研究会抄録
ウェブ座談会シリーズ2「世の中何が問題か-振りかえる兵庫知事選とSNS選挙の行方」
講師:座談会は五十音順に伊藤、江目、佐藤、中堤、渡邊の各氏、司会は加藤、事務局は藤田
場所:メロンディアあざみ野(横浜市青葉区)

ー本文は2025年1月10日午後に収録された座談会の内容を編集したものを掲載しました-
司会 今回は、去年の10月27日の衆議院選挙の結果、自公が過半数におよばずさらに多数派工作がうまくいかず少数与党になり、この国の政治がどうなるかということで閉塞感も強まりました。国民民主党がちょっと信じられないぐらい得票数を伸ばして、それも 31 議席まで取れたのに比例候補が足りず3議席を他党に渡した。そんな贅沢ができる政党だったのかと。
ただ、103万円の壁を見直して手取りを増やすといった、そういう非常に実利的な訴えが若い人たちに受け入れられ、支持率も上がっている。支持率が10% を超えており、私としてはとても信じられない本当かという気持ちです。
中道政党が中核にならないとこの国はよくならないということで、ずっとそういう思いでやってきましたから、ようやくこういう時代になったのかと感じています。
一方で、これは夢だから必ずどっかでしっぺ返しが来るのではないかということで、やや疑いの目で見ているのですが。
しかし、なぜ国民民主がこんなにヒットしたのか、なぜ自民党が落ちたのか、公明党の踏ん張りがきかなくなったのかなど、自由に話していただきたいと思います。
J まず、兵庫県知事選ですがSNS が威力を発揮し、衆院選の国民民主党のように票が伸びた。普通に考えたら、斎藤元彦さんは百条委員会にかけられて、また二人の方も亡くなっている中でどうなのかと思っていたのですが、兵庫県の投票者はどんなことを考えていたのかまずお聞きしたい。
司会 兵庫県知事選についてMさんはどう思ってますか。
M 私も人が亡くなっているという状況で、こんな逆転があるのだと。私はSNSをやっていませんが、SNSが人の気持ちをこんなにも変えられるのだとびっくりしました。SNS の方がフェイクや好きなことを書いているだけと思っている。今回、既存メディアは負けたと言われていますが、私は既存メディアのほうを信頼しています。SNS については、一歩、二歩引いて疑ってみています。
T フェイク動画で世論が変わっていくのが恐ろしいと感じた。例えば民間企業で同じような不祥事があれば、その管理職は降格などが一般的だと思う。そういった見方をすると、今回はおかしな現象がおきたと感じている。いまだに釈然していないが、斎藤さんについて仕事は立派かもしれないが、人間として選挙に出馬してもよいのかと感じる。
H SNSの力がすごく強かったのもあるが、本当のところはどうなのかということが全然分からない。また、立花孝志さんも立候補して動画を流し、その真相が分からないままSNSが盛り上がって斎藤さんが当選して、それでいいのかと。
また、斎藤さん以外の候補者についても事前に候補者を集約するなどの戦略が必要だったのではないか。票が割れて結果的にSNSで票を集めた斎藤さんが当選したと感じる。
東京都知事の選挙も小池百合子さんは強かったが、蓮舫さんはあまり票を伸ばせず、SNSの力で石丸伸二さんが大きく票を伸ばした。ただ、都知事選も候補者が乱立して票が分かれていた。今後も全国的に注目される選挙ではSNSの力が無視できなくなると感じている。このSNS対策が難しい。ただ何も対策しないとまた同じようなことがおきてしまうと思います。
司会 斎藤さんについて、知事としては問題があるという前提で当初見られていたのですが、それが途中からくつがえって斎藤さんが当選した。票が取れなくて終わっていく人だと思われていたのが、ちょっと違うぞということになった。SNSのアクセスが伸びていることが調査会社から報告されて1週間後、2週間後になると、何かが起こっているという受け止め方がでてました。
