研究会抄録
ウェブ鼎談シリーズ(第13回) 「労働者協同組合法について」
講師:山本幸司氏、山根木晴久氏
場所:三菱電機労働組合応接室
【加藤】 本日はありがとうございます。今日のテーマですが、労働者協同組合法が昨年の臨時国会で成立したことを受け、その立法趣旨など概略を、また経緯やこれからの問題点あるいは運動のイメージなどについて山本さんから説明をしていただき、それを受け、山根木さんから労働団体である連合の立場で、この法律について経過やご指摘をいただいたうえで、労働運動全体として、またいろいろな問題を抱えている社会にあって、この法律をどう活していけるのかなど総合的に提言いただき、あとは質疑を含めてやりとりをしていただければと考えています。
「労働者協同組合法の概要、特徴、成立の意義について」山本さんの説明
【山本】本日はこういう機会を与えていただき、ありがとうございます。実は1月18日、本日と同じテーマで中央労福協の学習会がありました。概略はそのときに使用したレジメに沿ってお話させていただきたいと思います。
レジュメのタイトルは「労働者協同組合法の概要、特徴、成立の意義について」ですが、主たる問題意識は、サブタイトルの「労働組合運動と協同組合運動の戦略的連携を見据えて」ということです。働く者が安心して暮らしていけるような社会をつくるためには両者の連携が不可欠だという観点を重視しながら報告します。
レジュメの「はじめに」に書いておきましたが、日本には、労働者協同組合を名乗る組織と運動は存在するのですが、労働者協同組合法は存在しません。そのため「全日本自由労働組合」(全日自労)の中高年雇用・福祉事業団全国協議会を前身とする日本労働者協同組合連合会(ワーカーズコープ)は1998年「労働者協同組合法」制定推進本部を立ち上げ、以来20余年、労働者協同組合法制定を目指して取り組んで来ました。
法案は、昨年6月12日に通常国会に提出されましたが、継続審議となり、臨時国会に持ち越されました。そして昨年12月4日、全党全会派の賛同を得て、全会一致で法案が可決されました。
実は、6月12日の通常国会の段階では、田村さんは厚生労働大臣ではなく法案の筆頭提出者でした(大臣就任に伴い橋本岳さんが提出者に交代)。通常国会の閉会直前に提案者の中で法案審議の取り扱いを巡って議論がありました。全党全会派で一致したんだから、成立を最優先させこの際、委員長提案、質疑なしでいった方がいいのではないかという声が与野党から出ました。それに対し、いや、この法案が成立したあかつきに、実際に活用されるためには、ちゃんと審議をして、立法趣旨を、ていねいに議論することが、回り道のように思えるけど、法律の社会的影響力や理解力が進むのではないかということで、これはとくに田村さんと桝屋さんの強い思いもあって、臨時国会におくるということで、継続審議扱いとなりました。
臨時国会では11月18日に衆議院厚生労働委員会で主旨説明が行われ、20日には質疑応答なく全会一致で可決、そして24日、衆議院本会議で、全会一致で可決。参議院に送られ、12月3日、参議院厚生労働委員会で主旨説明がなされ、質疑討論はなく全会一致で可決、そして12月4日、参議院本会議で、全会一致で可決された。そして、12月11日に官報に告示されまして、労働者協同組合法が公布されるというはこびになりました。
なぜ労働者協同組合法が必要なのかという話になったときに、ワーキングチームの座長をつとめていた田村さんはこういう説明をしています。「出資と労働が一体となった組織で、かつ地域課題を解決するための非営利の法人という形態は存在しない。NPO法人の場合は出資ができない、医療法人の場合は営利を目的としている。したがって新たな法制度が必要だと現場を実際に見て思った。地域の問題は地域のみんなが解決していく時代で、協同労働はこれからの時代にあった働き方で、最良のモデルという思いを強くした。」
次に法案策定過程の特徴、法案の概要、および留意すべきポイントについて話をしたいと思います。この法案策定過程の特徴は政府や政党発ではなく、先行する事業と運動の求めに応えて法律が生まれたことです。この法律は桝屋議員、田村議員をはじめ、法制化を一貫して担い推進してくれたワーキングチーム、それから協同組合振興研究議連の先生方が、事業の現場に何度も足をはこび、衆議院法制局や厚生労働省等の官僚のみなさま方の誠実な実務的なサポートを受けて、法制化を求める当事者である私どもの協同組合連合会やワーカーズコレクティブなどが、すべての会議に参加して、一条一条、検討を重ね練り上げてきた、つくりあげてきた経過がございます。
実は、労働金庫法とまったく同じです。労働金庫の場合には、ご案内のように1950年に、労働者信用組合として、岡山と兵庫に設立されました。しかし、法的根拠は信用組合法です。労働金庫法はありません。にもかかわらず、労働者のための福祉金融機関として、運動と実績を積み上げていくなかで、1953年8月に、この実態を法的に追認するという形で、労働金庫法が成立した。この労働金庫法が定められる過程も、実は継続審議一回、二回の廃案という憂き目にあって、三回目の提案でようやく通ったという経過がございます。法律に運動が先行した点で同じなんです。
篠原議員の求めに応えて桝屋事務所がまとめた労働者協同組合法策定系譜という資料をご覧ください。法案策定前史という最初の四角がありますけども、2008年ごろ、協同労働法制化市民会議、このとき大内力東大名誉教授が初代の代表だったのですが、二代目は笹森さん(連合・労福協元会長)が代表に就任し、その要請のもとに超党派議連である「協同出資・協同経営で働く協同組合法を考える議員連盟」が結成され、厚労大臣を歴任した坂口力さん、会長代行が仙谷由人さん、幹事長が自民党の長勢甚遠さんによって取り組みがなされたのです。この中で縷々議論され、政権交代となって民主党政権下においても、協同組合法の法案要綱が検討されたわけです。しかし、いずれの取り組みにおいても、めざしている志はよくわかるがチープレイバーづくりに悪用されないかと懸念され、労働者保護の観点から成案を得ることができなかったという経過があります。
ワーカーズコープ連合会は、2015年8月、法制化運動の再始動を決めました。当時私は、労福協におりまして、専従副会長をやっていたんですが、当時の労協連の永戸理事長から声をかけられて、笹森さんがやっていたという経緯もあって、お手伝いさせてもらいましょうということで、2015年12月1日から、直接的には労協連の役員としてかかわるようになったという経過がございます。
画期的な法案策定の過程、与党WTと協同組合振興研究議連
前回までの法制定の取り組みは、どちらかといえば民主党が中心となって進められてきました。しかし、現下の国会において自民党、公明党が賛成しない限り法律は制定できません。そこで過去の経緯を踏まえ坂口元厚労大臣の推薦を得て、桝屋議員をコントロールタワーとして法制定運動を本格的に再始動させることとなりました。与党政策責任者会議(自民党、公明党の政策責任者らで構成)というのがありますが、当時の政調会長が現外務大臣の茂木さんでした。古賀さんに随分骨を折ってもらい、公明党が提案する形で、与党の政策責任者会議のもとに協同労働の法制化に対するワーキングチームというものを立ち上げていただき、座長には与党政調の会長代理だった田村さん、座長代理に公明党の桝屋さん、委員には厚労関係議員という体制が整いました。ここを柱の一つに、法制化の実務作業が始まりました。同時に一連の歴史的経過を踏まえれば、内容からも与党提案ではなく全党全会派の賛同を得る必要があると判断しました。民主党を中心につくられていた協同組合振興研究議員連盟というのがあります。参議院議員の郡司さんが会長で、今、落選していますけども、静岡選出の小山展弘さんが事務局長をやっていました。この議連は、2012年の国際協同組合年を契機として、協同組合憲章草案を国会で決議するということが第一の課題としていましたが先行して労働者協同組合法を制定することを要請しました。議連は気持ちよく受け容れてくださり、郡司先生が自民党の河村さんに会長就任を要請し、自民党や公明党の方々にも入っていただいて、本格的な超党派議連に改編されました。この事務局長は、民主党の篠原さんがやってくださっていて、小山さんに事実上事務局長の仕事をやり続けていただいたという経過があります。これで、与党のワーキングチームでの議論と超党派議連とがキャッチボールしながら成案を取りまとめて頂きました。
2017年5月9日、ワーキングチームの第1回会議が開催されました。以降、2020年2月21日まで、10回にわたりワーキングチームの会議を行いました。6月28日に実務者会議が開催されておりますが、これは主として桝屋先生を中心として、衆議院法制局、厚生労働省、当事者であるワーカーズコープ、ワーカーズコレクティブが参加して計11回、議論しました。合計21回以上に及ぶすべての過程に当事者団体が参加し、発言が認められ内容が練り上げられていきました。
2019年2月27日には、超党派議連の役員会で法案骨子の説明を受け、検討し、4月には総会で議論し了承しました。その後も節目節目で役員会、総会を開催し2020年3月31日には最終的な条文案を報告して了承を得るなど、文字通りキャッチボールしながら進められました。超党派議連の総会で了承を得られたことを踏まえ、自民党から共産党まで各党の法案担当者が選ばれて、この法案担当者会議で最後の詰めの作業が2020年4月から10月まで精力的に行われました。また、2020年3月、4月以降には、労働弁護団と議連との間での、公式な議論も何回か行いました。あるいは、「きょうされん」や「協同連」という障がい者団体とも丁寧な議論を進めてきました。更に公式、非公式に、ワーカーズコープ連合会は、労働弁護団、そして連合や全労連等幅広く関係団体に情報提供しながら、進捗状況を報告して、意見交換しつつとりまとめてきた、こういう経過があります。これが大きな特徴かなと思います。
労働者協同組合とは
労働者協同組合法第1条の全文は次の通りです。
「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつ、その意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して、組合の事業が行われ、及び、組合員自らが、事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理、その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて、地域社会における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする」。
