研究会抄録

ウェブ鼎談シリーズ(第6回)「労働運動の昨日今日明日ー最低賃金についてー」

講師:北浦 正行氏、加藤 昇氏

場所:「工房北浦」渋谷区渋谷

 前回の賃金に引き続き、最低賃金について話をすすめました。経済政策として政府主導の賃金引き上げがさまざまな影響を引き起こしていますが、地域別最賃も何とも言えない軋轢を引き起こしています。お隣の韓国ほどの事態には至っていませんが、地域地場産業への影響が気になるところです。  もちろん何事もやってみなければわからないということも真実ではありますが、知らな過ぎる政治家の蛮行の被害もありうるわけで、時には経験に学ぶことも必要ではないでしょうか。ということで、最賃と言えば必ずお名前が出てくる、北浦正行氏、加藤昇氏をお迎えし、最賃の歴史など豊富なお話から学ぶ中で、明日を展望したいと思います。(2018年4月26日午後) 以下本文中の中見出しです。 労働条件の開示は社会的責任の基本?、最低賃金とのかかわり、産業別最低賃金の見直し議論から(加藤昇)、「企業の枠を超えた社会的賃金決定システムとして重要だ」、組織率の壁をどうやって乗り越えるかー署名捺印方式、電機連合の産業別最低賃金の礎石は企業内最低賃金、賃金政策としての最低賃金とは、政治主導による最低賃金上昇の副作用は?労使の議論の形骸化、地域別最賃では地域差が是認されている、歴史を振り返りながら、今後のあり方を考える
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【加藤代表】  本日は最低賃金について、前回の賃金に引き続きお話し考えをいただきたいと思います。

賃金決定は労使自治の範囲の中でやればいいという意見はありますが、しかし、労使が納得すればどんな賃金体系でもいいのかというとそうではありません。当然企業競争の中で、人材も労働市場で調達するのであれば、しかるべき賃金を払わなければ採用できません。もちろんやる気を支える、あるいは生活を支える賃金であるべきです。

 また、株主の立場から、この企業は10カ月分も一時金を払っているが、納得できないという声がでるかもわかりません。やはり社会との関係において、いくら払っているのか、どういう項目で払っているのかということを含めて、社会的な開示あるいは説明が必要と思われますが、そのような議論があまりされていなかったのではないかと思います。

労働条件の開示は社会的責任の基本?

【北浦】  そうですね、賃金について企業が自らの情報を出すというのはなかなかためらいがあるところで、今でもそれがゆえに賃上げの集計に参加しないという企業がたくさんあるわけですね。じゃあ「有価証券報告書に出せ」なんていったら、多分経団連は反対するでしょうし、やはり開示には難しい面があるのだろうと思います。

 ただ、最近見てみると、労働関係のいろんな法令の中で、いろんな開示義務を出してきている。これは大変いいことだろうと思います。それは今、加藤代表がおっしゃったような社会的な公平性、公正性の観点から出てきています。開示内容は、まずは女性の活躍が進んでいるかとか、あるいはいろんな何か社会保障の制度をちゃんと完備しているかとか、そういったように、法令を遵守しているかどうかという点が多いのですが、一番肝心の賃金についても、ある程度のやはりメルクマール(指標)を出すということが大事だろうと思います。

 最近言われているのは人材獲得の上で優位になるのではあれば、労働条件全般について開示しようという議論が出てきていることは事実です。ただ、そのような目的ではなく、本来やはり会社における1つの配分の姿を、どこまで公平に配分できるかということをその証として開示するということがあってもいいと思います。

 しかし、なかなかこの点は難しい。それがゆえに、全てを明らかにするわけにはいかないけれど、どこの点から出していけばいいのかということがあると思うのですね。まず第1段階としては、法令遵守のコンプライアンス的なところで、例えば賃金に関するさまざまな規制についてきちんとやっているとか、必要な手当制度があるとかないとか、何かそんなようなところでしょうか。派遣労働者についてはそういう議論が出ていますが、そういうようなところから始めていって、徐々に範囲を広げていくのではなかろうかなと思います。

 いずれにしても、おっしゃっているような意味で、賃金というものについて、全部をオープンにするわけではないですけれども、ある部分について出していくことは必要になると思います。そのときに、全てを出すわけではありませんが根幹となるようなものだといいと思う。そうすると、やはりその最大の焦点はミニマムで何を開示するかということで、最低賃金の議論にも絡んでくると思います。

【加藤代表】  労働市場との関係で言うと、「うちは50万円出しています。」との触れ込みを信じて就職したら現実は違っていた。若者がそういうおとりのような労働条件で、人生の大切な時期を棒に振ってしまった。ということを含めて、社会的に防止をしていくために、入職時点に限らず、広く開示をさせていく基本的なルールや制度が必要だと思います。

例えば、最低賃金についても、我が社は最低賃金をクリアしている賃金体系ですということを堂々と表示できればいいではないですかと。それがなくて、働いた時間ともらった賃金を割り算して初めて1時間当たりの賃金がわかり、これは地域の最低賃金よりも下ではないかということではだめで、ミニマムと言われましたが、それも含めて開示していくのが、当たり前だということだと思っています。

