遅牛早牛

時事雑考「中身のない国会だった」

 平成30年の通常国会が終わる。なんかだるい。半年余り時間を使った割には、中身がなかった。その国会開催中に発生した西日本豪雨は悲惨なものでした。それは5日から気象庁による異例の警告に始まり、「えっ、どういうことや」と聞くほうにも何とも言えない不安感を持たせる、人生初めての体験。そして警告通りの豪雨、豪雨。予測の的中が心中に何とも言えない褥瘡を生む。そして多くの犠牲者を前に言葉もない、自然災害だからと思いつつも、いや何かできたこともあったのでは、あるいは災害への備えを考え直すべきではないかと思い悩む。鉛を飲み込んだ感じで、重苦しい。だから、だせぇ国会だったぜ。

「働き方改革」とはよく言ったものだ。そもそも「働き方」なんて発想は働く側からは出てこない。普通直球勝負でしょう。ストレート一本(古!)。あの手この手と、いろいろな働き方なんかありませんよ。そういえば、ずるい働き方をしていると告げ口された人がいた。それは要領のいい働き方でした。言い換えればさぼり方がうまいってことでしょう。でなければ仕事もせずにぶらぶらしていたら確実に懲戒ものですよ。仕事場はそんな甘くはないです。だからサッサと片付けてあとは一服というわけには、いや仕事が終われば早く帰れというわけ。でも翌日の仕事は増える、確実に。

いやホワイトカラーは違うって言いたいわけですか。でも仕事が終わったからといってサッサと帰っていたら余分な仕事がくる。かならず課長とか部長が来て「余力がありそうだから」と別のプロジェクトを兼務させられたりして。給料倍じゃないからね。とにかく時間分は働かせて元を取ろうとするわけ。

◆ だから成果主義を目指すとか言ってコンサルタントもどきの言説を有難がっているけど、成果って半分運でしょう。初めから赤字確定のプロジェクトってあるし、営業がいい子ぶってスッペク絞めないから余計な時間がかかるってのも多い。成果、成果、成果がでないのは誰のせいか。成果主義の精度と納得性を上げるためにみんなで残業しているのってバカみたいでしょう。

◆ ところで残業って業務命令でしょ。残業で体こわしたら誰の責任か。命令した人でしょう。で、この設定で自己責任といいたいわけ?無理でしょう。要は責任取りたくないのね。そういえば「高プロ」って責任取らなくて済む制度みたい。高い金払っているんだから、ってことか。駄目だね、責任と正面から向き合わない経営者って、尊敬できないし迫力感じられなーい。責任と尊敬は表裏一体。業務命令である以上、「働き方」ではなく「働かせ方」です。働かせる側の責任を明確にしない限り「改革」にはならない。

◆ だから「働き方改革」なんて偉そうなことをいわないで、まず「答え方改革」をやってください。国会から、だるさ対策に。

◆ さて国会が終わったら、参議院の定数が6増えていた。このほぼゼロ金利時代によくやるわ。しかし「党利党略」って批判も今さら感がある。何事も基本は党利党略です、はい。それよりも、参議院の比例区が衆議院のそれに近づくわけね。これってどうよ。昔は拘束名簿方式で今は非拘束、明日からは混在方式。確かに自民党で拘束指名されると当選確実になるから、合区問題は自動的に解消というわけか。究極の失職対策、しかも不戦勝ときたら焼け太りですね。しかしやっかみの海に投げ込まれるようなものだろう。それもきっと一回限り。気の毒に「楽して当選」がどんなに体に悪いか。待てよ、ひょっとしてこれは形を変えた罰ではないか。合区対象の先生方がやかましく言い過ぎて幹部の尾を踏んだので、それに対する高等な意趣返し。まあ、お好きなだけどうぞ、党利党略、身内の話ですから。と、ここまでは一般的な批判話。大義も、理念もない史上最悪の改正案、けしからんとなる。

