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加藤としゆき
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policy──政策レポート

vol.02

2007年版 『ものづくり白書』 について

2007.7.10     

 政府は5月29日の閣議で、経済産業、厚生労働、文部科学の3省でまとめた『ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)』を決定し、国会に提出しました。以下、今回の『白書』の特徴点と、これに関連した「ものづくり政策」についての私の考え方を述べさせていただきます。また、この『白書』の情報・提言を生かしながら、今後、我が国製造業の再活性化に向けて全力を尽くしていきたいと考えます。

1、製造業の国内回帰

 近年、我が国の製造業は中国・東南アジアを中心に生産拠点を海外に展開し、いわゆる「産業の空洞化」が懸念されてきましたが、今回の『ものづくり白書』は、国内の生産拠点の再活性化が本格化していることを指摘しています。

 国内メーカーの売上高のうち、海外の現地法人が占める比率は2005年度で16.7%と、1995年度の約2倍に拡大するなど、現在も日本企業は海外生産を加速していますが、一方で、主要な素材・部品は国内で製造し、海外の生産拠点に供給するという流れが強まっています。海外法人が日本国内から調達した素材や部品の額は、国内に逆輸入された海外製品の販売額を12兆7000億円も上回っている状況です(図1参照)

 

(図1)わが国製造業の海外法人の取引収支


 全体として見れば、国内拠点と海外拠点との役割分担が明確になってきたものと捉えられます。とくに国内生産拠点は、(1)製品の開発・設計、(2)品質の安定化、(3)人材育成――の3点が重要視され、海外拠点の「マザー工場」としての役割を果たしていると『白書』は指摘しています。このうち、製品の開発・設計に関しては、国内生産拠点のうち製品開発拠点を兼ねている工場は71%もあり、また生産技術の開発拠点を兼ねている工場も70.5%もある、という経済産業省の調査も紹介され、この傾向を裏付けています。

 製造拠点の国内回帰については数年前からその兆候があり、私もこの傾向がより強まっていくことを期待していましたが、今回の『白書』はその傾向をデータ的に裏付けています。我が国製造業は、グローバリゼーションによる国際的な競争が一段と激化する中で、労働力人口減少や学生の理系離れ、中国・韓国などの技術競争力の増強などが加わり、取り巻く環境は一段と厳しいものになりつつあります。また、重要技術の海外流出も大きな問題となっています。今こそ、これらの製造業が抱える問題を克服するために、生産拠点の国内回帰という新たな流れの中で、我が国が独自に培ってきた技術力や人的資源を最大限に活用し、産業の一段の高度化をはかっていかなければならないと考えます。

 

 2、製造業の活性化と地域の再生

 生産拠点の国内回帰といっても、疲弊した地方の経済の再活性化にプラスに作用するような国内回帰が望ましいことは言うまでもありません。大きな工場の誘致や工場の拡張は、その地域における産業インフラの整備を促すことになり、また物流の発達によって需要を喚起します。さらに新たに多くの雇用を生み出し、そのことでさらに需要が増大して地域経済が大いに活性化します。また法人税と所得税が増えることにより自治体の財政が潤い、公的セクターの需要増により地域全体の総需要が増大するという相乗効果が生まれます。まさに地域再生の有力手段になります。

 製造業の復権を主張してきた立場からすると、生産拠点の国内回帰の流れを確実にするためにも、とくに地方公共団体は地域経済の再生のために、生産拠点の誘導施策を積極的に展開していくべきでしょう。また国としてもこの施策を強力に後押ししていくべきだと考えます。

 今回の『ものづくり白書』は、「国内拠点の機能強化に向けた課題」として、いくつかの政策的視点からの分析を行っています。この中で、『白書』は日本機械工業連合会が実施したアンケートを紹介していますが、これによると、一般的に、企業が重視する立地選択要因は、「高度技術人材の確保」「市場への近接性」「原材料入手の便」などが上位にあげられており、一方、受入側の自治体は「交通インフラ(空港、港湾、高速道路など)の充実」、「地域に存在する技術レベル・技術集積・産業集積」、「国・自治体の助成や協力」などを強調し、両者の間には明らかな乖離が見られます(図2参照)。また一般的に、進出する企業は、税制上の特別措置に期待しているほか、土地取得から操業までの期間短縮を望んでおり、操業までに必要な自治体の手続きを一括処理できる「ワンストップ体制」の構築を求める声が強いと分析しています。

 

(図2)企業の立地ニーズと自治体が強調する立地メリットの比較

 いずれにせよ、今後、自治体は企業のニーズを十分に認識して企業誘致に策を講じていくことが重要であると考えます。当然、国としても、これらの企業ニーズを汲み取った地方への支援措置や、税制の整備、産業インフラの整備などを進めていく必要があり、この点についきましては、私としても国会の場で積極的に政策提言をしていきたいと思います。

