○加藤敏幸 民主党・新緑風会の加藤でございます。提案されております運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案に関しまして、民主党・新緑風会を代表して質問をさせていただきます。
まず、この法律改正の契機になりました昨年4月のJR福知山線脱線事故においてお亡くなりになりました107名の方々に哀悼の意を表したいと思います。あわせて、負傷され、現在も身体的苦痛や、PTSD、心的外傷後ストレスなど精神的な苦しみを負っておられる555名の負傷者の皆さん方の一日も早いご回復をお祈りをしつつ、是非ともすばらしい法律の制定、またその実行を祈念しながら質問を行っていきたいと思います。
1、安全対策と利益追求について
○加藤敏幸 まず第一に、安全対策と各事業者の利益追求について少し総論的な立場でご質問申し上げたいと思います。
近年、鉄道、航空の大きな事故は減少傾向にありますけれども、北側大臣が国土交通大臣に就任されて以降、そのせいだとは言うわけではありませんけれど、大きな鉄道事故が二つ発生し、また航空分野では大事故につながりかねないトラブルやミスが続出しているというのは先ほどの小池委員のご指摘にあったとおりでございます。
運輸の安全性への信頼が大きく揺らいでいると、こうも言えるのではないかと。それぞれの事故やトラブルの原因や背景にあるものについて現在様々な分析が行われておりますが、特に私が申し上げたいのは、バブル経済崩壊後の経済低迷の中で、利益主導型の経営やリストラによる人員削減などにより、全体として安全確保の意識が経営責任者あるいはその現場で働く皆さん方の中においてやっぱり希薄になっているように感じるわけであります。
まず大臣には、こういった事故の社会的背景、あるいは大きな社会のトレンド、流れ、そういうものの変化についてどう認識されておるのかお伺いしたいと思います。
○北側一雄・国土交通大臣 昨年来、大きな事故、そして航空における連続したトラブル等があることは極めて遺憾であると思っております。
何度も申し上げておりますが、運輸におきましては、安全に輸送する、利用者の方々を目的地まで安全に輸送することがもう最大の使命であり最大の役割、それがもう基本でございます。そこがないがしろになってしまったならば、あと何を言おうが、運輸、公共事業者の持つ意味というのはなくなってしまうと私は思っておるところでございまして、改めて安全確保が最優先ということを本当に徹底をしていかねばならないと思っているところでございます。
今委員のご指摘は、その社会的な背景は何なのかと、非常に難しいご質問でございます。まあ、これはもしかすると運輸だけではないのかもしれないなとも思っているんですが、ほかの様々な分野でも、そうした安全にかかわるところについて意識が少し弱くなってしまっているのではないかという事例も見えます。そういう意味で、社会全体の、我が国社会全体の問題として受け止めていかないといけないと私も思っております。
今、今回のお願いしております法案では、公共交通の事業者においてしっかり社として安全管理体制というものをしっかりつくってもらおうと、それをまた私どもが安全管理体制がきちんとなされているかどうかチェックをしていこうというふうな法案になっているわけでございます。
その社として公共交通の事業者が安全管理体制をつくるためのまず第一歩といいますか、大前提といたしまして、経営のトップがまずその意識をしっかり持ってもらわないといけないわけですね。経営のトップの方がこの安全管理ということに関してしっかりとコミットメントをしていただかないといけないわけで、そこがなければ幾ら安全管理体制をつくると言ったって現場でつくれるわけじゃありません。やはり経営者の方々がしっかりその意識を持ち、その行動を取っていただくことが大切なわけでして、そこをしっかり私どもは各公共交通の事業者の方々にお願いをしたいと、また厳しく指導していきたいというふうに思っております。
○加藤敏幸 私は、この委員会は非常に大切な議論をやっていく使命があると、そういう思いで、ただいまの大臣のご答弁はそのまま率直に受け止めたいと思います。経営トップがどういう姿勢で安全に臨むかということはまた後段の質問の中でも意見交換をさせていただきたいと思います。
家田東大教授を参考人としてお話を聞きましたけれども、いろいろ大切なお話をされた中に、やはり労働と組織、これ我が国が、私はもう江戸時代からすばらしい労働とそれを統合する組織的な力があったと思っているわけですけれども、その質的変化がやっぱりあるにではないかと、こういうご指摘をされておりました。なるほどと思います。
社会的背景というのは、言われるとおり、運輸だけにかかわらず、私は、労働、そしてそれを組織をして社会的に貢献をしていく組織の在り方というようなものがいろんな意味で今、変化を受けているんだと、その流れの中でいろんな問題も発生しているという認識。今言われたように、この分野に限らずいろんな問題が起こっているんだと、そういう認識に立って、私はいろんな施策を総合的に、またきめ細かくやっていくことが必要ではないかと、こう思っておるわけであります。
そこで、市民が日常生活を営んでいく上で、安全は目に見えない、安全と水はただとか、こんなふうに言われましたように、あえて意識しない領域になっておるということであります。しかし、鉄道、航空、自動車、それから家電製品から食品に至るまで、企業の安全対策が不適切であれば、事業者の対策が不適切であれば、正に国民の命を脅かす重大な事故につながると、そういう大変な問題、領域であり、事業者、企業の社会的責任というものは一段と重いものがあると思います。
そこで、企業経営の在り方について少し触れてみたいんですけれども、一般的に企業における安全対策は利益拡大とトレードオフ関係にあると考えられております。しかし、結局はそうではないということを私は申し上げたいんですけれども、表面的にはトレードオフ関係にある。したがって、企業経営では利益を最大限にすることは大きな正に使命でありますから、そういう与件の下で、設備の稼働率を上げることが大切であるとか、従業員総数の削減を図り一人当たりの稼働率、効率を上げるとか、安全対策など直接利益拡大につながらない投資や活動はむしろ最小限に抑えていこうと、こういうふうな方法がややもすると選択をされると。これでは当然安全面がおろそかになるわけでありまして、JR西日本の一面の教訓はそういうようなことも語っているのではないでしょうかと。
このような利益拡大を最優先する経営姿勢から安全を最優先する経営に転換させていくことが特にこの運輸にかかわる事業においては大切であり、本件、この委員会で今扱っているということでありますし、法改正の主眼もそこに置かれているというふうに思います。各運輸事業者が本当にこの方向に向かって、経営理念を真の意味でのやっぱり社会的貢献、安全第一というふうな方に切り替えていくことができるのかどうか。
確かにJR西日本の皆さん方の取組は、このほど新しい企業理念と安全憲章を作られたということで、私はそのことは非常に評価されるべきだと、大変な社会的な犠牲を払った上で、ようやく私どもこういうようなものにたどり着いてきたと、こういうふうなことでございます。ただ、今の時点で申し上げれば、立派な文章ができただけでは意味がない、法の目的に沿って実質、実態を伴った経営の方向に転換されていくのかどうか、これこそが一番大事ではないのかということを含めまして、更に大臣のご見解、そして決意をお伺いしたいと思います。