衆議院法制局がとりまとめたポンチ絵があります。このポンチ絵は法案の第1条を分かりやすく説明したものです。
第1条では、生活との調和を保ちつつ、意欲、能力に応じて就労する機会が、必ずしも十分に確保されていないという日本の現状認識が示されています。現在の日本社会は、生活との調和が保たれた働き方ができていない。また、意欲や能力に応じた働く機会が必ずしも十分に確保されていない、そういう現状がありますというのが、法第1条の現状認識です。これを踏まえ労働者協同組合という組織に法人格を与え、労働者協同組合という組織を通じて多様な就労機会を創出すること、そして地域における多様な需要に応じた事業が実施されることを促進すること、そのことによって持続可能な地域社会の実現に資することがこの法律の目的であると述べています。
そこでは労働者協同組合とはどういう組織であるかを定義しています。労働者協同組合とは組合員が出資すること、組合員の意見を反映して組合の事業が行われること、そして組合員は、組合が行う事業に従事すること、つまり、出資原則、意見反映原則、事業に従事する従事原則、この三つの原則を合わせて基本原理とする組織が労働者協同組合という組織である、ということです。ここでいう多様な需要に応じた事業の具体例とは介護・福祉関係、子育て関連、地域づくり関連として農産物加工品の直売所等の拠点整備、あるいは清掃、さまざまな総合建物管理、あるいは若者・困窮者の自立支援事業・・・等々の切実なニーズである。
労働者協同組合は、投資に対する最大リターンを第1目的とする、つまり利益を得る手段として事業を行う営利団体ではなく、就労の機会創出や地域の多様な需要に応じた課題を解決することを第1目標とする非営利の事業体であり、その特徴が法的に規定されています。もちろん、自立的な事業体として事業を継続するために適正な利益確保が不可欠です。
基本原理の重みと主な論点
繰り返しとなりますが労働者協同組合法は出資原則、意見反映原則、従事原則の三つを基本原理と明定し、この原理が各条文に反映されています。
法律用語としての基本原理という言葉の重みについて私は知りませんでした。生活保護法の第5条では次のように使われています。「前4条に規定するところは、この法律の基本原理であって、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理にもとづいてなされなければならない」。非常に重たい意味を持つ基本原理という法律用語がこの法律の1条で使われております。
それでは、労働者協同組合法の中身がどうなっているのか確認したいと思います。労働者協同組合という組織を簡単な図で示してみました。労働者協同組合という組織は、三層構造からなっています。
(参考)三層構造からなる労働者協同組合法
3層 |
協 同 労 働 と い う 働 き 方 |
2層 |
持続可能な活力ある地域社会の実現に資する事業を推進する非営利の事業組織(協同組合) |
1層 |
労 働 者 保 護 法 制 |
1層が労働者保護法制です。労働者保護法制を土台として2層に持続可能な活力ある地域社会の実現に資する事業を推進する非営利の事業組織、七項目ある協同組合原則を踏まえた事業組織です。つまり一株一票ではなく、一人一票という原則等があります。そして、3層のこれらを実現していくうえでの働き方は、従属労働ではなく、みんなが主体的・内発的に働く協同労働という新しい働き方。この三つの層から構成される組織が、労働者協同組合であるということでます。
法案策定において大きな論点がいくつかありました。組合員に、労働者保護法制が全面的に適用されているのか否か、それは法的に担保されているのか、いないのかという問題。更に労働者協同組合が行う事業領域はどう規定されているか、NPOの場合は、事業領域が限定されています。労働者協同組合にあっては基本的に、労働者派遣事業以外は、すべてやっていいですよと、こういう規定になっています。労働者派遣事業はなぜだめかというと、基本原理にある意見反映原則が実現できないですね。派遣労働者が派遣先で、自分の意見を反映する権利は保障されません。法の主旨から、原理的に相いれないので労働者派遣事業はダメ、それ以外はどんな事業でもいいですよとなっています。
それからご承知のように、既存の協同組合の設立はすべて許認可制です。許認可ですから、オカミの許可がないとつくれない。ところが、労働者協同組合は、地域社会で切実に「今」困っている子育てとか学童とか介護とか、これら待ったなしの課題を解決するために、志ある住民が当事者意識をもって、設立しようとしても可否は一年後?でなければ分からない。そんな法律ならいらないと、われわれタンカを切りました。志のあるものが、誰でも簡易に設立できるよう設立方式は許可主義ではなく、株式会社や労働組合のように、要件さえ整えて届け出れば設立できる制度になりました。
また、労働者協同組合を自称しながら法人格としてはNPO法人であったり、企業組合法人を擬制的に活用したりしている組織が、今般、労働者協同組合法ができたので、協同組合法人へ移行したいといった場合、必要な法的根拠がないと一度解散しなければならないという問題が出てきます。解散となると、事業の継承は困難です。そうならないように衣替えできる移行規定が、法律の中に設けられています。
次に関心を集めた論点、労働者協同組合の組合員に労働者保護法制が全面的に適用されるのか否かということです。1条おいて事業の実施主体は組合であって、組合員は組合の行う事業に従事するとされ、個人事業者ではないかとの誤解が生じないよう規定されています。そして、3条2項2号に、第20条第1項の規定にもとづき、組合員との間で、労働契約を締結するということが明記されています。20条では組合は、その行う事業に従事する組合員(一部の役員である組合員を除く。)との間で労働契約を締結しなければならない。誰を除くかというと、民間企業でも、使用者たる社長とか、専務は労働組合に入れないのと同じで、理事長、専務理事、監事以外のすべての組合員は労働契約の締結が義務づけられています。
更に21条に、不利益取扱いの禁止規定があります。「組合は組合員であって、組合との間で、労働契約を締結して、その事業に従事するものが、議決権又は選挙権の行使、脱退その他の組合員の資格に基づく行為をしたことを理由として、解雇その他の労働関係上の不利益な取り扱いをしてはならないこと」です。更に130条に「厚生労働大臣は指針をつくるにあたっては、あらかじめ関係行政機関の長に協議するとともに、労働政策審議会の意見を聞かなければならない」と規定がされています。
もう細かく申し上げませんけども、組合員を辞めると自動的に解雇となるのかというと、これはなりません。組合員契約が終了しても、労働契約が存在している以上、労働契約は優先しますから、組合員でなくてもそこで働き続けることができる、そういう規定になっています。
そのほか付則33条で厚生労働省設置法に「労働者協同組合法に関すること。」を厚生労働省の所掌事務として明記することとされております。以上の通り労働者保護に関する法律は適応されるということであります。
協同労働と労働法上の労働者概念の整理
大きなハードルとしてはワーカーズコープ、ワーカーズコレクティブが主張する協同労働という働き方と労働法上の労働者概念をどう整理するのかという問題がありました。「雇用労働じゃない働き方」と法律に記述すれば自営業者と扱われ労働者保護法制は適用されません。
私はワーカーズコープの仲間たちに言いました。労働者協同組合法が存在しない中で、労働者協同組合と自称し「雇用労働ではない働き方」と言ってきたけれども、現に厚生年金に入っているし労災も適用されている。つまり、労働法制の法的枠組みの中でやっている実態を認めたからといって、自分達がめざしている働き方が否定されるわけではないでしょう。ならば本当に法制化を目指すのならば、「協同労働」と法律上の労働者概念について法理論上折り合いをつけねばならない等々、厳しい議論がありました。
残念なことですが、ワーカーズコープを含め協同組合関係者は労働組合運動に対する関心もリスペクトも低く、逆に労働組合関係者も協同組合運動に対する関心もリスペクトも低い。
歴史を振り返れば、長きにわたって人間らしい暮らしと働き方は一部の特権階級にのみ許されて当然とされてきた。人間らしい暮らしをしたかったら、資本家になれ、学を極めて帝大を出れば支配階級にいけるよ!つまり被支配階級にいる限りは、貧乏人でしょうがないんだというのが、あたりまえとされてきた。
そういう中で、イギリスでは1799年、職工に対する団結禁止法が、そして翌1800年には、一般団結禁止法が制定された。これに抗して、無産者たる労働者は過酷な犠牲を強いられながらも困難を乗り越えて1906年、100年以上に及ぶ闘いの結果、「労働争議法」を制定させ、ストライキによる損害を資本家は労働者に請求できないという原則を勝ち取りました。労働者保護法制は、長い長い戦いの結果獲得されたことを肝に銘ずる必要があります。決して手放してはならない歴史的遺産です。
しかし、労働者保護法制は、使用従属性という法的枠組を要件としています。この制約と限界を克服し、従属労働ではないより豊かな働き方を実現させていくことこそ、労働運動が引き受けなければならない歴史的役割であろう。労働法が100%適用されたからといって、自主的・内発的な人間らしい働き方が保障されるわけではありません。
ところで近代民主主義における契約行為は、個人の自由意思と契約自由を原則としています。しかし労働契約においては、この原則を限定的に制限しています。例えば、労働基準法は労働条件の最低基準を下回る契約の自由は禁止しています。10時間働いてもいいという労働者と10時間働かせたいという使用者がいて、両者が自由な意思に基づいて対等の立場で合意・契約しても、その労働契約は認められません。一日8時間以上働かせることは原則として禁止されています。また一般的契約は、個人と個人を原則としていますが労働契約に限って、労働者が束になって労働組合を組織し、使用者個人と労働組合組織との契約を認めています。その意味で、労働者保護法制は、一般法に対する特別法の関係にあると言えます。ただ労働者保護法制は前述したとおり「使用従属性」を要件とし、個人の自由意思と契約自由を原則とする既存の法体系に組み込まれています。もし、法体系全体を直ちに変えることが可能であれば、使用従属制を否定したうえで、労働者保護を確保し、自由で主体的な働き方を法的に規定することもできます。しかし、資本主義経済社会の根源的変革を抜きにして、現在の法体系を変えることはできません。従って問題は次のように立てられます。個別法たる労働者協同組合法を制定することは、現行法体系に組み込まれている労働法制度を踏まえ、実態として協同労働という求める働き方を可能ならしめる法的組み立てを工夫し、つくりだすことです。