◆ で、ゆっくり考えるとこれがハイセンスなの。なぜなら、合区は撤回しない、一票の格差は都度是正する、指名拘束は政党の判断、比例増4(選挙ごとに2)は先々選挙区に回せる、つまり一票の格差対策用議席として2022年から遣えることになる。加えて、都道府県を代表するとかなんとかといって憲法改正による一票の格差回避策などと言う声を封じるといった目論見が透けて見える、のです。都道府県選挙区はあくまでも手段であって地元代表の性格など国会議員にはありえない。第一、衆議院は国勢調査を受け選挙区の区割りを自在に変えているではありませんか。合衆国は連邦国家です。日本は違う。地域をどのように代表するかは一人一人の国会議員の政治姿勢の問題であって、憲法に組み込むほどの問題ではありません。ということで、世上、集中的に非難されていることほど、丁寧に吟味する必要があるという好例でした。そもそも、短期間で抜本策をまとめることなど現実的ではありません。今の参議院野党の実態を見れば抜本改革などとても無理でしょう。ということで、当面のまとめとしてはそれなりの現実智を発揮したということでしょう。で、問題はこういう知恵が民進党・民主党にはなかった。次、政権を取るまでに、タヌキおやじの悪知恵を身に着けてください。

◆ ところで「議員定数の削減」ってそんなに高尚なことかしら。近代は国民議会の開設に血を流し、選挙で選ばれる議員の拡大に犠牲を払い、普通選挙の導入に苦労したのであるから、そう簡単に減らすなよ、と言いたい。身を切る改革なんて言っているけど、その身って誰の身なのか。国民の代表が議員なんだから、切ってどうなるの。そもそも議院内閣制の欠点は与党議員が内閣の法案に対してマイルドになりすぎることです。早い話、法案審議を厳しくやるのは三分の一の議員、今は。与党の質問時間を増やしてみても審議の質は上がらない、そこには限界がある。だから議会の実力をあげてから、減員しても議会が劣化しない自信ができてから削減に取りかかるべきです。モリカケ問題を見ても総理大臣の権力は強大です。その権力をけん制すべき議会が、党首討論のやり取りがあったからと言って削減に血道をあげるのは筋違いです。あの党首討論は総理大臣としての対決で、三権分立の原理からして、現職と影の総理大臣の討論で議員定数の削減を約束するのはちょっとやりすぎではありませんか。消費税の引き上げは政策であって、どんな理屈を使っても、バーターに議員定数削減をおまけに付けるなど到底受け入れられることではない。むしろ強大化する行政府に対し立法府の劣化をどうやって食い止めるのか。これが喫緊の課題です。

◆ さて5月連休を挟んで18日間も国会休んでリフレッシュしましたか。忠告したつもりでしたが、あれは与党の罠でした。とても老獪なんだから。日ごろから「厳しさごっこ」に精を出して、ごめんなさいね、ことの本質を極めてないから、簡単に引っ掛かるのです。欠席は戦術ではありません。自己満足です。状況を見誤ると孤立しかねません、国民から。児戯に似た戦術にエールを送ってくれるのは固定客で、心強くはありますが、ここは遠くにいる普通の人を引き付けることが大事でした。「やっぱ、あかんわ」と思わせては駄目ですよ。また、モリカケ問題も調査特別委員会で真相解明に努めるべきでした。国会は休む、役人を裏庭に呼び出していじめる、と思われて印象が悪かった。特に役人を怒鳴らないでください。怒鳴るのは与党のお家芸です。相手を間違えてはいけません。「結局自分の手柄づくりにモリカケを使っている」という構図を作りたいメディアが多いのです。そうでなくとも「安倍さんでいいじゃない、景気も悪くないし」との声をどう聴くのか。競合製品の賞賛から分析するのが業界の常識でしょう。モリカケに時間を取られて、もったいないことを。もっと、生活とか外交、安保、災害、貿易摩擦、子育てなどやって欲しかった。そして新鮮さを表現して欲しかった。残念なことでした。

◆ ああ、もう飽きた。昼のテレビ番組。キャスターの仕切りにゲストのコメント。と言いつつ、見てしまうのが悔しい。ところで栄光のジャイアンツはどうしたのかしら。オーナーが辞任していたが、良く分からんね。

加藤敏幸