○北側一雄・国土交通大臣 公共交通の事業者の方が、それが民間企業であっても、公共交通を担うという方々にとって安全最優先というのはもう社会的な極めて使命を担っているわけでございます。それがまず大前提でありますから、経営者の方々はそのことをまず意識を強く持ってもらう必要があるし、しっかり行動を取っていただく必要があるというふうに思うんですね。
それを前提にして申し上げたいと思うんですが、私、安全性の確保と利益追求とが矛盾するとは思っておらないのです。民間企業ですから利益を上げていこうとするのはこれは当然のことでございまして、この運輸、特に運輸の部門において一たび事故が起こったり、またトラブルが連続して起こったら一体経営状況がどうなっていくのかということは、この一年見れば明らかなことでして、もう国民から、利用者から不信感を持たれて、そして結局は収益だって上げれなくなってしまうわけですね。やっぱり公共交通事業者にとっては、安全確保をしっかりやっていく、それに努めていくということは、まさしくその社の利益を確実に上げていくためのこれもまたもう最大の対策でございまして、そこのところを是非経営陣の方々には本当に身で知っていただきたいというふうに思うんです。極めて、何といいますか、表面的な、短期的な収益云々を見てらっしゃるのではなくて、やはり安全対策を着実にしっかりとらえていくということが、それが結局利用者に対する信頼を高め、利用者が利用することになって、その社の経営にプラスになってくるわけでして、そこのところを是非わきまえていただきたいというふうに思っております。
○加藤敏幸 私は大臣と異なった立場でもないし、今言われたとおり、もうお互いに100%そのとおりですと。しかし、そのことができてない現実があったから事故が起こっているし、先ほども言われたスカイマークにしても、正にどう考えているんだ、こう言いたくなるということですから、利益追求の前に安全第一なんだと、その安全をおろそかにしたら会社つぶれるよと、何千人という社員が路頭に迷うよということを、正に現実、もう骨の髄までやっぱり理解してもらうということのために、そこに座っている皆さん方、大臣は今お話聞きましたから、私と全く考え方一緒ですから、ほかの局長さんを含めて皆さん方が、本当にそのことを徹底するんだと、この決意を持っていただきたいと、またそうでなければ表面的なことだけではこんなものなかなか浸透しない、こういうことです。
2、経営トップの責務・責任
○加藤敏幸 経営トップの責務、責任と、大臣からこういうお話をいただきましたので、お話を踏まえたご質問を申し上げたいと思います。
今日、米国型の市場経済主義が経営者の評価軸を形成している、評価軸を形成していると、経営者のいい悪いは米国的な市場経済のこの尺度、これで査定しますよ、こういう風潮の中で、企業経営者あるいは経営管理部門の「利益よりも安全を優先させる」という動機をいかに引き出していくかがこの問題における国の政策ではありませんかと。
今回の法改正で、それぞれの法律の目的に「輸送の安全を確保し」という文言が付け加えられました。これ質問取りのときも担当の方はそう言うわけですよ、いろいろ言うけれども、法律の目的に「輸送の安全を確保し」とちゃんと入れましたと。これまで、どちらかといえば安全対策は担当者任せ、現場でうまくやってくれ、みんな頑張れよ、こういう意識が強かったために、なかなか本当にトップの仕事、責任ですよという、そういう魂が入らなかったんではないですか。政府として、経営者の意識改革、特に経営者を本気にさせるということについて、私はどのようにアプローチをされるのかお伺いをしたいし、あわせて、個別の経営者への働き掛けだけではなくて、経営者団体の役割も大きいと。経営者団体自身がどういうビヘイビア、経営者の評価軸を考えていくのか。私は、ここ十年間、やっぱり利益第一の経営者理念というふうなことを前面に展開してきたのではないですかと。
加えて、経済ジャーナリズム、この影響力も加味しなければならない。経済ジャーナリズムが経営者にとって安全確保がまず第一なんだというキャンペーン張ったことあるのか、こういうことも申し上げまして、何回も聞くようで大変、私気が弱いもんですから、つらいんですけれども、お願いしたいと思います。
○松村龍二・国土交通副大臣 先生の安全に対するご卓見を、正にそのとおりだというふうに思います。
私も、昨年十二月に羽越線の列車転覆事故がありまして、大臣とともに現場に参った次第でございます。最近、異常気象でございますので、従来考えられなかった突風が吹いて、まあ不可抗力の事故であったかのようにも見えますけれども、かつては国鉄の職員もたくさんいて、その辺にどういう風が吹くというふうな、その地域出身の職員がいるとか、いろんなことを指摘する方もいたわけです。したがいまして、今ご指摘のようなことに基づく、安全がおろそかになるかもしれないといった面と、またいろんな観点があろうかと思います。
このたびの法改正は、今お話のありました法の目的をはっきりうたったということと、安全管理規程を届けさせると。これは、事業者が遵守すべき輸送の安全を確保するための事業の運営方針に関する事項、輸送の安全を確保するための事業の実施及びその管理の体制に関する事項、その他実施及びその管理の方法に関する事項をしっかり社長直々に決めさせると。そして、安全統括管理者を選任させる。その内容が不備であれば、国土交通省がこれを変更させると。また、その後に安全統括管理者が職務を怠った場合には、国土交通大臣が解任すべきことを命ずることができるといったような、非常に事業者ぐるみ、安全についてあらゆる観点から取り組まざるを得ないといった安全管理規程を届けさせるということを法律に盛り込んだわけでございます。
そのようなことと、また、国及び事業者が輸送の安全を確保するために講じた措置及び講じようとする措置その他の輸送の安全にかかわる情報を公表しなければならないということで、国民の監視が、利用者からの監視が行き届くというふうに措置しているものでございます。さらに、本法案の施行に合わせまして運輸安全マネジメント評価を国が行うということで、事業者を安全管理体制の監視をするということも法律に盛り込んだところでございます。
これらの措置によりまして、事業者において安全を最優先にする動機付けが適切に確保されるよう努めてまいりたいと思います。
○加藤敏幸 今日時点では、そういう法的な措置をとるということが私はある意味では適切だし、必要性が高いと思いますけれど、民間で育った私の感想を申し上げれば、そこまで国土交通省に手取り足取り言われなきゃできぬのかいなと。そんな恥ずかしいことはないでしょう、そんなことを自分たち、主体的にちゃんとやっていくというのが、本当はこれは僕たちは運輸で事業をやっている事業者としてのプライドではないかという思いもあるわけです。そうはいっても現実を見たときに、そこまで求めなければ国民の安心、安全というものは今は確立できないという現状において、仕方がないと思いますけれど、運輸事業者の皆さん方、社長さん方に並んでいただいて、本当にここまで言われてあなた方は恥ずかしくないのかと、そういう議論もやってみたいと、こうは思いますけれども。まあこれはこれでおいときまして、時間ありませんので、次の質問に移したいと思います。
3、製造業から学ぶべき安全活動のあり方
