研究会抄録

ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」
講師:仁田道夫氏、石原康則氏
場所:三菱電機労働組合応接室
発言広場
【遅牛早牛】 時事雑考「2023年5月の政局観-総選挙への助走と維新-」
(台風2号が異常発達と聞く。ふと皐月台風と維新が重なる。ところで解散総選挙の予想が、浜辺に浮かぶ軽石のように目につきはじめた。時期は秋という。しかし、千人がそう予想してもこれだけは分からない。それを承知の上で、筆者も予想に走る。当たり外れと同時に、予想の筋つくりが頭のなかを整理するのにちょうどいいのである。だから、時期と同時に得票動向にも政治の真実をもとめて妄想を重ねている。
G7広島は成功であったと思う。核兵器削減・廃絶を主目的とするならば失敗と批難されてもしかたがないが、先進国サミットの流れを前提にするかぎりここまでという判断は尊重されるべきであろう。限界があったとしても前進であったと思う。
ゼレンスキーだけでなくプーチンの参加も、との声が聞こえてくるが、G7では無理筋であろう。対ロシア非難国、制裁国が中心のウクライナ支援国会議であるから、プーチン非難の流れは変えられない。また、直ちに停戦をと主張するのが平和主義者の作法であるかのごとき意見もあったが、その停戦ラインが事実上の国境線となることを承知の上での発言なのか、そうなれば侵略優位の発言であるから平和主義とは矛盾するではないか。ここに大きな悩みがあるといえる。立場や考え方に差があったとしても、ここは侵略者に痛打を与えなければならない。でないと侵略が繰りかえされるであろう。
さて、国内では日本維新の会が台風の目になりつつある。支持率が大きく回復しているキシダ政権ではあるが、不思議なことに勢いは守勢である。維新vs立憲の争いに漁夫の利をねらっているのか。うろんな話である。
好感度が低いからといって立憲たたきに奔走し、リベラル退治に熱中しすぎると思わぬ反撃を受けるかもしれない。政権批判票の受け皿であるはずの維新が野党第一党取りに熱をあげすぎると、くるはずの票がこなくなるかもしれない。多少なりとも選挙調整をやらなければ、キシダ政権のガードマンではないかと思われるぞね。これが今回の主題である、例によって敬称略の場合あり。)
さて、国会は残り4週をきり、終盤へ
連休があけると後半国会である。今年は延長がなければ6月21日に閉会をむかえる。また、残り会期が4週を切るころになると、法案処理のラフスケッチをまえに、与野党の国対(国会対策委員会)は思惑と駆けひきの空間に閉じこもる。
さて、政局の焦点である解散総選挙である。その話の前提には「G7広島」の成功が必須条件となっているが、今のところ成功というべきであろう。まずは順調といえる。
さらに、G7後の内閣支持率の動向に注目があつまる。ちなみに、今月20、21日におこなわれた毎日新聞の全国世論調査によると、岸田内閣の支持率は45%で、4月15、16日実施の前回調査36%から9ポイント上昇したと伝えられている。なお不支持率は46%で10ポイント下げている。〈毎日新聞2023/5/21/15:54(5/22/11:09)〉他の調査においても支持率は上昇していると思われる。私見ではあるが、内閣支持率は照度計であって評価計ではない。感染症の収束が世の中を明るくしているだけのことで、G7も大過なくうまくいったことへの安心感の反映であろう。後述する物価上昇による生活圧迫や増税、負担増をキャンセルするほどの威力などは、もとからないというべきであろう。
ということで、G7が首尾よくおさまったからといって、解散総選挙の青ランプが点灯しているかといえば、そうはならない。なぜなら支持率を紡ぐ民意には奇矯なところがあって、一筋縄ではとらえられないというよりか、G7は食べたい餅ではなかったということではないか。
では食べたい餅とはどんな餅なのか。それが分かれば苦労はないわけで、おそらく総選挙の勝敗を決する「食べたい餅」をめぐり各党それぞれに悩むところであろう。とくに、立憲民主党は結党(2020年9月)以来の最大の危機を迎えているから、もしアベ流であるなら、立憲にとって最悪のこのタイミングでの解散総選挙こそが、立憲を押しつぶすチャンスであると考えるであろうが、維新の隆盛が報じられるなかで、立憲から維新への野党第一党の移動がキシダ政権にとってどんな利益となるのかについて冷静に考えれば、リスクの割にえるものが少ないことにたぶん気がついているのであろう。また、別のリスクとして自公の選挙調整が難渋していることもあり、解散総選挙へのふみだしがむしろ鈍くなっているように思われる。とくに、このタイミングで立憲をつぶす意味はない、つまり代表がないがしろにされ、求心力を欠いた弱い立憲にはむしろつづいてほしいのに、わざわざつぶしにいくことはないというのが、常識的な論理なのである。
もちろん、ここは呼吸が整えばうってでるのが自民党流だと断言すべきであるが、G7後の情勢の好転に、自信を深めているのかもしれない。党内世論は秋以降に移りつつある。政局からいえば、国会会期を延長してでも解散総選挙にもちこむことが上策だと筆者は思う。が、政権の応援団ではないので、声をあげることもない。ところで立憲の泉代表は野党が一致しないかぎり不信任案を提出してはならない、どこを向いているか分からない銃の引き金を自分でひくことはない。さいごまで、党再生の道を探るべきであろう。