 さて、そういう意味で、いわば法律上の最低賃金と企業内で決めている協約賃金との関係は同じ賃金ですが、全く役割が違うと思います。少しこの最低賃金について分かりやすく話していただきたいと思います。

最低賃金とのかかわり、産業別最低賃金の見直し議論から(加藤昇)

【加藤昇】  私と最低賃金の関わりだけちょっと先に話させてもらおうと思います。私が最低賃金にかかわったのは1984、5年です。そのころ、まだ連合ができておりませんで、労働4団体の時代でしたが、地域別最低賃金と、それから産業別最低賃金とが同じような仕組みで併存していた時期に、産業別最低賃金のあり方の論議というか見直しですね、その論議が中央最低賃金審議会で行われていました。だから、そこに中央最低賃金審議会委員の随行で参加したのがきっかけでして、そのときに、当時の労働省の賃金課で中心になっていたのが北浦さんでした。

【北浦】  悪いことはしていませんよ。(笑)

【加藤昇】  北浦さんとは、そのころからのおつき合いということになりますが、以降おつき合いの中で教わりました。

法定最賃には地域別最低賃金と産業別最低賃金がありますが、私のかかわりで言うと、特に産業別最低賃金のところのご紹介をさせていただきます。当時の中央最低賃金審議会の見直しの議論の中で、最終的には1986年の答申で、旧産業別最低賃金が廃止になって、今後は労使が主体的に取り組むことによって新しい産業別最低賃金を創設することができるという仕組みができました。だから、その仕組みに乗っかってどう取り組むかという議論がありました。私の場合には、たまたま上司の局長が......。

【加藤代表】  小野田さん?

【加藤昇】  小野田局長でして、小野田局長がやっぱりそういう仕組みができたのだから、電機産業というのは非常に大きな産業で、おそらく雇用者数としては、当時全国に200万人ぐらいいたわけですので、その200万人の電機労働者に対する、ちょっと大げさな言い方だなと私は思ったのですが、電機連合としては、社会的な責務があるのだと。したがって、47都道府県全てに新しい産業別最低賃金の申請をするための条件、つまり申請要件を満たして、電機の最賃をつくるというのが彼の主張でした。主張だけではなくて、命令まで受けました。(笑)

それで一生懸命取り組んだというのがありますが、その中で、取り組むためには、電機連合だけで取り組んだってうまくいかない、仮に電機の最賃をつくるためだけだといっても、電機産業に働く労働者の労働組合は、電機連合だけではなくて、例えば当時で言うと、全金同盟や全国金属、それから、新産別系の全機金にもたくさんいるし、電力総連さんにも電機労働者がいました。

したがってこれらの産別の協力を得なければいけないということで、連合は未だできていないけれども、労働4団体の枠を超えて共闘していくべきではないかということで取り組みました。まず、全国金属、全金同盟、全機金、電機連合で一緒になって、金属4単産最賃連絡会議ができました。その次の段階として、さらにそれを当時の鉄鋼労連や自動車総連や、造船重機労連や全電線などにも拡げて、機械金属関係の最賃の取り組み体制をつくって行きました。

 これが非常にある意味、大きな役割を果たしたし、連合結成以前に具体的な課題での取り組み体制が、4つのナショナルセンターの枠を超えてできたということが大きかったのではないかなという気がします。

【加藤代表】  労働戦線統一にも重要な役割を果たしたという歴史観を持っていいということですね。

【加藤昇】  ええ。それで当時、ナショナルセンターレベルでいうと、4つのナショナルセンターで、それぞれ最低賃金に関する事務局を担っているメンバーがいて、しょっちゅうこのメンバーが集まっていろいろ議論をしました。その中に、もうお亡くなりになった沖田信夫さんがいました。

【加藤代表】  総評の方ですね。

「企業の枠を超えた社会的賃金決定システムとして重要だ」

【加藤昇】  総評の事務局でした。彼は、何か議論があるたびに、「最低賃金制度は我が国に唯一ある企業の枠を超えた社会的賃金決定システムなんだ。だから、これを育てなきゃいかんし、壊しちゃいかん。」ということをおっしゃっていました。「一般に賃金に関してはさまざまな労働条件との関係や、また労働基準法などによる社会的な賃金規制からの側面、労働基準の規制からの側面があるのだけれども、労使で審議、あるいは議論しながら決めるという社会的な賃金決定の唯一の仕組みはこの最低賃金しかない。」ということを常に言っていました。今考えるとそれは非常に大事なことだったと思っています。小野田さんの「200万電機労働者への社会的な責務なんだ」、沖田さんの「我が国唯一の社会的な賃金決定システムで大事に育てなければいかん。」というのが私の頭にこびりつきました。

【加藤代表】  今言われたことは、最低賃金の本質的な部分だと思います。

 それと、最低賃金は、労使が決定に参画をするわけですが、結果が、罰則を伴う強行法規ですから、極めて強い法律規定だということで、社会的にもう少し日が当たってよかったのではないかと思います。