この変化には斎藤さんの業績とか手腕についての評価があったのでしょう。当初は斎藤さんのことをパワハラの親分みたいに見ていて、職員(元県幹部)が亡くなったのに冷酷な対応であって、なんかちょっと表情もおかしいんじゃないかというところからスタートしていた。
ところが、斎藤さんが全部悪いわけではないという話があがってきた。例えば、県下の高等学校を順次、設備にお金をかけてきれいに直していますとか、設備投資をしていることを評価している。他方、別の人の話では、あそこは阪神・淡路大震災で壊れた施設の修復を順番にやっていて、ちょうど斎藤さんが知事の時に高等学校が順番になったことが、立派なことをしてくれたという評価になっているのではないかという声も聞いている。
業績については、普通に予算を回していたらそのぐらいできるという意見と、県庁舎の建て替えをやめたとか、あるいは2000万円の公用車を廃止したとか評価が分かれた。ただ、選挙戦後半の1週間は、人が集まってすごかった。
でもなぜそういうことになったのかということについては 100% は解明できていない。 SNS で当選したという言い方についても、そうではないという意見もある。一つは、斎藤さんはパワハラでおかしいという報道に偏りがあったのではないかと。あるSNS が斎藤さんってこんなに朝から頭を下げて、喋り方も真面目できっちりされている。実は無実であって、本当は立派な人だったという評価がSNSで流れ出した。その情報はテレビでも新聞でもなく、斎藤さんを直に見て、その演説を聞いた人の評価だからこれが正しいというように受け止められて、それがまた拡散していく。それで結局数十万票ぐらい獲得したと言われている。
ただ、その既存メディアとしてはバラエティ番組やワイドショーなどのテレビ番組の影響が大きいと言われている。テレビの昼のワイドショーではパワハラが原因で亡くなったのではないかという感じで流された。あれを見ていたら、私も変な知事だなと思ってしまう。ただ、当事者(元県幹部)にも私的な問題があったという指摘が出て、評価が反転した。そこに伝播力のあるSNSが爆発的なスピードで拡散した。普通であれば、拡散まで一年以上かかり、選挙は終わってしまう。
また選挙期間の17日間で凝縮していた立花さんの役割も大きかったと思う。立花孝志氏は「私に入れないでください」という選挙ポスターを掲示していた。
O 立花さんにはどんなメリットがあるのでしょうか。
司会 メリットは、アテンションエコノミーと言われているように、注目を引くことによって、クリックされたらお金が入るといわれているけど。
立花孝志氏という候補者がどういう立場であったのか。(選挙ポスターの映像を示しながら)これは黄色が目だつ選挙ポスターで、前明石市長の泉さんを例に引きながら、比較して斎藤さんはひどくはないということでしょう。
それとは別の話として、(県庁の調査で)亡くなった方のPCが開けられて、そこに私的な情報が入っていた。実はスキャンダルが原因で自殺され、パワハラは関係なかった、だから斎藤氏は冤罪であるというストーリーが出来上がり、その冤罪を作り出したのが既存メディアというストーリーが流れだした。これってなんかある種怖いですね。
今まではどちらかというと、自民党も含めて選挙になると組織や政策、あるいは政治信条だとか、そういうのを参考に投票をしたわけですよね。今後はSNSなどの情報で個人個人が判断してブームに乗るとか、今後選挙のやり方も変わってくるのかなって気がしています。
O 次の参議院選挙ってどうなりますか。
司会 それにしてもひどかったよね。選挙が成立しないという時代に入っている。 一つは、本当に斎藤さんのやったこととか起こったことの信憑性だとか、真実を明らかにしていくということはあると思う。
公益通報制度(の扱い)も、これは公益通報ではないという入り口の整理をしてしまう。通常は第三者委員会を立ち上げて調査すべきであるが、業務系統の指示でPCを開けた。だからなのか情報が漏れている。本来漏れてはいけない問題なところが漏れちゃっている。
ところで皆さん方のまわりではこのこのことについて、どんな風な感想をもっている?