制定された労働者協同組合法では、使用従属制=労使関係の法的枠組みを基盤としています。使用従属制とは、使用者に使用者権限、指揮命令監督権が認められ、被用者たる労働者はそれに従って働く義務とその労働に対する対価として、賃金を得る権限を有するものとされています。労働時間、最低賃金、労働保険等々の適用を受けるためには、この法的枠組みを満たさなければなりません。こうした法的制約を踏まえつつも、より自由で主体的な働き方、協同労働を可能とする質的発展が求められています。労働者協同組合法においては、労働者保護法制と労働者協同組合運動が掲げてきた協同労働という働き方との関係を、以下の三点で整理しています。
第一は、使用者が有する指揮・命令・監督権は、事業目的実現のために付与されています。従って何を目的として事業がなされているかによって、指揮・命令・監督の内実は異なります。最大利潤の追求を目的とした営利企業と、最大利潤の追求ではなく「地域における多様な需要に応じた事業を通じて持続可能で活力ある地域社会の実現に資すること」を目的とする労働者協同組合の事業目的の根本的相違は峻別されなければなりません。
第二は、労働者協同組合法においては第1条で、「組合員の意見を反映して事業を行う」原則を構成要素とする基本原理を規定し、事業の進め方、働き方等々について組合員全体の意見を反映させる具体的方法を定款に規定すること、さらに総会にその結果の報告を義務付け、使用者の被用者双方に確実な履行を求めています。
ここに先述した基本原理という法律用語の重みを見て取ることができます。労働者協同法の使用者には指揮命令・監督権限を行使するにあたって、事業に従事しているすべての組合員の意見を反映させることが基本原理として重く義務づけられています。株式会社の使用者には、そのような義務は課せられていません。
三つ目は、使用者をだれが選出するのか、使用者を選出する権利はだれに与えられているのかの違いがあります。株式会社では、誰を使用者・役員とするのかの権限は株主にあり労働者にはありません。その権限が株主に保有株数に応じて与えられているのに対し、労働者協同組合では、協同組合原則に則り出資口数にかかわらず、組合員、つまり働く当事者に一人一票が与えられており、自分たちで選べるわけです。以上のことから、労働者協同組合法においては、組合員は事業の在り方をはじめ、組合活動全般に意見反映する権利と、使用者を自分たちで選出する権利を有する労働者ということになります。この法律は、労働者保護法が不可欠要件とする使用従属性という法的枠組みを踏まえ、実態的にそれを超える主体的で人間的な働き方を可能とする新しい法的権限を確立するものということが出来ます。
労働者派遣事業を禁止している理由は以上のことを重ねて根拠づけするものです。
法制定を可能とした二つの要因
労働者協同運動の未来的価値ということ、法制定を可能とした要因等について考えて見ます。私たちはどういう時代を引き受けなければならないのでしょうか?どういう社会の変化に直面しているのでしょうか?これらは法律が制定された理由と深く繋がっていると考えます。
法制定を可能とさせた要因は二つ考えられます。一つはいうまでもなく、全国で粘り強く積み重ねられた事業と運動の蓄積、多くの関係者の支援と共感の広がりです。ワーカーズコープだけでも350億円に達する事業高、1万6千人をかぞえる就労者、日本の全自治体の過半数を超える950以上の自治体で、法律を制定すべきだという意見書が採択されるなど、法制定の必要性を根拠づける事業の成長と結びついた社会的・政治的力の広がりを指摘できます。
二つ目の要因としては、労働者協同組合運動の未来的価値に関わっていると考えます。
私たちはどういう時代を引受けなければならないのか、子どもや孫たちはどういう時代を生きていくのかということを直視し共通認識を広げることが必要と考えます。資料1、2(鼎談末尾に掲載)に課題を記しました。
世界と日本は人類史的転換期に直面し、近代民主主義社会の危機に陥っています。コロナパンデミック、露呈したグローバル資本主義の本質と機能不全、頻発する「異常気象・気候危機」は2030年までが人類の分岐点であることを警告しています。「利益より人を優先し社会経済的な不平等や環境問題に取り組まねばならず先進国で格差が開いた。・・・グローバリゼーションが終わりに近づいていることは明らかで、それが、それが民主主義をむしばんでいる」(マクロン大統領)。
アメリカでは1972年、日本では1997年が実質賃金のピークです。それ以降GDPは増大したけども、労働者の実質賃金は低下しています。経済成長したにもかかわらず、労働者は豊かになれなかったというのが歴史の事実です。分配構造の歪みは放置できないところまできています。デジタルプラットフォーマーには全面的に労働者保護法を適用されなければいけないにもかかわらず、逆に労働者保護法制を骨抜き化する政策がセットで進行しています。
また、日本社会の基盤的構造が急速に変化しています。
第1は人口動態(総人口の減少、少子の進行、高齢化、生産年齢人口の減少)の問題です。一例だけあげます。日本の生産年齢人口は2060年までに、GDPが世界第5位のイギリスの全就業人口に匹敵する数が、GDP10位のカナダの全人口を上回る3264万人が減少します。社会の担税力は激減します。は最低4つの対策を複合的に進める必要があると指摘されています。①日本の社会的資源の半分は女性。女性が活躍できるような社会を実現すること②生涯就労社会へ移行することです。高齢者に限らず自分たちで働き方を決めて、柔軟に働けるような働き方を可能とし健康寿命と平均寿命の乖離を縮小すること。③平等互恵を基盤とした外国人労働者の確保、④実効ある少子化対策の推進です。
第2は家族類型変化への対応が不可欠です。人間は無条件に他者の支えを必要とする生き物です。これを担ってきた三世帯所帯が激減し、今や独居がいちばん多数です。生涯未婚の男性は3割になります。家族が担ってきた役割を社会的共同事業として対応するほかありません。介護事業に止まらず対象範囲の拡大と質の向上が必要です。
第3は人生100年時代の到来への対応です。人生を<誕生・教育―現役―リタイア>という三つのステージを前提とした制度、ライフスタイルの見直しは待ったなしです。
加えて、国、地方の担税力の低下が不可避の下で累積債務が1300兆円を超える財政困難・・・・等々。
格差と貧困の拡大固定化、「アンダークラス」という社会層が出現し低賃金で劣悪な労働条件で働くことを余儀なくされている人々が著増し、生きづらさが蔓延する一方で、他方、生活に必要な糧を超えた肥大化した致富衝動・拝金主義が横溢しています。ブルシットジョブという言葉で示される労働の問題性が指摘され、労働の質・社会的価値と働き方に疑問が投げられています。働くことを通じて社会に参加し、人と人の豊かな関係を形成し、そうした営みを通じて自己実現をはかっていくという本質的な価値・・・等、働くことが持つ意義を深く多面的に問い直す動きが広がっています。これらは生きて生活していくことの意味、経済活動の在り方の問い直しと密接に繋がっています。
これまでの経済活動の在り方、社会制度の基盤にすえられ、依拠してきた思想・価値観の見直しが不可欠です。近代民主主義の思想的基盤=普遍的価値として喧伝されてきた基本的人権が実は、専ら欧州中心主義であり、白人・健常者・異性愛者である男性のそれに限定。「人権と民主主義」は奴隷貿易、先住民族の大量虐殺、天然資源の奪取などによって支えられていた近代化の暗部を暴きました。「普遍的価値」としての人権は非欧州諸国を、無産者を支配することを正当化するイデオロギーに過ぎませんでした。
持続可能性がおびやかされている日本社会は「今だけ、金だけ、自分だけ」、「努力、根性、自己責任」では克服できない諸課題が山積しています。人々の分断を克服し、連帯社会を、持続可能な地域社会をどうつくっていくのかが問われています。必要な公共サービスを行政に要求し、実現させるのが運動という側面がありました。しかし、それを可能とする条件は益々消失しつつあります。公共は官の独占物ではない。公共の担い手、それは市民自身です。私たちは「官から民へ」が実は「官から会社へ」であったことを学ばされました。持続可能な社会と暮しに不可欠なコモン、社会的共通資本を金もうけの対象とさせてはなりません。
今一度、三層構造の図を見てください。一層が労働者保護法制、二層が協同組合原則にもとづく事業組織、三層が協同労働という働き方で構成されています。経済セクターはパブリックセクターとプライベートセクターだけではなくて、連帯経済セクターが、社会の中にしっかり位置づけられる必要があります。そしてそこでの働き方は、一方的な指示命令にもとづく働き方ではなくて、みんなが語り合って、みんなで決めていく、そこからみんなで責任を持つ、そういう新しい働き方が、こういう枠組みのもとにおいては可能です。
いま、株式会社であっても、原理的・内発的に進んでいる訳ではありませんが協同労働と通底する質を持った現場協議制などが広がりをみせています。そうした努力がなされており、協同労働という考え方を大事にし、適用できる範囲をできるだけ広くしていく必要があるのではないかと考えています。
明日の日本社会が、労働者協同組合がめざす事業の在り方に対する考え方、働き方、それを可能とする制度を必要としているのではないかと思います。
おわりに
持続可能な社会を実現するためには、公助の改革・再構築が必要です。しかし公助の再構築はこれまでの延長上では困難です。地域住民同士の自発的な支えあいの創出=共助の改革と創造を基礎とした参加型の新しい自治体行政への転換が不可欠であり、協同労働という働き方はその軸をなすものと考えられます。
別言すれば、労働運動と協同組合運動とのダイナミックな連携こそ持続可能な地域社会づくりの成否の鍵ではないでしょうか。
