研究会抄録

ウェブ座談会シリーズ1「世の中何が問題なのか-アラコキ(古希)連が斬りまくる」

講師:参加者は五十音順で伊藤、江目、佐藤、中堤、三井各氏。司会は加藤、事務局は平川。

場所:メロンディアあざみ野

1 匿名座談会の進め方について  『ところで、「ほぼ隠居している仲間たち」であるが、「ほぼ隠居」というのは第一線をはなれた感じであって、ふつうにいえば年金生活者なのである。日ごろ時間をもてあましている感じ、あくまで感じであるが。  また「仲間たち」というからには、とうぜん初見ではなく、というよりか共通体験があるということで文字通りの仲間たちということである。  そういう仲間たちが句会をやるわけでもなく、長屋の花見ではないがワイワイガヤガヤと世相を肴にまた楽しげに談論風発してみようということである。おそらく平凡のようではあるが、案外思わぬ才覚がひょっこり顕れるといった喜色ハプニングに座がもりあがるかもしれないと予想している。そこでニュース番組などのコメンテーターほどの偽善さをもたず、またお笑い番組のひな壇のような押しこめられ感じでもなく、のびのびと世相評論をやってみようかという目論見をもって、来る五月吉日に某所にて筆者を亭主(座と茶菓子を用意しての司会役)にて開亭の由、その兼日題(兼題)は以下のとおりで、どうであろうか。』(2024年3月20日研究会HP遅牛早牛「研究会の準備と政局についてのひと言」) 注)この抄録は座談会にもとづいているが、全体として編集されている。座談会は3時間近く、テープ起こしの段階で5万字をはるかに超えていたので、2万字に圧縮したことから、少なくない項目を割愛した。また、状況説明や冗長表現については省略したが、文脈上表現を補強したところもある。相づちや口調などについては大幅に簡略整理をしている。引用数字については編集時に修正しているが、時期を特定していないものについては感覚的表現として残した。発言順と発言者については収録不明部分もあり、順不同あるいは発言者錯誤のあるところは容赦願いたい。文責は事務局。(7月中暫定掲載)
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司会 お集まりいただきありがとうございます。この研究会がもう 2 年以上、ずっとコロナで休止状態になっていて、それでなんとかしなければということで、座談会方式であえて言えば大喜利風に、題は私の方から出します。そこで、匿名の形をとって、司会・A・B・C・D・Eということでやっていきたいと、思います。

 みなさんほぼ現役ではないので、どちらかといえば物事の見方が枯れてるというか、現役とはちょっと違う、距離をおいてまた経験に裏付けられた見方もしてますというふうなことでやりたいと思います。

 とくに、世の中何が問題なのかと、これがスッキリできたらノーベル賞ものだと思います。とにかく世の中何が問題なのかというところが、はじまりだということです。テーマを決めてディープディスカッションをしていく、まあ「深掘り妄想」ということでしょうか。すこしは妄想性がないと面白くないですから。全部、証拠を示せということではなくて、ひょっとしたらこういうことではないのかということであります。

 最近、相続で苦労したという話題が聞こえてきます。それから実家の始末や介護など、たとえば老人ホームに入るのに2000万円かかったとか、また月々にもっと年金があれば、という経済格差が老後格差につながっているという現実もありますが、それが問題だという立場からは離れて、現実に介護という問題がある、どういうふうに受け止めていったらいいのかと。少子高齢化の問題もまあ同様ですね。

 さらに、わが国にAIはあるのかとか、はっきり言って、わが国の情報DXはそうとうに遅れていて、第2の敗戦とまで言われています。だいたい健康保険証もマイナンバーカードで代用するとかしないとか言っても普及率が低すぎる。

 それから、現状は紙ベースですから、とくに行政では。まあ、マイナンバー(個人番号)とマイナンバーカード、これは違うんです。システム化についてはキーとなるコードはいくつか必要なんで、これを決めないとシステムの設計ができない、コンピュータにのせられないという意味での構造の問題と、それをみんなでどう使うのかという活用の問題とは違うので、まあそんなことを含めてこの国は、やっぱりできてないということは多々あると思います。

 私自身はやってないSNS を、今では皆さん方がやっているじゃないですか。そこで、若い人たちはマルを打たないんだそうです。マルを打つと仰々しいというか面倒というか、たしかに足元にゴルフボールが一個落ちているようで、絵的にも落ち着かないことは分かりますが、国語で習ったのにといいながら、句点厳守の世代としては「句点省略」の風潮をマルハラだと言いたいわけです。

 メールとかメッセージ、X、LINEとか、それらがネット空間ともいうべきひとつの社会を形成しているんだけれども、そこでお互いに使い慣れている用語や記述それに記号などが、バリア的に識別機能を働かせて、排他性を醸しだしているのではないかと高齢者は疑っているのであります。ネット空間というのは分断的で差別的かもしれないのであります。

 それと、災害などに乗じてフェイク情報を小遣い稼ぎのために流すらしい。つまり倫理観の欠如で二次被害を誘発するともいえます。クリックで何銭かを稼ぐために遠い国からフェイクをぶら下げて乗りこんでくるようで、つまりネット空間が商業性をもつことによって、社会がおかしくなるのかなと危惧しているわけです。

 前置きはこの程度にしてどうでしょうか。

私的コミュニケーションの世界は趣味的でいいが、社会的空間は何かにつけて標準的でなければ、差し障るってことでしょう

C 「マルハラ」というのは過剰反応じゃないのかなと。例えば「パリピ」とか「うぽつ」なんか知らなきゃ知らないで問題ないし、校舎のかげで談笑しているのと同じじゃないですか。そもそもパリピに新たな創造性をみるのは馬鹿げているし、うぽつがアップロードお疲れさまというのは職人の符牒や隠語にちかい、あるいはお江戸の判じ物かな、一種のなぞなぞでしょう。美的感性というほどでもないし。

E うんうん。なんかね偉そうなのが出てきて、これどうだどうだってやってるけど、なんかね、こういう言葉遊びはこの国の伝統やろ。仲間内のコミュニケーション限定のちょっと排他的なところが子供っぽいが、許される範囲だよね。だけどこういうのが広まると、逆にどうなの、一般化すると面白くもなんともないし、パリピって、パーティーピープルだっけ、集まってにぎやかに盛り上がるのがお好きって、後の懇親会のことだろう。だったら、おれ達かなりパリピだね。

