研究会抄録

ウェブ座談会シリーズ2「世の中何が問題か-振りかえる兵庫知事選とSNS選挙の行方」
講師:座談会は五十音順に伊藤、江目、佐藤、中堤、渡邊の各氏、司会は加藤、事務局は藤田
場所:メロンディアあざみ野(横浜市青葉区)
発言広場
【遅牛早牛】 時事雑考「2025年6月の政局-国会を閉めてから本番-」
まえがき
[ 国会が閉じた。少数与党としては何とか耐えたということか。評価は参院選に持ちこされたが、世論調査と実際の投票行動の差異があるのか注目されるところである。
やはり少数与党という形には無理がある。安定政権のあり方がこれからの課題となるのではないか。有権者もむつかしい判断を迫られることになると思われる。今回は令和の米騒動について後半に記述してみた。小泉効果の評価も気になるが、2025年産米のでき次第ともいえる。都議選の結果が気になる。
以下2025年6月24日追記。ホームページへの掲載時あたりから都議選の投票結果があきらかになっていった。自民党が大きく議席を減らした。6月に入ってからの回復感が霧消した感じである。公明党も思わぬ不調で、自民党とのつきあいが過ぎたということか。前回よりも高くなった投票率をあげる人もいる。立憲民主党は善戦したが、もの足りなさが不思議である。共産党についは活動のわりには評価が低い。立憲民主党との選挙区調整だけでは低落傾向からの脱却はむつかしいと思われる。
また、日本維新の会、れいわ新選組、地域政党「再生の道」も振るわなかった。首都ではあるが巨大な地方選挙区だから、7月の参院選の完全なプレバージョンとはいえない。しかし、傾向は事実なので真剣に受けとめるべきであろう。という意味で逆に注目されるのは参政党である。保守でありながら党運営はリベラルな感じで、この先も自民・維新・国民と競合する部分があると思われる。
ところで、その国民民主であるが、世論調査では、政党支持率あるいは参院選での比例投票先をみると、ピーク時の半分程度にダウンしている。という中で、あれだけ叩かれながら9議席というのはまずまずとの安ど感がながれているが、それはそれとして問題なのは、次点惜敗が立候補者数の三分の一もあることで、一連の不首尾がなければ15議席もあったということは、応援してくれた支持者との関係において反省すべきことも多いのではないか。
反省といえば、自民党の不調は支持者の離反によるもので、「政治とカネ」の問題は有権者の納得が一番なのに、まだ納得が不十分だということであれば参院選も厳しいといわざるをえない。以下の本文中では、小泉効果による印象好転によって、50議席を数議席以上上回るとの予想を述べているが、都議選の結果はそういった甘い見通しを打ち破るものであったといえる。
注)「読みにくい」ので、本文に見出しを2025年6月24日つける]
1.やはり、衆院委員長解任よりもはるかに内閣不信任決議案は重たかった!
6月19日、立憲民主党の野田代表が今国会での内閣不信任決議案の提出を見送ることを公式に表明した。筆者としては予想の範囲内のことではあるが、現実にそう判断するには別次元の重たさがあるのであろう。出すか出さないか、二つに一つの選択であった。いずれを選んでも議論はつきない。
選ばれなかった道はそこで消えるから「もし○○なら」という論法は余計なもので時間のムダである。今回の「見送り」に対して野党それぞれに意見があるとしても、閉会すれば過去の話となる。
昨年10月の総選挙の結果を「伯仲以上、政権交代未満」と解釈した。そして、この流れは今日においても変わっていないと思う。つまり、「政権交代未満」という民意が変わらないのであれば「見送り」には合理性がある。また野党第一党としての危機管理かもしれない。
ところで、前日の6月18日に衆議院は井林辰憲財務金融委員長を野党などの賛成多数で解任した。現憲法下では初めてのことである。それを「数の力」とわざわざ強調する報道もあったが、国会で決議が成立するのはすべて「数の力」であるから、とりわけ乱暴なこととの印象を与えるのはいかがなものかと思う。
報道によれば、井林委員長が野党の共同提出法案に対し委員会に付議しなかったことが理由ということで、解任された井林氏は「非常に暴力的なものを感じております」あるいは「来月1日から暫定税率廃止という無謀な法案が、これでおそらく政治的には廃案になると思う。国民生活に貢献したということで、私は政治家冥利に尽きる」と語ったとも。国民生活に貢献したという理屈はさすがに不気味であるが、委員長職を自身の政治心情の手段にしたのであれば不適任ということになる。
もちろん、国会法(第48条)では委員長の議事整理権を認めているが、それに対抗する意味で本会議での解任が可能となっている。井林氏の語ったことは「法案に反対なので体をはって止めた」との趣旨であろうが、そのまま解釈すれば委員長としては公平中立を欠く対応であったと非難されて当然であろう。したがって解任は妥当であったと思う。
他方、残り会期がわずかなことを理由に、「法案成立の可能性がない」のに提出だけを目的にしているといった声があったようだが、法案提出にあたりその成立の可能性が条件であるという決まりは聞いたことがない。
それにしても、会期延長がないと誰が決めたのか、ひつようがあれば延ばせばいいということであろう。また、ネット空間では少数与党であることを失念しての反応も多いようである。
注目のガソリン税の上乗せ暫定税率については、検討するようなしないようなヌエ的態度でお茶をにごしてきたのが与党ではないか。そういえば昨年のことで、もう時効かもしれないが、12月11日の自公国合意事項に暫定税率廃止というのがあった。「議論するのも嫌だ」ではなく、ぎりぎりまで議論ぐらいはしっかりやったらどうか国会なんだから、ということではないか。
さて、会期の延長は両議院の一致を前提としているが、不一致の場合は衆議院の決定が優越する。ということで、野党主導の短期延長も不可能ではない。もちろん野党としての覚悟がひつようではあるが、せっかく「まとまれば多数派」を国民からいただいたのだから、もう少し活用してもよかったのではないか、と思っている。