国会質問

第189回通常国会 経済産業委員会(2015年6月30日)

発明者のインセンティブ維持やトラブルを未然に防ぐための今後の制度運用などについて確認

  6月30日、経済産業委員会において、「特許法などの一部を改正する法律案」「不正競争防止法の一部を改正する法律案」に対する審議が行われ、20分にわたり宮沢経済産業大臣および伊藤特許庁長官をはじめとする政府関係者に質問しました。

  まとめの審議となる今回は、発明者のインセンティブ維持やトラブルを未然に防ぐための今後の制度運用、営業秘密侵害行為の厳罰化にあたっての職業選択の自由への配慮などについて説明・見解を求めました。
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○加藤敏幸 おはようございます。民主党・新緑風会の加藤敏幸でございます。

  石上委員に引き続きまして、会派としてこれが最後の質問の機会ということになろうかと思いますので、言わば確認を含めていろいろと御質問をしていきたいと思います。

  まず、特許法改正案につきまして、職務発明の帰属問題ということでございます。

  今まで議論がいろいろ行われましたけれども、要するに、特許権あるいは発明権と言われ、これは94年間発明者主義ということで、法的にはそういう運用がされてきたわけであります。けれども、それは、発明の支配を目的とする譲渡可能な財産権、このことを消滅させられる、放棄させられるというこういう意味であって、しかも、その失う権利の代償措置は、法文上で言えば従来の対価ということではなく労使の自主的取組による報奨という性格に変わっていくわけでありますと。したがって、受け止め方によるとある種不利益な、等価交換ではない改正ではないかと、こういう指摘も出てくるわけであります。

  そこで、答弁の中身をいろいろ考えていくと、結局、インセンティブをいかに維持していくのか、対価ということから利益と、このように変わっていく中で、これをどう扱っていくのか。そして、そのことはこの委員会の中で全てが明らかになるということではなくて、ガイドラインの策定、そして、それを個別の企業の中での運用、そこに委ねられていくということでありますから、そのガイドラインが確定するまではどうなるのかという、こういう宙ぶらりんの状況があり得るということだと思うんです。

  それはそれで流れ上やむを得ないという側面があるわけです。したがって、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利というものを、より従前の対価請求権の本質的内容に近づけていくという運用をしていくことが非常に重要であり、そうでないならば、このことの法律改正そのものが評価されない、現場においては、という事態を惹起するということであります。言ってみると、2015年の特許法改正は失敗ではなかったのかということが後日発生しては、立法府の我々にとってもそれは極めて残念なことだということでございます。

  権利は権利だという思いがやっぱり現場の皆さんもお持ちだということでありますので、このことを含めて、ガイドラインの策定、各種制度運用についてどのように考えていかれるのか、再度確認をしたいと思いますので、お願いします。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  我が国のイノベーションを進めていく、促進するためには、発明のインセンティブを適切に確保するということが審議会の中でも大前提であるということを何度も確認させていただきました。

  この改正特許法案において、職務発明に係る特許を受ける権利を初めから企業に帰属した場合に、従業者は相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利を有するものということで条文上も明記いたしまして、現行の職務発明制度と実質的に同等の権利を、するということを法律上保障しているというのがまず第一でございます。

  さらに、改正特許法案では、政府が企業と従業者との間で発明のインセンティブを決定する際の手続に関するガイドラインを策定することを法定化しております。この中で従業者との協議あるいは意見聴取などの在り方について明確化するということとさせていただきます。

  これによりまして、従業者の方の納得感を高め、イノベーションの源泉であります発明といったようなものを一層奨励するといったこととともに、従業者の相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利といったようなものは更に確実に保障されるものというふうに考えているところでございます。

  委員御指摘のとおり、このガイドラインの策定に当たっては十分議論をしていくことが必要だと考えております。改正法案の中でも、産業構造審議会の意見を聴いてというふうに定められております。産業界のみならず、労働界、学識経験者、大学関係者、様々な方面の方の立場を十分伺いながら、評価されるような形でのガイドラインを是非作っていきたいというふうに考えているところでございます。

○加藤敏幸 それでは次に、このガイドラインに従って企業の中で運用制度を決めていくというこういう場面において、前回に続いて質問いたしますが、労働組合が結成されていない民間企業というのが80%以上あると、こういうことであります。労働組合というのは、要求と交渉の内容それから妥結内容というのを常に職場にフィードバックしていくという組織的活動がずっと根付いておりますから、全従業員への周知という機能については極めて高いと。しかし、それ以外の80%の企業においては、従業員代表とか、そういういろんな制度によって補完されていますけれども、それが機関紙を持っているわけではないし、職場集会をやって説明をするだけの時間はなかなかない。そういういう意味で、相当に差があるということを前提として労使間の適切な協議の場をどのようにつくり出していくのか、まずはこの点について改めて確認をしたい。

