研究会抄録

ウェブ座談会シリーズ1「世の中何が問題なのか-アラコキ(古希)連が斬りまくる」
講師:参加者は五十音順で伊藤、江目、佐藤、中堤、三井各氏。司会は加藤、事務局は平川。
場所:メロンディアあざみ野
発言広場
【遅牛早牛】 時事寸評「2025年2月の政局②-トランプ政権疾走する-」
1.トランプ政権のスタートダッシュがすさまじい
もはや日常を超えてトランプがあふれている。溺れてしまいそうなので、電源を切るか、スキップすることにしている。いつまでも「気をひく言いまわし(アテンション・バイト)」に構ってはいられない。発信のほとんどが週間要約で間にあうので、慌てることはないのだ。また、伝えられている発言のすべてがわが国に関係するとも思えない、つまり捨て札も多いのでひと月後の残存率はあまり高くない。それに、いよいよ国内メディアのオオタニ・ラッシュが始まるのでトランプ、オオタニ、トランプと連呼されるのもうざいと思われるので、おそらくトランプ色の方が薄められるだろう。といったことを言うのは隠居の気楽さゆえで、現役にしてみればほぼ恐懼にちかい心持ちであろう。
とくに関税の話は、そもそもが交渉(ディール)の手段なのであるから、あたふたするよりも個々の政策目的(真意)を見きわめる方が先というべきだが、当座の営業や為替あるいは株式市場への影響を考えればどうしても神経質にならざるをえないと思うし、そういった立場の人びとが多いのも確かなことである。
ところで、米国がもともと豊かな資源国でありながら貿易赤字が膨張しているのは、国内消費が過大なのか国内生産が縮小しているかのいずれか、もしくは両方なのであろう。それにしても国内の供給力増強の担保なしに関税強化を先行させることは、経済政策としては自傷行為をこえる破壊性を持つと思われる。したがって、たとえばインフレ対策などには入念な準備が必要となるから即戦的な実行は困難と思われる。ということが広く知れわたれば交渉手段としての関税云々策は急速に徐力化すると思われる。
さらに、輸入制限を目的とする関税政策によって国内生産の回復・増進が可能なのかについては、資本と技術の調達を重要視する立場からいえば時間軸もふくめて否定的にならざるをえない。それは超大国の米国においても例外ではない。
くわえて、トランプ氏がどんなに否定しても気候変動については、経営者や投資家はそれを無視するどころか積極的に受けいれていく方向にあり、米国においてはしばらく足踏みをするにせよ、またEU主導に陰りがでてくるにせよ大きく流れが変わることはないと思われる。つまり、投資家の判断や脱CO2への対応において、新規の生産拠点を環境政策が大きくスイングする米国内に建設することが魅力的なのかどうか、またファイナンス可能なのか、などなど入念な検討を重ねているうちに中間選挙をむかえることになる。投資家はトランプ流の持続可能性については世論調査などをベースにかなり疑問をもっているといわれている。今のところ意欲的な計画を交易国に考えさせるのが政策としてはピークであったと過去形で語られる可能性がたかいということであろう。