○加藤敏幸 さて、企業トップが安全対策、安全活動の先頭に立つというのは、もうこれは当然だなということであります。しかし、企業の経営トップが安全対策を主導すると言っても一朝一夕に実効が上がるものではないというのも私は現実だと思います。
そこで、厚生労働省の事例をご紹介申し上げますけれども、頻発する製造業の重大災害を契機に、これはまあ十年ぐらい前からいろんな事業所で大爆発が起こったり、随分起こりました。そこで厚生労働省は、平成16年3月16日に、「大規模製造業における安全管理の強化に係る緊急対策要綱」を出しました。ここでは、都道府県労働局幹部による経営トップに対する安全管理の徹底指導を打ち出した。そして、事業者という用語ではなく、はっきりと経営トップと。経営トップというのは代表権を持つ人たちのことだと、こういう表現をしておりますけれども、具体的に経営トップを招集した集団指導、安全管理に問題がある事業場ではトップによる安全衛生方針の表明、これは私どもの業界用語で言えば決意表明、これを行うことなど、かなり突っ込んだ対応を規定をしております。
しかし、安全に関して経営トップがやる気を持って動いても、往々にして現場まで浸透しなかったりする。つまり、セレモニー化してしまって、笛吹けど踊らずのケースというのは、これは経験上もう山ほどあるということであります。経営トップ並びに事業所のトップの意識を変えること、そしてそのトップの意思が末端まで徹底されること、またトップは現場の様々な情報や従業員の意見、知見に徹底的に耳を傾けていくことが求められます。
「火の用心」、社長が「火の用心」言ったら守衛の皆さん方も「火の用心」、これじゃあかんのです。社長が「火の用心」言ったら、みんなガスの元栓を閉めるとか自分の周りのたばこの灰皿を始末するとか、具体的なそういう点検行動に結び付かなければ、トップは「火の用心」、下のみんなも「火の用心」、これではスローガンをお互いに呼称し合っていると、こういうことになるわけでして、そういうことを含めまして、今後、国土交通省として経営トップに対して日常的にどのような指導をされるのか、お伺いしたいと思います。
○杉山篤史・政策統括官 先生ご指摘ございましたように、公共交通機関の輸送の安全を確保するためには、経営トップが現場の声を適切に吸い上げまして、その安全管理体制を構築していくということが大変重要であるということは私どもも認識しております。
今回の法案で作成を義務付ける安全管理規程におきましては、ご指摘のような認識を踏まえまして、経営トップ自らが安全第一を事業運営の方針として定めるということ、またその現場の情報が経営管理部門に適切に伝達されまして、さらに経営トップと現場との間の双方向のコミュニケーションが確立されますような、経営部門と現場間の相互の情報連絡体制の整備等、輸送の安全を確保するための種々の取組につきまして記載させることを予定しております。
先生にお話ございましたように、本来こういったことは、事業者自らが法律に義務付けられるまでもなく取り組んでいただくということが非常に大事であろうかと思いますが、いろんなこともございまして、今回、この際、こういうような法律改正をいたしまして、義務付けをするということにしたわけでございます。
このような安全管理が実践されることによりまして、経営管理部門とそれから現場との距離感が縮まり、現場からの情報を十分に踏まえた適切な事業運営を行う体制が構築されるという具合に考えております。
○加藤敏幸 この法律については私は激烈な応援団ということで今お話をさせていただいておるわけです。したがって、安全に対してはこの法律施行によって、考え方が変わったんだ、安全について世の中のパラダイムはこれで変わったんだと、こういうことを国民の皆さん方に、鮮やかに認識されるように、運動と言ったらおかしいですけれども、そういうふうにしてほしい。利用者も含めて、陸海空、運輸にかかわる安全の基本的な仕組みは変わったんだ、そして、利用者も声を上げていくんだと。「みんなでつくろう安全!」と。こういうことになると現場でやっていましたから、つい燃えてしまうもので、すみません、まあまあ、そういうことでこの辺にしておきますけれど。
そこで、現場の、特に製造業がずっとやってきたことから少し事例を紹介させていただきながら考えてみたいと思います。
近年、製造業においても重大な労災事故が発生をしました。よく官から民へ、民へと言われていますけれども、民間はそんなに立派な企業だけではないんです。民間だって間違ったことも一杯あるし、変なこともやってきたし、随分反省すべきことがあると。そういう試行錯誤の上で、しかしやっぱり安全を大事にしなきゃあかんなと。これはもうお客さんから信頼されませんよ。PL法もありますけれども、PL法以前に、私は家電製品関係を扱うところにおりましたけれども、もうお客さんところで火噴いたら終わりですから、後始末に何十億、何十億どころじゃないです。民間ではそういう経験の中で企業の安全対策、災害防止対策、それから製品に対する安全対策をやってきたわけです。生産、サービスの現場での安全対策に対する長い歴史と実績、そして先ほど言った言わば試行錯誤、そういう中で努力をしたわけであります。今回、乗客の大量輸送を担う運輸事業者に改めて安全確保のための施策がいろいろと講じられておりますけれども、一般の製造業に携わる私たちから申し上げれば、今更という気もしないでもないと、その感が強いと。
そこで、私はこれまでの民間の安全対策事例を大いに学んでいただきたい。恥ずかしいかもしれないけれども学んで、そして安全を確立してほしいと。生産現場というのは安全が第一でありまして、労災が発生しますとラインを止めます。自動車のライン止めると何億という損害なんです。しかし、軽微だとかどうだとかということにかかわらず、まずラインは止める。止めることによってそのラインを管理する管理者にとってとんでもないマイナスだと、しかし、あえてそのことを労使が受け止めて、徹底してその対策、原因の究明と対策をする。
こういった製造業の安全活動の実情について学ぶべきではないかと、お考えがあればお願いします。
○北側一雄・国土交通大臣 冒頭のご質問にありましたように、安全に対する意識が希薄化をしているのではないかという問題は、これは単にその運輸事業者だけの問題ではないと思ってます。日本社会全体の中でそういう意識が弱くなってしまっていないのかどうか、そこを本当に私どもはよく見ていかないといけないと。そこをどうすればその意識を強く持てるようになるのか、そこを見ていかねばならないと思っております。
自動車産業であれ、また家電メーカーであれ、その工場での、現場での安全確保、また、そもそもそうした商品はすべて利用者、消費者のところに届くわけでございまして、利用する際の当然安全が第一。利用者の方々が安心して安全にその商品を利用していただけるようにすることが最も大事なメーカーのやはり役割だと思います。
そういう意味で、各製造業の分野においても、これまで安全、現場での安全確保、さらにはそもそも商品の安全性確保、そうしたことに大変な努力をされてきた経験というのは当然あるわけでございまして、そこのところを運輸事業者のところも参考にしていくと、参考にしていけという今のご質問につきましては、是非そうした方向で謙虚になってやっていくべきであるというふうに思っております。
4、安全対策費用は利益の阻害要因か
○加藤敏幸 ありがとうございます。