C  じゃ、「遅牛早牛」うぽつ!だね。そういうふうなことが職場でも起こっているなら50才代の管理職の皆さん方、お気の毒に文化闘争にまきこまれているのかな。しかし、軽い意味で使っているコミュニケーションツールだから、排他的とか目くじらを立てることはない、と断言できますよ。昔昭和おじさんが公私のけじめとかいっていた、神聖なビジネス社会のなかへネット空間を伝ってお馬鹿な言葉遊びが顔をのぞかせた、まあ一種のひな祭りだよ~ん。良い悪いということではないんだけど、なんか本音をいえば、やっぱり標準用語に「整えたら」とか言いたいですけど。

今年の賃上げは労組的には成功だが、「物価と賃金の好循環」ってのには大いに物足りない

A  それと今年の賃上げは満額で、金属労協のホワイトボードが満額、満額、満額っていうのはすごい。皆さんご存知のように、それでも限られている、ほぼ1/3だよね。いまや組織労働者は16.3%。だから、16.3%の交渉は幕を下ろし、今は小企業、未組織、非正規の人たちの賃上げでしょう、これは簡単にはいかないよね。おそらく、5月6月で運動としての賃上げはピークで、連合の調査でも300人未満は4%台だからやっぱり1% ポイントほどは落ちています。という現実は運動をやってきた者にはよくわかっています。

企業規模間格差!本当に克服できるのか。半世紀前から構造問題といわれてきた

司会 全民労協(1982~1987)時代に山田精吾事務局長から「中小企業の労働者の賃金は8掛けで、ボーナスは6掛け、退職金は4掛け、そして福利厚生は2掛けや」と言われて驚きました。たとえば、大手企業の平均賃金が30万円であれば、その関連会社の平均賃金は24万円、だいたいそうなんですよね。賃金がそういう関係であるってことは、一時金ベースでは、5カ月分に対して6掛けの3カ月分ほどで、額でいえば年間150万円に対し100万円ほどということです。

 さらに退職金(一時金)では、大手企業が2000万円であれば4掛けの800万円から1000万円という感じです。最近は福利厚生も充実しており、一流ホテルと契約して家族を連れて年次有給休暇を消化しなさいとか、おまけに小遣いまでくれるというのも普通の感じです。金額に直して月1万円程度の福利厚生サービスが出ているということであれば、中小では2000円ぐらいでしょうか。という格差が構造としてあります。まあ、30年以上まえの教えなので、どうかしらと思うけど、結構気になっている。

 でそれからもっと言うと、T社の仕事をもらっている企業はT社の原価体系に組み込まれています。同様にサプライチェーンを構成する中小企業は発注元に対する個別の交渉では極めて弱い立場にあることから、賃上げ原資につながる発注価格の引き上げがむつかしい、下手すると「原価低減がんばりましょう」と引き下げられてしまう、ということでしょう。

 購買とか外注、資材部門の業績評価は、去年よりも5%増やしました、ということではダメで下げられてしまう。5%増やしておきましたと報告された課長が「お前ようやった」と褒めてくれるはずがない。そんなことなら誰でもできる。だから去年が300万円だったら、今年はなんとか280万円以下で頑張ってくれよと言って、中小企業の社長の尻をたたくのが購買部門の仕事でしょう。これが発注する側の理屈なんです。役所もそうです。役所がこのご時世だからプラス7%でいいですということで、予算が守れますか。だから、地方自治体には臨時職員という非正規労働者が多数雇用されているのです。

 そういう構造がある中で、では発注査定を甘くして日本経済の好循環を促進するために、あえて発注側から引き上げを提案することが可能であるのか、原理としてやれるのかということになると思う。

 見方をかえれば、それで発注部門の職務規律が守れるのですか。簡単に発注価格を引き上げて、つまり賃上げ原資を認めて、賃上げをしてもらわないといかんからということで、コスト増を受けいれることが可能なのか、ということでしょう。

 経営者団体の会長さんはものすごくよく分かっているので、岸田総理の要請にも肯定的ですが、加盟企業のA社からZ社までがこぞって、値上げに応じられるのか。資材部長として社長からそう言われたとしても部下にどう指示するのか、なかなかむつかしいとこです。

 自由主義市場経済において、発注価格を国策にしたがい引き上げて人件費で再配分政策をおこなう。再配分じゃなくて一次配分を触るということは、もうマーケットは機能しない、もちろん現状においても完全マーケットではないのですが、ということなら社会主義経済というよりも戦時統制経済的な調達に政府がかかわるということで、趣旨に賛同できても手段としては異論が出るのではないか、ということで新たな問題ではないかという声もある。

 対等な交渉関係というのは、労働組合を見れば分かるように争議行為(ストライキ)で事業をとめても損害賠償請求はされないという、民事訴訟上の責任が免除されているということでなりたっているのです。

 一方、最低賃金法は強行法規だから経営者だって違反すれば罪に問われるわけで、これは厳しいといえます。大企業はいいですよ、しかし、雇用者全体として実質所得の伸びが確保されるのかということについていえば、今のところ非常にネガティブですね。実質的には今月から支給額は上がるんです。大手では2万円ぐらい上がるところが多い、表示的には15,000円程度ですかね。賃金体系によって差がでますが。

 雇用者全体をとらえた時に、前月4月は2.5%実質賃金が下がっています。それをとり返すためには、低い賃上げの人やほとんど賃上げのない人の分をふくめて大手が取らないと平均は上がらない構造です。

賃金には経済原則を無効化する社会性という側面がある

 さて、次のテーマは賃金が労働市場において需給関係で決まるのは本当かという課題もあり、労働側として労働力の供給調整ができるのかっていうこともあるわけで、とくにエッセンシャルワーカーについて、市場がタイトになれば理屈の上では賃金が上がるはずなんです。人手不足になれば、3Kと言われている仕事の賃金が上がらなければならないのに、賃金にはそのマーケットだけでない、やっぱり別の社会的力がかかっていると。で社会にとって必要不可欠であればあるほど低賃金ではないのか、逆に必要のない仕事ほどいい賃金をもらっているのではないか。というのは妄想的かしら。

 つまり、なんとなく声の大きい人が多くもらっているという説がある。だから声を出さない日本人は世界で賃金が低くなっているのではないかとか。黙って仕事だけ一生懸命やっている人は賃金を払う立場からいえば上げる必要がないと、なぜなら上げなかったからといって文句を言わないから、だから上げなくてもいいと、とくに労働組合のないところはそういう傾向が強いのではないか。

 しかし政府が、文句言った方が賃金が上がるなどと言い始めたら、それでは霞ヶ関も、警察官も、自衛隊員も文句をいいましょうとなると、これはこれで困るでしょうね。

 また、歴史的に低報酬の仕事はどんな風に形成されたのかというのは、労働運動じゃなくて、仕事によっては割と日の当たらないものがあるとすれば、そういう問題を含めて岸田さんは解決しようとしてるのかといった時に、本当に働く人に対する愛があるのか。いや、口ばかりではないのかとまでは言わないが、まあそれに近い感情が労働サイドにはあるのではないでしょうか。