【北浦】  今、加藤昇さんに整理していただいたので、だんだん思い出してきました。古い産別最賃にはいろいろな問題点があるのですが、一番大きいのは、大くくりと小くくりの問題があって、非常に大きな産業を単位にしたもので、その中にいろんな性質の違う業種がいっぱい混じっていて、賃金実態も違っていた、そういう中で1つの最低賃金を作っても機能しないじゃないかという、そういう形式論みたいなのがありました。ただ、実はその議論よりもっと本質的な問題点は、大くくりの産業別最低賃金は審議会方式で国が主導して決定していたことです。それに対して、これからの新しい産業別最賃は、労使自主が原則であるという、大きな方向転換を図ったことです。

 労使自治といっても、いわゆる労組法上の協約方式でいくのではなくて、最低賃金法上の協約です。それを最低賃金法16条の4による方式で、審議会で議論はするのだけれども、ベースは協約なんだよ、あるいは協約に近い労使の自主的な意思決定というものを前提とするのだよというところに嵌めて、そこへ持っていこうというところが、この新しい産別最低賃金の大きく変わった点でした。その意味で、電機連合がやられたことは、まさにその先駆けをやったようなものです。それが結果として、あれだけつくり上げられて、その新しい産別最賃のいわばモデルケースといいますか、ひな形になったのだと私は思っています。

組織率の壁をどうやって乗り越えるかー署名捺印方式

 それは非常に重要なことなのです。条件的には緩和していますが、やはり労使の自主性を尊重した、準協約方式と言ってもいいような形になったことが1つの大きなポイントだろうと思います。ただ、そのときに、じゃあ労働組合自身が決定し進めていけるだけの組織率を持っているのかどうかという問題点がありました。そこの埋め合わせをどうやっていくかという議論があって、そのときに考えられたのが署名捺印を集めることで労使の合意の確認を取るという方式でした。それもやりながら、補完しながら、中小・零細の企業も含めて、これを必死になってというと言葉は悪いですが、労働組合の方が一生懸命合意を取り付けたということでした。それによって、事業主とも話し合いを行い、説得を行い、そういう盛り上がりの中で最低賃金をつくってきたという、これはやはり1つ大きな取り組みでした。

 最低賃金の歴史を見てみると、評判は悪かったけれど、「業者間協定」方式については事業主も評価していました。事業主としても最賃は大事だ、最低賃金は必要だという、理解があったからです。ただ、やはりそこのところの切り出し方、事業主を巻き込んだやり方がだんだん形式化してきてしまったのだと思います。事業主に対して、最低賃金の持つ意味合いを響かせるというタイミングが、それがこの新しい産別最賃への動きの中で再確認することができたことは、やはり大きいのではないかと思います。

 そういう労使の自主性を尊重したような最低賃金というのができましたが、現実にはなかなか難しい。それがゆえに、結局は例の白紙委任的な形、審議会での議論にすべてを委ねてしまうという公正競争ケースに依拠してしまうところがあるわけです。それとても形式要件として、やはりベースとしての合意が必要なのだということがはめ込まれていますが、そこには実はそういう労使の自主性による最賃だということを明らかにする意味合いがあったわけですね。ですから、そこのところの流れが、今はまた特定最賃に変わっているわけですけれども、やはり綿々と続いていく思想としてあるのだということを、もう一遍考えておいていいのかなと思います。ちょっと今、話を聞いて思い出しました。

電機連合の産業別最低賃金の礎石は企業内最低賃金

【加藤代表】  この産業別最賃は難しいテーマです。例えば企業別労働組合の中の役員が育っていく過程で、産業別最賃などについて、適切な知識を持っているのかといえば、役員研修の中で、最賃講座が位置づけられているところは少ないと思います。では彼らが最賃にかかわるきっかけは、地方協議会とか地域協議会で、誰かが地方の最賃審議会に行かなければならないということで、例えば専従した若手の書記長が審議会に顔出しをし、初めて最賃を知った、初めて経営側の方と話をしたとか、こういうことがきっかけとなっています。

 だからもう少し最賃の基本的なレクチャーを確立すべきではないかということが1つと、逆にそれを言うと、総論レベルとして賃金論の枠内で、最低賃金をどう位置づけるのかという、現代の労働運動において、刺激的な課題だという位置づけも必要ではないかと感じています。

 そういうことで、例えば協約の拡張適用だとか、最低賃金にかかわる興味深い論点もありますが、レクチャーを受けていない人がこれを聞いても、よくわからないところが出て来ます。これはどうしたらいいのでしょう。

【加藤昇】  協約賃金と最低賃金ということに少し絡むのかもわからないのですが、さっきお話ししたように電機連合が取り組んで、47都道府県のうち45都道府県に一応つくることができたわけです。沖縄と和歌山はできませんでした。それは沖縄、和歌山は電機労働者がほとんどいなかったからで、和歌山には三菱電機と、当時松下電器があったのですが、産業分類が一般機械に分類されていたからでした。

