政策レポート

2014年7月15日

国会の行政監視機能の課題

1、立法府における行政監視の意義

  所属する参議院の行政監視委員会では、総務省が昨年度に実施した行政評価に関する報告を受け、また、今後は個別のテーマにそって行政にかかわる諸問題について参考人意見聴取や視察、審議を行なってきました。また、去る5月19日にはテーマを限定せずに政府に質疑を行う委員会が開催され、行政評価局が行った評価結果の妥当性や、これから行う評価への留意点、あるいは公務員制度の問題点など、5つのテーマに関して質問を行いました。(国会質問議事録参照)。

  国会は立法府として、法律を策定するとともに、成立した法律や予算がその目的にそってきちんと遂行されているのか、あるいは担当する公務員が正しく効率的に業務を遂行しているのかを監視・チェックする役割と責務を担っています。とくに解散がない参議院は、議員が任期中にじっくりと行政を監視できるというメリットを生かし、「決算委員会」と「行政監視委員会」の二つの委員会を設置して、この責務を果たしています。

  ちなみに、衆議院は「決算行政監視委員会」の一本の委員会で対応していますが、参議院では、決算委員会を税金が適正に使われているかどうかをチェックする委員会として、一方、行政監視委員会を「法律が内閣によって誠実な執行されているか」、「公務員に不正不当行為はないか」など行政評価・監視・苦情処理の場として位置づけています。なお、行政監視委員会は、参議院改革の一環として、平成10年に設置されたという比較的新しい委員会ですが、以下、述べるように、これからの審議体制の強化が期待されています。

 

2、行政府における行政監視機関

  前述のように、立法府における決算審査や行政監視・行政評価は、立法府が行政府をチェックするという三権分立の機能させる側面を持つとともに、国民・住民がより効率的で良質な行政サービスを受けられるのかどうかを国民の代表によってチェックするという民主主義的側面を持っています。

  しかし、現在のところ、立法府側はこの任務を全うできる独自の専門的スタッフや調査能力を持っていません。結局、この業務は政府内の評価・監視機関の協力を得ながら進めていかざるを得ない状況です。

  具体的には、予算が正しく使われムダがなかったかをチェックする会計検査院、各省庁の施策の効果性・効率性を総合的にチェックする総務省の行政評価局(旧・行政管理庁)、そしてこの行政評価の前提的なチェックする各省庁の評価部門があります。また、公務の組織と人事が公正で能率的に機能させる役割を担っている人事院と総務省人事・恩給局、さらには官製談合を防止・摘発する公正取引委員会も広い意味で評価・監視機能をもっており、これらの機関が参議院行政監視委員会が協力を求めることができる政府機関として位置づけられるでしょう。

  中でも総務省の行政評価局は、調査結果の分析や調査テーマの調整などで、行政監視委員会と最も強く連携している行政機関です。

  総務省の行政評価局は、かつては行政管理庁と呼ばれていましたが、現在でも政府内における第三者的な評価専門機関として位置づけられています。業務としては、「必要性・有効性・効率性等の観点から、複数府省にまたがる政策や各府省の業務の実施状況について全国規模の調査を実施し、各府省の課題や問題点を実証的かつ総合的に把握・分析し、改善方策を提示する」としています。また、行政評価局の調査は、各府省の業務の実施状況を対象とする「行政評価・監視」のみならず、複数府省にまたがる政策を対象とする「政策評価」を行うところが特徴となっています。

  なお、行政監視・行政評価を論ずる際には、よくオンブズマン制度のことが取り上げられます。オンブズマン制度は欧州で発達してきた行政監視制度の一つですが、一般的に「公的オンブズマン」と言われているのは、議会や首相・大統領などから任命され、独立的・中立的立場にたって行政機関に対する調査権を持って監督や苦情処理を行う職務を指します。我が国では、国政レベルの制度化は行われていませんが、地方自治体レベルでは、1990年の川崎市市民オンブズマン条例を皮切りに、多くの地方自治体が条例で、苦情処理を中心にした「オンブズマン制度」を定めています。

  また、国レベルにおいては、総務所が所管する「行政相談委員制度」や「行政苦情救済推進会議」、そして総務省行政評価局そのものがオンブズマン的な業務・役割を担っているとされていますが、行政評価局はあくまで行政機関の一部であり、また行政相談委員も総務大臣から委嘱される点から独立性・中立性に欠けるとされており、本来の意味での「公的オンブズマン制度」を担ったものではありません。

 

3、行政評価局による評価テーマと評価手法の課題

  平成24年度、総務省の行政評価局によって取り組まれた行政評価・監視・実態調査テーマは次の10テーマでした。

①外国人の受入れ対策(外国人労働者等)