インバウンドにみる物価、為替、賃金の影 「やっぱ、おかし~よね!」

E あいかわらず、長いね~、司会者が大演説ぶっちゃいました。拍手!今日はこれで終わり、ではなく、なんかインバウンドが大盛況で、「安くて、うまい!」といいながら、オマールエビ入りのラーメンが5000円。それでも「安い!うまい!」だって。海鮮丼もてんこ盛りで4500円。ノープロブレムだそうです。まあ中身がリッチならいいけど、そもそもの価格が海外からみればべらぼうに安い。気がおかしくなるほど円が安いのであるから。その安い昼飯をささえているのは俺たちの安月給ではないか。NHK「サラメシ」でもとりあげろといいたいわけで、他の言いたいことを忘れたが、ちょっと変ではないか、と思う。

司会  為替と物価の問題があるから簡単には言えないんだけれども、およそ1対2なんです。体感的には。昼食代で比較すると、東京の新橋で サラリーマンの平均的な昼食代が千円までといわれています。米国のニューヨークでは17ドルという調査結果を聞いたことがありますが、1ドル150円とすれば、2500円です。しかし日本のほうがはるかに味がいいので、20ドル払ってもいいと考える旅行者がいるかもしれません、そうすると3000円ですから、円貨では1対3ということで、円が安すぎる。(20ドル出していい昼飯が1000円で食べられるということは、20ドル札で受けとり、それを換金すれば店側には手数料を差し引いても3000円近くが入金されることになる。が今は、旅行者が13ドルほど儲けているともいえる。現象としては不当とはいわないが、非対称な取引がおこなわれていることになる。)実際、1000円のメニューに7ドルしか払ってないのだから、理不尽ではあろう。だから国際比較すると賃金も安すぎる。食事代は特殊な支出ではなく、一般的でかつ日常的なものですから、国際間で比較してきわめてアンバランスであるなら、是正されるべき、先進国からのツーリストがこぞって「安い!」ということであれば「ほどほど」まで値上げされるべきです。連動して賃金も上げるべきです。なぜなら、一杯のラーメンが安すぎるということは当然1時間の労働対価も安すぎるといえるからです。つまり、わが国の価値価格体系が国際基準から逸脱しているということでしょう。

B 極論ですね。昼飯はワンコインじゃないの?500円がいいよ!なんか、年金暮らしが不安だな、インフレになると直撃される、、。

司会 おっと、物価と年金の問題はべつの機会に、、。次の方は?

少子化アラカルト、原因でもあるが結果ででもある課題

A そうなんですよね。世の中、何が問題なのかっていうところで、少子化ってのは大きなテーマで、そこからいろんなことが出てくるのかなと、医療の問題とか、人生100年時代とか、お金が足りないとか、生産年齢人口が足りないとか。で今の若い人たち見るとなんか僕も同期で7人集まっても孫は3人しかいない、それが実態なんでしょうね。自分の世代の子供のその子供がすくないってことです。だから、僕らの世代では子供をそれなりに作ってきたけれど、さらにその下の世代がということです。

 労働人口の予測って大体当たっていますよね。まあ日本の経済力が弱くなったとか、いろんなことに関係する大きなテーマだということで、少子化っていうのを逆に捉えると高齢化ですから、高齢者が多くなるってことで、きわめて大きな社会問題だと思います。

 それといつだったか報道された老人の孤立死っていうのは、いわゆる独り住まいの高齢者(65才以上)のそれがものすごく増えてて、過去最高になったんでしょう。1月から3月で1万7千人自宅で亡くなっていて、それを年間になおすと約6万8千人と推計されるっていう、とんでもないよね。やっぱりさっき言った子供とかが少ないっていうのがあったり、なんか一緒に住みたくないっていうのもあるのかもしれないですね。

E その孤立死って、実は6年前に兄貴がちょっと私と同じ歳で亡くなったんですけど。実家は山梨の田舎ですが、未婚で1人で住んでいたんですね。結局誰もいないところで、布団の中で死んだんですけど、後で司法解剖やったら不全ってことでした。もともと心臓があまり強くないこともあって。だから、どう改善するのか、そういう方たちをどう守っていくのか、たまたま家のすぐ近くにいとこが住んでいて、いとこがたずねると全然応答がないんで窓から入ったら亡くなっていたということなんです。そういう経験をすると本当に大きな問題かなっていうふうに思いますね。

司会 Aさんが言われた少子化問題ですが、政府的にはなんか増税ではないかと話題になっていますね。生産年齢人口、15歳から64歳だったかな、その年齢層が大きな付加価値を生んでいるということから、その層がすごく減っていることが注目されているんですよね。総人口はまあ2030年には1億2000万人を切ります。この1億2000万人という大きい数字は意外とゆるやかに続いているわけですが、構成でいうと生産年齢人口は激減している。昔は8割ぐらいでしたが、現在は6割ぐらいになっています。だから扶養人口が2割から4割に増えているのです、この30年間で、衰退日本とか言われていますが、総人口比で8割から6割に減っちゃったから衰退するはずです。また高学歴化にともない就学期間も伸びているし、それも大きいんです。引きこもりなどの非就業者もいます。

  

D 卒業したのはいいけど、ニートで就職しないっていうか、身近にもいるので、そういうところが対策できないと本当に困っちゃうな。で、政策的に生産の場へ労働力として入れるということになると、これって強制的な考え方なんですよね。国として労働者不足で需要があるからといって、引っ張りだそうとすると、それでは対策としてはちょっとうまくいかないのかな。でも、その人にとって賃金が支払われる社会参加がいちばんいいわけで、そういう仕組みをどうやって作っていくのかというのが大きな課題だと思いますね。

A インドの生産年齢人口が増えているじゃないですか。韓国、台湾、日本は減少している。まあ中国も1人っ子政策だったから、いろんなところで問題が生じて、何も対策できていないんじゃないですか。子育て支援とか色々やってるけど、子どもが増えないですよね。年金の問題も含めて問題がでてくると。

 あの日本って、ある時点からこう少子化っていうか、われわれの時代はまだきょうだいって私は3人ですけど、あの結構5人とか6人いたりして、多かった感じですが。今の40才代になると本当もう1人2人でしょう。なんで生まなくなっちゃったっていうか。

合計特殊出生率を因数分解すれば?