J 昼のテレビなどを見ていますが、二人も亡くなっているのに人としてどうかっていう言い方をしていますね。教育の無償化だとか、県庁の建て替えをやめて、予算を見直すなど功績があると思うが、ああいう人がトップに立っていいのかっていうような言い方をしていますね。
司会 その意見は結構聞きます。手腕とか政治力とかリーダーシップとか、そういうものは別ということです。政治的業績だとか手腕とかという評価基準とは別に、倫理観や人間観という世界が両立している。こっちだけということでもない両方を見て、こちらの方を注視すると、何かがおかしい、こんな人が知事になっていいのですかと。業績だけではなく私は人間性を問いますという意見も結構ありました。この問いかけは変わっていないような気がします。
一方、これは極端に言うと、ちゃんと仕事さえしてくれたらいいという意見も昔からある。企業でもパワハラしてでも実績を出す上司を評価するのかという議論がありました。
政治家の評価軸ということについて今は揺れていますよね。ちなみに気になるのは政治家個人の問題についても意見が分かれています。
-休憩-
司会 これは倫理観という評価軸の問題、つまり政治家としての能力だとか手腕とかあるいは考え方という評価軸に倫理観をどのように噛み合わせるのかということが重要であるということでしょう。
例えば議員外交などは、限られた人しかできない。国会議員で外交ができる人は少ない。まず語学ができない。例えば、○○さんがスキャンダルを起こした。それでバツ。そういうことをやっていたら外交が得意な国会議員は何人残るのか。それで日本の外交の力が保てるのかという議論は賛否はともかく昔からある。
J ただ公人というところが引っかかる。野球の○○選手もすごいショートで愛妻家と言われながら、密会で非常に叩かれた。公人っていう名のもとにいろいろ考えていくと、例えば企業のトップや役員が背任すると叩かれますよね。ふさわしいかどうかというのは、やはり選挙への影響があると思う。
司会 今の時代に共通する倫理観と能力感について、完全に独立した系統じゃないということかなと思う。私はそんなに硬いことを言わなくてもと考えていたが、流れとしては潔白を求めていく方向にあると感じている。
SNSについては、嘘や、意図しないもの、いわゆる切り取りなどのフェイク的なものが容易で、一度流れると修正がきかないところに問題がある。フェイクが流出している間に選挙が終わり、後でフェイクと分かってもこれは後の祭りである。昔は全部紙で、妨害文書として罰則があった。でも、いまはチェックが間に合わない。そのため、選挙に不正や不公平さが混ざってしまう。有権者にするとファクトとフェイクが保証されていないから、そのチェックまで有権者に求められている。今回の兵庫県知事選挙は、少なくとも半数はその情報をもとに投票行動に移ったのではないか。
とりあえずここで次のテーマに行きましょう。
T 現在、膨大な情報が飛びかってキャパを超えており、何が本当の情報なのか判断できなくなってきている。新聞や本を読まない人も増えてきている。さらに文字を読まなくなってきており、スマホのニュースを部分的に読んでこれが正しい情報だと間違って受け取ることもある。新聞や本であれば、分からなければ読み返しができるが、真実が伝わりにくい時代になったと感じる。
若い人たちはSNSから情報を入手して仲間内で組んでおり、自分で考える文化に変えていかないと軽薄な世界にいくと懸念している。
また、選挙も街宣車で名前を連呼するとか、ポスターが必要なのかという議論が必要だと思う。そのうえでSNSなどの影響力があるツールについてはきちんと制限していく。そういうことをしていかなければ正しい志を持っている人が選ばれない危険な選挙になっていくと感じる。
司会 兵庫県知事選挙で一番嘘ウソを流したのはだれかな。いろいろな行動を含めてある意味ですごい発明家だと思う。
ただ、それは措くとして、アメリカの2020年の選挙を受けて翌年1月6日にトランプ氏の支持者が国会議事堂を襲撃した。あれは何回見ても凄まじい。バイデン氏に負けた2020年の選挙でトランプ氏は郵便投票の偽装などの立証されていない指摘をしていた。トランプ氏が襲撃せよと指示したわけではないが、あれだけの事件がおきてしまった。
