研究会抄録

ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」

ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」

講師:仁田道夫氏、石原康則氏

場所:三菱電機労働組合応接室

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発言広場

【遅牛早牛】 時事雑考「賃上げはキシダ政権の生命線か?」

(権力の具体構造がどうなるのかが不明な中で、国葬の閣議決定は高度な政治判断といえる。筆者は、分断の予防こそが政治家の矜持ではないかと日ごろ思っているので、賛成ではない。されど旗をふってまで反対する気もない、静かにおくるべきである。棺を蓋(おお)いて事定る、といわれているが、蓋いても定まらないであろう。

さて、キシダ政権の重要な仕事は雇用者所得の向上つまり賃上げであることは自明のこととなっている。まず、〈A〉最低賃金である。次は、〈B〉春の賃金交渉。この二つは交渉事である。交渉事でないのが、〈C〉労働組合が未結成の中小規模企業の賃上げと〈D〉不安定雇用といわれている非正規労働者の賃金改善である。これらの4項のなかで〈C〉と〈D〉は制度としての仕組みがなければ実現できないもので簡単ではないといえる。ということで、労働への分配が期待ほど改善できるのかどうか、注目の一事である。経済政策的には、交渉組合の賃上げ結果ではなく、交渉していない、交渉できない労働者の賃上げ結果のほうが重要なのである。文中、不安定雇用あるいは非正規労働者などとしているが、厳密な使い分けはしておらず、文脈にそって適宜使っている。)

前途霧中、問題山積、流動化

◇ 参院選を無事くぐり抜けたキシダ政権がつぎに取り組むべき課題は多い。とくに、憲法改正については多くの意見とさまざまな見通しがあふれている。一般的にいって、関心の高い話題ではあるが、前回述べた通り存外に難しく、隘路もあり、お試し項目でさえ簡単とはいえないであろう。9月27日の葬儀までは、党内政局はおもてむき休業と思われるので、それまでに主要人事を仕上げ、秋の臨時国会にそなえる段取りであろうが、考えれば考えるほどに「故人」の後が埋まらない。ポストではなく、役割において人がいないということであろう、確かにイライラとしたものを感じる。こういった状況になると抑圧されていた情動が活性化し、世代交代あるいは党派再編のエネルギーが生じるもので、そうなると自民党として流動期に入るかもしれない。1955年の保守合同から数えて67年、この党もどこか疲れているのではないか、歴史的転換期かもしれない。

 自民党内には、守護神を失った喪失感情に浸っている時間はないであろう。気合を入れなおして、感染症(Covid-19)対策を急ぐべきである。

 ところで、キシダ政権がなんともいえない運を持っているように思えるのは、昨年10月の衆院選と今月の参院選がいずれも感染拡大の谷間にあたったからであろう。時期がひと月ずれておれば、選挙結果に悪影響があったかもしれない。爆発的感染拡大あるいは医療ひっ迫は、人びとに大きな不安をいだかせるもので、後手にまわれば統治能力に疑問符がつく。

 また、インフレへの対応も優先度が高い。このままでは国民生活は確実に劣化していく。2%台でとどまればまだしも、3%を超えてくると、低賃金層や年金生活者が耐えられなくなるであろう。来春の統一地方選挙への影響も考えられる。先の参院選では多党化傾向がみられたが、奇をてらう新党の主戦場が地方選挙に移ることもありうる。さらに、シニア層の政治に対する感応力はもともと高いことから、与党としては注意が必要であろう。ということで、当面の野党の攻めどころは明確である。立憲民主党と共産党にとって統一地方選はリベンジマッチであり、争点は「インフレから生活を守る」というのが分かりやすい。

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