  もう一つは、やはり研究者、技術者のインセンティブを維持するということで、集団的な取決めと、もう一つは個別的な取組ということが並走する状況があってもいいのではと。これは企業の規模だとか業種によると思いますが。でも、正直言って、電機メーカーでいえば極めて何万人の従業員がいる会社も多々あるわけですし、業種、職種も相当分かれていることの中で、一つのルールで網羅的にできるということが可能なのか。むしろ、例えばあるプロジェクトについて、海外からも研究者、世界から募った上でプロジェクトを進めますと、その人たちの研究についての取決めと、一般従業員で企業年金までもらうことを前提で働く人の研究成果ということの扱いが一緒でいいのか。そういうことも含めて、二本柱の運用もあり得るのではないかということを含めて、この辺のところを、このアイデアについてお考えをお示しいただきたいと思います。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  まず、前段の方の様々な企業においての従業員との関係があるということでございます。

  労働組合が比較的従業員の意見を代表するようなところにおきましては先ほどのような形でルートをしっかりと活用するということもございますが、一方でそういうような形でない企業も多々あるかと思っております。また、大きな企業あるいは研究開発型の企業という、業態においてもそれぞれ実態が異なると思っております。我々、ガイドラインの策定に当たっては、そういったいろいろなケースを想定いたしまして、事例なども含みながら、どういった形があるか、できるだけ多様なものを、柔軟に受け入れられるような形でのガイドラインを設定していきたいというふうに考えているところでございます。

 それから、集団の対応と個別の対応といったような形のことでございますけれども、今回の改正法案におきましても、発明者たる従業者の能力や発明活動の種類などに応じて相当の利益を給付する職務発明規程を企業の中で複数設けるということは許容されているというふうに考えております。したがいまして、委員御指摘のとおり、企業が、一般的な従業者といった集団向けの職務発明規程を整備する一方で、スーパー研究者向けと仮に呼ばせていただきますけれども、別途そういったような方を想定した職務発明規程、職務発明に関する個別の契約といったようなことを取り交わすことも可能というふうに考えております。

  今回の改正によって政府がガイドラインを策定していくわけでございますけれども、当事者間の自主性、多様性というものをできるだけ受け入れ、尊重しながら、きちっと従業者との協議や意見聴取が行われるような在り方を明確化することで、繰り返しになりますけれども、発明者の納得感を高めて、イノベーションの源泉たる発明を一層推進していきたいというふうに考えているところでございます。

○加藤敏幸 次に、先ほど石上委員の質問の中にもございましたけれども、苦情処理機関の設置について、非常に重要ではないかと思いますので、この点についての御見解をお願いします。

○伊藤仁特許庁長官 お答えいたします。

  政府がこのガイドラインを策定するに当たりまして、従業者との協議や意見聴取などの在り方を明確化するということが大事だということは申し上げさせていただきました。

  このガイドラインを策定する際に、例えば発明者たる従業者に対する意見聴取の手続というのがあるわけでございますけれども、従業者の意見が反映されやすくなるよう、社内で例えば異議申立て制度を可能とする点についてガイドラインにおいて明確化することを検討するということなどを含めまして、委員御指摘の企業と従業者との力関係も考慮した上で、様々な立場の方の意見も聞いてガイドラインを策定していきたいというふうに考えているところでございます。

○加藤敏幸 次に、不正競争防止法改正案につきまして、営業機密と職業選択の、ここに関わる課題について御質問いたします。

  十年前、不正競争防止法の改正案の審議で質問を行いました。そのときには、退職に伴って課せられる営業機密の保持義務や競業避止義務が職業選択の自由との関係で問題になったというふうに覚えております。

  今回も、従業員が職務を通じて体得した個人的なスキルや、そういう職務ノウハウというものが営業秘密に当たるのかどうか。また、これらの点が明確に社内規則等で周知されていないケースもありますけれども、このことがトラブルを発生させるということも多いし、従業員自身が気持ちよくいい仕事をするということの環境を整える意味でも非常に大きな問題ではないのか。サイバー攻撃の影響を受けるというケースもございますので、その辺を含めて、今回特に留意されることがあれば御説明いただきたいと思います。

○菅原郁郎経済産業政策局長 委員御指摘のとおり、憲法上保障されております職業選択の自由、これは最大限尊重する必要があることについては言うまでもないことであると承知しております。

  このため、今回の不正競争防止法の改正案におきましては、営業秘密侵害罪の罰金額の引上げなどの措置を講じる一方で、処罰される侵害行為のうち転職に関連するものにつきましては、従前同様、転職前に転職先への営業秘密漏えいを約束した場合に限定することとしてございます。これについては一切変更がございません。

  また、法律改正事項ではございませんけれども、営業秘密管理指針を本年1月に改定いたしまして、営業秘密の具体的範囲に関しまして、企業固有の情報であって、かつ一般的な情報と合理的に区別され管理されたもののみが営業秘密として保護されることをこの指針の中において明確化しているところでございます。この結果、委員も御指摘しました、転職に当たって重要となる労働者のスキルや記憶そのものは営業秘密に該当しないことが明確になったというふうに考えております。