司会 それここで、やりますか?ちょっと理屈っぽくなりますが、合計特殊出生率、これは1人の女性が生涯(15才~49才の間)に産んだ子どもの数です。これが2.07人を下まわると人口減少にむかいます。10人の女性が21人の子どもをもてば均衡しますが、女性10人のうち3人がいろいろな理由で産まない、産めないとするならば、これは言い方が難しいのですが、7人で21人を産むということであれば、平均3人です。3人きょうだいでないと人口が均衡しない、そうすると7人のうちの2人が1人ということになれば、そうすると21人のうち19人の子どもを女性5人で、つまり4人きょうだいをもつことになります。いいかえれば10人のうちの半分の女性が子供4人をもつということで、これでようやく合計特殊出生率が2.2人になります。だから、まあ少なくとも人口を均衡させるためには子供をもたれているご家庭の半数が子ども4人ということです。といいながらも家族数は自由そのものですから、政府があまり旗を振るのもおかしなことです。観測者の立場からいえば、子供4人連れのご家庭が目につくということになればもう合計特殊出生率が2をこえている状態だといえるわけです。

 強制的に家族政策をやると、たとえば中国のように人っ子政策を強引に推し進めると2世代先から人口が激減していくようです。現在の子どもの数を見れば韓国も20年先から激減するでしょう。人口はいったん減少に転じるとなかなか回復しない傾向にあります。とくに生活環境が悪化の方向にある時代はなおさらですね。

 最近東アジアは冷えているのではないか。日本も孫の数が減少していますから、回復不能って感じですね。

 また、モデル賃金とか生計費では、夫婦2人子供2人計4人家族を標準家族として表示しますよね。賃金論でも福祉論でも、またなにごとにも4人家族が標準、つまり基準になっているわけです。住宅産業でも定型というか3LDKが中心で、5人家族用の4LDKが圧倒的に少なく、子どもが3人だと中高生になると1部屋足りなくなるということで、暮らし向きの基準が4人家族になっている。いってみると2人っ子政策ですよ。また、 女性の社会進出をささえる政策も結構やったんです。で社会全体として子供を産める環境にある人たちの合計特殊出生率をできたら3とか4に誘導していく政策を考えるべきだといった議論もあったのですが、政策論としての手法開発ができていなかったですね。

 一時は3人目、4人目には月額5万円とかね、出産一時金として3人目には年額100万円支給するとか。アイデアはありました。

 で、民主党が政権についた時に子供手当を目玉にしてワイワイ議論したんだけれど、当時野党の反発がつよく大変でしたね。国会見学に来た支援者のみなさんに、民主党のマニフェストでは子ども手当はこうですと説明すると後ろの方から「俺は反対だ。俺の時にはそんなのなかった。自分の子供は最後まで自分で責任を持つべきだ」という意見がでました。それに対して当時の民主党の説明が弱かった。「チルドレンファースト」なんていうからだめで、もっとこの子供たちが支えるのは、自分の親だけじゃないんです。介護だとか、生産だとか、サービスだとか、社会全体をまとめてこの0歳児が20年後から負担しささえるのですと。社会を支える人たちの問題として、1人でも多い方が20年後を考えると、しっかり支えられる社会になりますねということをもっと主張すればよかったと思います。他人は関係ないということじゃなくて、うちの子、よその子にかかわらず、その子供の世話になる20年後のあなたがいるんですよと。それをリアルに考えてもらわないと、この政策は国民のものにはならないということです。

三世代同居は問題解決的ではあるが、核家族化や雇用あるいは勤務形態がいろいろあって難しい

A ちょっと最近、東北地方へ行ったんですよ。東京地区は大体1人、1家族2人まで。でも東北は3人から5人なんですよ。家族的には子どもを3人産んでまあ5人の人がいる。東北は一次産業が多いのかな、なんか人との距離感、やっぱり家族としての距離感、夫婦の距離感が近いと思うんです。密度が濃いです。

 だから、経済的に支えていくという政策だとか。いろいろあるけれども、やっぱりその家族に対するイメージとして、また家族をどう考えますかということでいくと、その多世代や3世代がいちばん答えになりそうなんです。いや、そのじいちゃんばあちゃんと住んでいる、また見てくれている人がいるっていうのは大きい。うん、それってそういうことだよねと。だから政策として、つまり3世代同居あるいは近住を促進するとか、、。

司会 そうですね、自民党などの保守系グループは3世代同居をベースとした家族観を大切にしているようです。やはり保守的ではあるが地方地域では説得力があると思いますね。だから、なかなかLGBTQだとかについては受けいれられないで、伝統的なじいちゃんばあちゃんがいて、夫婦がいて、子供たちがいて、家族揃って子供が病気になったら、おばあちゃんがこうしたらいいとかいう。つまり子育てについて、大家族として対応できると。で、そのことにこだわっている。

 だけど、核家族になったんです。それで、日本を取り戻すってのは家族構成を取り戻すということで、今更じいちゃんばあちゃんのいる3世代同居というそういう仕組みで、子育てが緩和されるというのか、負担が軽減されるという構造に戻せるのか。社会的、経済的、産業的に核家族や単身化がぶつかってきたということでしょうか。

A まあ東北地方のすべてではないにしても、人びとのなんかそういう生き方は、昔からそうやって育ってきているっていうのもありますよね。結局半分ぐらいの世帯は、そういう3世代同居的な構造をたもち続けていると。しかしそれを保つための、例えば産業とか雇用だとかそういうものがないということですよね。でも今、稲作だけでは支えられない、どうしても安定した現金収入がいる。厚生年金がかけられるような仕事でないとなかなか難しいという意味で、雇用の確保をどうするのかというのはあると思うんですよ。だから本当はリモートワークみたいなものがもっとあれば、そういうことが可能になると思うんです。

 とくに都市部では、その3世代で住みたくないっていうより、それ以前に3世代で住めないでしょう、住宅事情や貯金を含めて。実は僕、結婚してマンションに住んでいて、娘が結婚して出てったら、まあしばらくしてから一緒に住もうと向こうがいうんで、旦那の実家も近いんで、じゃあその辺で買って一緒に住んで、姓は一緒にしなくても構わないそうですね。それで玄関を1つにしてくれと。で3世代ですけど、非常にいいですよ。喧嘩もしますけどね。知らなくてもいいこと知っちゃうけど、子ども預けたり。

 そういうあの3世代政策を国としてやるとか、行政として支援するのもいいかもしれないね。

合計特殊出生率1.2人をとりあえず0.3人引きあげる施策に集中しなければ、総論だけでは無理でしょう

司会  少子化政策を考えるときに、合計特殊出生率がターゲットになるけれども、これで成功したのはフランスです。フランスもずっと低かったんだけど、当時1.8人ぐらいまでに回復しました。(今では下がっている)しかし2人には戻らなかった。この人口減少率をゆるやかにすることは、大事だと思うんですよ。だからプラス0.3人ぐらいはなんとか改善する。10家族のうち3家族でプラス1人です。これで1.2人が1.5人に回復するわけです。これを1.8人にまで上げるにはさらに3人プラスですから、とんでもなく大仕事といえます。