トランプ支持派に聞けば2020年の選挙はトランプ氏が勝っていたと。民主党の末端の事務員が操作したというストーリーを信じている。
ただ、トランプ氏に投票した人が全員同じように襲撃したかというと、現地レポートなどを読むと、トランプ氏は嫌いだけれども、今の体制を変えるためにはもうトランプ氏に投票するしかない。民主党ではダメだ。俺たちは裏切られたという思いを持っている。100%フェイクで動いているわけでもないが、フェイクの部分も大きな力を持っている。ベースとなる政治に対する不満は何かといえば生活の困窮と格差です。
格差が政権を倒していく民衆の不満が一番集中する点であると思っている。
現在、世界的に与党の少数化が進んでいるのは、やはり格差や分配問題が引き金になっている。イーロン・マスク氏は資産総額60兆円で毎年10兆円ぐらい増えているらしい。一方で生活者は物価上昇で苦しんでいる。
わが国も日銀は少し利上げをして円安を阻止するべきだと思う。強盗は財布の中身だけもっていくが、インフレはことごとくもっていく。経済価値をマイナスにする税金のようなものである。だから与党は負けた。そしてこれで終わりではなく、参議院選挙も与党は厳しい状況にあると思う。
人々が覚醒するものはなにか、昨日100円で変えたものが今日は200円になっている。これではモノを買えない。家族を養えないという思いが不満につながり、それが積もると騒動というとんでもないところまでレベルアップしていく。そのプロセスにフェイクが活用される。
それとSNSの拡散力。瞬発的に1秒間で一千万、二千万と増えていく。それが危険ということだと思う。火薬のカロリーは砂糖よりも低い。それでも短時間で燃焼することで砂糖の何百、何千倍の威力となる。一瞬のうちにパッと。
選挙でなくてもスキャンダル、カネと異性関係は瞬間的に拡散して、それは取り消せない。消せないことが今日の課題である。人権問題、人権破壊である。例えばフェイク画像で顔だけ合成した写真が一度広がったら、本人が違うと否定してもなかなか消せない。また、数年たっても消すことができない。
それでは次何かありますか?
G 今まで出た話でSNSについて、若い人たちはテレビや新聞を見ずにSNSから情報を入手している。また、テレビでもSNSでバズった内容を流している番組も多く、SNSのほうが正義だと感じている人が多いと思う。また、SNSは自分が信じる情報を集めやすく、自分の意見が正しいという結論に至っていると思う。
また、スキャンダルの話がありましたが、トランプ氏は不倫のニュースが流れても大統領をされているということで、公人が潔白でないといけないのは国によって違うのかなと感じました。
司会 SNSにもいろいろあって、自動的に拡散するのですか。
G 例えばフォロワー数が2万や3万もいるインフルエンサーの発言を盲目的に信じている人がいる。その発言をリツイートといって、私も同じように思っていますと発信していく。そうすることで連鎖反応的に拡散していく。
司会 インフルエンサーを信じているっていうことは、その人の言うことは全部トゥルーで受け入れるという無批判な構造になっている。つまり無批判が美しい文化だということかな。昔は、バカなこと言うなよというのが普通の会話。半分疑って半分はそうかもわからんということから入っていくわけで。インフルエンサーのフォロワーというのは、とりあえずそこから来たものは全部正しいと信じているのですか。
G 仲間と信じている人が発信した場合はそうです。例えば司会がこのように発言したから、すべて正しいと思ってしまう。また、本人が正しいと思う情報を集めてしまう。例えば先ほどの兵庫県知事の選挙においてもパワハラをしていないと本人が思ったら、パワハラしていないというニュースばかりを集める。それによって、本人にとってはそれが真実となる。
司会 それは、SNSから検索して集めていくのですか。しかし、その情報に根拠はない。それでもたくさんデータがあるから本当でしょうと。ただ、間違ったデータをどれだけ集めても間違っている。