イギリスの労働運動のナショナルセンターであるTUCは、労働運動とは、労働組合運動、協同組合運動、女性解放運動、労働党運動の四つの柱からなり、これらが有機的に連携した社会運動として展開されるとき、社会を変える力を発揮できる、このように言っております。その意味で、労働運動の歴史は、労働運動が社会的代表性を発揮し、政治的、社会的影響力を行使するためには、生産の場、すなわち職場と生活の場、地域社会での運動を車の両輪として展開することが不可欠であることを物語っていると、私は思うわけであります。
山根木さんの見解と質問
【加藤】それでは山根木さんよろしくお願いいたします。
【山根木】ご説明有難うございました。いくつかの疑問とか、想定していた以外の議論のポイントも、とくに後半の方でありましたけれが、そこのやり取りは、のちのやり取りの中でやるということでいいですか。
【加藤】どうぞ。
【山根木】久しぶりにヤマコウ節を聞かせていただいて、山本さんは企画局のときの私の上司でした。私は民間出身で、それこそ資本の権化みたいな東京海上出身で、山本さんの立ち位置とは違うところにあって、よく議論させていただいたことを懐かしく思い出しました。改めて今回、この労働者協同組合法を成立させて、すごいなと、ご努力に敬意を表したいと思います。
山本さんは、直接的には言わなかったですが、私なりの言葉で言うと、よく最近、自助、共助、公助だという話がありますが、やはり地域における支え合い、助け合いというものが、これまで以上に大事になってきた。その社会的合意が国会の中でなされた、そこのところがいちばんの価値だと思います。連合的には、協同組合で働く方々の雇用や労働条件が心配なところがありますが、こういう協同労働という働き方が共有できた、ここが大きな第一歩だと思います。
それで、これ逢見さんの受け売りなんですけど、村木厚子さんが『日本型組織の病を考える』という新書版を去年ぐらいに出版された。そこに、良い例えがあって、村木さんは、何もないゼロから課題をみつけ、10ぐらいまでつくりあげるのがNPO。NPOは、何もないところから、地域の先端でいろんなことに気づいて、これをしないといけないと10までやった。その10をくみとって、それを50まで引き上げるのが企業の役割。その50まできたものを、今度は100にするのが行政の役割だと、その本の中に書いていましてね。で、逢見さんは、労働組合が出てこないけれど逢見さんなりに考えたのは、0を10にするNPOを、最先端で支援するのが労働組合の役割、その10を50に引き上げるのが企業の役割、それも企業の労使関係の中で、社会的価値なり意義みたいなことを組合が追究していって、企業に広めるのが労働組合の役割。更にいうと、その50を100する行政に対して、しっかり100にしなければいけないんだと働きかけていくのも労働組合の役割だと。それぞれ主人公が地方連合会だったり、単組だったり、最後はナショナルセンターだったりするけども、0から10、10から50、50から100と、それぞれに単組、産別、連合のそれぞれの立場で関わっていく、そういうことじゃないかなと言ってました。さすが逢見さんです。いいこと言うなと感心したのです。
で、これ連合結成に直接関わられたメンバーの一人の加藤さんの前で言うのも釈迦に説法だけど、連合も結成のときから政策制度で集まったけれども、やはり、地域における支え合い、助け合いの重要性って、当時からも意識されていて、その一つの具体的な活動として「愛のカンパ」がある。この「愛のカンパ」、未だに毎年1億円以上集まってきて、結成以来でいうと50億円ぐらいなのですが、このお金で、NPO/NGOなどを支援させて頂いている。地域の諸課題の最先端でNPOが活動している。しかし、NPOは経営基盤が十分ではないので、そこを労働組合がしっかりと支え、連携していく。労働運動として出来ることと出来ないことはもちろんあるんですが、もっと労働運動として社会性を広げないといけない、そういう問題意識もあって、地域の活動をしっかりと支えていこうと連合の中には、そのような精神なり、理念なりがあると思うんです。
私、ちょうどいま担当している活動に、結成30年の記念プロジェクトとしてはじまった「ゆにふぁん」という活動がありましてね、ユニオンのファンになってもらうというネーミングなんですけど、これも先ほどの議論で、構成産別や地方連合会は、結構、社会運動をやっているんですね。いい運動を。ひとつの事例でいうと、山口県に秋吉台があって、ここの山焼きというのは有名な行事なんですけど、下草を刈る人が高齢化でおらんのですよ。この下草刈りを連合山口がお手伝いしてて、応援してみんなを集めてやっています。この活動が無いと山焼きができないというまさに地域にとっては欠かすことのできない取り組みです。ところがこれがあまり知られていない。地域でも組合員や地域市民に十分知られていない。もちろん全国の連合にも知られていない。調べてみると、知られていないが、いい運動がいっぱいある。ボランタリーにやられているところ、そういうのがたくさんあって。そこで、日本地図をつくりまして、ユニファンマップを作製し、地域の支え合い助け合いの、全国の活動を可視化した。そして、全国に広めているんです。ちょうど1年少し経ったんですが、さっき確かめたら351事例が集まってきていて、今、どんどん全国に広げているんです。
もとより、連合もこの労働者協同組合法でめざそうとしている趣旨については、賛成だと思いますし、ぜひ、こういうムーブメントが、日本社会の中で広がって、そこに労働運動がかかわっていくというのはとても重要なことですし、これからの日本を支えていく大きな仕組みの一つになるんじゃないかと期待しています。
加えて、労働組合や連合、地方連合会は地域における社会的な役割発揮をこの間進めてきました。四代目の連合会長であった笹森清さんは、この点に着目し、連合のローマ字表記であるRENGOをRE-NGOと表現し、連合(労働組合による社会運動)はNGOの原点であり、かつこれからの新しいNGO的な役割の担っていかなければならないといった趣旨の話をされていたことを思いだします。確かに、私なりに考えることとして、労働組合には社会的理念があり、人材があり、実際の運動において社会的な役割発揮を希求し実践してきた。しかし、こうした労働組合の役割は相対的に低下してきているのような気がする。地域のお世話係としてのNPOやNGOが発展してきてるんですね。ですから、労働組合と労働者協同組合やNPO/NGOとの連携や協働が益々重要になってきていると思うんです。
一方で、先ほどもいろんなご説明をいただきましたけども、実際そこで働く人たちの雇用や労働条件に思いを馳せてみると心配なことがあるんです。ちょっとこの協同組合法は横において、この協同組合によく似た形態として、NPOがあると思っているんですよ。先ほど来、労働者保護法と労働者の関係というのがありましたけども、大企業の職場風景と中小企業の職場風景というのは相当違うと思いますし、大企業でも労働組合がある職場風景と、ない風景では相当違うと思います。NPOで働くスタッフも労働者性がありますし、労働法で守られているわけですが、現実を見ると、特徴的なことが二つあると思っていて、ひとつは極めて規模が小さくても、職場環境というか、実態、目に届きにくいところで働いているということと、ふたつめに、活動への強い思いで集まっているので、さっきの議論で、いいじゃないか、おれがやりたいんだから、やってんだからという話もあるんだけども、他方で強い思いの中でやっていると、どうしても無理がたたったり、労働者という感覚がどこかに行ってしまうんですね。結果、労働者保護法が守られないというケースが多々出てきて、それに対して、困難な状況に陥っているNPOで働いているスタッフが相当いるんですね。私は、今、労働相談も担当しているので、NPOで働いている人の相談事例を集めてきたんですが、とにかく、いっぱいある。労働組合のない中小企業で起きている事例に、よく似ているんです。例えば、コロナで活動が停止になったが、休業手当がいっさいもらえないとか、リーダーのハラスメントで困っているとかですね。労働組合のない中小職場の人たちから寄せられるような相談が、相当あるということになると、どうしても労働組合である以上は、協同組合で働く人たちの権利なり、雇用なり、労働条件がどこまで担保されているのかというところに、どうしても関心が行くんです。よって、ご説明もいただきましたし、法律でも書き込まれているんですが、法律の中でルールがきちっと整理されることが大事であり譲れないポイントだと思います。
あと運用のところでいうと、これ協同組合に限らずなんですが、やはり中小企業となるとどうしてもこの手の労働保護制度というものが遠い存在になっているんで、そこをどう周知させていくかだとか、そういうことが大事になってくるんじゃないかと思っています。
それから、その観点で言うと、いわゆる職種別労働組合をもっと広げていく必要があると考えていまして、いわゆる大企業は、労使関係の中でやっていく、戦後、企業別組合に再編された中で、基本的なフレームワークがそうなっていて、よって、労組法で労働組合をつくることが担保されていて、労基法はミニマムがおさえられているというのは、日本のワークルールを決めていく、フレームワークだと思うんですよね。団体交渉で引き出した結果を社会全体に広げていく。ところが、組織率が低くなってきている中で、方策は二つあって、一つはいま議論中だけども、従業員過半数代表制をどう法制化するかという法律的アプローチ、もう一つは、労働組合が新しい形をつくろうということで、いわゆるゼネラルユニオン、例えば、UAゼンセンだと介護職で働いている人たちのゼネラルユニオンを立ち上げるなど、個別労使関係の中で労働条件を改善するのが困難なところを、横串刺してゼネラルユニオンでやっていこうとか、そういう動きを広げないといけないのではないか。
今、連合としても、地域ゼネラル連合という、いわゆる連合構成組織のひとつに、地方の中小企業を対象とした労働組合をいよいよ立ち上げようと進めているんです。一昨年10月まで私が担当していたのですが、労使関係を、例えば、中小で働く人だとか、NPOで働く人だとか、協同組合の中で働く人だとか、そういうところにも広げないといけないと思っているんで、その流れの中で、例えばNPOだとか、協同組合で働く人たちの横断的な組合組織みたいなものをつくって、さっき法律の中で担保されているというご説明をいただきましたけども、なかなか現実むずかしいと思うんですね。一般の労働者に比べて、なかなかままならないという状況なので、何かしらのそういう仕組みをつくっていく必要があるんじゃないかと、これは労働組合の立場ですけども。