  さらに、こういったことが周知されるということが非常に重要でございまして、今後、全国の知財総合支援窓口や営業秘密110番で無料の相談を受け付けるほか、弁護士、弁理士等の専門家や企業実務者を対象とする説明会を全国各地で開催するなど普及啓発活動をしっかりと行いまして、労働者の転職に不当な支障が生じないよう努力していきたいというふうに考えてございます。

○加藤敏幸 非常に明確に答弁をいただきました。そのようによろしくお願いをしたいと思います。

  最後に、営業秘密管理指針の運用につきまして、先ほどお話もありましたように、本年1月に全面改定されました営業秘密管理指針では、秘密管理性の要件あるいは認識可能性に重点を置いて明確にし、秘密管理措置についても具体的な形で明示されております。この内容についても、不断の見直しや柔軟な運用が必要だと考えますし、その方針についてどうお考えかということ。

  それから、事後的にこのことについて救済措置をとったり扱うということも大事ですけれども、要は、事前の予防を徹底して、起こらないことが大事であります。特に社員、従業員との関係でいえば、本人にとっても場合によっては不幸であるし、当該企業にとっても不幸である。つまり、不幸をつくり出すということでは駄目であって、そのためにはやはり相当管理を徹底していくということで、特に中小企業においてここのところは非常に重要な案件になのではないかということですので、企業にとってより使える管理指針であるべきだと思いますけれども、ここを含めて見解をお伺いしたいと思います。

○菅原郁郎経済産業政策局長 先ほども申し上げましたけれども、本年1月に営業秘密管理指針を全面的に改定いたしました。その際、産構審の小委員会におきまして、産業界、法曹界、裁判所、労働者等の代表による議論を経まして、そこの中で決めたことは、最低限の営業秘密の管理水準を明確にしたところでございます。

  今回の改定の趣旨は、従来の指針や判例が中小企業にとって非現実的な鉄壁の管理を求めているのではないかとの批判を受けまして、御指摘の秘密管理性要件、すなわち、秘密として管理されているとは本来の制度、趣旨を踏まえればどのような状態であるべきなのかということについて整理を行ったものでございます。

  具体的には、まさに今委員から御指摘のあったように、リスクの高低ですとか対策費用の大小も踏まえた効果的かつ効率的な秘密管理の必要があるということを明記した上で、社員にとって何が営業秘密で何がそうでないのかを明確にすることを企業に対して要求することとしております。

  今回の改定につきましては、審議会に参加した方々若しくはその後産業界、労働界からもおおむね評価をいただいていると承知しておりますが、今後、判例の蓄積や現場における問題事例等を踏まえまして、不断の見直しを行うとともに、その活用を促進する、ちゃんと従業員の人が分かるようにするという観点から、中小企業の方にとっても使い勝手の良い営業秘密保護マニュアル、これを今後策定していきたいというふうに考えてございます。

○加藤敏幸 運用の方よろしくお願いします。

  最後に、特に特許法の改正については、なかなかこれもまた悩ましいところもございました。個人の発明権を徹底的に保護、管理するということをやり過ぎますと、企業としてもう投資をするということについては消極的にならざるを得ない、逆に、個人の権利をとことん制限をしていくと、誰ももう発明なんかやっても意味ないよねという、両極端はゲイン、利益は少ないわけです。最もあんばいのいいところというのは中庸の辺りにあって、常にバランスを取っていくという、両者の視点に立ってこの改正案については理解をしていく中身があるのではないかと思います。

  また、阿達委員の方からも指摘がありましたように、特許法というのはイノベーションを促進するためにあるのか、特定の権利を擁護するためにあるのか、つまり経済社会の発展のために本当にプラスになるのか、あるいは場合によってはマイナスになるのではないかという、常に二つの側面を持っている。そんな中で、今後もこの議論は引き続き知財立国の方針の下でやっていくべきだと思います。最後に一つだけお願いをしたいのは、広く国民の知財に対する理解と、その水準といいましょうか、やっぱりそういうことを上げていくということを広めていく、そのことが非常に重要ではないかということを申し上げまして、もし大臣に感想等ありましたら一言お願いしたいと思います。

○宮沢洋一経済産業大臣 委員おっしゃるとおりだと思っております。これからの日本の将来を考えますと、特許だけではなくて著作権等々も含めて、知的財産で生きていくような社会ということを常に念頭に入れていろんな制度をつくっていかなければいけない。

  そういう中で、特に特許に比べて著作権というのはまたやたらにこれ難しい法律でありまして、私も何度読んでもよく分からないところがあるわけですが、そういうものを含めて、やはり国民に、特に中学生、高校生ぐらいからこういうものについて興味を持ってもらうような、そういう努力をしながら、日本のまさに生きる糧である知的財産といったものを守り、そして育てていくということを政府を挙げてやっていかなければいけないと考えております。

○加藤敏幸 よろしくお願いいたしたいと思います。

  終わります。