研究会抄録

ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」

ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」

講師:仁田道夫氏、石原康則氏

場所:三菱電機労働組合応接室

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発言広場

【遅牛早牛】 時事雑考「2024年5月の政局-4月補選は頂門の一針か、あるいはじり貧のはじまりか-」

【 3月の1人あたりの実質賃金が前年同月から2.5%減少した(厚生労働省毎月勤労統計5月9日発表)。名目賃金が0.6%増加したものの物価上昇率が3.1%であったために差引減となった。これで賃金が物価に負けている状態が24か月もつづいていることになる。来月からは春の賃上げの結果が反映されるので、いよいよ実質賃金が上向く見通しであるが、プラスに転じる時期については多数の専門家が秋ごろと予想している。しかし、中小規模企業の賃上げが低水準にとどまる可能性も高いことから、プラス転換は25年に持ちこすとの見方も浮上している。

 筆者はウクライナ紛争の長期化や中東情勢の悪化などから資源、物流コストが高止まりとなり、また円安の加速を考えれば、さらなる輸入物価の上昇が避けられず、くわえて価格転嫁の進展も予想されるので結果として3%台の消費者物価上昇がつづくと予想している。ということで、減税などの生活支援策をそうとう強化しないかぎり、年度内のプラス転換はむつかしいと考えている。ということは、賃上げが物価を追いこせている少数の家計と、物価についていけない多数の家計とに分断されると同時に両者の所得や生活の格差が拡大していくと思われる。いうことで、低所得層においてはひきつづききびしい状況がつづき、否応なく生活の質をおとさざるをえなくなると思われる。追加の生活支援策が必要だと思うが。

 ところで、政治資金規正法の改正協議が急ピッチですすんでいる。会期内に仕上げるべきであろう。くわしいことはまだ分からないが、公職選挙法にならった連座制の導入には筆者は反対である。この連座制というのは現行法体系からしても異様なもので、そこまで法曹にたよらなければならないのかと嘆じている。そもそも有権者が投票で決着をつける道があるのにと思うし、選挙で当選した者に落選以上の罰をあたえることでどれほどの正義が達成されるというのか、大いに疑問であり、やりすぎだとも思う。さらに投票の価値を不安定にする点においても主権者の権利の侵害ではないかとさえ思う。

 筆者は公選法の連座制も憲法とは不調和であると考えている。たしかに最高裁の判断はあるが、連座制の適用例をみながら考えさせられることも多いのである。人生をかけている政治家にとって過酷な仕組みであると思う。

 さて、政治資金収支報告書の記載不備あるいは判断の過誤さらに解釈のちがいなどが失職や公民権停止をもって贖わなければならないほどの罪であるのか判断が難しいと思うし、個々の事例にもよるが悪質性の抽出がむつかしいことをいえば現行と同じではないかとも思う。さらに一票を投じた有権者の付託はどうなるのかなどについて考えをめぐらせれば巡らせるほどに、不均衡がすぎるように思うのである。また、法廷で議員をどんどん辞めさせられる手だてをもうけることには慎重であるべきで、議員を委縮させることは民主政治の退行をまねくのではないかと危惧もする。あるいは政権側の武器となり、実質専制政治の道をひらくかもしれない。公開情報であるから詳細に記すれば記するほどAI分析の精度が向上することの意味する危険についても考慮すべきではないか、世界的に個々の議員への干渉が強まっているといわれているが、そういったことへの予防策も同時に考えてほしいものである。(例によって文中敬称略とする場合がある)】

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