを導入いたしました。以来、技術の進歩も導入しながら累次システムの増築といいますか、システム化を進めてきました。そのため、特許庁のシステムは、例えで言いますとメガバンクのシステムに匹敵するぐらいの大規模なものに現在あります。

  しかしながら、その構造というものが相当に複雑なものになっておりまして、結果としてそのシステムの改修のコストが増大する、あるいは制度改正に対応するとするとその改修のために期間が掛かるといったような事態を招いておりました。

  そこで、このシステムの構造自体をできるだけ簡素化し、国内外のいろんな要請に迅速に対応できるように、現在そのシステムの構造を大幅に見直すということを行ってきておりまして、これまで全てのホストコンピューターをオープン系のシステムという形に移行して、いわゆるレガシーシステムからの完全脱却というものを一応実現してきております。

  今後、審判とか審査、公報とか、様々な業務の個別システムがありますけれども、それについても刷新を随時行って、簡素化して信頼性の高いシステムに向けていきたいというふうに考えております。

  これはシステムの構造の部分なんですけれども、あわせて、様々な政策的な要請が来ております。例えば、大震災の発生のときに、特許庁の場合、出願日をきちんと確保してお与えしなければいけないというのがございますけれども、仮にうちのシステムが止まってしまうとそれができなくなりますので、瞬時に出願日を確保できるように受付システムを二重化するといったような対応。あるいは、中国、韓国の文献が特許関係のものが膨大に増えてきておりまして、これを機械翻訳をするシステム、検索が容易にできるシステム、こういったようなものを現在取り組んできておりまして、このシステムの投資。それから、これからも一般利用者の方に、我々の審査官が使っているいろんな文献の検索システムございますけれども、これを一般の方にも提供して、これによって発明などを事前に既にどこかでやっているものなのかどうかとか、あるいはそれをベースに使えるとかいったような情報提供のことも進めていこうと思っておりまして、ユーザーの利便性あるいは行政の効率化ということで、是非高度化を更に進めていきたいと思っております。

  それからもう一点、情報セキュリティーの問題が重要だと思っておりまして、いわゆる標的メールの攻撃に対する防御で、今のところ不審アドレスからのメールのブロックとか、あるいはメールについてはウイルスのスキャン、あるいは外部に不審な情報漏えいがあるかどうかについての監視システムという、こういった重層的なものを設けて、セキュリティーについては万全を期しているつもりではございますけれども、一方で、情報セキュリティーに関する技術は日進月歩でございますので、我々もそれを随時取り込みながら、この大きなシステムについてのセキュリティー対策についても万全を期していきたいというふうに考えておりまして、それについてもシステム投資を十分図っていきたいというふうに考えているところでございます。

  以上です。

○加藤敏幸 システム投資の概略のお話をお伺いしまして、特に中国語、韓国語の翻訳を含めた仕組みを充実する必要もあるし、それも企業にその辺のところは利用可能な形にしていっていただきたいと希望をいたしております。

  次に、この特許料の問題ですけれども、今回引下げ措置がとられているということについて、非常に歓迎をしたいと思います。

  特許庁の審査官の人員や処理件数など、国際的には非常に効率的な運営が行われていると思っておりまして、別に他の省庁のことを言うわけではありませんが、結構特許庁は頑張っているねと、こんなふうに思っておりました。しかし、この特許の出願コストと保有コストということについては、知財戦略を考える上で、数を抑えていくというところもあるけれども、それはそのままコストが増えるということで、意外とかさばるものだということで、引き下げられるということの方向性は常に産業界とか当事者にしてみたら大きな期待のあるところでありました。

  今回、料金引下げの背景の説明をいただきたいということと、主要国の申請料金、申請のコストと維持のコスト、この辺のところを少し国際比較データがあれば明らかにしていただきたいということで、お願いします。

○伊藤仁特許庁長官 今般、料金を引下げいたしましたのは、5年ほど前に一回引き下げたものについての見直しを全体を図りまして、中長期的に収支がバランスするという観点から一定の引下げをし、利用者のコストをできるだけ下げて拡大を図るということが趣旨でございます。