 世帯同居の形が良さそうだというのは経験的にいえるわけですが、首都圏ではむつかしいでしょう。

 だからどこで残せるか、住宅の問題は500万円も出せば古いのが買える。現在800万戸余ってますから。そこで問題は仕事だと思うんです。リモートワークとかができる職種なら、3世代同居だって田舎の実家をそのまま使用すれば楽勝でしょう基本的には。

 それで若いカップルが田舎に帰ってきて、3世代同居でやっていければ行政的にもいくつかの問題は解決できる。1石3鳥ぐらいな効果はあるんじゃないですか。でもこれは1つの解決策。仕事としてリモートワーク的なものをどこまで増やせられるかとか。育児の負担をどうするかで、これね、やっぱり女性の社会進出という旗を挙げている以上、相当コストがかかると思うんです。今、小学校の放課後が大変で、母ちゃん帰ってくるのは7時頃だから、その間、どこで何するのって、学童施設は放課後スクールですよね。私立なら月4から8万円かかるといわれています。それから熱だした時にどうするのか、出張した時にどうするのとか、まあそんなこと含めて生活をカバーする支援の仕組みに社会コストがかかる、また人手もいるということですよ。

わが国では外国人労働者問題、先進国では移民(越境者)問題がホットになっているが、内実にはかなり差があるようで

A あと外国人労働者の問題ですか。うちの業態が3Kだったんです。日本では働き手がなかなかいないので、ベトナムで採用することになって、そういう時代です。昔は据えつけ会社の社長が地方の学校をまわって採用していました。それで鍛えて技能者を育てていたのです。外国から商売の照会を受けても、据えつける人がいなければ受注できない。もう生産力で決まってしまうのです。昔は品質だとか値段とかで決まっていたのが、今は生産量でシェアが決まってくるんですね。ということで外国人労働者がいないと日本の産業とくに3K産業っていうのかな、なりたたないのが実態です。

司会 その外国人労働者政策は、今回の改正で2027年から育成就労型がはじまりますが、技能実習制度をつくる時にヒアリングがあっていろいろ意見を言いました。かならず問題が起こって、それでパスポートを強制保管すれば人権問題になるとか、日本の経営者はていねいに管理ができないので、さまざまな問題が起こるだろうとか。

 まあ、労働側として懸念していたことは全部マイナス面として出ています。アメリカからは一部人権侵害だと結構厳しく言われてんです。それを含めて是正をしていく必要があります。この問題には二つの要点があって、ひとつは人手不足への対応です。技能実習というのは表むきで、もちろんその要素はありますが、来る方も受けいれる方も事実上の就労だと思っています。これはこれでほころんでいるといえます。もうひとつは外国人とのあいだに起こる摩擦です。

 国内居住の外国人はさまざまで、すでに200万人をこえています。生活圏を中心にプラスマイナス両面の交流があり、友好と嫌悪が入り混じった状況といえるでしょう。また地域によってもさまざまで、交流が緩慢であれば適応が安定化すると思われます。急速な定住とか居住集中には周辺から少なくない苦情が発せられるようです。アメリカのように雇用をめぐって衝突していると思われれば排斥とか遮断といった過激な政策への期待が一挙につよまり政治的リスクとなりかねません。

 問題なのは無資格や期限切れのいわゆる不法滞在となった場合です。不法というのは事情によっては過酷ないい方といえますが、いろいろな不都合が生じます。法的資格をもたないで滞留しはじめると、さまざまな要請が生活上でてくるし、地域での摩擦もあるということで、まあ苦情もでてくれば、今度は地域住民としての要請が浮上するなど、定住について社会的な反発が強まるので、はやい話が受け入れとはならない、これは世論的にそうなるのであって、先進諸国も移民(越境者)問題はデリケートな課題となっています。

 もちろん難民の受け入れについては制度ができていますが、認定がむつかしいので各国とも滞留気味といえます。この 30 年間、中途半端な技能実習制度でこなしてきましたが、そろそろ限界ではないかという意見あるようです。ある意味、子供だましみたいな政策だったんですよね。

 しかし、本格的に移民政策をどうするかというステージについては合意などありません。したがって、現状は現実対処的であったことは確かだと思います。それだったら移民として家族も受け入れるべきであるというのは正論ではありますが、しかし日本が移民受け入れ国の看板を掲げることができるのかどうか、受けいれる側である1億2千万人の決断ではありますが、賛成反対で国論が割れるようでは決められないと政治家は思っているでしょう。まあ労働力だけ受け入れようとしたわけですが、それは無理だったと、最初から労働力だけを切り取れないわけで、つまり人間だから家族もいる、家族と一緒に暮らす権利がある。生活が良くなったら呼び寄せたい家族もいる。宗教も教育も習俗も、すべてに寛容でなければという話でありますから、ハードルが高くなるのは仕方がないと言うことです。

C 8万人もいるんですね(無資格滞在者)。パスポートが切れちゃったとか。

司会 だから日本の管理の仕組みとしては、一度打ち破られたら警察国家じゃないですから、強行な対応はこの国ではむつかしいですよね。今以上に増えてきたら、はいり込む方はやりやすいよね。見つからないから。やっぱり水は高いところから低いところに流れるように、この問題は拡散浸透していくんじゃないかなと思うんで。だからまあなんとかね。

 ただ、やっぱり人々の感情の問題なんですね。外国人を嫌だと思う気持ちだけであって、経済的に、社会的にいろいろと施策を準備すればある程度許容されると思うんですが、現実は摩擦は避けられないようです。それは世界史的はそうだったんだと。東からモンゴルが来て、西へ十字軍が 向かって、東西行ったり来たりした。シルクロードは富と文化をもたらせた。交易で大儲けしたとか。あれだって交流なんですよね。

 だからまあ。Aさんが言われた日本の産業を支えていくということについて、労働力をどう調達するかっていうのは基本テーマで資本論の指摘のとおりだと思いますね、いまさらマルクスがとは言いませんが、資本と労働が必要だ。それを国内で調達できない、また地域でも調達できないということになると、海外から労働力を持ってくる。そうすると当然、人間だから社会政策として仕組みが要ります。だから言葉をどうするんですか、宗教を、教育を、だけどある人が言ってたけど日本の制度は原則平等ですから、現実社会に差別はありますが、なんとか給付金などは配られています。また教育もそうです。したがって、受けいれにあたっては社会コストがかさみますから、賛否両論が渦巻くことになるんです。