次に、安全対策の徹底を考える場合、安全対策のコストとそれから事故対策コスト、これを比較するということを一回やってみる必要があると。
大臣のお話の中にも少し出てきましたけれども、事故予防コストの方がはるかに安いと、結果からいえばこういうことだと思います。安全予防のためには投資や対策を惜しんではならない、使った金というのは意味があるんだ、こういうことを広く世間の常識として広めていくことが重要だと。
そこで、福知山線脱線事故の、いわゆる事故の結果起こった損害、事業者からいえばコスト、このことがどのぐらい見込まれているのかということをお伺いをしたいと思います。運休による収入減、死亡者、けが人への補償、まあこれまだ確定していないところもたくさんございますが、物損、住民への補償、それから線路の復旧、改修費など、見込める範囲でお答えをいただきたいと思います。
○梅田春実・鉄道局長 昨年4月25日の福知山線の事故によりまして、事故当日から6月の19日まで、営業を再開するまでの55日間でございますが、福知山線が運休いたしました。JR西日本の見込みでは、第三・四半期決算をベースにはじきました数値といたしまして、この一年度中の見込みを含めて、これからもうちょっと数日残っておりますが、考えますと、まず運休による運輸収入の減収で約20億円、それから運転再開後に旅客の転移等の影響が残ったために今年度で約3億円の減収が見込まれておりますので、このベースでいいますと計23億円の減収となります。また、線路の復旧費等で14億円掛かっております。他方、お亡くなりになりました方々の葬儀費用、それからおけがをされた方々への治療費、それからマンション住民の引っ越し等の費用といたしまして約39億円となっております。
先生ご指摘のように、まだ補償とかそういうのは一部しか進んでおりませんので、そういうものの見込みはまだ立ちません。さらに、運休期間中の関連会社の減収といたしまして約3億円がございまして、全体で、JR西日本連結ベースで総影響額は現在のところ約79億円と見込まれているところでございます。
○加藤敏幸 現時点での損害がそのような莫大な金額であり、今後も増えるであろうし、これは直接的に算定できるマイナスであって、それ以上に企業イメージなり、いろいろある。
これも考えていくと、株主からいったらどうなんだ、やっぱり株主は怒る。そういう意味で、経営者が持つこの事故による経営責任というのは、人の命を失った、そして多くの人がけがを、与えたという、これお金に代えられない、そういう大きな責任と同時に、経済的にも、そしてこの事業体にとっても極めて大きな損害をまさにだしておるということでして、もう少し安全について事前にコストを掛けておればこんなことにはならなかった、事故が起これば常にそうなんです。
だから、私は経営者自身が、そして従業員もすべて理解をしていく、やっぱり安全対策は安いんだ、決して利益を阻害する要因ではないんだということを徹底して私は展開していく必要があると思います。
5、安全統括管理者の選任のあり方について
○加藤敏幸 次に、今回の法改正によって選任されることになりました安全統括管理者について質問をいたしたいと思います。
この安全統括管理者の選任問題というのは、人事問題が絡んだり、取締役会において本当に権限を行使することができるのかといった問題が指摘されておりますけれども、最も基本的なことは、安全統括責任者には一体どんな資質が求められるのか、私は、現時点では、何よりも現場を一番よく知っている人であるべきだというふうに考えますし、法改正案では、「鉄道事業に関する一定の実務と経験を備える者のうちから選任する」と、まあ何となく無味乾燥な表現でございますけれども、これが本当に目的どおりにそういう人が選任されるのか、そういう機能が取締役会の中で保証されるのかどうか、ここについてご見解をお伺いしたいと思います。
○杉山篤史・政策統括官 安全統括管理者についてのお尋ねでございますが、先生お話しございましたように、この安全統括管理者は、事業者の経営管理部門におきまして、その事業に関する深い理解等を基礎といたしまして、経営トップに意見具申するということ等を通じましてその輸送の安全を確保するための事業運営を統括的に管理するというものでございます。このため、選任に当たりましては、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者であること、それから今先生ご指摘もございましたように一定の実務経験等を満たす者、それを選任要件としているところでございます。
一定の実務経験とは何かということであろうかと思いますが、これは、やはり事業者におきまして輸送の安全を確保するための事業運営というものを統括的に管理する業務を的確に行えるように、その事業の運営に関する必要な見識というものが非常に重要だと考えております。そういった必要な見識が得られる程度の実務経験であり、具体的なこれは経験年数ということにこれからなっていこうかと思いますが、この辺りにつきましては、これから各輸送モードの実情等も踏まえながら、今後検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
○加藤敏幸 これからの検討項目ということで、今日時点でそうそう具体的イメージはなかなか出しにくいと、こういうことだと思います。
やっぱり体張って安全を確保するという、そういう方なんでしょうね。そして、現場は分かっていますと。現場のことも分からずに安全統括管理者になってもこれはしようがないなということから、おのずからはイメージが出てくるんじゃないかなと思いますけれども。
ややもすると、こういう安全統括責任者を置けば一応は事足れりと、本当に仏作って魂入れるのかと。この安全統括責任者が本当に機能する、そういうことを私はこれから国土交通省さんとおかれましても一番大きなポイントとしてフォローをしていっていただきたいと、このように思います。
これは今後の課題として、安全統括責任者を辞めさせることができると、こう言っていますけれども、辞めさす側の今度は責任がこれは発生しますから、勝手に選びなさいということじゃなくて、あんたは安全統括責任者として不足ですということを判定して、辞めさせた場合には、それをした行為者の方に大きな責任もやっぱりあるわけですから、そういうふうなこと含めて、国土交通省さん、本当にこれ逃げれないということを僣越ながら申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
6、安全を支える職場風土づくりについて
○加藤敏幸 さて、少し追い打ちを掛けるようでありますけれども、経営トップは、きちっと決意を持って安全をやります、管理体制もできましたと。問題は、日々の安全を支えている現場の社員、従業員、関連会社の皆さん方、この人たちが、この安全を支える、安全を支えていくということと自分の仕事、このことが有機的にしっかり組み込まれておらなきゃいけない。もっと言うと、安全を守ることが社会に対する責任であると同時に、自分たちにとっても必要なことだし、そして自分たちの労働条件だとか雇用だとか自分たちの誇りだとか、そういうふうなことも守るためにも大切なんだという、このやっぱり一体化をどうつくっていくかということが私は次の大きな課題ではないかと、このように思っておるわけであります。