  お尋ねのとおり、特許の国際関係の料金についての比較でございますけれども、モデルケースとして、特許を取得して10年間それを保有するといったときの平均的な料金、出願のときの費用、それから審査、それから特許を取ってから、年金と呼んでいますけれども、毎年それを維持するための費用といったものの10年分の合計でございますけれども、我が国は大体42万円でございます。今年の4月の為替レートで計算しますと、アメリカは92万円、欧州が131万円ということでございます、欧州特許庁でございますが、欧州特許庁で131万円ということでありますので、このように、現在、我が国の特許関係料金は他の先進国に比べて高い水準ではないというふうには認識しております。

  ただ、特許特会において、中長期的な収支の見通しにおいて料金引下げの余力があるということでございましたので、今回、特許料とか商標についても引き下げるということにさせていただきました。

  今般、料金引下げの措置によって中長期的には均衡を図られていくというふうに考えておりますので、現時点において追加的に引き下げるということを予定しているわけではございませんが、経済情勢を始め将来の様々な状況、影響を見ながら、収支の状況については不断の確認をしていきたいというふうに考えているところでございます。

○加藤敏幸 御説明の中で、ある意味これ先食いをしている部分があるということの理解でよろしいですか。そこのところをはっきりしておかないと、だから、ある部分は見通しの中で引き下げているんだということで、更に更に下がるということについては、更に更に状況が好転しないと原資は出てこないということは明確に言ってもらっていた方が早いと思います。

○伊藤仁特許庁長官 委員御指摘のとおり、これから特許の登録件数が増えて、これまでの増えている部分がずっと年金として維持されることによる見込みが増えているので、その分をあらかじめ考慮して下げるという考え方に立っております。

○加藤敏幸 その上で、更に余力があれば引き下げていただきたいということを要望しておきたいと思います。

  さて、この審査官、特許審査体制の中で、人的戦力ということが極めて大事でありまして、特許庁におかれましては毎年任期付審査官の採用を行われていますけれども、これは常識的に言えば、期間が定められた雇用というものは不安定性があるとの印象を持っております。

  特許庁としては、どのような人材をどのような方法でどのような身分保障を付けて採用されているのか、今後の採用をどうされるのか、説明いただきたいと思います。

○伊藤仁特許庁長官 任期付審査官についてお尋ねをいただきました。

  これは、当時大量にございました特許出願の審査未着手案件件数、バックログと呼んでいますけれども、こういったものを解消していこうということで、2004年度から5年間にわたって合計490名の方を採用するということで措置したところでございます。

  この取組によりまして、あるいはその他の施策も併せまして、いわゆる一次審査通知までの期間、これを2013年度末までに11ヵ月とするという政府目標を達成させていただきました。さらに、新たな政府目標として、2023年度までに権利化までの期間を14ヵ月以内にし、さらに、スピードだけではなくて、世界最高品質の特許の審査の実現というものを図るという審査体制の整備を目標としておりまして、この目標の達成に向けて今後十年の作業を重点的に行うため、いわゆる従前の恒常的な審査官の増員だけではなくて、引き続き任期付審査官の増員も含めた審査体制の充実が必要だろうというふうに考えております。

  既に昨年度からその任期付審査官の新規採用を採用していまして、既に任期付審査官として十年にわたって経験を積まれている方がいらっしゃいますけれども、その方も、一旦切れますけれども引き続き審査業務を行うような、再採用と呼んでいますけれども、そういった道を確保させていただいているところでございます。

  この任期付審査官については、様々なメディアを活用して募集したり、あるいは筆記試験、面接試験によって、採用試験を通じて、主として研究開発業務に従事されていた企業や研究機関あるいは大学などにいらっしゃった方の技術的な知識あるいは経験を十分に有する人というものを採用してきております。法律的には任期付職員法というものに基づきまして、いわゆる常勤の国家公務員として雇用することとしております。

  今後とも、恒常審査官を含め審査官の採用を進めるなど、審査体制については万全を期していきたいというふうに考えております。

○加藤敏幸 これはこれでまた引き続き議論をしていきたいと思います。

  以上で本日の質問の中における特許法関係の質問は一くくりを付けまして、次に、不正競争防止法に関わるところをやっていきたいと思います。

  この不正競争防止法、これの立法事実というのは、これはこれで、関係する企業に直接お話を聞いておりますし、正直言ってゆゆしき事態だと、こういうふうに思うわけであります。