 電機連合が比較的うまくつくることができた背景の1つは、非常に恵まれていたと思うのですが、いわゆる企業内最低賃金がほとんどの組合で締結されていて、その水準も、大手、中小含めて、電機連合の加盟組合はほぼ同水準だったということが大きいと思います。

 前回鼎談(第5回)の賃金についての議論の中で、ちょっとご紹介した、個別賃金決定方式のお話をしましたが、実は電機連合では、最初の個別賃金要求というのは、産業別最低賃金でした。産業別最低賃金というと、法定の産業別最低賃金のように思われますけれども、そうじゃなくて、電機連合が産業別最低賃金と言っていたのは、いわゆる企業内最低賃金です。最初の要求は。1969年春闘ですが、中卒の労働者が現場の主力でしたので、15歳の最低賃金だったのです。

 これを当時の賃金政策から読んでいくと、なぜ産業別最低賃金をうたうのかというのが書いてありまして、その理由は、2つだと思います。その1つは、日本は企業内賃金決定なので、企業別に賃金交渉して、企業別に労働協約、賃金協約を結ぶのだけれども、やっぱりミニマムだけは電機産業の加盟組合全部同じ水準にしたいという思いで、企業内最賃と言わずに産業別最低賃金というふうに言っていました。水準もほぼ同一にしました。

 もう一つの理由は、当時の賃金政策の中で、要するに非正規労働者を含めた企業内の全ての労働者に適用することを目指すことで、文字通り産業別最賃にしていこうという考え方が書いてあります。余談ですが、今の非正規労働者とはちょっと違って、臨時工とかです。

【加藤代表】  臨時工が多いですね。

【加藤昇】  多かったですね。それから、家電メーカーではパートタイマー。

【加藤代表】  現場のパートですね。

【加藤昇】  その人たちにも、時間額、日額で適用していこうということが盛り込んであったのですね。大手産別最賃は、何十年も前の話で、20年ぐらい前の話なのですが、大手産別最賃のことを全く意識せずに、産業別最低賃金は個別賃金要求の一環として取り組んでいました。ほとんどの加盟組合が最低賃金の協約を持っていたということが、新しい産業別最低賃金、申請方式の新しい産業別最低賃金を1986年以降に取り組むことにつながりました。

【加藤代表】  1つのベースになりましたね。

【加藤昇】  ベースになったきっかけとなりました。これが非常に大きかったと思います。ほかの産別は、正直言って企業内最賃協定を結んでいる組合はきわめて少なかったと思います。だから、申請するために、会社に要求したのですね。法定産別最賃の取り組みに必要だから、企業内最低賃金協定を締結してくれと、これには会社はなかなかうんと言わない状況でした。

【加藤代表】  まあ、会社にしたらね。

【加藤昇】  だから、その違いが非常に大きかった。電機連合は恵まれていました。先輩たちのおかげでした。

【加藤代表】  恵まれたというか、歴史的にそういう取り組みに資源を投入していたということの成果が出てきたということですね。だから、それは必然的にそういう成果が導き出されるということでいえば、先輩が偉かったということですか。

【加藤昇】  当時の日経連は、「そんな新しい産業別最低賃金をぼんぼん創設されたら、正直言って困る。」との思いもあって大反対でした。だから、当時の日経連は、今は電経連ですが、昔は通工連だとか電機工業会だとの業種別の使用者団体があって、その使用者団体を通じて、いろいろなアプローチをしていたみたいです。電機の経営者の皆さん、経営団体の皆さんは、その話と企業内最賃協定の話は別で、これは長い歴史の中でつくられた労使関係なので、このことまで口出しされちゃ困ると言っていました。

【加藤代表】  今さら、日経連からいろいろ言われたって。

【加藤昇】  困るということを主張してくれていたみたいです。これも大きかったですね。

賃金政策としての最低賃金とは

【加藤代表】  最賃外史という感じですか。実は最賃をめぐるドラマがいろいろあるようです。そういう意味では最賃にかかわると人間的な要素が出てくるのではないか。私も一部かかわりましたから、思い出深い仕事だったと思っています。

 そこで、賃金政策としての最賃はあり得るのかという、これはちょっとわかりにくい言い方ですが、先ほど、協約賃金、これは企業内でクローズドしてかまわない、ただし、開示はしなさいと。だから、きちっとおさまるはずだったものを、電機連合はわざわざ入り口賃金を産業内の最低賃金だというふうに再定義しました。企業内の産業別最賃だということを言った瞬間、やはり社会的責任というのでしょうか、これは自分たちで背負ったということですね。そうすると、いわゆる国あるいは行政が担う賃金政策という定義でいえば、そこにわざわざ乗っかっていったと。飛んで火に入るとは言いませんけれども、そういう意味で、非常に果敢な対応だったと思います。