? 大富豪なんかには来てほしいと思うけど、、。

司会 そう、砂金を背負ってくる人は歓迎されますよ、いつの時代も。(笑)

そういうことですから、保守政党を支えるコアの人たちが「しょうがないね」と言えば前に動くと思います。世界では、一定以上の資産をもつ人は在留資格をえられやすいのも実態です。あるいは、分野にかかわらずとびぬけた才能には各国とも優しいといえます。ただ、どの国にも来てほしい人と来てほしくない人の区別があって、現実は来てほしい人は来なくて、来てほしくない人が来ることからトラブルが生じているのが世界の実態といえます。それぞれに正義があって、簡単には白黒つかないといえます。

ものづくり産業の大切さを再認識すべき、ものづくり人づくりが基本

司会 先ほどのAさんの、シェアは生産力で決まる、ですが、これって正直世界標準だと思います。ウクライナとロシアの戦争って、結局生産力、調達力ですよね。それもハイテクだけではない第2次世界大戦の時から変わっていない砲弾や旧型ミサイルで、それも数量が重要で、足りない分はしょうがないから北朝鮮から調達しているといわれています。それで今のところロシア軍が押しかえしている。もちろん、中国から周辺機材を調達しているのではないかとか、アメリカが牽制しているようですが、気がついたら、ロシア軍の機材の相当部分が中国由来で、戦車などの殺傷兵器こそ出していないけど、生産関連機材については疑われているようです。というように生産力というのはきわめて重要で、日本はこの30年間、新しいテクノロジーや開発力といった新技術に目を奪われてきましたが、1日に何万個砲弾を作れるかというのが基本のようです。勝敗は生産力で決まる。パソコンだって、携帯電話だって結局中国、台湾が生き残ったのは巨大な生産力ですよ。早い話が故障しても交換すればいい。山ほど作っているのだから。日本として大事なことは、この人口問題とかについて、なんとか日本が衰えていく、マイナスのスパイラルに入ってしまって、いろんなとことろに手が回らなくなるということを自覚して、 生産年齢人口、生産力、 購買力そういう力を安定的な水準に保つために努力を重ねることが重要ということでしょう。

 また賃金の問題だとか、食の問題などのベースはものづくり、生産力ですね。そういう意味では現状はちょっとスカスカになっている。九州では半導体の工場も台湾籍企業です。日本の半導体産業が後退した理由を検索してみると、結論から言うと、やっぱり資本ですね。資本の優劣です。同じ1000億円でも日本が用意する1000億円って面倒くさい。台湾や韓国の経営者が出すのは面倒くさくない1000億円でしょう。勝負にならない。

 日本ではそれだけ意思決定に時間がかかるので、成功するものも成功しない。決めた時にはリードしていたけど、金が出るころには逆にリードされていると言われています。 

司会 すこし話題がとびますが、2011年3月11日、東日本大震災の後、原発が停止したことから、再生可能エネルギーとしての太陽光発電が脚光を浴びました。高額な補助金が設定されたことから、太陽光発電パネルの需要が急騰しましたが、国産品はコストが高く供給力も低いことから、輸入品が急増しました、ほとんど中国製品でした。グローバルな供給力をもつ中国メーカーの独壇場になったわけで、国内メーカーはそのスピードについていけない。日本では新工場ってすごく時間かかる。工場作るために行政に出さなければいけない書類は軽トラいっぱいという笑い話があるくらいです。やっぱり人の力に依存している。だから人口が減るってことは、産業としては条件的に厳しくなるということでしょうね。

司会 2000年ころですか、工場の海外流出が懸念された時、日本国内には基本設計とか開発部門を残し、まあ生産工場が海外でも国内にはマザー工場を残すので大丈夫と胸を張っていましたが、論文も財布も負けてるわけで、中国が特許出願数では一位です。論文数については、簡単な比較はできませんが、特許と同じようなものかもしれません。ベースとなる地頭(じあたま)で言えばイーブンでしょう。これは教育によって支えられるし、知能指数も正規分布であるとすれば平均値に差があっても母数が増えていくと3シグマを外れる出現数が増えるので、その人たちがちゃんと役割を果たせるようなポジションにつくのであれば、あと20年もすれば、中国人が普通にノーベル賞受賞という時代に入っていくでしょうね。昔のことですが、日本人は優秀なんだと向かいのおじさんが言っていましたが、結果論ですね。スタートラインの位置とか教育環境また蓄積もあって、簡単な理屈ではないようですが、だから日本人は優秀だとか、日本人のIQがいくらだというのは、だからどうしたのという問題だし、現実は先進国の中の低賃金国でもあるし、ある意味劣等意識の裏返しかもしれないですね、今日的には。

 ものづくりでは日本はまず治安が安定してる、行政が手間どるけれどしっかりしてる、地震が起きても対応できて復旧ができる。これも人口が減ればむつかしくなる。今石川県輪島地方が苦労してるのは人手が足りないということでしょう。

災害対策にもほころびがでているのでは、課題も多い

A  災害対策ですが、台湾で地震があったじゃないですか。その時に避難所とかの対応が台湾ってすごいなって、なんで日本でできないんだって思って、日本の方が地震が多いですよね。それへの取りくみが日本の方が出来上がってなきゃいけないのに、遅れてるじゃないですか。

 なぜ台湾の災害時の対応がしっかりしているのかというと、体制なんでしょうね。中国との衝突を常に意識して社会システムだとか避難体制だとか、いろんなことを考えているのでしょう。だって日本だと、仮に中国が朝鮮半島まで来て、日本も例外じゃないなんて始まったら、これどうするのって言ったらさ、やっぱりミサイル攻撃を前提にしてインフラを考えようということになるでしょうが。地震にも強く、またそれで人も動員できる体制を保持しているから、そういう有事対応の即応体制を持つということは、地震が発生した時にも行政の対応が全部そうなるでしょう。そういう点では、日本は意外とできていないですよね。それは平和日本で、平和だということに対するとらえ方で誤解していると思うんです。そこは右の方の論理だけど、やっぱり地理的な問題はさけられないのではないでしょうか。

司会 地域というか、地震がすくないと思いこんでいる地方の耐震対策、防災意識は低い感じがします。阪神淡路大震災も、近畿は地震がすくないという誤解もあった。そういう意味では県や広域行政の役割が大きいのではないかと。

 今回の能登半島地震では、耐震性に問題があったようで、古い家が多いということは、耐震性能が低い可能性が高いことにくわえて、地震が来ないと思っていた。そういうのは行政が地震は来る、津波も来ることを前提に説明をすべきでしょう。全戸点検し、 耐震補強をしておけば減災できたのではないかと思っています。