参考人のお話の中にも、組織とかシステムには限界があるんだと、こういうことを専門家にずばっと言われました。どんなにやってみてもやっぱりシステム限界があるんだと。そして、それを支えて仮に万が一起こったとしても、最小限の事故にするとか救出を的確にやるとか、あるいはそのシステム限界を乗り越えるだけの日常の仕事をやっぱり心血を注いでやっていくというのは、一人一人の私は現場、私に言わせたら職人、こういうふうな現場の皆さん方の使命感やモラルというふうなことだと思います。
したがって、お一人お一人のこのモラルをきっちり高めていくというふうなことを大切にするためには、各企業の職場風土や人事労務政策というふうなものに直結する問題でありますし、労働組合の皆さん方もしっかりとこのことの大切さを認識をして、日々そういうことを実践していくと、こういうふうなことではないかというふうに思います。
この辺の話になりますと行政としてなかなか立ち入れないというふうには思いますけれども、やっぱりポイントであることには変わりはないということですので、是非心に留めておいていただきたいと思いますし、なかなかお答えは難しいと思いますが。
○杉山篤史・政策統括官 大変難しいご質問でございます。
先生ご指摘のとおり、ヒューマンエラーによる事故あるいはトラブルの発生等を防止するためには、経営トップから現場に至るまで安全最優先の意識が徹底されまして、安全に対する高い使命感やあるいはモラルが醸成されるということが大変重要であるという認識を私どもも持っております。
この法律案におきましては、ご指摘のような考え方の下、事業者に安全管理規程の作成の義務付け等を行いまして、経営トップ主導の下、経営管理部門から現場まで一丸となった安全管理体制というものを構築していただきまして、現場の一人一人に至るまで安全意識の浸透、安全風土の構築を図るということを目指してまいりたいと思っております。
○加藤敏幸 今日は、このテーマについてはこの辺で、次の質問に移りたいと思います。
7、報告義務の拡大にともなう航空局の体制作りについて
○加藤敏幸 今回、航空法の改正では、安全上の支障を及ぼす事態の報告義務が新たに課せられております。今日段階でも我が国航空会社のトラブル、ミスが続発をしておりますけれど、この制度がスタートすればかなりの量の情報が国土交通省に上げられてくるものと思われます。
そこで、当然、この情報を分析をし、その背後にあるいろいろな問題、課題を指摘して、各社の安全対策にこれは生きた形で生かしていかなければこれはもう何にもならない。航空局として、こういうふうに情報が上がってくることに対して本当にこたえられる体制を、マンパワー、専門性などを含めてどのようにされるのか、お答えをいただきたいと思います。
○岩崎貞二・航空局長 先生ご指摘のとおり、今まで事故と重大インシデントを法律上報告しろと言っておりましたけれども、今回は事故には直接つながらないものの輸送の安全に影響を及ぼすような事態、こういうやつも広くちゃんと法律上の義務として報告してくださいと、こういうふうに言っておるわけでございます。こうしたものにつきまして、先生ご指摘のとおり私どもでこう集めているだけではしようがないんで、それをちゃんと分析をして各エアラインに返していくということが重要だろうと思っております。
体制といたしましては、18年度に航空安全推進室というのをつくりまして、6名の室でございますけれども、うち5名は純増でやっていきたいとおります。一つは、例えばある会社にこういう事故、こういうトラブルがあったというのをほかの会社にちゃんと返していくことだと思っております。もう一つは、ある程度の統計的な分析もして、こういう機種ではこういうトラブルが多いとか、こういうところは注意しろというようなことも、ある程度の数が集まりますと統計的な分析もできるかと思っておりまして、そうしたことについても勉強していきたいと思っておるところでございます。
○加藤敏幸 余分のことですけれども、やはり現場を分かった人でないと仕事が、私一番言いにくい言葉ですけど「お役人的」になるよと。だから、単に員数合わせとは言いませんけれども、いわゆる従来の霞が関の考え方で人を置きましたということだけでは私は不足があるし、上がってきた情報の背景を洞察できるそういうレベルの人を置かないと、単に情報をくるくる回しましたと、他社にも全部やりましたと、そういうふうなファクスで配付するということだけ、あるいは統計データを取って、起こったことを2年後にこうだった、ああだったとこう言われたって、問題は起こる前に、そのことがアラームを出していることを読み解いて、だったらこういうことをやらにゃいかぬなというそのアクションにつながる、そこまでやれる人をこの推進室に置いてくださいと。置かなきゃ、また何年後かのこの交通委員会でまたがんがん出ますよと。私はそれはやっぱりきちっとやった方がいいですよということを申し上げたい、何かございますか。
○岩崎貞二・航空局長 私どもの体制、大変恥ずかしゅうございますけれども、どちらかというと余りこうした分野に人が今までいなかったものですから、エアラインからこの霞が関で話を聞いて、それに対してどう対応していくというようなことが、ややもするとそういうふうになりがちでございましたが、今回この安全推進室の人間のほかにも現場の立入検査の要員として20名の要員を増員認めていただきましたので、できるだけいろんなことで現場に行って、現場の声を聞きながらちゃんとやれるような体制を組んでいきたいと、このように思っているところでございます。少し時間が掛かるかもしれませんけど、頑張っていきたいと思っております。
8、ヒヤリ・ハット情報を生かすために
○加藤敏幸 次に、ヒヤリ・ハット情報に関連してお伺いいたしますけれども、これもよく言われていますハインリッヒの法則に基づき大事故を未然に防ぐ安全活動の一つとしてヒヤリ・ハット情報の活用は重要であります。これもまた製造業においては日常当然のことのように取り組まれておりますし、運輸産業においても多くの事業所でこの取組が行われているとお聞きしております。
問題は、職場でヒヤリ・ハット情報が的確に吸い上げられるかどうか、また集められた情報が事故の予防策に十分生かされていくか、そういうシステム、またそういうふうな思いが企業の中にあるかどうかと、こういうことであります。職場の人間関係、日常的な労務管理や、まああるいは労働組合の皆さん方の活動姿勢によっては、ミスやトラブルを表に出すのをためらわせるような、そういう雰囲気のある職場もないわけではないと、このように思うわけであります。別に今ある職場の私は問題点をあげつらうと、そういう気持ちじゃなくて、安全のためには少々言いにくいこともお互いに言い合うと、こういう風土がなければ駄目だと。
そういうことで、この制度を機能させるためには、まず事故を未然に防ぐ様々な試みが企業への貢献行動として企業の中で尊重されると。「おまえが要らぬことを言ったおかげで300万対策費掛かる、こんな予算を予定してなかったのに大変だ、また経理部長から怒られるじゃないか」と、そんなことじゃなくて、「よくぞ早く言ったぞと、表彰ものだ」と、そういうふうな風土をつくらなければならないと、このように思います。
今回の法改正において、安全管理規程の中身にかかわってくるものと考えますけれども、国土交通省として制度の運用面などにおいてどのように各事業者を指導されているのか、この辺りについての、まあこれも難しいといいますが、大体こういう質問が難しいと感じるようじゃ駄目なんです。ひとつよろしくお願いします。