ですから、繰り返しになりますけれども、今回のこの法律の趣旨は極めていいことだし、地域でこういう支え合い、助け合いの、なかなか民間企業では手を出さないようなところを、思いのある人たちが集まって、それに関わっていくという仕組みができるというのは、たいへん重要なことだし、一方で、そこで働く人の雇用、労働条件を守るために、法律で十分担保される形で、法律が制定されることに加え、それだけでは守られないというところに対しては、労働組合のフレームワークの中にどのようにして入っていっていくのがいいのかという、そういうこともトータルで考える必要があるのではないかと思っています。端的に言うと、そんな感じですかね。
【加藤】 いくつかのご指摘がありましたが、立法趣旨についてはそんなに問題はなかったように思いますが、どうですか。
【山根木】 一つ、立法趣旨で分からないところがあるんです。説明を聞いても分からない、これを読んでも、ますます分からなくなったんです。それは基本原理です。資料には基本原理に書かれていることは二つあって、どっちが主なのかということです。
まず、協同組合法の法案の関係資料集の図では、基本原理は何かというと、「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して、組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする」と、要するに、その事業の成り立ちというか、そのそのものを基本原理とすると書いてある。
一方で、こっちのレジメの2ページで言っているのは、「*」の2行目のところで、「持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」ことを究極の目的と定めと言っていて、どっちなのか、おそらく答えはどっちもだろうということなんですけども。いわゆる自主的に出資し、参加する事業体をつくることに意味があるのか、あるいは持続可能で活力ある地域社会の実現の目的のためなのか。いやいや、それはセットでなければ成り立たないんで、こういう主体的な事業運営と、地域社会の実現ということで、これをセットで考えるのか。いったいどちらに軸足がおかれているのかっていうのが少し自分の中で分からなくなったんで、それだけです。
法律の目的について これは組織法です
【加藤】 それでは、山本さんよろしく。
【山本】 端的に言えば、これ組織法ということです。労働者協同組合とはこういう組織ですと規定している法律です。会社法の中に、私立学校法、他の協同組合法、つまり他の組織法には、使用者は賃金を支払わなければいけないとか、賃金規定とか、労働協約を結ばなければいけないということは書いてありません。労働者協同組合法には屋上に屋を重ねるように敢えて労働者保護法制の遵守を明記し、その法的枠内でのみ事業実施が認められる制度設計となっています。
【山根木】 分かります。
【山本】 前回2010年の法制化の取り組みでは、労働者保護法が適用されないのではないか、そういう指摘がなされました。また、労働者性の認否が裁判の場で争われたら使用従属性という枠組みのもとで働いているという実態があるか否かがポイントになります。それを踏まえ、法律論からすれば馴染まないかもしれませんが、組織法ですが敢えて労働契約の締結を義務付けた制度設計となっています。従って、ポンチ絵にあるように、基本原理というのは、労働者協同組合という組織の基本原理なんですよ。労働者協同組合というのは、組合員は出資し、意見を反映し、組合が行う事業に従事する、この三つの原則からなる基本原理が貫かれているのが労働者協同組合ですと。じゃ、その組織を何のためにつくるんですかと。
【山根木】 そういうことですよね。
【山本】 その目的は、生活と調和が保たれている働く機会がない現状があるとか、そういう中で、持続可能で、活力ある地域社会というものが、危ぶまれている。したがって、この状況認識を踏まえて、この基本原理が貫かれている組織を通じて、労働法の枠内等の要件を満たして働く機会を創出したり、地域におけるニーズを解決する事業を行うことを通じて、持続可能な活力ある地域社会の実現に資する、これが目的です。
だから、直接的に持続可能で、活力ある地域社会の実現を目的にした事業に限らず、結果としてそれに資することを目的とする。法律にある通り、「もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする」ということです。
持続可能で活力ある地域社会の実現が大切 労働者保護法制を遵守を明記
【山根木】 わかりました。そうすると例えばですが、事業そのものは、持続可能で活力ある地域社会の実現のための事業ではないとしても、その事業を行うことで、地域に雇用が生まれる、そのことに意味があるんだということですね。。
【山本】 すべての事業が直接的に持続可能な社会の実現を目的として行われるものとは限らない。多様な就労機会の創出となる事業、地域における多様な需要に応えた事業を「労働者保護法制を順守した法的枠内で」実施するが、事業の進め方や働き方には3原則で構成される基本原理が貫かれたものであることが必要。その結果直接、間接的に持続可能な地域社会の実現に資することとなる。
【山根木】 人間らしい生活をする。事業がその地域に根づくことによって、活力ある地域社会が実現する。事業は、必ずしも目的というよりは、存在そのものに意義を見出しているという理解でよいのでしょうか。
【山本】 繰り返しになりますが、三つの原則、出資、意見反映、自ら従事するこの原則によって構成される基本原理が、労働者協同組合です。その労働者協同組合が何をやるんですかというと、労働者保護法制を順守した法的枠内で、地域で就労機会を生み出したり切実な地域における課題(子育てとか介護だとか等々)を解決する、そういう事業に取り組むことによって、持続可能な地域社会の実現に役立てます、そのためにこの法律をつくります。つまり、労働者協同組合という箱をつくりますということです。
【山根木】 よくわかりました。
【加藤】 だから、Whatについては法律は規定していないわけでしょう。Howについては規定しているが。だから、Whatというのは、これは説明の中で、例えば介護はどうでしょうかとか、そういうのも考えられるし、現実そういう可能性があるんですよという例示であって、それ以外もあっていい。
【山根木】 そうそう。
【山本】 この法律の制定過程というのは、頭の中で理屈から設計してつくられたものでなくて、すでに行われている事業体に法的根拠を与え、新たな事業活動の基本的枠組みを示したもの言ってもよいと思います。
【山根木】 それを定義するのですね。
【山本】 それに法的な根拠を与えましょう。そのときには、より精緻に、整合性のあるものにということで設計されているから、ポンチ絵の例示も実際、やっている事業なんです。生活困窮者の自立支援とか障がい者の支援とか、いっぱいあります。
【加藤】 先ほどの生活支援の話は地方連合会の領域ですね、労福協からは当時の大塚事務局長が出ていただいて。
【山根木】 そうです。大塚さんです。
【加藤】 全労済さんとか労金さんの地方組織が地方でタッグを組んでもらって、何か、そういうことできないかということを、少しやりましたよね。
【山根木】 労福協、ろうきん、全労済(現こくみん共済coop)、連合の四団体の枠組みです。
【加藤】 あれは、その労働組合だとか、現実にある機関が、自分たちのボランティアとか社会貢献という立場でやっていきましょう、というですね。
【山根木】 そうです。
【加藤】 そこで、これは新しく組織法をつくって、今まで不備があって不便であったところを支えて、場合によっては今までと同じ分野でがんばるという組織運営をきちっと。
【山根木】 おっしゃる通りです。
事業分野についての制約は原則なし(派遣事業は除外)
【加藤】 ただ、お話を聞いていて、事例をベースにしている、つまり土台がある、架空の議論ではないということを踏まえているということから、もちろん事例としてあがってきたということですが、法律がそういった事例を頭に描きながらつくられたということは、事例の規範性が強いと考えられます。事業の範囲などは。たぶん、この法律自体が、そこに引っ張られると思うんですよ。何でもやれるということではなく、事例が入るということは。
【山本】 法律には事例に関わる規定は入っていません。
【加藤】 いや、入ってないということだけど、議論として、それは委員会とかそういうところではやりとりがあったんですか。
【山本】 ですから、まさに組織法の世界ですよね。
【加藤】 組織法はそうなんだけど、ただ、委員会質疑をやっているんでしょう。
【山本】 やっています。衆・参の厚生労働委員会で質疑が行われいます。
【加藤】 その質疑の中で、今の事業分野についての応答はあったのかしら。
【山本】 事業について、七条で「組合は、第三条第一項に規定する目的を達成するため、事業を行うものとする」と規定され、三条で「基本原理その他の基準及び運営の原則」を規定し、その一項では「組合は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資すること目的にしなければならない」と目的が規定され、三条二項で労働契約の締結等必須要件を規定しています。ですから七条の規定満たせばいかなる事業も可能となっています。
ただ、立法の過程で、衆議院法制局も、厚生労働省も、もちろん、田村さん以下委員たちも現場を見ているんですよね、いくつか。要するに、障がい者の就労支援の場であるとか、あるいは介護の場であるとか、学童であるとか、そういう現場をみていますから、イメージとしては、そういうのが強いかも知れないです。
【加藤】 先ほど、みなさん方の頭の中には言わず語らずではあるが、それがあっての議論だと思うんですが。だけど、この仕組みがベンチャービジネスに活用されることが将来的にはありうるかもわからない。
【山本】 法が整理されていないゆえに、裁判になったり、労働契約なんかを結んでないケースが結構あったようです。出資をして、自分たちで決めて、仕事する、事実上の超過勤務を山ほどやるんだけども、超過勤務手当も出ない。これ約束違うみたいなことで裁判になった事例がワーカーズコープではありませんが、事実ありました。あったものだから、余計にここはきちんとしなければいかん。
連合会は厚生労働省、単位協同組合は都道府県知事が監督
【加藤】 逆に質問をかえますけども、ということは、これには監督省庁という概念はあるんですか。
【山本】 あります。都道府県知事と厚生労働大臣です。
【加藤】 各県?
