○加藤敏幸 ODA調査第三班について御報告いたします。
第三班は、去る2月12日から20日までの9日間、トルコ及びヨルダンに派遣されました。派遣議員は、米長晴信議員、鶴保庸介議員、仁比聡平議員及び私、団長を務めさせていただきました加藤敏幸の四名でございます。
平成16年度より行われている本院のODA調査において、中東を訪ねたのは17年度のエジプト、タンザニア班以外に例がなく、今回が初めて中東に特化した派遣ということになります。当班は、この地域でエジプトに次ぐ供与実績があるトルコ及びヨルダンを訪ねることといたしました。
以下、調査を通じて気付いた点を申し上げます。 なお、報告書は今後取りまとめられるため、本日の報告で意見にわたる部分は団としての正式な集約でないことに御留意を願いたいと存じます。
1.トルコ共和国調査報告
○加藤敏幸 まず、トルコについて御報告いたします。
トルコは、一人当たりGNIが比較的高い水準にあり、2006年には中進国入りしたことから、一般無償資金協力は行わず、円借款の対象分野も環境、防災等に限定されるなど発展段階を踏まえた対応が図られています。
派遣団は、イスタンブールにおいて、二つの大型円借款案件であるイスタンブール長大橋耐震強化計画、これは有名な第一、第二ボスポラス大橋などイスタンブールの重要な橋梁への耐震補強工事であります、及びボスポラス海峡横断地下鉄整備計画を視察しました。これらの事業は、日本の高い建設技術を活用した事業で、トルコ側からも大変期待されているものです。ただ、日本企業が協力していることはトルコの人々に知られてはいますが、日本のODAによることは余り知られていないのではないかという意見もあり、広報に更に工夫があればと感じられました。
トルコの有力大学であるイスタンブールのボアジチ大学においては、文化無償による日本語学習機材を使っている日本語クラスの学生の皆さんや同大学の有識者と意見交換を行いました。
我々は、トルコが順調に発展を続ければ将来的にODA卒業国に移行していくことを念頭に、長期的な二国間関係をいかに構築していくかという点に関心を抱いておりました。この点について有識者からは、インフラや経済面に限らずより草の根のレベルでの支援また文化面や人的な面での交流を拡大させる必要がある、また親日国であることを踏まえると機械的に援助を削減するのは適当ではないとの意見がありました。
アンカラでは、主にトルコ側の資金負担で造られた土日基金文化センターへの機材供与や草の根無償援助を行った知的障害者施設を視察しました。
このうち障害者施設では、日本のシニア海外ボランティアが職業訓練指導員として活躍されており、日本の顔が見える協力に貢献されていました。こうした草の根の協力が更に効果を発揮するよう、トルコの知的障害者施策全般に対する協力の在り方について検討が望まれると感じました。
カマン・カレホユック考古学博物館建設計画は、アンカラから約100キロ離れたカマン郡にあるカレホユック遺跡、これは5千年以上にわたる諸民族の生活の跡が堆積している遺跡です、に隣接する場所に出土品を展示する博物館を造るものです。日本の調査隊が20年以上にわたり地元との協力関係を築きながら発掘調査を行っており、その地道な努力に感銘を受けました。一方、都市部から距離があることから、トルコ側に一層のPRや観光開発を通じて観光客を誘致する努力を促す必要があると感じました。
シニア海外ボランティアの皆さんとの意見交換では、トルコは中進国入りしたと言われるが、東南部などの地方では実感がないとの意見があり、また大使館からも地域間格差が重要な内政問題となっているとの説明がありました。国内の格差是正は一義的には当該国政府の課題でありますが、他方、トルコにおいては、この問題はイラク北部も含むクルド民族問題とも密接に関連していることを踏まえ、我が国としてどう対処していくのか更に論議を深める必要があると感じました。
ところで、シニア海外ボランティア制度は、国民参加型の国際協力の一環として重要な役割を果たしていますが、トルコについては本年中に中断せざるを得ないとのことでした。その理由は、トルコ側が外国人労働者関連の制度改正に伴いシニア海外ボランティアに対しても労働許可証取得を求めてきたことによるものです。この件については、ボランティアの皆さんだけでなく、視察先の障害者施設からも派遣の継続を望む声があり、早急な解決が図られる必要があると感じております。