○杉山篤史・政策統括官 先生ご指摘ございましたように、公共交通機関の安全性を向上させていくというためには、いわゆるヒヤリ・ハット情報と言われているようなものを事業者において確実に共有をすると、そして、その共有されました情報に的確に対応をしていくというシステムを構築していくということは、これは大変重要なことだと私どもも認識しております。
そのような認識を踏まえまして、今回の法案で作成を義務付ける安全管理規程の記載事項といたしまして、正に現場の情報が経営管理部門に適切に伝達されるような経営管理部門と現場間との情報連絡体制ということ、またこれらの情報を踏まえまして安全管理システムの適切な見直しが随時行われると、こういった対応が適切に行われるようなこと、こういったことも含めまして安全管理規程の記載事項としてきちんと記載されますように私どもとしても指導をしてまいりたいと思っている次第でございます。
○加藤敏幸 さらに、関連をいたしまして、運輸安全マネジメント態勢構築に係るガイドライン等検討会が2月15日にまとめられました「安全管理規程に係るガイドライン」がございますけれども、その9番目の項目に関係法令等の遵守の確保が挙げられております。この項目では、当然企業トップや安全統括管理者の責任の範疇にありますけれども、このコンプライアンスの問題は内部告発との関連で少し議論をしておかなければならないと、このように考えます。
企業トップや安全管理者がすべてのことを掌握はできておりませんし、そんなことをやっていたら仕事にはならないというそういう側面もございます。企業幹部が法令違反にかかわるケースが多々ある中で、社会の安全を確保するためにも、運輸においても内部告発の位置付け、これがやっぱり議論の対象になってくると思います。
そこで、今年4月1日から公益通報者保護法が施行されますけれども、安全にかかわる内部告発に関し、当然通報先が行政機関になるケースが出てき、その場合には国土交通省さんがその受け手になる、このケースも出てくると思いますけれども、対応、準備態勢等についてお答え願いたいと思います。
○杉山篤史・政策統括官 ただいま先生ご指摘ございました公益通報者保護法でございますが、これは、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置を定めたものでございます。
本法案の改正対象としております鉄道事業法等の運輸事業に関する公益通報につきましても、もちろんこの対象となると認識しております。この場合、運輸事業者の職員が公益の目的で運輸事業者、行政機関等に対しまして違法行為に関する通報を行った場合には、当該職員に対する解雇の無効、不利益の取扱いの禁止等の効果が生じることとなりまして、公益通報を行った職員の事業者における保護が図られるものという具合に認識しております。
先生ご指摘のございましたヒヤリ・ハット情報等、これはまあ必ずしも違法行為に結び付くものではございません。やはり安全性の向上に関しまして有用な事項だと私ども考えております。したがいまして、その通報につきましては、公益通報者保護法の対象とはならないとは思っておりますが、やはり事業者内で確実に共有し的確な対応を行うということ、あるいは、先生ご指摘ございましたように、行政等に通報があったという場合には、やはり大変その安全性の向上に取りまして重要な情報だと私ども認識しておりますので、適切な対応を行えるようにしてまいりたいと思っております。
○加藤敏幸 ただいまのお答えは、公益通報者保護法にかかわる問題と、それには当たらないけれども、現場におけるヒヤリ・ハット情報についても情報者が、そういうふうなことを言う人が不利益に当たらないように当然各企業とも努力すべきだと、二つのそういう内容が含まれていたというふうに思います。
そこで、少し事例で申しますと、2001年に食中毒事件を起こしました雪印さんが、その後、社内通報制度を確立をいたしまして、新聞等で紹介されておりますけれども、通報者の半年後の処遇を検証し、結果を社内倫理委員会に報告するなどして、通報者が知らぬ間に左遷されたとか、そういう不利益を被らないように二重三重のチェックを行っているということでございます。いろいろと問題を起こした各民間企業の皆さん方、いろいろ努力を重ねて、やっぱりそこは、表面づらだけの制度ではなくて、今申しましたように、二重三重のやっぱりチェックをやっていかないと魂が入らないと、これもまあ民間の各企業の教える、一つの経験の教えるところでございます。
そういうような意味で、これから先の話ではございますけれども、同様、公益通報者保護法と、それには当たらないけれどもそれに準ずるその他の情報に関しましても、正に職場における社員、従業員が積極的にそういう発言ができるような体制の、風土の醸成に励んでいただきたいと、これはもう要望ということにしておきたいと思います。
9、航空機・鉄道事故調査委員会のあり方について
○加藤敏幸 次に、事故調査委員会の在り方についてですけれど、航空機・鉄道事故調査委員会の在り方につきましては、衆議院におきましても、また前回の当委員会におきましても突っ込んだ議論が行われてきました。しかし、まとめるという意味でいま一度質問をさせていただきたいと思います。
この事故調査委員会により独立性を持たせるべきだという考え方は、信楽高原鉄道事故の遺族による鉄道安全推進会議の提言が出発点になっております。この提言にはこのような鉄道事故は二度と起こしてはいけないという多くの被害者の遺族の方々の強い思いが込められて、事故の予防を前提とする原因究明にはやはり事故調査委員会が独立していなければならないという主張でございます。
政府といたしましても、この事故調査委員会の独立性についていろいろ議論をされてきたわけでございますが、組織的には依然として国土交通省の所管に置かれているという状況にございます。事故調査委員会の独立性の問題は、例えば警察、検察の調査から独立をする、あるいは監督官庁からの独立、さらにはハード面に重点を置いた調査からの脱却、そういう意味での独立性など幾つかの論点がございます。また、航空管制に関しては、国土交通省の出身者が多数を占める調査委員会の事務局が同じ仲間に対して厳正中立の立場で事故調査ができるのかという問題提起も指摘されております。
現時点で、また現制度において、航空機・鉄道事故調査委員会の実質的な独立性が確保されているのかどうか、そのことについての見解をお伺いしたいと思います。
○福本秀爾・航空・鉄道事故調査委員会事務局長 まず、警察との関係につきましてお答えを申し上げます。事故調査は事故原因の究明を目的としてございまして、警察の司法調査、司法捜査とは目的が明確に区別をされておるところでございます。しかしながら、いったん事故が発生をいたしますと、現場におきまして私どもの事故調査と司法捜査が往々にして競合をするという場合がございます。それぞれの業務が円滑に実施されますよう、必要な協力及び調整を図るために覚書及びその細目というものを取り交わしておるところでございます。
その覚書及び細目によりまして、通算いたしますと、もう30年以上にわたりまして、ほぼ1300件に上る事故調査を今まで支障なく的確に実施をしておるという認識を持っておるところでございます。
今後につきましても、この覚書等の趣旨に沿いまして、捜査機関とも十分な協力、調整を図りながら的確な原因究明の調査に引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