 さて、この最低賃金が、もう一つは地域最賃ということで、これは47都道府県違って当たり前という構造になっていますが、この縛りが単なる企業内の賃金協約の下方への延長線上ということではなくて、ひとつは社会政策として、生活保護との関連とか、家内工業との関連とか、社会的に決められている取り決めに並んで、最低賃金が顔出しをしていると思われます。そして、それをどう改善するかということが、ここ数年間の官制春闘の一部分という位置づけになって、これはもう言わずもがなですが、過去の最賃の取り組みからいうと、驚くべき結果が出てきたということです。これはいいのか悪いのかも含めて、評価は分かれると思うのです。それはそれでいいのですが、当然賛否があると思います。その辺のところについて、言葉にして残しておかないといけないと思いますので、一言お願いしたいと思います。質問がぼんやりとしていますが。

【加藤昇】  私は中央最低賃金審議会の委員を下りたのが2007年ですね。

【加藤代表】  10年前に。

【加藤昇】  2007年というのは、ちょうど最賃法改正をして、生活保護との整合性の確保などが盛り込まれた法改正があったのですが、その改正まで携わっておりました。だから、そこから先ですね、毎年、地域別最低賃金が大きく改定されたのは。まあ、一時期民主党政権の時代もありましたけれども、第1次、第2次の安倍内閣のときに、前回の官制春闘の話じゃありませんけれども、どちらかというと政府主導、官邸主導で最低賃金も引き上げられてきたのではないかなというふうに思います。

 多分それがあったから、こんなに引き続き上がったじゃないか、いいことじゃないかという議論もあるのですが、あるだけではなくて、それが当たり前だというふうに思い込んでいて、早く今年も、要するに政府の力をかりたほうがいいのではないかとか、あるいは政府に働きかけたほうがいいのではないかということを巷では議論を結構されるんですが、私はちょっといかがなものかと思うんですよね。ちょっと審議会が形骸化してきている、形骸化するおそれがあるということで、過去、中賃に携わっていた、審議会に携わっていた者としては、寂しい気もしますよね。やっぱり三者構成の審議会の持つ意味というのは、結構大きいわけです。そういう面から、もう少し主体的な審議をして欲しいですね。

【加藤代表】  労使自治に即した審議ですね。

【加藤昇】  そうですね、もう少し主体的な取り組みが見えるようにしないといけません。現役の人に対し言い過ぎかもわからないですが。

【加藤代表】  そうですね、栄養価の高い食物を楽にとって、生活習慣病になって、先々は自分で立ち上がれないという、状況が危惧されるということでしょうね。

政治主導による最低賃金上昇の副作用は?労使の議論の形骸化

 【北浦】  全く同じような感想は持っています。最低賃金というのは、例えば地域別最低賃金、その水準って一体何で決めるべきなのかというのは、もともと一般賃金とのバランス感覚で決めるというのが最低賃金の決定の原則の基本ですよね。その流れが結構変わってきちゃったというところがあると思います。金子美雄先生がおっしゃったのは、いい最賃かどうかは、結果としてでき上がった最低賃金が、一般賃金の平均に比べて何割ぐらいにあるかで検証するということでした。

 ですから、高過ぎてもいけない、低過ぎてもいけない。そこのところで上手につくって、世の中のバランスをとるのだと。今の議論を見ていると、最賃はもっと独自にどんどんどんどん上へ上げて行けばよいといった論調が強まっている。いわば一般賃金との関係での最低賃金の機能のあり方というものが、大分変わってきてしまったのではないかと思うので、それについての、もうすこしきちんとした検証というのをやらないといけないと思います。最低賃金が上がることはいいことだと言っているけれども、それによってかえってゆがんじゃう部分とか、かえっていびつになる部分っていうのがなかろうかと、チェックしながら上げていくべきだと思います。

 労使の議論が形骸化するじゃないかという心配があるというのもそのとおりだと思います。かつては資料の中で、ちゃんと賃金統計表の第4表というものをベースに、この数字がどうだということで結構緻密な議論をやっていた時代があったわけですが、今はそんなものはどこかへ飛んでいっちゃって、天下りになっています。何を根拠に数字を議論するかというのはなくなっちゃっています。ですから、何となく天から落ちてくる棚ぼた的な考え方になっちゃっているところがあると思いますが、やっぱりそこのところは納得できる賃金という原則を鑑みるのであれば、お互いの主張がきちんとあって、それをせめぎ合って調整し合っていくというプロセスがないといけない。どうもそれがやはり消えちゃったことが、いろんな意味で何かしらの、そちらの面も含めていびつさをつくっているのではないかという検証をしておかないと、手放しでは喜べないと思います。