私が若いころはまず疑えと教えられてきた。それと正反対ですね。まず信じろと。
オカルトの世界に近いね。宗教的なもので満たされている状態に近い。人を疑うような殺伐として、自分も疑われているところは居心地が悪い。そうではなくて、お互いに称賛しあって傷をなめあっている世界だね。
G 人の特性として好きな情報を集めるという特性がある。(確証バイアス)
司会 楽しく感じる、世界観が肯定される、自分の言ったことがやっぱり正しかったんだと証明してくれるようにギャザリングすることは理解できる。それで嬉しい、気持ちが休まると。人類はとんでもないところに迷い込んだのではないか。
そういう世界を離脱して真実を求めていくために科学的手法で批判するということをやってきて、今の科学はそれができたと思っているが、それではダメということだね。そんな人間関係が悪くなるようなことをするなと。
G 批判をあきらめているわけではないと思う。斎藤さんの件についてもテレビで流れる百条委員会の内容がおかしいという批判から入っている。ただ、その批判の声が結果的に大きくなった。
司会 批判精神がなくなったわけではない。テレビがおかしいということは的確に批判した。ただ、だからパワハラはなかったと結論付けるのはおかしいと感じる。
H ただ、斎藤さんには職員や労働組合も反対した。それで選挙をやり直しして、それでも通るというのは非常に怖いと感じた。それであれば、辞めずに議会の中でこう言ったことがあったとつまびらかにするべき。百条委員会も結論が出ないまま選挙に入った。
司会 議会は慌てていた気がする。なぜあのタイミングであの不信任決議を満場一致で成立させたのか。 また、斎藤知事の返す刀が解散ではなく、失職にして再選挙とした。後から考えると勝利につながる最適な行動であった。選挙をしてしまえば禊になり、斎藤さんは正しかった、事件はなかったというムードになった。本当はそうじゃない真相を明らかにするべきであったと思う。
対抗候補の稲村さんについては、尼崎市長と県知事は違う。県知事に立候補するにあたっての準備が足りていないということで、斎藤さんがこけたから、次はという形で立候補したのではないか。
X 自ら辞めるってなったら非を認めたことになるが、自動失職で知事選になるのが狙いだったのか?
司会 斎藤さんも頭がよく、自分が正しいという姿を見せる、自分の非を一切認めない、自分が間違っていないことをいかに立証するかにたけていた。(知事として)多少きつい言い方をしたかもしれないが、部下(元県幹部)の死には一切関係がなかったということを貫き通した。新しいタイプの人間像だと思う。
それで最初から昼の情報番組では各局がくりかえし放送したので、斎藤いじめではないのかという声もでてきた。それが火種となって、報道としてやりすぎではないかという意見もあって、余計に反転した時にバイアスが効いたと思っている。
G テレビで斎藤さんを見て、いじめられていた過去の自分と重なって助けなきゃという声もあった。
司会 そういうこともあったと思う。民放はやりすぎだと。それで既存メディアとの戦いだとなった。ある番組では「既存メディアが負けたということですかね」と言っていたが、負けたのはお前だろうと既存メディアを巻き込むなという声もあって、確かにNHKはそこまでは踏み込んでいなかったと思っている。
新聞もコンプライアンスチェックがされている。そのため、このように議論されていると掲載している。議論されている内容が事実かどうかは関係なく議論されていることは事実なので。
J しばらく経ちましたが、県民の評価はどうですか。県政の停滞もあったが、その後スムーズになったといった話や県民にとってやっぱりいい人だとか、まだ評価するのは早いですかね。
X まだ早いと思う。なぜ情報が漏洩したのかなど、まずは検証が必要。そういった当たり前の議論がまだできていない状況だと思います。
J 兵庫県は昔からニュース多いですよね。
司会 私もいろいろと情報を集めて発言をしているけれども、どうやってこれから斎藤さんはやっていくのかという疑問はある。当選しても普通に考えたらうまく行かない。職員も20人ほど辞めており、行政組織として動かないかもしれない。業務が統制され、日常処理もきちっとできて、新しい案件も議論されて議会に出すという通常のプロセスが壊れてしまったように感じる。もう、異次元に迷い込んでしまったっている感じです。