3分過ぎるとマイクのスイッチOFFってのはないでしょう

A ところで、水俣の件はどうですか。問題じゃないですか。真剣にその人たちの意見を聞くんだったら、飛行機の時間を気にしたり、3分に制限するという話にはならないでしょう。どうなんですかね。

 なんか平和ぼけしていて地震が来ても、なんかやったふりして見に行って、その後1か月たってどうしてるのっていう時に、やっぱり遅いよねってなるよね、行政は。 

 地方行政は必死だとは思うんだけど、あらかじめどうするかと言うことを、もっと耐震対策をやって、各地でね、各家庭でもちゃんとやってということを指導しているとところは結構強いのではないかな。それは知事とか、県のレベルの問題だと思うね。

(注:ちなみに「改正耐震改修促進法」「地方公共団体耐震支援制度」などがあります)

C (5月1日、水俣病慰霊式の後、恒例の環境大臣と水俣病患者らとの懇談の場で「1人3分間」との発言時間を超過したところでマイクのスイッチが切られたことをめぐり抗議が行われ、問題化した。水俣市水俣情報センターにて)もう水俣は終わったと思ってんじゃないの。環境省は新しいテーマだったらあんな対応しませんよ。マイクのスイッチを切ることはないんだし、ちょっと七不思議だよね。なんであんなバカなことやっちゃったのか。

 ところで、今の政治家ってほとんど原稿を読んでいるじゃないですか。昔の政治家はほとんど原稿読んでないですよね。だからその辺って、まあ人によっては読んでた人もいたけど。でもそういう傾向がありますよね。環境省にすればどうしても大臣の次の日程が気になっていたとか、このあたりはどうなの、、。

司会 一般的に、担当部局から事前レクチャーを直接か秘書官をとおしてか、きちっと受けることになっています。しかし、タイトルによっては説明する方も省略することはよくあるんです。そんな細かなことまで俺に言うのかと機嫌を損ねる人もいますね。たしかに大臣ともなると超多忙ですから。本人はもう説明されるのは嫌なんでしょう。まあね、本当にこの大臣のことを思って丁寧にやればやるほど、なんか嫌われる感じもあるのかな。ということもあるけど、何気に水俣病問題はおわったという雰囲気に原因があるというAさんの指摘があたっているかも。

最大のテーマ「テレビ(番組)は面白くない」にいよいよ突入!

B テレビ番組が最近面白くない。いや、ゴールデンタイムのテレビってどこも見るもんないね。だいたいどこへ回してもお笑い芸人と旧ジャニーズが、なんなんだって代わり映えしない人とか、勝手なこと言うかロケするかの2つのパターンしかないんですよね。

 もっとしっかりした番組作んないのかなって、たまに骨があるドラマって大体10時ぐらいかな。だからテレビからみんな離れていくのはしょうがないのかなと思ってね。僕なんかもうユーチューブ見てた方がいいかなとか思っちゃう。

司会 まともに面白いのは、そうですね。昔のサスペンスドラマが面白いんですよね。浅見光彦が出てくるのがいいといってた。ミツヒコももう何代目かしら。7、8時まではだいたい夕方の情報番組をやっているでしょう。もうあんまり面白くない。ここ何年かは暇だから朝からニュース番組を見るじゃないですか。同じ話題だから、ニュースも3回はおなじことで、もうミミタコだから。大谷翔平のホームランなんか前の晩から4回は見るんですよ。チャンネル変えるとまた打っている。1本で5,6本分見ている勘定だね。でもたしかに8時からは見るもんないね。夫婦で番組表見ながら「ないねえ、ないねえ」と言い合ってます。

 現役の時は、家に帰ってないから、ほとんど見てなかったさ。で楽しい引退、隠居になって、見るものない、これは悲劇ですね。

お笑い芸人が中心に、斬新にマンネリをやっている

A 定年になって飯食いながら本当に感じますよね。こんなもんずっと見てたら、日本人の知能が低くなるのは当たり前だなと。大体やってる連中がね。同じことやってて飽きないのかなと思うぐらいだよね。・・・・

 それでも楽しく見る人もいるとは思うんだけど。もうほとんどメンバー一緒でね。なんでお笑い芸人が最後MCで上がるんだとか。それってすごろくになってるのかね。吉本とか壊れてきたから、友達がNHKが結構好きで、NHK スペシャルとか、今度蒸し返しじゃないけど、例のプロジェクトX とか、あの番組は結構見る、意欲が湧くるんですけど、製作費の問題があるということは聞いたことありますね。よろしくお願いします。NHKは受信料でやれるからね。

司会 お笑いの人を並べて、ひな壇でなんかひと言ふた言いい合って、身内で笑いあってわざと盛りあがって、ほんとに見る人無視の典型だね。まあ簡便な造り、バラックだから安いとは思うけど。それからもっと安いのが街場ものですか。4,5人で通りを歩きながら、うろうろと料理店を探して、撮影OKいただきましたとかいって。

 そういえば、「○○テレビで放送されました、△△です。今売れてます!!」てな表示が店先に増えてない?

結局テーマは「衣食住、快食、快眠、快便」ということか

D 大食い番組ってのはいかんね。消化に悪いのにと後を心配しちゃうな~。

C この食レポ番組、なんで盛り上がるの?製作費を節約しているだけじゃないの。ただ、放送事故がすくないからかもね。あるいは政治がからまないのがいいんじゃないでしょうか。それと、首都圏だと、食い物情報はマジ役にたつ、今どきこんなのが流行っているのかとか、近くの店だと二人でいってみるとか、まあたいしたことないっていうか、そこそこの限界みたいで、並んだ分損した感じがあったりして、本当にいい店には入れないし。

B 話変わるけど、便秘の人って多いんだね。国民全員便秘みたいなコマーシャルいっぱいあるじゃん。それも、最初レポートかと思っていたら、コマーシャルじゃない、損した気分ですよ。それからなんかこの頃眠りにつくための夜の飲みものみたいな、なんか出してきたじゃないですか。

 やっぱり食べ物番組が(製作費的に)安いんですよ。なんかこう。半分焦げそうなお笑いの、まあ、失業対策的にやってんでしょうね。昔はこんな大きなカメラ担いで、マイク持ちそれから反射ね、交通整理などをふくめて10名ちかくいたかな。もうそれだけで人だかりができて交通規制がいるぐらいだった。最近はなんか自撮りみたいな感じで、あれって、ユーチューバーの影響かな。何ごとも簡単、お手軽になっているようです。