続きまして、国土交通省に置かれておることにつきましてのご質問でございます。
ご指摘のとおり、航空・鉄道事故調査委員会は、その前身である航空事故調査委員会以来、旧運輸省、さらには国土交通省に置かれておるところでございます。これは、事故調査を円滑かつ効果的に実施するに当たりましては、国土交通省との緊密な協力の下に行うことが有効であるという考え方に基づくものと承知をいたしてございます。
一方、委員会が行います調査の独立性につきましては、これも十分に確保がなされなければならないという具合に考えてございます。そのために、この委員会の設置法におきましても、「委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。」という規定がございます。また、その委員長及び委員の任免につきましては両議院の同意の下に行うということとされてございまして、委員会は国土交通行政に対しても独立機関としての立場からこれまでも積極的に事故防止対策等の提言を行ってまいっておるところでございます。
具体的に申し上げますと、国土交通大臣に対しまして、事故防止のために講ずべき施策ということで、勧告を航空につきましては3件出しております。さらには、建議につきましては、航空に関して16件、鉄道に関して2件、合わせて21件を行っておるところでございまして、独立をしておるということの証左ではないかと考えてございます。
さらに、平成13年1月に発生いたしましたJAL907便のニアミス事故につきましてのご質問でございますが、私どもの当委員会は、事故調査官が公正中立の立場から、当該管制業務を行っておりました管制官から事故発生時の状況につきまして直接に口述聴取を行いますとともに、管制官の資格あるいは教育訓練の実施状況、さらには管制交信記録等につきましても詳細かつ多岐にわたる調査を行いました上で、平成14年7月、調査報告書を国土交通大臣に報告いたすとともに、公表したところでございます。
具体的に申し上げますと、このような報告書、238ページにわたる詳細な報告書を公表いたしてございますが、その中で、事故の主な原因の一つといたしまして、管制官が907便と958便を取り違えて指示したという点も挙げてございまして、このような事態の発生を防止するため、国土交通大臣に対しまして、航空交通管制業務の的確な実施等を内容とする勧告及び建議も行っておるところでございます。
このように、当委員会は、独立して事故調査を行う機関といたしまして、航空管制に関しましてもその職責を十分に全うをいたしておるものと考えておるところでございます。
○加藤敏幸 調査委員会の皆さん方に、あなた方、本当に独立しているのと、こう質問したら、独立してますと。していませんと答えたら、これ、大ごとになりますから。そういうような意味で、お答えはもうこれは予想したとおりだし、それ以外ではないと、こう思います。
ただ問題は、十年、二十年という、こういう長い期間を掛けて本当に遺族の方、そして被害に遭った皆さん方、そして国民の多くの方が納得ができる報告書だ、なるほどな、やっぱり解明されて、そして対策に寄与するいい報告書だということが専門家の目からも、私はその評価をもって初めてこの独立性というのはやっぱり検証されるということではないかと、こう思うわけでありまして、今日とやかく言うことはございませんけれども、そういうような目で、これからもご検討を本当に頑張ってやってほしいということを申し上げておきたいと思います。
次に、事故調査委員会の調査内容は、当然事故原因の究明とともに、これに関連した事故予防という視点も大きく打ち出さなければならないと思います。また、事故原因についても、基本的に機械にかかわるハード面の問題あるいは運転指令など技術面での調査に限定せず、当該企業の安全面に関するリーダーシップやコミュニケーションといった企業風土や企業体質、さらには労務管理の問題を始め、そういったもろもろのソフト面に至る調査を行うべきだと、こういうふうに考えておりますし、そういう声もまた強うございます。
今回の法改正によって、法の目的として、事故が発生した場合における被害の軽減に寄与することと講ずべき施策について勧告、建議ができることが追加されましたが、本当に事故予防を主とする十分な調査ができるかどうかは、今後の調査委員会の活動に掛かっていると言えます。
今回の福知山線の事故調査についても、我々としてはこの点で大きな期待を寄せているわけでございますが、事故調査委員会としていかに調査機能を高めていかれるのか、そのためにはどのような施策を講じられ、何が必要なのかということも含めて、ご見解をお伺いしたいと思います。
○福本秀爾・航空・鉄道事故調査委員会事務局長 お答えいたします。
事故調査におきましては、もとよりハード及びソフトの両面から多角的に行うことが極めて重要でございまして、委員ご指摘のJR福知山線列車脱線事故を始めといたしまして、これまでも事故の背後要因を含めた総合的な観点から事故の再発防止に資する調査を進めてきたところでございます。
今般、私どもの委員会設置法の改正をお願いをいたしてございまして、その内容といたしまして、新たに事業者の事務所への立入権限でございましたり、あるいは事業者が有しております書類あるいは帳簿といったようなものに対します調査権限が明確に規定をされることとなりますので、背後要因を含めましたこれらの調査が更に円滑化されるものと期待をしておるところでございます。
あわせまして、事故調査官の増員を18年度から7名、企画調整課で6名、トータル13名でございますが、増員も実現を見るところでございます。その調査官の研修等を踏まえまして、特にヒューマンファクター、サバイバルファクター、その他背後要因等も含めまして、その調査能力の向上に努力をしてまいりたいと考えております。
10、航空管制の安全管理の徹底化について
○加藤敏幸 さて、航空の安全性確保を図るという場合に、私どもは航空管制業務における安全確保も重要視しなければならないと、このように考えております。
先週の20日に東京地裁で、航空管制のミスによる日航機ニアミス事故の刑事責任について無罪とする判決が出されました。先週の当委員会でもこの判決の是非について、まあ是非というんでしょうか、受け止め方についていろいろと議論がございましたが、基本的には空の安全にとって航空管制業務の的確な運営が不可欠であるということでございますし、我が国のように空域がなかなか、米軍含めまして非常に複雑になっているという現実の中で、この航空管制業務というのは非常に重要であると、こういうふうに思います。
航空管制のトラブルやミスは極めてヒューマンファクターの強いものがあるということでございますので、国土交通省内部において航空管制の安全管理の徹底化が望まれるというふうに思いますが、これまでの対策あるいは今後の対応方針についてお伺いをしたいと思います。
○岩崎貞二・航空局長 私どもの管制も本当にしっかりしなきゃいかぬと、こう思っております。
まず、対策の一つとしましては、どうしても管制官、パイロットの交信でやっておるわけでございますけれども、やっぱりヒューマンでやりますとやっぱりミスが起こりがちなことは否めないところがございますので、できるだけやっぱり機械でバックアップできるようなシステムをつくっていきたいと、こう思っております。