斎藤さんが良いとか悪いとかの議論ではなく、いきなり始まってみんな狐につままれたという。稲村さんの陣営もSNSを頑張っていたが誤った情報を流しているという団体の訴えにより、Xが止められた。だから稲村さん(陣営)はSNSで活動ができなくなった。稲村さんは今、当落に関してではなくこのような状態で公正な選挙が成り立つのかという問題提起をしている。
たから非常に後味が悪い、狐につままれたと言ったが、なぜこんなことになったのかが分からない、なぜそういった話を何十万人も信じたのかというところが非常に怖い。
J 次の国政選挙についても影響があって、法律を変えていくなどの対策が必要かもしれない。党員や組織力でなんとかなる時代ではなくなったという思いはある。
司会 八割は通常の対応で結果が出るが、二割がそういった世界(SNS)で通ったり、落ちたりする。データとしてまだ不十分だがそういったことが起きると思う。比例選挙はどうなるか。
O 次の参議院選挙についてどのような対策をするのか、今までのような後援会活動やサポーターズカード活動をやっていくのか。
X 一般論としてはサポーターズカード活動など従来の活動をやっていくことになるのではないか。SNS活動もやっていくが、だれがフォローしてくれるのか分からない。支持の数を把握するためにもサポーターズカードなどが必要だと思う。そこは丁寧に説明していかないといけない。
司会 自分で勉強する若い人たちが増えていると聞いている。今は自分たちで調べるケースが増えてきていると。
X 最近飲食店や電車の中で隣の人が普通に議員の動画などを視聴しており、政治への興味・関心が増していると感じている。シリーズ物でおすすめとして表示されているのかもしれないが、それがプラスの方向に働いている。
司会 103万円の壁などあれだけメディアでやっていたら、興味を持って動画を見ているかもしれない。それで初めて知って意外といい政策を打ち出しているねといった相乗効果が働いている。
それで手取りを上げるということがネット空間では何かしら財務省とケンカしているイメージがつくられ、財務省が悪でケンカしている人が正しいといった単純化がいき過ぎた面があるのかもしれない。それで支持率が上がったのかは、関係ないと思うがよくは分からない。
H 今はムードは盛り上がっているのではないか。
X 確かに今は風が吹いてきて非常によい。あとはスキャンダルなどで風向きが変わるようなニュースが常にリスクとして付きまとっている。
J 昔に比べると関心が高まっている。ただ、投票率が上がらないのが少し不思議。
司会 次の参議院選挙の投票率は上がると思う。衆院選の効果がある。こんなに簡単に有権者が政治を動かすことができると伝わった。103万円の壁も20万円ぐらいまずは上がった。178万円までの引き上げはどうなるか分からないが、有権者も自分の財布に直結するので興味を持っているのではないか。
X 特に中小企業から見ると賃上げが物価高に対して不十分で特に引き上げに対する思いは強いと思う。
司会 労働組合がない組織化されていない企業の労働者は、この物価高において社長が賃上げしてくれないとなれば、特に反応が違う。
菓子などもステルス値上げが蔓延している。特に子供や食べ盛りには影響が大きい。
O 賃上げのほうもこの数年で数万円上がっていますよね。
司会 賃金が上がっているのは、データを見ても事実で、主任などであればもっと上がっていると思う。
X ただ、それ以上に税金で取られているという感覚も強い。
司会 一番ひどいのは消費税だと思う。物価が上がっている部分にも消費税がかかっていることに私は一番怒っている。これは騒動の原因になるかもしれないと思う。時間がきましたので、一旦お開きにしてまた次回にしましょう。
(今回の座談会は伊藤さん、佐藤さん、江目さん、中堤さん、渡邊さん、藤田さん、司会は加藤でした。)
-了-
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