2.ヨルダン・ハシュミット王国視察報告
○加藤敏幸 次に、ヨルダンについて御報告いたします。
ヨルダンは中東和平プロセスやイラク復興支援に大きな貢献をしており、日本としても、同国の安定及び持続的成長が中東地域の平和と安定に重要であるとの観点から積極的な支援を行っております。
派遣団は、まず死海周辺において、南部女性の健康とエンパワーメントの統合プロジェクト及び死海展望台コンプレックス等を視察しました。
このうち前者は、ヨルダンの人口急増の抑制とリプロダクティブヘルスの確保の観点から、家族計画等に関する住民への啓発活動を行うのと併せて、女性に対しヤギの飼育や養蜂を行うための少額融資を施し、これによって女性が収入と発言力を得ることを通じて自発的な家族計画を行えるようにするものです。このプロジェクトは、イスラムの伝統を重視する保守的な南部の村落地域を対象とするものであり、ヨルダン政府関係者からは、欧米ではなく日本だからこそ可能な援助であるとの認識が示されました。
なお、派遣団からは、援助関係者に対し費用対効果にも十分留意しながら取り組むべきとの意見がありました。
アンマン及び近郊においては、キング・フセイン橋、第二次アンマン都市圏上水道施設改善計画、パレスチナ難民女性職業訓練センター及びヨルダン大学語学センターに対する語学機材供与を視察しました。
このうちキング・フセイン橋は、ヨルダン川をまたいでパレスチナ自治区とヨルダンを結ぶ橋であり、中東和平に向けた日本の協力の具体的成果として象徴的な案件であります。この橋にはいわゆるODAマークが付されてはおりますが、通行車両から十分見えるものでないことから、ヨルダン側担当官に橋への取付け道路に日本とヨルダンの国旗を掲げたサインボードを設置することを提案し、先方からも前向きな発言がありました。
上水道施設改善計画は、国民一人当たりの水の量が世界でも最も少なく、慢性的な水不足に悩むヨルダンへの貢献として現地で高い評価を受けている事業です。同施設は、毎年多くの学生、生徒が見学に訪れているとのことであり、そうした機会を通じて我が国の貢献が周知されることを期待したいと感じました。
ヨルダン大学においては、我が国の無償援助で提供したLL教室が大学関係者に高く評価され、有効に活用されていることを確認しました。
なお、同大学は日本語専攻設置に向け我が国に専門家の派遣を要請しており、これに対し国際交流基金等が対応を検討中とのことでした。この背景には、いち早く韓国語が独立した専攻として設置されたという状況があり、派遣団と大使館との間で意見が交わされました。これにはヨルダンへの韓国企業の進出等様々な事情があるようですが、ODAに加えて日本語教育専門家派遣事業なども連動させて、日本に対する認知度を高める必要があるのではないかと感じました。
両国を通じての感想ですが、特にヨルダンでは政府関係者より、米国などと異なり日本からの援助は政治的意図が感じられることがないため国民に受け入れられやすいとの発言がありました。その真意のほどは検証の必要があると思われますが、中東諸国と対決した歴史を持たず、また成功の模範とされる我が国がこの地域への援助に関し一定のアドバンテージを有していることは改めて認識されてよいと感じました。
今回の派遣で意識せざるを得なかったのは、顔が見える援助への一層の取組の必要性です。例えば、日本はヨルダンに対する援助実績では米国に次いで第二位ですが、それでも青年海外協力隊員の方々との意見交換では、地方では東洋人というだけで小石を投げられたり、からかわれたりするなどの残念な状況もあるという話を伺いました。また、中東において中国や韓国のプレゼンスが増大しているとの状況も感じられました。相手国の人々に日本のODAに対する認知度をより高めてもらい、友好関係を確固たるものにしていくための努力が一層求められると感じたところです。
ただ、顔の見える援助を具体的にどのようにとらえ展開していくかには様々な考え方があろうかと思います。今後、当委員会で論議が深められればと思っております。
最後になりますが、今回の調査に御協力いただいたトルコ及びヨルダン両国、各視察先の方々、内外の関係機関の各位に感謝を申し上げ、報告を終わります。
ありがとうございました。
3.質疑(抜粋)
○溝手顕正委員長 ありがとうございました。
以上で意見の聴取は終わりました。 これより意見交換に入ります。
(中略)