【加藤代表】  そうですよね。こういう形で決まるのが当たり前だと思ってしまった人は、過去徹夜をして1円をめぐる大論争をしたという話は馬鹿みたいですね。

【北浦】  馬鹿みたいと思われるでしょうね。

【加藤代表】  それ、何の意味があるのだということになるでしょう。逆に言うと、そういう決め方を是とするなら、思い切って最賃法の第1条は、全国一律1,000円とか、それでやったらいいでしょうと。それで問題があるというのなら、じゃあ何重にも厚くすることの問題点はないのか。1,000円という大台が表示されると、途端に問題がいっぱいあるというのだったら、例えば930円から940円になるときの10円のアップは何の問題もなかったのかといったら、それはそれでやっぱりあったはずだと思います。だから、そこを見過ごして、結果だけ迎合的に打ち出していくやり方を、国民が信頼するのかということになると思います。そうすると、これは強制賃金だ、最低賃金ではなくて、強制賃金だと。逆に言うと、強制賃金は政府が決める、上げることもあれば下げることもあるという、国家社会主義的な発想につながるという議論になるのではないかしら。

 安倍さんが最低賃金に前向きなのは、国家社会主義的な流れがあるのかなと思ったりします、余談ですが。

【北浦】  事実、1,000円を目指してどんどん引き上がってから、最低賃金の、特に地域最賃の影響率は、ものすごく上がってきているんですよね。影響率が上がるということは、場合によっては違反率も上がっている可能性もあるわけです。

【加藤代表】  それはありますね。

【北浦】  だから、守られない最賃というのができちゃうところもあります。それは監督して取り締まればいいじゃないの、それがいけないんじゃないのってなるのだが、逆に言うと、無理感みたいなのも出ていることもあるのかもしれない。だからといって上げちゃいけないというわけではないが、やはり妥当な水準を超えちゃっている場合もあるのだと思うんですね。本来上げるべきものを上げていかなかった恨みもあるけれども、逆に言うと無理をしてしまうところもある。やっぱりそこのところを、最後確認して納得させていくには、ちゃんと労使で議論させて、それで最後手打ちをするというところがないといけない。いつも手打ちがなしで、お手上げの状態でみんな万歳しているような感じになっちゃっているのが現状じゃないかと思います。

【加藤昇】  さっき北浦さんが、金子美雄先生の紹介の中で、一般労働者賃金、要するに一般賃金との関係を非常に大事にすると言いましたけれども、要するに、審議の中でかなり時間も手間もかかるけれども、審議を通じてかなりいろんな角度から議論するということが大事だと思うんですね。当時から地域別最低賃金の改定諮問が5月にあります。

 そうすると、諮問があって具体的に審議が始まり出して、7月に中賃が引き上げ額の目安を決定するのですが、諮問から中賃目安の決定まで2カ月ぐらいありますよね。この2カ月、どう勝負するか、どんな議論をするのかというのが、ものすごく重視をされて、当時の中賃(労働側)委員の皆さんからは、4団体の事務局メンバーで資料をつくれと言われて、2日か3日間缶詰になって、同盟の会館だとか総評の会館に行って、資料を吟味してつくるわけですね。一般労働者との賃金との比較だとか、どこかのデータとの比較だとか、影響率との関係をどう見るかだとか、地域間格差をどう見るかだとか、ものすごく真剣な議論をする。それが全部そのまま生きるわけではないのですが、そういうプロセスを経て、労使が真剣に議論をするということが非常に大事な側面ではないかなと思います。

【加藤代表】  4団体時代の話を、加藤昇さんがされましたが、4団体時代のほうが話はおもしろいですね。

連合ができて、4団体が一つになって、シンプルにはなりましたが、私が連合の最賃担当局長ということで、当時の使用者側委員だった故兵頭傳さんとはよく話をしました。

 あるとき兵頭さんが「加藤君、地域最賃、何で1円をめぐってもめているの?何の話をしているのかね?二、三十分で決められるのでは。」と言われたので、「いや、兵頭さん、話はいろいろしていますが、決定は結局、その地域、地域の労使関係の総決算です。それまで地方労働委員会を含めて、いろんな問題があって、あそこではこういうトラブルが発生しているとか、いっぱい問題が出されて対応してきたものを、最後に今年は2円だ。なぜ2円なのか。だって、いろいろあったでしょうとか、そういう人間的な決め方をするのですから、兵頭さん、あまり言わないでください。そんなの理屈で分かるものではないのです。」と話しました。

 もう一つ、地域最賃の特徴は、地域で違うということです。地域差を是認しているわけです。ところが、大手企業の賃金体系は、地域性を賃金に反映する要素というのは、地域手当とか住宅手当であって、基本賃金本体は勤務地に関係なく、その賃金体系の中で、職種、役割などで決まるということで、協約賃金の体系があります。地域別最賃のベースとは違う。片一方は地域に根差し、もう片方は労働そのものに着目して決めているという、これが前回の同一労働同一賃金と同じことです。では沖縄の一労働単位は、東京の一労働単位と、同じ労働をしたときに、この法律は差があって当たり前だと言っているのではないかという屁理屈みたいですが、実はあるのではないかということで、ここが協約賃金というものの考え方と、地域別最賃というものが、味つけが違うということです。