【山本】 労働者協同組合に関する事務の所管省庁は厚生労働省です。監督官庁ですが、連合会は厚生労働大臣、単位協同組合は都道府県知事で、解散命令権も付与されております。
【加藤】 中央所管するけども。
【山本】 個別の協同組合は都道府県知事です。
【加藤】 都道府県知事ですね。これは届出制ですむということですね。しかし、届出制でも取消はやるんでしょう?
【山本】 報告の聴取、検査等、127条では法令違反に対する処分として行政庁に最大解散を命ずる権限が付与されています。労働法順守の担保も制度的になされています。
【加藤】 それは当然。
【山根木】 悪用されないようにしないといけない。この第一条の目的に、加藤さんがおっしゃったように、第一条の中で、地域における多様な事情に応じた事業というと、持続可能で活力あるとなったときに、おそらく立法主旨みたいなところでいうと、地域に貢献していくんだ、事業そのものですね、事業を通じてということなんでしょうけども、そうじゃない目的で協同組合法を悪用されるのは、あまり好ましくない、利用されるのは好ましくないなと、ちょっと思いました。
【山本】 それはそうですが、これは一般論ではなくて、具体的に見ていくと、労働者協同組合と一般の会社組織と比べたとき、働いている労働者の権利の保護が法制度としては、労働者協同組合の方がより高いと私は思います。
【加藤】 それはそう思う。間違いなく。それは労働者保護ということについては。
【山本】 しかも労働者協同組合では一人一票。会社では、働いている従業員が社長選出に関与など法制度的に不可能です。そうした重要な違いを見ずにチープレイバー批判は頂けないですね。
【加藤】 だから労働者と使用者という関係論における悪用とか、例えば技能実習制度で行われているような形をイメージしているのはその通りで、ほかの組織よりも一段と保護(プロテクト)は整っていると思う。
問題は、事業分野でいろいろなニーズがある。それを充足させるということで地方自治体も大いに結構だし、場合によっては、お手伝いさせてほしいとか、そういうことでいい運動として、また、将来性があると思います。ただし、事業分野を法律で規定はしていないんでしょう。
【山本】 申し上げた通り、現段階では法の趣旨と両立しない事業分野として、労働者派遣事業だけが法的に禁止されています。ただ、今後新たに法の目的に照らして行うことが適当でないような事業が出てきた場合は政令で定めることができる規定となっています(7条2項)
【加藤】 今後、発生して。
【山本】 それは、政令で定めることになっています。今のところ、明らかに仕事としてダメというのは派遣業。
【加藤】 派遣という雇用形態、労働形態はダメということですね。
【山本】 派遣業やると、派遣された人間は、意見反映というようなことはできない。
労働政策審議会で議論
【加藤】 それはそぐわないと思います。最初の説明で強調されましたが。
【山本】 より人間らしい働き方をしたいというのがスタートにあって、そういうところは原理的に矛盾するから、派遣業はダメと。こんごいろんな職業が出てきたときに、これも原理からするとおかしいというのが出てくれば、労政審にはかりながら、付け加えられる可能性はある。
【加藤】 労働政策審議会でやるということですね。
【山本】 労政審に必ずかかると思います。政令変更ですので。
【山根木】 細かい話では、この協同組合は子会社を設けることができるんですよね。子会社で派遣業というのが出来るんじゃないかと。これを見ていて、そこを禁じる手段がない。
【山本】 そうするとですね、だったら派遣会社そのものをつぶせと、民間でやっている派遣会社に問題がなくて、協同組合が派遣やったら、それは問題だ。もっと言えば、派遣会社をやろうということ自身が、一人一票でみんなが決めることですから、おまえら何のために協同組合をやってんのという議論が、一般の会社よりは深刻に起きるでしょうね。
【山根木】 その話は理解しますが、本来の設立趣旨からいって違うんだとも思うんですね。
【山本】 もう一つ、これは当たり前だけど、権利はね、一方で、運動によって支えられない限り現実化しない場合が多いと思います。何もしないで、権利が保障されるってことはないんで、権利はしっかり行使して初めて実効があると思います。運動抜きで、個人の自由意志と行動無しで、法律で義務づけられるということですよね。そうすると本来的な意味での民主主義で獲得してきた個人の自由意思はじめ、さまざまなものを、逆に主権の制限が入ってくると考えます。角を矯めて牛を殺す結果となりかねない事態も惹起しますよね。だから、ここは権利で、全部、法律でがんじがらめに、何もしなくても大丈夫みたいな世界というのは、求めてはいかんと、権利はみんなが、自覚して行使することで民主主義をバランスよく豊かにしていく必要があるのではないでしょうか。
社会全体としてはプラス方向に動く 生じる問題点は迅速に措置することが大切
【加藤】 だから、この法律を土台に動き出すでしょう。今まで不足していた分野でいろいろなサービスが提供され、社会全体としては非常にプラス方向に動くという状況ができてくると思います。しかし、うまく動きだすと、これを使って何かとうまく立ち回ろうというのが派生しますが、そのことは最初の立法段階で100%把握をしてプロテクトはなかなかできない。これは神業よりも難しい。ただそのときに、必ず問題点を浮かびあがらせて、しっかりした機関がそれを把握して是正措置をとらせるということです。このような仕組みでやることが制度をより発展させる。
【山根木】 その通りです。
【加藤】 大事なことだと思います。
5年後見直し規定
【山本】 先に、もうし上げましたが行政による監視・指導が、法律に仕組まれています。査察も出来るし、最終的には解散命令も出せる。更に、5年後の見直し規定というのもあります。。
【加藤】 それ、法律にですか。
【山本】 法律です。5年後に見直し規定です。
【山根木】 加藤さんのおっしゃることと関連するけど、例えばその派遣もいろいろあるんですけど、人材派遣なら日本人材派遣協会や日本生産技能労務協会など協会の中なら、一定のガバナンスが効いている。派遣会社も、いろいろですから、例えば、協同組合が個々に立ち上がりますよね。そういう人たちを束ねて、趣旨通りに運用、運営されているか、セルフガバナンスがはたらくような仕組みをつくるというような仕組みはできませんか。
【山本】 それは連合会による当事者自治でガバナンスを効かせる必要があると思います。
【山根木】 それは連合会ですか。
【山本】 ヨーロッパでは、連合会が権限を持っているようです。
【山根木】 日本もそういうものが出来てくるのでしょうか。
【山本】 今回の法律の中では、連合会が監査権とか、そういうものを持つことは、法律には入っていない。
【山根木】 法律はそうでしたね。
【山本】 法律は複数の連合会が設立されるだろうことを想定してます。ですから、それぞれの連合会の意思によると思います。私は実際にそうした機能を持たせる連合会が作られると考えています。
【山根木】 そういうことが大事だと思います。
【山本】 おっしゃる通り。もう一つは、連合会みたいなのをつくっておかないと、これ機能させようと思ったら困難なんですよ。ものすごく。その最賃払って、一定の収益をあげて、けっして簡単じゃない。連合会で基金をつくっておいて、そこから貸し出すみたいな。これができるようにしないと、なかなかもたない。実際、ワーカーズコープなどはそれをやっています。
【山根木】 もう一つ、質問していいですか。これ、今の段階では、まったく分からないと思うんですけど、例えば、どういう人たちが設立しようとするのかとか、どれくらい協同組合が出来そうなんですか。
【山本】 実態はどうかというと、ワーカーズコープ連合会でいうと、組合員が全国で16000人が働いています。(事業高350億円)、その中でいちばん大きいのがセンター事業団、これ単一の労協です。ここだけで200億円ぐらい事業をやっています。高学歴で、引きこもりや不登校経験者だったり、生活困窮者自立支援事業のサポートを受給した経験を有する人たちもが少なくなく、こういう働き方を歓迎しています。
【山根木】 再チャレンジする方々の受け皿になっていく...。
【山本】 頑張っている人が少なくないですね。それから障がい者の就労支援や生活困窮に対するサポート事業とか。それから奥地さんが設立した不登校の子どもたちの居場所、東京シューレありますよね。不登校の子どもたちを集めたり、そこの卒業生が、自分たちで、IT関連のシステムエンジニアを集めて協同労働方式で事業をやっているところがあります。現在は、法律がないから、協同組合になっていないが、法律ができたので、労働者協同組合への移行を計画しています。今、連絡や相談が来ていたり、そういうケースが少なくないですね。
協同組合の場合には、一方で、冒頭言ったように、失業対策から始まっているもんだから、働きたくても働く場がないと、いわゆる労働市場から排除されている人がかなりいるわけですよ。だから、その人たちは、職場がない。仕事がね。だったら、自分たちで仕事を起こすしかないということで、病院の清掃をはじめたり、公園の清掃をはじめたり、というようなことが、結構、多いです。だから、言ってしまえば、社会的な弱者が、自分たちの人権を認めたうえで、何で社会の中で堂々と生きていけないんだ。生きていけるような世の中であってはいけないのかといった思いが、根っ子にあるようです。
もうお亡くなりになったけれど日本教育学会の会長を長くやられた東大名誉教授の太田堯先生は晩年精力的にワーカーズコープを激励し活動にもかかわりを持って下さったと聞いています。ワーカーズコープのスローガンの一つに「誰も排除されない。違いを認め合う。そのうえで力を出し合う。」があります。これと、障がい者就労の取り組みなどに感銘・共感され、『「命人権」こそ普遍的な価値です。きみたちは未来的価値を創造していますよ。自信を持って頑張って下さい』といつも激励してくれていたようです。
「だれも排除しない、違いを認め合う、そのうえで力を出し合う」このスローガンは、ソーシャルインクルージョンと本質的に同じだけどより鋭い表現のように思います。。
【加藤】 先ほど言われた引きこもりだとか、そういうことで、だいたい60万人ぐらいの人が、職についていないとか。