具体的に申しますと、907便の対策の一つでもあるんですけれども、管制官が管制間隔をこういうふうに取りなさいよという指示をしているわけでございますけれども、指示が十分に伝わらなかったりして近寄る場合に警報が出ると、こういうことを、よりきっちりした警報が出るようなシステムを作るとか、そうした機械の資源というのが重要だろうと、こう思っております。
それから二つ目は、先生もお触れいただきましたように、やっぱり狭い空域、狭い航空路でやっておるとどうしてもミスが起こりがちでございますので、できるだけ空域、航空路を合理的なものにしていきたいと、こういうふうに思っております。そのために、なかなか実現しておりませんけれども、横田の空域の返還なんかも含めて積極的に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
それから、やっぱり管制官の質の向上も必要でございまして、技量の向上も必要でございますので、訓練の体制の充実も図っていきたいと思っております。
さらにあわせまして、今回の法律の趣旨は、エアラインに対して、事業者に対してこういうことのようなことをやれと、こう言っておるわけでございますけれども、我々管制の分野も実は現場でございますので、私ども航空局の幹部と現場の方が意思疎通したり、いろんな現場の意見を聞いて、いろんなことを考えていくということもやっていかなきゃいけないと思っております。私ども、試行的に今、航空局でも現場の管制官とダイレクトトークをやったり、現場でのいろんなヒヤリ・ハットの情報なんかを上げさせるようなことを今試行的に取り組んでおるところでございますけれども、エアラインにこういうことをやれと言っているだけじゃなくて、私どもの方でも主体的に取り組んでまいりたいと、このように考えているところでございます。
11、連続立体交差事業について
○加藤敏幸 最後に、連続立体交差事業についてお伺いをしたいと思います。これまでの踏切対策に関する取組状況等につきましては先の質問で既にお答えがあったというふうに思いますが、この踏切における事故発生というのは、踏切がなければ起こらないわけですから、本質的に起こらないということでいけば、やはり踏切をなくしていくということが大切な施策ではないかというふうに思います。
そこで、先ほどもお答えがありましたように、連続立体交差事業というのを、特に過密な首都圏なり大都市圏を中心に展開はされているということでありますけれども、その思いなり気持ちは多とするものでありますけれども、現実、どこまでこの連続立体交差事業が進んでいるのか。聞けば、遅々としてなかなか難しいというのがお答えになるのではないかというふうに思います。正にこの密集地における連続立体交差事業は、膨大な資金を必要とする、また高度な工事技術も必要とされるし、工事期間も長期にわたり、なかなか事業者自身にとっても覚悟の要ることでありますし、またさらに、様々な規制もあってなかなか困難な事業の一つとなっているというふうに思います。
昨年12月に小田急高架事業認定に関する最高裁の原告適格の拡大に関する判決が出されましたけれども、元々この裁判は、連続立体交差事業における騒音、振動、電波障害などの公害問題、あるいは周辺の道路整備を伴う市街地の再開発の問題、そういうようなことも複合して起こされていると思います。
このように、連続立体交差事業を推進していくために様々なハードルがありますけれども、反面、地域のニーズも高い、あるいは問題解決の方法として優れていると、そして住民、地域の合意形成を図るなど、国も、また特に各自治体も努力をしていくべきだと、このように考えております。国土交通省として、この事業を推進する上での方針なり基本的な考え方を先ほどいただきましたので、改めてお答えを求めるわけではございませんが、しかし財政、財源の面でいろいろとご質問をしたいというふうに思います。
平成13年度予算からは鉄道事業者が負担する部分への貸付制度が始まりまして、来年度からはそこが無利子貸付制度になると、支援制度が充実しつつありますけれども、特別会計の予算などについて現状を説明されたいと、このように思います。
あわせて、この連続立体交差事業のように道路特別会計による関連事業、例えば地下鉄整備や無電柱化事業、土地区画整理事業といったまちづくり事業に特定財源が多く使われているということでございますけれども、基本的に受益者負担の原則に成り立っている、これがベースである特定財源の使い方、在り方も問われてくるということになります。
私はニュートラルな立場で質問をしておるわけでありますけれども、事業の目的と政策効果が明確にされるのであれば、ある程度は納税者の理解は得られるのではないかと、このようにも考えます。
踏切の渋滞対策、歩行者や通行車両の安全を図る踏切改良事業や連続立体交差事業が、目的性がはっきりしていること、しかも自動車ユーザーの意識にも優先度が高い事業であると、こういうふうなことと思いますので、現在の財政のシステムそのものについて問題はないと、このように考えますけれども、国土交通省としては、この連続立体交差事業の財源についてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○柴田高博・都市地域整備局長 連続立体交差事業についてのお尋ねでございますが、道路交通を円滑化するということ、市街地の分断要素の解消を図るといった観点から、平面に敷設されております既設の鉄道を高架化又は地下化する、極めて重要な事業でございまして、都道府県等を施行者といたしました都市計画事業として事業が進められてございます。
それで、この連続立体交差事業の費用負担ですが、同事業によりまして、鉄道を保有する鉄道事業者にも高架下の貸付益などの受益が生じることから、その一部を負担をしていただいてございます。それ以外につきましては、都市計画事業施行者、都道府県等が、市町村等が負担しています。
今回の法改正におきましては、まず、鉄道事業者の積極的な参画を得ますインセンティブとしまして、事業者の負担に対して新たに長期無利子貸付金を貸し付ける無利子貸付制度を創設するということにしてございます。また、予算の関係でございますが、同事業が踏切におきます交通渋滞や事故の解消に大きく寄与する事業であるということから、事業自身は道路事業として、道路特定財源を活用いたしまして推進に努めているところでございます。ほかの例、区画整理事業等の例もございましたが、これらにつきましても道路特定財源の活用というのはかなり幅広くやられているところでございます。
国土交通省といたしましては、連続立体交差事業の推進を図るべく、厳しい財政状況の中でも、来年度予算におきましても前年度以上の1767億円、これ事業でございますが、1.04倍を確保しているところでございまして、今後とも、道路事業として財源を活用させていただきながら積極的に推進を図っていきたいという具合に考えております。
○加藤敏幸 最後に一言、この国会は安心、安全と、特に乗り物の安全をしっかり確保して国民の皆様方の不安にこたえるということでございまして、この法律案が提起されました。問題は、「仏作って魂を入れず」にならぬよう、この法律に本当に魂を入れるというのは皆さん方の決意と行動に懸かっているということで、我々も大いにご支援を申し上げたいと思いますので、是非ともご健闘をお祈りいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
|