 

3、ものづくりと人材育成−人材の多様化

 景気が回復する中で、雇用情勢の若干の改善が見られますが、製造業・ものづくりの現場という観点からで見た場合、依然として製造業への新規学卒入職者数は低レベルにあります。

 今日、製造現場では高齢化がすすみ、さらに団塊の世代の大量退職を迎える中で、今後のものづくりを担う人材をいかに育てていくかは、我が国の産業の行く末を左右する大きな課題になっています。とくに、2007年問題への対応は焦眉の課題となっていますが、幸いにして各企業における技術・技能継承のための取り組みも本格化してきており、『ものづくり白書』も幾つかの成功事例を紹介しております。

  しかしながら、製造業においては雇用の不足感が過剰感を上回り、深刻な状況を呈しつつあります。我が国のものづくり産業の強みとなっているのは、高度の熟練技能を基盤とする「現場力」ですが、このままでは、この「現場力」を支える人材が明らかに不足していきます。いまこそ官民あげて、「ものづくり力」を維持・向上させるための総合的な人材育成プログラムを実行していかなければならないと考えます。

  そこで、今回の『ものづくり白書』を見てみますと、製造業における人材不足への対応策として、「人材の多様化」を打ち出しています。これは、若年フリーターを積極的に活用していくという若年雇用対策の視点のみならず、ものづくりにおける女性人材と非正規雇用人材の活用を挙げています。具体的には、@女性人材の積極的採用と登用に関してのポジティブ・アクションの推進、A育児支援など、仕事と家庭生活とのバランスをとることができる職場環境の整備、B非正社員に対する能力開発の推進やパート労働者の雇用管理の改善、C「派遣」や「請負」など外部労働者に対する能力開発・キャリア形成の取り組み――などが提言されています。

 この非正社員や外部労働者の活用は、グローバル化が進む中で、労働コスト面で一段の効率化をめざすことと、一方で付加価値の源泉となる製造現場でのものづくり技能者を確保・育成するという二つの目標が同時に達成をもくろんでいるわけですが、労働条件や継続雇用という面で処遇の改善がないと、労働者の技能向上や改善提案へのインセンティブは高まらないと考えます。この点について、個々の企業(労使)の努力で改善していくという方法は、これらの労働者が置かれた現状を見れば限界があると言わざるをえず、労働法制の改正により全産業・全企業における非正社員・外部労働者の雇用条件の改善を図るべきだと考えます。労働基準法、パート労働法、男女雇用均等法などのさらなる法整備が求められておりますが、私としても、連合の要求実現にむけて努力していきたいと思います。

 

4、技能尊重の醸成

 製造業を再活性化させるために忘れてはならないことは、国民の間に、ものづくり技術・技能は尊いものだ、という意識を着実に根付かせることです。モノの製造は中国や東南アジアに任せておけばよいという空気を払拭し、我が国は「ものづくり立国」であるという機運を醸成していくことが大事です。とくに学校教育の場では、子供たちにものづくりに関心をもたせ、創造する喜びを体感してもらう教育プログラムを組み込んでいく必要があると考えます。中・高校生にも、理科系離れを防ぐために、科学への関心を高め、ものづくりの魅力を教える取り組みが求められます。『白書』では、一部の地域や学校の取り組みが紹介されていますが、これを全国的なものに拡げていく必要があります。

  「ものづくり」に関するこのような要請に応えるかのように、本年11月には静岡県で「ユニバーサル技能五輪国際大会」が開催されます。これは子供から大人まで、製造業の技能・技術を身近なものにするための絶好の機会です。私は、昨年6月の決算委員会でこの「国際技能五輪大会」に小中学生を見学させるべきだと政府に要求しました。現在、少なくとも静岡県においてはそのようなプログラムが推進されつつあると聞いています。是非とも、この国際イベントを成功させ、またものづくりへの国民的関心が高まることによって、我が国が「ものづくり立国」に向かって世界の先頭にたつことを期待する次第です。

  最後に指摘しておきたいことは、日本の製造業が国際競争力を維持するには、技術革新を続けること、重要な技術を海外に流出させず国内の開発拠点や工場で保持することが必要だということです。例えば、液晶の主要部品・素材の製造のように、高い技術力を持つ産業を国内に集積していくことが重要なわけですが、そのためには製品開発・技術開発力を一段と強化することがポイントとなります。しかし、『白書』は、日本の研究開発費の伸び率が中国、韓国に比べて低水準にとどまっている状況を指摘し、懸念を示しています。一般的に、研究開発投資は様々な要因で増減していきますが、一定の水準を維持していくためにも、国として、税制や補助金をはじめする研究開発投資拡大の誘導策を強化するともに、大学や公的研究機関の研究活動を積極的に支援していくことが重要と考えます。

 

     

 

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