【山本】 今、160万人ですね。
【加藤】 そうですか。で、この方々をどういうふうに現代社会の職域、ほとんど企業形態で働く、飲食店とか、そこでの雇用としてどういう形で組み込むかという議論は以前からありました。しかし、この話はいろいろやっていくと、なぜその人たちが引きこもっているのかといえば、実は企業の職域の中に入っていけないという、なぜと聞いても、入っていけないものは、入っていけないんだということで、やはりその現実を認めるしかないと思います。
【山根木】 そこは、企業とか協同組合ではなくて、人の集団に入っていけないということ。それとね、企業であっても。
【山本】 やはり企業は、基本的には、社会的に重要な、社会にとって有用な、財やサービスを提供して、その対価として、利益を上げますよね。だけど、優先順位はどっちかというと、利益をあげることが主になるじゃないですか。株式会社というのは、資本蓄積がなかったら生き延びられない。
【山根木】それは、なぜ利益をあげるのかということでは、資本が搾取しているとかではなく、利益というのは企業の発展には不可欠なもので、例えば、労働者への分配、設備投資、株主配当とかするもので、確かに分配構造の歪みが今の問題であり人への分配を強化しないといけない課題はあるが、利益を追求すること自体問題のあることではないと思うのと、もう一つは、とはいえども、協同組合だったとしても、雇用契約しているわけですから、賃金は払わないといけない。すなわち、事業で利益をあげないといけないわけですよ。目的は違っても。でないと、賃金払えない、ボランティアじゃないから。そうすると、私が心配しているのは、持続可能な地域のために、協同組合をつくるというわけですけど、その思いの集まった人たちだけで事業を始めたけれど、その事業そのもの、協同組合そのものの持続可能性というのは大丈夫かと、ものすごく心配なんですよ。加藤さんが言われたのも、そこだと思うんですよ。
【山本】 簡単じゃないですよ。
【加藤】 例えば10組織出来て、それが3年後にいくつ残っているかという意味で、やはり困難もあるし、その困難を克服できるところとできないところといろいろあり得る。また、地域社会がどう受け止めるか、また一人ひとりの住民の理解も大切だと思います。
で、話を元にもどしますが、ぼくは60万人と言った、今は160万人だと言われた人たちが、労働者協同組合でなら全員やっていけるということにはならないと思う。
【山本】 そうですね。しかし、なる人も結構いるようです。
【加藤】 そのうちのある部分については
【山本】 それで救われる人います。
【加藤】 自分たちでお金を払って、参加権を得てということで、なぜか仕事ができる、就労ができるとなると、やはり経営との関係、自立性というところに原因があった人たちもおられる、それは現実問題として160万人が全員可能とは思いませんが、しかし、そういう新しい組織形態で、10万人でも20万人でも参加、あるいは就労できるということで門戸開放のツールが出来ると、乗れる電車ができたので乗ってがんばろうとなればひじょうにいいことだと思います。
【山本】 まあ、そういうことですね。ツールが一つ増えたということ。選択肢がね。
【加藤】 このウエブでも、障がい者雇用については就労支援とか、特例子会社でやってきた人たちとか、前回、掲載しました。適応できるタイプのものがあれば、選択肢が広がるし、そういう分野をどうやって発見していくかということも大切な任務だと思う。
自然発生的にということではなくて、そのような機能をどういう人たちが支えていくのかというところがポイントですね。例えば、連合という大きな組織が役割として果たしていくことですね。連合が組織をつくって運営していくというのはあたらないと思います。
しかし、たとえば連合のOBOGのみなさんなら、社会貢献として地域も助かるし、先ほど言った、障がい者の支援、障がい者にもいろいろなタイプがありますが、その人たちが適応できるあり方として開拓できるということなら、意味があると思う。
【山根木】 そうですよね。
【加藤】 それを応援していくということで。
【山根木】 おっしゃる通りで、この形をつくった、それこそ笹森さんとか山本さんとか、その思いだとか、この法案に書かれている立法の主旨なり、その運用がなされて、健全な協同組合が日本の社会の地域に広がっていくということは、ものすごく大事で、それに対して、今、おっしゃっていただいた連合との関わり、どういう関りがあるのかというのもね。
【加藤】 そうですね。
【山根木】 出てくるかも知れない。
【山本】 例えば、労福協レベルだと、ものすごく連携しているんです。県によっては、徳島とか埼玉とか、静岡なんかでも、主として福祉分野が、今、メインストリームなんです。
高齢者とか障がい者とか、子育てとか。先ほど出てきた、例えば一つ例をあげると、埼玉・深谷の生協の物流センターで働いていたのが、生協が合理化して解雇のような、そうすると、そこで働いていた人たちは何をするかというと、豆腐をつくり始めるんです。だけど、最初は採算に合わない。無農薬で、休耕田を借りて、大豆つくって、がんばっている。株式会社ではないから、労務管理とか、そういうものはない。みんなで働いて決めようとやっているから、しんどい人たちも来られるわけです。一日4時間しか働けないとか、8時間はとても無理とか。でも、こういう働き方でいいじゃないかとか、話し合って。そうなると、豆腐を売り歩くと、地域のおじいさんやおばあさん、独居の人たちは待ってくれていて、話し相手になるから買ってくれるわけね。三度三度のメシも、おからが出るものだから、おからをつかって、今度は弁当をつくる、その弁当を持って来てくれる。そういう地域との仲で、そういう動きが始まってくるそうです。地域の人たちがみんなで創ろうと取り組み高齢者福祉施設が3カ所できているんです。まさに地域社会の連携で。これは岩手の例ですが、障がいを持つ子どもを育てている親たちが、入れる施設が、あるいは作業所など公立の場合は年齢制限がありますが、「なかったら自分たちで作っちゃおう!」ということで新しい事業領域が広がっていくケースが少なくないようです。
単体でやっていた会社組織は、利益があがらないと撤収するわけよ。ところが、そのあと、ニーズはある。必要性があるにもかかわらず、儲からないから撤収せざるを得ない。ところがニーズを解決するために集まった人たちは、採算取れないからこれでは続けられないとなります。そこからがバイタリティーがあるんですね。地域の人たちもそれを見ていて、地域の人たちが働きかけ、地域の人たちが賛同してくるんだよね。で、最賃もクリアして、高い給料は出ないけども、その新しい人と人とのつながりをつくりだしているケースが散見されます。
地域社会で人と人の関係を日常生活の中で再構築していく、困りごとを一人で抱え込まないで力を寄せ合える地域は、事業体も生き延びるようです。
しかし、全部の地域が直ちにそんなことできるかといったら、むしろできない場合が多いと思います。
そこは深刻な状態になっているわけですね。
【山根木】 そうですよね。ボランタリーに人が集まって、支え合い、助け合って、その機能の一部を担っていくという担い手が、今度、事業体となったときに、その事業体が本当に成立するかどうかってことは、極めて大事であって、事業体自身の健全性も追求されるけども、一方で、その事業体を支えていこうという...。
【山本】 地域社会の協力。
【山根木】 協力が必要だし、やっぱりそういう形で発展していく地域社会とともにというところが、たぶんこの協同組合の。
【山本】 うまくいっているところはそういう流れ。
【山根木】 流れでしょうね。
【山本】 そういうものにつながっていかないところは、残念ながらうまくいかない。
【山根木】 そうでしょう。そうしたら、前段の議論ではないけど、地域のための活動じゃないと、なかなか長続きしない。結果的にはそう。
【加藤】 あとは、優秀だけど対人関係に自信がない方も多いのですが、ある種の能力、例えばハッキングに対抗する技術など、そういう特殊な能力を発揮する場面として、これはイメージできると思います。どちらかというと社会的な参加が苦手だという人たちで、しかし、技術や意欲がある人たちが、この形態をつかって社会参加ができていくということのメリットがたぶん先々、出てくるかもというところを期待したい。
既存のNPO法人との関係は
【山根木】 もうひとつだけ、いいですか。既存のNPOはコンペティターになるんですか。それともどうなんだろう。
【山本】 結局ね。やっかいなのは出資できない。
【山根木】 そうそう、その違いがありますよね。
【山本】 出資できないものだから、寄付を集めるという話になるじゃないですか。
【山根木】 カンパしたりとかね。
【山本】 そういう、いわば、他律的な要素がいっぱいでてきちゃう。
【山根木】 なるほど。
【山本】 ところが、協同組合の方は自分たちで出資できる。もう一つは、NPOの場合には、単年度収支、事業で収益があがっても、それを翌年に繰り越すということができない。これが二つ目の限界。三つ目は、事業領域が限られ、いろいろ複合的にやらなかったら収益があがらないからやろうとしても、NPOという法人格で出来ることには限界がある。そういう意味で、この組織(協同組合)が必要になります。
【山根木】 そうすると、NPOのよさを生かしつつ、NPOの課題なり、限界をこえる存在としての協同組合ということなのか。
【山本】 そういうと、NPOに対して失礼になる。(笑)
【山根木】 いやいや、そこは大事。なぜかというと、ぼくは冗談ぽくいつも言ってるんだけど、小さくても健気に頑張っているNPOは正義で、大きな連合のような組織は何をしてるんだという捉えられ方みたいな、ちょっと、極端な話だけども。
【山本】 逆だと思うが。
【山根木】 NPOというのは、かゆいところに手が届いて、なるほどと感心する取り組みが多いんですよ。でも、持続可能ではなかったり、ブラック職場だったりしている。すなわち活動の素晴らしさの一方で課題もある。連合の場合、大きな組織で機敏ではないけど動き出したら大きな力になる。だから、そういうNPOの良さと、連合みたいな大きな組織がうまく協力して、みたいな話もある。NPOの良さを継承しつつ、NPOの弱い部分を補うような存在が労働者協同組合であるんだと思う。
【加藤】 これ、NPOから振り替われるんですか。