  なかなか鉄とか、それから電子素材だとかあるいは回路だとか、非常に長い経験の中で作られ、形成されてきたものは、正直言って、ここは発明者個人のものではなくて、ある種、大げさに言えば国の宝ということだと思うんです。

  日本は非常に鉄鋼がすばらしかったのは、明治の段階で各藩あるいは新政府そのものが結構力を入れて近代化のあれをやってきたし、また、電機それから自動車含めて、主要産業においてはそれぞれドラマがあってやってきたと。

  自動車産業が、より薄い鋼板をもっと薄くしてほしい、1ミリじゃ駄目だ、コンマ8だ、いや、更にコンマ6だと。でも、へこんだら困る、型盤へ入れたらみんなぐしゃっと割れて、クラックが入っても困ると。そのための張鋼力とか、いろんなことで汗水流してやってきたんです。世界に誇るべき、昔から、たたら製鉄から始まって、鉄の技術は日本刀に象徴されるということで、これは世界の最新テクノロジーです。江戸時代も、鎌倉時代から、日本の中国に対する輸出品目の主力は、刀剣だとか、あとは銅の銀が入った粗鋼ですか、銅の鋳出したものだとか、いろいろある中で、非常に大事なものだと思う。

  それが、ある瞬間、ただでとは言いませんけれども、不正な方法で取得をして、それが国際的な競争力に大きな影響を与えていくということ自体が、これ国内でやったら完璧にもう犯罪だと、国境があるからなかなか難しいということであったと。

  この不正競争の入り方、この問題の入り方の中の一つは、やっぱり抑止が大事だと。被害が発生して、後からそれを明らかにして1千億円賠償しろとかそういうようなことは、でも3百億円になりましたとか、値切られましたとか、決着が付きませんとか、そのことの経済的なこと以上の被害が発生していると。だから、これはもう防止するにしくはなし、これ以上の方法はないという意味で、防止につながる総合的な対策の中で、今回、不正競争防止法というものが提起されたと、このように理解をしておりまして、これは最初の認識の問題であります。

  それともう一つは、流出した事実に気が付いていない、被害を認識していない、これも大きな課題だなということで、そのことをどう表に出していくかという取組も非常に大事なことだと思います。

  そのことの具体的な質問については後日に譲りたいとは思いますけれども、本日は厳罰主義ということについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

  営業秘密侵害に係る罰金額の上限を、個人、1千万円から2千万円に、法人については3億円から5億円に引き上げられました。また、不当報酬の没収も新たに規定をされ、さらに、未遂あるいは情報転売、これも刑事罰の対象とされていると。独禁法における課徴金の引上げにおいてもそうでありましたけれども、こういった経済犯罪において罰則金の引上げは犯罪抑止効果があるという前提になっています。そして一方では、重罰化、厳罰化はそれほど抑止効果は働かないという御意見、御議論もあります。

  経済産業省としては、この厳罰化の対応について、どのように抑止力が働くのか、この辺のところの基本的なお考えをお伺いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 今回の法案につきましては、まさに法改正をしまして、まさに侵害が起こった後にこういうことができるということを改正をお願いをしているわけでありますけれども、おっしゃるように、起こらないように抑止力があるということがまず大変大事なことでありまして、したがって、今回はある意味では三段階、第一段階はおっしゃいましたように刑事罰の引上げということで、個人についていえば、例えば罰金が現行最大1千万が3千万円になる、法人につきましては現行3億円が最大10億円になるといったことで、罰金が引き上げられる。

  ただ、まだ罰金だけでは当然やり得ということはあるわけでありまして、営業秘密を他者に売却することによって得た金銭や、営業秘密である設計図を使用して製造した製品といった犯罪収益を、個人、法人共に上限なく全額を没収できることとしているということで、これはかなりやり得ということはなくなるということ。

  それに加えて、その上に民事の訴訟というものがあるわけでありますけれども、これにつきましても、挙証責任の転換を一部することによりまして、民事訴訟においても負ける可能性というものが高くなってきているという三段階で、かなり抑止力があると私は思っております。