E テレビ番組が面白くない、同感ですね。これは放送側の問題です。金なし、人なし、アイデアなしで仕方なしだよね。まあ、そうはいってもアラコキの要望にお応えするのはすごく大変よ。暇あり、小金あり、うんちくありで相手するのがたいへん。

 ところで、テレビ番組ってドラマを除けば、衣食住と快食快眠快便ですよね。人間の基本的欲求に沿って企画されているようですね。

C まあ、そうなるのか、理屈にはあっている。しかし、世の中便秘で苦労しているんだ。サプリメントの宣伝多いよね。それと睡眠不足。

B 高齢になると午前3時には目が覚める。(早すぎ~ぃ) 

A なんかいろいろうんちくを並べているけど、店見つけて、入って、お前がラーメン食べただけじゃない、と言いたいね。一度、まずかったを聞きたいけど。「こんなに大きな焼豚が入って750円とは安い」のは確かにそうだ。番組の製作費も安あがりでしょう。

司会 その点、例えば「御家人斬九郎」とか、「鬼平犯科帳」とか、「剣客商売」とか。しっかり作っているものは見る人が多いと思うね。再放送はもちろん、再々、再々々も何のその、喜んでみています。いや鑑賞しています。大河ものは時代考証がしっかりされているので、それなりにね。その辺を厳しく指摘されだすと民放では手がだせなくなっちゃうね。時代劇は金がかかるというのは本当のことですね。

D ドキュメンタリーでは、見逃しが多いよね。ミノガシタリーとか。ドキュには提携ものかな、海外のがあるよね、まじめで、社会問題をテーマにしてて、優良だけど、見ていてつらいね、ウクライナとかガザとか。

 その点、「空港ピアノ」だっけ、えっ「駅ピアノ」、そういえば「街角ピアノ」?どうなってるの。みんな親戚番組ってことか。何もない時に見るのがいいよね。結構弾ける人が多いんだね。ときどき深い背景があったりで、考えちゃう。

A 「ドキュメント72時間」もなんか惹かれる。人生を感じるというのか、わけありなんだよね。組合の仕事みたいで、もっと聞きたくなる。24時間開けてるドラッグストアとか、夜勤の人が朝帰りとかね。うん、朝帰りで飲むビールが美味しいとわかるよね、本当に美味しそうにね。なんで今どき飲んでんだと聞いたら「晩酌」だって、(笑)拍手だね。

司会 そう言うことなら、あれよ。「サラメシ」も親戚だよ。中井貴一のナレーションは良いけど、ちょっと味付けが濃いというか、油のつかいすぎつぅか。

A 「働くオトナは腹が減る」んだから、濃い味ね、油もたっぷり。加油、加油だよ。

司会 番組中の「あの人が愛した昼飯の店」は佳作だわ。あの上品ぶった入り方は、民放では思いつかん。あえていえば、ひとつ上を狙ったしぐさが、ちょっとわざとらしい。

C なんかいろいろな文句を思いつきますね。テレビにでたら。それより、これってNHKの番組宣伝なの?やりすぎじゃん。

司会 はい、自覚しています。しかし、受信料で経営が安定しているからこそできるといえます。広告収入が厳しくなっている民放との格差がどうなるのか、ということですか。

B 民放は、面白くねえという批判を受けとめなくちゃダメでしょう。同じようなお笑い芸人集めて、町中行かせたり、飯食ったり、温泉入ったり仲間内のドタバタでしょう。それから、クイズ番組。どんどん離れていきますよ。競争力ないんだから。時間をもてあましている、アラコキをすこしは気にしなくちゃ。歌番組もレンジが狭いね。

司会 それ、歌詞がほとんど理解できない。聞こえても分らない現象がおこっています。つまり、言ってる言葉がわかんないんだよ。いちいち調べるわけにはいかない。おなじ日本語なのに翻訳機がひつようになったかな、変換してもどれが正しいのかもわかんない。帝国大学と打ったつもりが天国大学と出てきたから、やっぱりあるんだと思ったり。あとはあのポツンと軒家でしょうね。半分あこがれもあるから、みんな見ているけど、あこがれだけでは住めない、無理!ってことです。人の話だから付き合っていられる。電気ガス水道のありがたみが身に染みる番組ですね。

D 「ダーウィンが来た」が好きですね。孫相手に話ができるのがいい。ああいう風な番組で、ふだん自分の目では見られないような、動物の生態とか、植物とか。30分耐えられるんだと、なんか人間ができてきたと喜んでいます。歴史物もいいじゃないですか。でも似たようなものが多いね。

A やっぱりノンフィクションが なんとなく面白いかなって。でも編集の問題の方が多いんでね。番組を作る側のなんかある程度、意図があって、そういうふうな形に持っていこうという編集をされることもあるんで。あとドキュメンタリーとはいえ、最終的になんか作る人の考え方があって、どちらかというとそちらに寄せたいなとかっていうのは若干感じる時もあるけど。

司会 「世界のサブカルチャー史」シリーズだとか、「欲望の世紀」うんたらとか、入眠剤的にみますね。ところであの「お宝鑑定団」がどうして長寿番組になったんかね。長寿番組でおかしいのは、あの「笑点」ですよ。これもすごいね。

E 「笑点」でしょう、司会者で番組の深さが変わりますね。やる方も見ている方もマンネリで、マンネリって強いな。慣性の法則でお客さん笑ってんだって、最近気がつきました。

 ブラなんとかの番組は、「地学、地質学」の勉強になるけど、ひとつだけ嫌だったのはなんでそこまで知っているの。あの視座って結構不自然というか。根っからのファンならたまんなくしびれると思うけど、こっちは別の意味でしびれるね。それと、進行で、コンマ何秒かの時間の溜りがかったるいもんね。

 ところで、あの入試問題風の、喉に指突っこむような質問は不健康でしょう。もうちょっと、もうちょっとで魚の骨がとれますよ的な質問は最高(?)だわ。それに、芋飴のように伸びるじゃない、あの時間感覚がたまんなく痒いの。まじ教養を象徴する番組だったね。

 

A そうそう。だから、伝説のお笑いの権化が、テレビ界に残っていることがすごいのひと言でしょう。新陳代謝の枠外ってのが、本尊ぽっくってたまらないね。テレビ界への功労者ってイメージができている。TV局の幹部では歯が立たないのでしょう。

-このあと固有名詞を交えながら延々とテレビ番組論がつづきましたが、省略します。-

司会 ありがとうございました。「○○に愛があるのか」シリーズは機会を見ていずれということで、よろしくお願いいたします。(了)

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【講師】参加者は五十音順で伊藤、江目、佐藤、中堤、三井各氏。司会は加藤、事務局は平川。


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