【山本】 例えば、擬制的に労働者協同組合と名乗ってやっているけども、今まで法的根拠がなかったから、市から委託を受けるじゃない、事業を。そのときにNPOのように法人格がないと、行政が事業委託しないケースも少なくないそうです。だから、NPOをつくってくれというのがいっぱいある。そこは移行できます。もう一つ、帯に短し襷に長し。山根木さんが言ったように、連合時代NPOと付き合ったときに、たとえて言うとNPOというのは、ボランタリー集団なんですね。一人一人の目的意識が明確です。それに対し連合等に加盟している組織率が8割9割という高い労働組合やユニオンショップ協定を結んでいる会社に就職=自動的に組合員となるような労働組合というのは、非ボランタリー集団ですね。だから合意形成をはかるのは手間暇、時間がかかる。だけどいったん動き出したら大きな力を持っている。NPOは機敏だけども、気がついたらいなくなっていたねという違いがあると思います。それを相互に尊重しながらやりましょうと、やっていました。ただ、NPO活動はアメリカのような寄付文化がある国と、ない日本では、ぜんぜん違うと思います。
【加藤】 そろそろ時間となりますけが、最後に『人新世の「資本論」』著者は斎藤幸平さん、今はやりの本ですが
【山根木】 はやりですね。
【加藤】 ここに、261ページに「ワーカーズコープ-生産手段を〈コモン〉に」と書かれています。この方は、強い思いがあって書かれているので、読んでみて面白いんだけど、すぐ受け入れられるかどうかは、ちょっと難しいと思います。ただ斎藤さんはワーカーズコープ、労働者協同組合ということは労働者が協同出資して、生産手段を協同所有し、協同管理する組織が、という定義です。ただ、資本論というベースのうえでこれを書かれているので、それはそれなりの歴史的なイメージはあると思います。
この方が着目している大事なことは、仕事というものが、与えられたり、こうだからこうだよというものではなく、十分自分の納得のうえで、あるいは、自分が選ぶとか、そこにやはり働く者としての主体性をもってかかわっていくという基本原理を見出していて、そこにスポットライトをあてておられると思います。だから、労働運動をやってみて、主体的にその仕事に関わり、それぞれ社会的意義を自分が感じるということがベースになっていくという社会を前提にするわけで、逆に健全な仕事や職場が疎外されて、パワハラとか何とかで仕事に行くのも嫌だとか、しかし、生活するためにはいかなければならないという現状については、連合も30年の運動の中で後半はディーセント・ワークが大切で、働き方とか人間らしいとか、いろいろな言葉を使って求めていったと思います。ベースは仕事とは何かということで。
【山根木】 そうですね。
【加藤】 ただし、自動車や電機産業では難しい、適用できないと思います。
【山本】 出来る範囲は限られる。その通りです。
【加藤】 しかし、さっきの公共空間の中でのサービス需要だとか、その分野においてはひじょうに意義があるように。
【山根木】 有効です。
【加藤】 それはまた、仕事について納得性の高いという意味で、戦後の日本で欠落していた部分を手当をしていくような、そういうふうな主旨が感じられるという意味で期待が強いということですが。
【山本】 今、加藤さんがおっしゃってくださったことと、私は、ほとんど同意、同じ受け止め方をしています。で、実は、斎藤幸平さんを、われわれ勉強会にお呼びしました。いろいろ話をしたときに、ひじょうに謙虚な方と感じました。彼は、自分は理屈の世界の中で、学者としてやってきたが、大事なことは実際の社会でやろうとしたらどういうことになるのだろうか。
現場の実態について私は知らないと、だから一所懸命知り、勉強したいと話されていました。現場にどういう問題があって、どう格闘、対処しているのか知りたい。そのために現場にアプローチしようと考えています。少なくとも、労働者協同組合、協同労働という働き方、それから社会的なコモンをみんなで担っていくということで、それを事業としてやれるようなことに主体的に自分でかかわっていきたいと述べています。
そこで加藤さんがおっしゃったように、今一度、働くというのはいったい何だろう、人間、働くというのはどういう意味があるんだろうということを、将来に対するふわとした不安みたいなものも背景にありながら、あるいは、その経済活動というものが、何のためにあるんだというようなことを考えることも必要な時代だと。
そうするともう一度、経済活動というものは、みんなが必要としている社会的な財やサービスやモノを提供することと、それを生産することが整合的に対応し合っていた美しい時代があったわけじゃないですか。そういうものがちゃんと、社会的な基盤を支えたり、ニーズを満たすという意味で、公共インフラみたいなものが主としてマッチングするんだろうと。協同組合的な理念にもとづいた事業組織の方がいいと。
【加藤】 ということで、今日はありがとうございました。
-了-
<参考資料1>
★2015年パリ協定・IPCC「1.5℃特別報告書」2030年までにCO₂排出半減/世界25国1200自治体が気候非常宣言/危機感の無い日本、報道されない世界各都市のグリーンニューディール政策
★<グローバルな気候崩壊の連鎖>地球の温暖化⇒北極の氷の融解⇒氷の減少により太陽光線が反射されず吸収され海水温の上昇・海水の二酸化炭素吸収量減少し大気中に放散、温暖化の加速⇒北極圏の永久凍土が融け内部に閉じ込められていた1兆8000億トンの二酸化炭素(現在大気中のCO2の2倍以上)やメタンガス(温室効果は34倍)が放出。
<自然保護基金の調査>40年間で脊椎動物半分以上が絶滅。飛翔昆虫数25年間で75%減少。
★<気候変動による様々な影響>
殺人熱波、飢餓、水没する世界、史上最悪の山火事、水不足の脅威、死にゆく海(水温上昇と酸性化によって世界のサンゴの90%が脅威にさらされる/海洋生物の4分の1が依存)
<参考資料2>直視すべき日本社会の問題―-5つの社会的基盤・構造の激変
①雇用・就労形態の変化と劣化による格差と貧困の拡大・固定化/富の分配の歪み
※「労働者保護法制」からはじき出される労働者:デジタルプラットホーマーの増大
②持続可能性を脅かす人口減少/少子化/高齢化/生産年齢人口の減少
★国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば2010年~2060年で、生産年齢人口は世界第5位のGDPを誇る英国の全就業人口とほぼ同数、GDP第10位のカナダの総人口を上回る3264万人減少。
2025年ショック国民の3人に1人が65歳以上、5人に一人が75歳以上
③家族・世帯類型の変化/生涯非婚者が3割を占め、独居、三世代同居によって担われてきた家族機能は低下、これまで家族が担ってきた役割を新たな社会的協同事業として引き受ける必要あり。
④長寿社会の到来(人生100年時代・健康寿命と生物的寿命)
<誕生・教育―就労―リタイア>人生3ステージを前提とした制度機能不全。
①と絡んで生涯就労社会へ移行/平均寿命と健康寿命の差は「日常生活に制限のある不健康な期間」とされ、2016 年は男性が 8.84 年、女性が 12.35 年。
⑤1300兆円を超える国地方の累積債務
※グローバリズムの進行と政府のガバナビリティーの低下と科学技術の革命的進展
(インターネット・AI、バイオテクノロジー・遺伝子工学/生命科学=既存の生命観崩壊、ナノテクノロジー、航空宇宙産業)
【講師】山本幸司氏、山根木晴久氏
1990年再建埼玉教職員組合書記長、1998年日本公務員共闘会議事務局長、2003年公務公共サービス労働組合協議会事務局長、2007年連合副事務局長、労福協副会長、2011年(公財)日本労働文化財団専務理事(2015年退任)、2015年労福協専従副会長退任、同参与。法制審議会民法成年年齢部会委員、国家公務員労使関係制度検討委員会委員他
山根木晴久氏:連合 総合運動推進局長
1962年 和歌山県生れ、1986年 和歌山大学経済学部卒業 、1986年 東京海上火災保険(株)入社、1997年~2001年 東京海上火災保険労働組合(副書記長、副委員長、委員長)
2001年~2004年 損害保険労働組合連合会 中央執行委員長
2004年~連合本部(国会対策局長、企画局長、非正規労働センター総合局長、総合組織局長、総合運動推進局長)
【研究会抄録】バックナンバー
- 【】ウェブ鼎談シリーズ第(14回)「戦後の労働運動に学ぶ」 講師:仁田道夫氏、石原康則氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第13回) 「労働者協同組合法について」 講師:山本幸司氏、山根木晴久氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第12回)「戦前の労働運動に学ぶ」 講師:仁田道夫氏、石原康則氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第11回) 「労働運動の昨日今日明日ー障害者雇用・就業支援の実践と課題について」 講師:鈴木巌氏、石原康則氏
- 【】バーチャルセミナー「あらためて労働組合と政治」 講師:一の橋政策研究会 代表 加藤敏幸
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第10回)「労働運動の昨日今日明日ー労働運動と生産性ー」 講師:山﨑弦一氏、中堤康方氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第9回)「労働運動の昨日今日明日ー官公労働運動について②ー」 講師:山本 幸司氏、吉澤 伸夫氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第8回)「労働運動の昨日今日明日ー官公労働運動について①ー」 講師:吉澤 伸夫氏、山本 幸司氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第7回)「労働運動の昨日今日明日ー障害者雇用・就労支援について」 講師:津田弥太郎氏、石原康則氏
- 【】ウェブ鼎談シリーズ(第6回)「労働運動の昨日今日明日ー最低賃金についてー」 講師:北浦 正行氏、加藤 昇氏