  特に、鉄の案件で韓国との間で訴訟になっておりますけれども、あれもまさに、おかしいな、おかしいなと、こう思っていたところが韓国と中国の間の訴訟で出てきて、やっぱりそうだったのかというようなことでありましたし、やはり分かるということも大変大事でありますし、一方で、恐らく鉄の今回の訴訟については、あれだけしっかりした会社であるから訴訟に持ち込めたのであって、今までの民事の制度ではなかなか訴訟に持ち込むことも難しいというのが正直これまでの状況でございまして、民事の挙証責任の転換というのもかなり効くものだと思っておりまして、三者相まって、ほかの国からすると相当手ごわい国だなと日本が思われるようになったと思っております。

○加藤敏幸 今大臣が言われた手ごわいという認識を国際間では広めていく、それが非常に大事なことだということで、三段階にわたって強化されたということは非常に高い評価をしたいと思っていますし、と同時に、訴訟したときの強力な体制ということもここはやらないと、決めた以上は絶対許さないし、やり得はこれはもう当然ないと、さらにデメリット、不利益が発生するということを、現実につくり上げていかないと大きな抑止力ということにはならないと思っております。

  これは別に日本がきつくなったとかそういうことではなくて、国際的にそういうことを完遂することが国際場裏における我が国の責任だと思うわけであります。どの国に対しても、技術とか情報を盗んで我が繁栄とか我が利益に結び付けるということは許さないというこの秩序を、特にこういう産業、物づくりの世界においては、あるいはもうこれはソフトウエアにおいても、我が国もそれはしない、同時に他の国に対してもやらせないということを徹底してやっていきたいし、そうしないと、結局どれだけ汗水を流して現在まで、鉄でいえばあれだけの鋼板を作り上げるのか。これは一人一人じゃなくて何百人、何千人、何万人という人たちの汗と涙の結晶、ちょっと情緒的な表現ですけれども、そういう部分は政府としては是非背負っていただきたいと思いますので、もっとやってもいいんだと、私が言う立場ではございませんけれども、必要性が高いんじゃないかということを申し上げたいと思います。

  今日の質問の最後になりますけれども、非親告罪化の実効性ということについて、先ほど申し上げましたように、親告罪から非親告罪にすることについて、これは不正行為は一切見逃さないという姿勢を強く打ち出しているということで、これはある種、抑止効果ということについて期待できると思います。

  一方、新日鉄住金のポスコへの企業情報漏えい事件では、ポスコと宝山鋼鉄間の訴訟が起きたから明らかになったという、こういうふうな事実もありますし、多くのケースでは企業側は情報漏えいに気付いていないということもあると思います。

  今回、非親告罪に変更しても、日常的に捜査当局や経産省の出先機関などがあらゆる産業活動をつぶさに監視する、これは無理なわけでございまして、内部告発の適切な対応とか他国の訴訟情報の収集とか、いろいろな対応策が必要ではないかと、このように考えております。この点について、対応策の方をお願いします。

○菅原郁郎経済産業省経済産業政策局長 委員御指摘のとおり、今回、非親告罪導入したことによりまして、例えばこれまで中小企業の方々が取引先に営業秘密をある意味で取られて泣き寝入りするというような事態がかなり防止できる可能性が出てくるんじゃないかと思っています。ただ、そのためにも、非親告罪にした以上は、捜査当局がしっかり証拠を固めて立件するという実効性が非常に重要になってくると思っております。

  そのためにも常日頃から、我々、技術情報については民間の方々と、今どんな技術情報が例えば海外のどういうところから狙われそうだとか、いろんな情報交換については経産省も企業の方々と常日頃やっておりますけれども、そういった情報。若しくは、委員御指摘のような様々な内部告発情報、これは警察に行く場合もありますし、経産省に来る場合も多々ございます。こういったものについて、しっかりその情報を積み上げた上で、経産省は経産省だけで情報をただ集めるんじゃなくて、営業秘密の侵害の可能性につきましては従来からやっているんですけれども、更に警察当局、捜査当局とこういう情報の共有化を進めたいと思っております。

  経産省と警察の間での情報共有、これだけでも必ずしも十分ではないと思っておりまして、この度官民フォーラム、これは、官の方は我々のみならず警察庁もしっかり入っていただきまして、そこで民間の方々とかなり機微情報、営業秘密の窃取のやり方についても警察当局からある意味で民の人にも一部披露してもらう、逆に民の方から内部のこんな動きがありそうだという民の方の機微情報も含めて警察当局と共有してもらうような場もつくりまして、こういう非親告罪としたことに伴う捜査の実効性について、従来以上に官の間、官民の間での情報の共有化を図って実効あらしめたいというふうに思っております。