○田村耕太郎委員 日本が引き受け、また完成させている物件を見られて、どの段階から日本がかかわるか、日本が入っていくタイミング、私はできるだけ完全にオファー型の方が望ましいんじゃないかと思うんですが、アフリカ、トルコ、インドを見られて、本当にちゃんと日本が望ましいものをつくるべく立案段階からしっかり入っているかどうか、その点についてお三人の率直な感想をお聞きしたいと思います。
(中略)
○加藤敏幸 田村委員の御質問にお答えをいたします。
結論からいえば、オファー型とかいろいろ言われますけれども、混合型という状況も一番それが多いケースになってくるんだろうと思います。議論を整理をしたりする場合に、切ったような非常に先鋭な議論ということも大変必要だと思いますけれども、現実は極端ではなく、それらのことを頭に入れて案件ごとにというケースが多いと思います。
私、2年前にベトナムの方にも行かせていただいたんですけれども、そのときに御報告を申し上げましたように、ベトナムは政府自身がベトナムにおける国家計画というんでしょうか、経済発展計画というのを、日本の学者のアドバイスに基づいてプランニングは非常にしっかりしたのを持っていると。それに基づいてやっぱりODAについての要請も出てくるという。
それから、トルコは中進国入りをしていく、ある意味でODAの卒業国になっていくということで、国としての相当な援助の体験、経験、ノウハウを持った国々に対する対応と、先ほど大塚理事の方から報告があったアフリカというまだ対象国の政府自身がどういうふうな国の形をつくっていくのか、最も効果的なODAを何をもらえばいいのかということについての考え方がまだ完全にでき上がっていない、そういうケースの場合における在り方論を含めて、やはり相手の状況によってそこの味付けが変わってくると、こんな感想を持っているということであります。
○長谷川大紋委員 自由民主党の長谷川です。
皆様方の御報告に基づきまして質問をさせていただきます。
私も昨年12月、派遣団員として第一班、藤末団長の下でベトナム社会主義共和国を訪れました。5日間にわたりましてカントー橋・橋げた崩落事故現場などを視察いたしまして、ODA関連の調査を行ってまいりました。現地での素直な感想を申し上げますと、ベトナム政府は日本のODAに対しまして大変感謝をしておりました。また、現地の人々の勤勉でひたむきな姿を拝見し、大変好感を持って帰国したわけであります。
また、その折、初めて青年海外協力隊員の方々と直接お会いをいたしまして、懇談を通じながらその苦労の一端を知ることができたわけであります。私がお会いしましたのは、ベトナムにおきまして日本語の教育と柔道普及活動あるいは中小企業育成のノウハウなどの分野で様々であったわけであります。そして、それを現地において貢献し、生き生きとしておる姿も拝見してきたわけであります。
先ほどもお話がありましたが、ODAは技術的支援はさることでありますが、顔の見える援助により、現地で活躍する青年協力隊員の皆さんの認識を高めていく必要を強く感じたのであります。同時に、隊員の皆さんが活動を終了し帰国した後、その貴重な体験をこの日本国内で十分に発揮できるような環境を整えていく必要があるのでないかと強く感じた次第であります。皆様方も、それぞれの派遣先で青年協力隊あるいはシニアボランティアの方々とお会いしたというお話があったわけでございます。皆様方の御感想を含めてお話を伺わせていただきたいと思います。
○加藤敏幸 他の団員の方にも御質問をしていただければとは思いますけれども、今の質問に関して端的に私なりの経験を申し上げますと、私は電機産業の産業別の労働組合並びにその傘下の労働組合の活動をやっておりましたが、20数年前に産業別労働組合としての協約改定交渉の統一要求項目に「青年海外協力隊の休職」という項目を取り上げたことがあります。当時は協力隊に参加したい皆さん方は会社を退職してそれで参加をするということで、なかなかそこが非常に難しいところがあったんですけれども、2年間とか休職ということを協約上で確立をして、帰ってきたときには元の職場なり、その企業の仕事を当然再開するということが、言ってみると私どもの立場でできることとしては一番直接的なことであったと思います。あらゆるケースにということについては言葉は及びませんけれども、できることからいえば、そういう体制作りではないかと思います。
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