地域別最賃では地域差が是認されている

【北浦】  平成28年度の数字ですが、加重平均の全国平均の最賃が823円、沖縄が714円ですね。

【加藤代表】  東京は。

【北浦】  東京は932円。

【加藤代表】  約8割ですか。

【加藤昇】  地域間格差が、47県の地域別最賃の格差が、この間ちょっと開いてきているんですね。

【北浦】  そうですね。地域最賃の一番の問題は、ランク制があって、ランク内格差は縮まるけれども、ランク間格差は広がるという、この問題は簡単には解決しない。

【加藤代表】  中賃のときに必ず出るテーマですね。

【北浦】  だから、今の仕組みの中でどう是正していくのかというのは、ほんとうに難しいとは思うんですけれども。

【加藤昇】  世界にこういう47本も最賃をつくっている国というのはないですね。

【加藤代表】  でしょうね。

【加藤昇】  大体国1本、あとは州単位とかという。

【加藤代表】  ああ、その議論もしましたね。

【北浦】  それもありますね。

【加藤代表】  そうそう。なぜないのだと言ったら、そんなもの行政コストがかかり過ぎると。

【北浦】  労働局がブロック局になれば考えるという、逆の議論もありましたよね。

【加藤代表】  ああ、あった、あった。それから、よく姫路、だから兵庫県と岡山県の県境で。ボーダーラインの問題とか。

【加藤昇】  ランクの見直しのときにいつも議論になりますね。

【加藤代表】  毎回議論になります。

【加藤昇】  東京なんかも、使用者側は大島など島嶼部をAランクから外したらどうかとか。

【加藤代表】  檜原村はどうするのですか。

歴史を振り返りながら、今後のあり方を考える

【北浦】  もともと地域別最賃は、今、都道府県1つになっているけれども、最初からそうだったわけじゃないのです。都市部と郡部で違っていたとか、北部、南部とかあって、その解消をやってきてなったような時代もありました。都道府県という単位だけでも、まとめるのは大変だよというのが最初からあったんですね。

【加藤昇】  法定最賃は業種間協定方式を廃止して、まず産別最賃から始まるんだけれども、その後、地域別最賃が47県つくられますよね。やっぱりあれは最初から県単位だったんですか。

【北浦】  県でつくりなさいという指示ですよね。

【加藤昇】  そういう指導だったんですか。

【北浦】  そう。「その他最賃」でつくったときは、そういう指導でつくった。

【加藤代表】  なるほど。

【北浦】  それで、「その他最賃」でつくったときに、あと地域最賃を一応包括適用で一番下にして、都道府県単位の目安制度スタートのときにしたんだけれども、そのときに県一つでやってくれなかったのが兵庫と、どこだったかな、京都か、それは北部、南部地域間格差でした。

【加藤代表】  結構キビしいい格差があったわけですか。

【北浦】  青森みたいに、都市部と郡部とで実態が違うから、郡部は適用除外だといって経営者が頑張ったとか、そんな時代がありました。なかなか1つの都道府県内においても、まとめるというのは困難で、それをうんと無理矢理、都道府県内格差時代をまず止めるのが先決だったという事ですね。

【加藤昇】  もともとヨーロッパ――ヨーロッパといっても法定最賃がある国ってそんなにいっぱいあるわけじゃないんですけれども、フランスなど最低賃金制度のある国はスタートからナショナル最賃だったんですね。

【加藤代表】  そうですよね。多分ヨーロッパの人の発想からして、県とか行政単位ごとにつくるということの発想がおいしくないことになるのでしょうね。全国一律だから格好いいし、切れ味のいい効果が期待されるという。

【北浦】  それと水準の問題がありましてね、地域最賃の水準というのは、もともと一番低い産業別最賃だった。さっき言ったようにその他最賃で、大くくりの産別最賃ができた隙間のところに地域別最賃をつくった。ということは何なのといったら、大きなところは大産業とか中堅産業なので、その他ですから地場産業。要するに、地場産業賃金なので、みんな低いし、中身によっちゃ隣の県と賃金が違ってもいます。

【加藤代表】  確かに家内工業的な色彩も含めて受け皿になっていくということで、なかなか、そうそう一緒にできない。

【加藤昇】  地域最賃からスタートしたわけじゃなくて、もともと業者間協定がありました。

【北浦】  そうそう、そこからきちゃったからね。

【加藤昇】  その後、業者間協定の経験を踏まえて、法定最賃は産別最賃からつくられましたよね。

 この産別最賃でかなりの労働者をカバーしていたんですね。だから、機械金属の最賃だとか、卸小売の最賃だとかって。そうすると、適用されない労働者というのはごくわずかだったので、それをカバーする意味で「その他最賃」として、地場賃金相場みたいな低いレベルでスタートしたんだと。

【加藤代表】  だから、地域最賃とかいって、今格好いいですが、ベースは「その他最賃」。

【加藤昇】  「その他産業」ですね。

【北浦】  そこを今、ぐーっと上げてきてね。

【加藤昇】  ぐーっと上げてきたので、産別最賃が、今度は地域最賃に抜かれ出してきている。

逆転現象に戸惑いも

【加藤代表】  だから、溺れそうになっている。

【加藤昇】  もう溺れているところも。そうすると、産別最賃をこれからどうするのと。どういう基準で決めていったらいいのかといったようなことが問われるのではないかなと。