○加藤敏幸 少し前に戻りますけれども、不当な利益については没収をしていくということは非常に重要なことなんですけれども、では、その不当な利益がどれだけあったのか。本人が全部正しく、白状という言葉ですか、白状するというケースもありますけれども、これは財産隠していくという、秘匿ということと連動しているということだと思うんですよ。ここはなかなか難しい課題があるわけですけれども、それは非常に分散された利得、利益をどうやって洗い出していくかという部分も含めて、本当にやるならもう全部そこまでやらないといかない。

  例えば、億単位で、それを不正に流出した者がそれだけの大きな金額を得たときに、それを例えば一つの口座に置いておくということにはならないということを含めて、分散化していったときに、どういう形でそれをきちっと把握をして没収していくかということは非常に大事なことですよね。それと、非親告化したことによって、今言われましたように、これはもう不正があれば告発しなければならないということですから、本人が、当該企業がいいよいいよと言ったってそれは駄目だと、これは社会の不正義なんだという姿勢で対応していただきたい。

  そのときに、機微な情報を警察当局から、あるいは検察庁から、例えばこういうふうな近づき方をするんですよとか、そういう手口も含めて、これは各企業の担当者レベル、あるいは中小企業の皆さん方に丁寧にお話をしていく。同時に、そういう状況を見たときに、不審な動きがあるとかそういうようなときへの対応策を含めて、人権侵害だとか、我が国が持っている基本的人権を守っていくということとのある種ぎりぎりのラインの問題も発生してくる。そういうような意味でいけば、今、おれおれ詐欺、特殊詐欺の問題について警察庁も相当力を割いていますけれども、この方面の問題についてどのぐらい体制整備を図るのか。

  技術のことをよく分かっている警察庁では科捜研とか、すぐそういうことを思い出しますけれども、ある程度技術についても詳しい知見を持った人でないとこれはできないということでいくと、桜田門の一層のレベルアップということを、今日呼べばよかったんですけど、強力に声を大きく申し上げたいと思いますし、これ、本当に生半可な従来の犯罪ということの延長線上じゃ駄目だと思います。

  これは、相当にそういう専門官をきちっと体制強化をしていただきたいと思いますが、当局の方がおられないのに経産省相手に言ってみてもと思いますけれども、この辺は産政局長、顔が広いとお聞きしていますので、何かお答えがあればお願いします。

○菅原郁郎経済産業省経済産業政策局長 実を言うと、警察庁の態度が物すごく変わってきております。具体的には、今年に入ってからこの営業秘密侵害について、去年ベネッセの問題もありましたけれども、ああいう名簿の問題に限らず、企業間の取引における警察の立件件数が去年なんかと比べてもかなり上がっておりまして、そういう意味では、警察庁本庁のみならず県警レベルでも営業秘密侵害の社会に与える影響の大きさについては大分認識が広まってきているというふうに思っておりまして、警察庁の方に聞きますと、警察の中でも県警レベルで様々なこれから研修をやっていきたいと、それについて経産省としても協力してくれというふうに我々言われておりますので、正直申し上げて、彼らも本気で取り組むつもりがあるなというふうなことをひしひしと感じておりまして、これは我々のみならず民間の方々を含めて、警察庁のそういう捜査レベルのアップについては常日頃からしっかり協力していきたいというふうに思っております。

○加藤敏幸 産政局長がそういう心証をお持ちだということで、それはそれとして受け止めたいと思います。

  そういう諸官庁の皆さん方は、私ども、ややもするとやっぱり問題点の指摘の方に力が入っている部分もあるし、これはある種やむを得ないと思うんです。一方、新しいことに取り組むというときに、なかなか予算の措置だとか、お役所では難しい面もたくさん、人員の配置とか、結構内部で処理しなきゃならない壁もあるものですから、そこは激励をしていく。こういう社会的に最先端のニーズ、必要の発生したときには激励をしていく、エンカレッジしていくということも必要だし、どんどん頑張っていただくということが大切だと思います。

  4分近く残してしまいましたけれども、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。