②ワーク・ライフ・バランスの推進

③直轄国道の維持管理等

④医療安全対策

⑤農地公共事業――農業水利施設の保全管理等を中心として

⑥申請手続に係る国民負担の軽減等――東日本大震災に係るものを中心として

⑦路面電車の安全確保及び利便向上

⑧契約における実質的な競争性の確保――役務契約を中心として評価・監視

⑨科学研究費補助金等の適正な使用の確保

⑩震災対策の推進――災害応急対策を中心として

 

  では、行政評価局が昨年度に実施した評価はどのような方法でなされ、評価結果はどのように行政に反映されたのでしょうか。身近な例として、上記の10のテーマから、理解しやすい②番目の「ワーク・ライフ・バランスの推進」に関する政策評価について見てみます。

 

(1)調査の背景の把握と対象の絞り込み

  「ワーク・ライフ・バランス推進政策」は、勤労者が男女ともに仕事と生活の調和をはかり、勤労者の心身の健康維持をはかり、併せて少子化問題への解決につなげていく政策です。この政策は、男女共同参画の政策とあわせ、政府が積極的に対応してきたもので、とくに民主党政権下の2012年6月29日には、それまでの「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を改訂し、官民一体となった取り組みを行ってきました。今回、このテーマに関する行政評価は、各省にまたがるこのテーマについてこれまでの行政の取り組み成果についてチェックを行ったわけです。評価対象は、ワーク・ライフ・バランス政策を推進している内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省・国土交通省、そして地方自治体で、それぞれの事業者が行った施策について検証しています。

 

(2)政策効果の把握手法とその評価

  政策評価局は、政策効果について、①ロジック・モデルの作成、②アンケート調査を中心にした統計分析、③行政機関を対象とした実地調査による三つの手法を用いて把握しました。

  「ロジック・モデルの作成」とは、政策手段から効果の発現に至るまでの経路を明らかにするために、ア指標と数値目標の達成に向けた政策手段との因果関係、イ指標に影響を及ぼす外部要因との関係――を把握・分析する方法で、具体的には、「行動指針」において掲げられた社会全体の目標であるフリーターの数、メンタルヘルスケアを受けられる職場の割合、在宅型テレワーカーの数など、14の指標の数値目標について、これらがどの程度達成できたかという検証を行いました。

  この検証の結果、別表にあるとおり、14指標のうち、①行動指針策定時以降、数値が多少とも改善しているものは11指標、②数値目標に達したものが1指標とし、総合的な評価としては、「ワーク・ライフ・バランス」政策は官民一体で取り組まれ一定の効果があった、としています。

  具体的な指摘としては、数値目標の立て方として、よりきめ細かい把握と検証のための「参考指標」の設定が必要だとしています。例えば、「フリーターの数」では、目標設定時187万人を平成32年に124万人に減らすという目標がありますが、数とともにフリーターの割合が重要でありその数値を明らかにすること、また、やむを得ず非正規雇用になっている「不本意非正規」の割合を明らかにすることも「参考指標」として打ち出すべきだとしています。

  さらに、「メンタルヘルスケアに関する措置」が取られている職場割合については、今後は中小企業への導入促進を見据えた目標設定が「参考指標」として必要であることを指摘しています。このほか、保育等サービスの行政評価について、来年4月から実施される「新子育て支援」策との関係を見据えた目標設定の改定が必要であること、「在宅型テレワーカーの数」は、私が参議院の行政監視委員会で「仕事の持ち帰りも含めれば意味がない」と指摘したように、勤務先の制度にもとづく在宅型をきちんと把握するように勧告しています。

 

(3)行政評価の課題

  事例に挙げた「ワーク・ライフ・バランス」政策への評価は、テーマの特性上、数値目標を立てやすいテーマであったため、このような評価手法が使われ一定の有効性を表しています。しかし、勤労者の生活や職場をとりまく環境は刻々と変わっていくものであり、指摘されているように目標指標そのものを随時見直したり、目標達成年次の前にあっても新たな目標を追加していくことが重要だと考えます。

  政策評価は、評価そのものが目的ではなく、あくまで効率的な政策遂行や政策の目標達成が目的であることに留意し、併せて、どのような政策手段がどのような効果をもたらすのか、といったプロセスをも重視した評価方法も発展させていく必要があると考えます。つまり、政策推進のPDCAサイクルを回しながら政策の質を高めていくことが最終目的であることを明記すべきです。

  また、行政内部で行われる行政評価は、どうしても評価基準が甘くなり、勧告もやや緩いものになりがちです。第三者機関による評価が、一概により厳しくより効率的に行われるとは言えませんが、最低でも、国会の中に調査・評価機能をもったセクションを作り、議員と連携した独自の評価活動を展開できるように準備すべきだと考えます。

 

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