【加藤代表】  そうでしょうね。だから、いわゆる賃金政策としての最賃といったときに、非常に乱暴なやり方が行われてきました。そこで、結構緻密につくり上げたプロセスが、動かなくなってきます。しかし、産業別最賃を追い越す上がり方を地域最賃がやったということだったら、ではそれを追い越し返せばいいのではないかという事です。もちろん労働組合のメンタリティーからいけば、じゃあ負けずに頑張れよとなるでしょう。

 18歳、高卒の初任給は、もう最賃、中賃でやれという状況になったときに、まさに究極の賃金政策です。政治による賃金誘導策、あるいはそのものズバリ賃金政策をやるということが、一体どういう弊害を含んでいるのかというイメージが、今分かっていないと思います。だから、経験者は、それでいいのかい、そういうものではないだろうということで、後ろから言うのですが。しかし、今、ハンドルを握っている人、政治家が、やはりわかっていない。どういう事態を引き起こすのかという、そんな時代になってきて、いいような悪いような、そして一番最後が怖い事になるように思います。

【加藤昇】  だから、よくいろんな人と最近の最賃の水準なども踏まえながら、ちょっと飲み話みたいな話をしますとね、例えば10人の人と話すと、10人のうち結構な割合で、「地域最賃がかなりぼんぼん上がってきて、これだけ大幅に上がってきたら、もう産業別最低賃金がこれまで果たしてきた役割は、一応終わったのだから、もう歴史的に評価して、その役割を地域別最賃に担ってもらえばいいのではないの。」「ご苦労さん。」というような事を言いますね。

【加藤代表】 そんな政治家にもおりますね。

【加藤昇】  ええ、そういう意見も結構あるんですね。今、かなり真剣に考えなきゃいけない時期にきたのかなというふうに思います。私はそのような意見とはちょっと違って、実は企業内の枠を超えて、社会的な賃金決定システムをつくって、それが春闘や産業別の賃金闘争、産業別労働組合運動とうまく結びつきながら果たしてきた産別最賃、特定最賃の役割、機能というのは非常に大きいものになっているはずです。これを......。

【加藤代表】  ・・・・廃止して?

【加藤昇】  要するに、筋論だけで整理をしていいのかという、それは違うという思いがあるんですね。

【加藤代表】  なるほど。北浦さんはどうです?

【北浦】  加藤昇さんのおっしゃるとおりだと思うんですね。私もちょっと別の見地から言うと、地域別最賃が役割を増したということで、じゃあ1,000円になったら、1,000円からどう上がるだろうか。どういうふうに、今度は1,000円の次は1,200円にするのですかと。つまり、何で1,000円なのかがわからないと、次の1,200円にする論理というのが出てこない。そのときに、そこの地域最賃でカバーしているのが、今の日本の第3次産業で、第3次産業の最低賃金として機能しているというふうに言うのだったらそれでもいいけど、第3次産業というのは多種多彩な業種になっているわけで、そこのところは同じような賃金では論じられない。だとすると、そこで上がるところもあれば、上がらないところもあるということになれば、そこから地域最賃を上げる論理というのは、自発的には全然出てこないのではないかと思います。そういうようなものというのは、やはり産業別最賃の代替にはならないということです。

 地域別最賃というのは、やはりどちらかというと最低保障的な、生活保護とリンクするのがいいかどうかというのはいろいろ議論があるけれども、やはり一般的な生活水準であるとか、これより下げてはいけないとか、これより低い賃金の設定は公正の見地からいけないという社会的な規制としてつくるものだから、そこはやっぱり別の原理でつくっていくべきではなかろうかと思います。だから、高いからもう要らないよという議論は、できないと思います。

 それから、産別最賃のほうも特定最賃になってだいぶ変わったわけですけれども、1つは行政罰がなくなって民事効だけになった点から言えば、より民間の賃金ルール、労使で決める賃金という形に近づいたわけです。そういう意味では、もっと新しい姿を追求できるいい機会にもなっていると思います。

特定最賃の役割って一体何なのかというと、1つの産業のところの1つの相場観というものを、同種の労働者に対して波及させていくということだと思います。それをつくり上げているのは、組織労働者です。ただ、やはり組織率が低い。それでも社会的な賃金形成という観点から、自分たちだけでなく広く周辺への波及や関連性を考えていくことは必要だろうと思います。それはいろいろな形で波及していくのだろうと思います。全く同じというのでなくとも、関連づけるという形で、関連企業、下請企業とか、そういうようなところのグループ企業に影響していくこともあると思います。何かそういう波及を期待したいですね。

【加藤代表】 今日は専門的な部分ではわかりにくいところもあるように思いますが、お二人を超えての適任者はいないわけで、そういう意味で明日を切り開く活動家の役に立つ内容ではないかと思います。本日はありがとうございました。

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【講師】北浦 正行氏、加藤 昇氏

第5回参照