研究会抄録

「政治と労働の接点-これからの政治参加の傾向と対策-」

講師:岡崎敏弘様、難波奨二様、オブ参加者様

場所:メロンディアあざみ野(横浜市青葉区)2025年10月17日14時から

【7月の参議院選挙を受けて、石破政権のあり方をめぐり与党とりわけ自民党が揺れ、結果的に石破総裁の退陣となり、昨年に続き二年連続の総裁選がおこなわれ、大方の予想をくつがえし高市氏が小泉氏を破り自民党総裁に選ばれた。10月4日のことであった。さて、多数派工作であるが、連立政権へむけてさまざまな情報が飛び交っていたが、10月10日の公明党政権離脱の表明は青天のへきれきであった。結果は日本維新の会の機敏な行動による自民・維新の連立政権樹立となるのであるが、後日衆参ともに少数による連立政権となった。このようなまさに大政局のさなかで座談会がおこなわれたが、考えてみれば二大政党による政権交代の流れが大いに細まり、多党による連立政権時代が到来したのか、先行きが極めて不透明な中での、政治と労働の接点-これからの労働組合の政治参加をテーマに3時間を超える白熱の議論になった。何とか年内に掲載できたのは出稿いただいた講師ならびに事務局のおかげであることをあらためて感謝する次第である。なお文中での敬称は略し、事務局によるかっこ書きも含め、文責が研究会にあることを記す。12月28日】
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加藤  本日はありがとうございます。案内のとおり研究会の座談会をつづけております。本日のテーマは、「政治と労働の接点」ということで、この研究会では長年のテーマとしていろいろな角度から議論をしてきました。

今(2025年10月17日)は、文章を書くたびに政治情勢が変化しており、今回も少数与党でいくのかなと思っていました。しかし、結果的には維新と自民党が連立を組むということになると思います。過半数の233議席には、あと3議席足りないが、おそらくいろいろと工夫をしてくると。11月21日の本会議で、どういう首班指名の結果になるのか、Aコース、Bコース色々考えられますが、いずれにしても、高市氏が首班(総理大臣)指名を受ける可能性が日々高まっているということです。

本日も午前中、電機連合本部で会長にお会いして、玉木代表と民間4産別が2日前に一体にどんな話をしたのかお聞きしました。基本的に4産別としては、政策を中心に、この何年間は国民民主党を支える民間産別としてやってきたので、椅子取りゲームみたいなことには、労働組合としてはあまり関心がないということでした。

多党連立時代における労働組合の政治参加には悩みもあり、賃金交渉自体も今では政権側が積極的で従来にない流れができている。そのため、政治に対しても職場レベルをふくめさまざまな動きが生じています。また、電機連合も今回の7月の参議院選挙で平戸さんが当選して3連敗を免れ、一段落ついた感じのようです。

 しかし、国会議員をだすことの意味についてはさまざまな議論をされたと思う。政治参加の仕方にはいろいろあるが、議員をだすということの重要性を踏まえて、これからどうあるべきかを今回のテーマの柱にしたいと思います。

そこで、職場の組合員、支部の役員、また本部役員の政治に対する対応や姿勢や考え方など、また選挙をどう捉えるかなどについて、また最近では組織の方針を受け入れる組合員の比率が下がっているといわれています。

電機連合や自治労などいくつかの産別(産業別労働組合)は国政選挙後に組合員の意識調査をやっている。対外発表はされていないが、たとえば電機連合は組合員58万人に対して1万人から2万人程度をサンプリングして、支持政党や直近の国政選挙でどこに投票したかとか、どういう理由で投票先を決めたかなどについて調査している。

最近では、各政党の支持率は一般の調査とそんなに変わらない。昔は、民主党が高いときは35%以上だった。それは民主党が一番いいときの話で、産別によって多少の違いがあると思う。

 民間労組はユニオンショップという社員すなわち組合員、組合員すなわち社員という労使関係が多い。難波さんの所属組織であったJP労組は統一以前は複数組合で新入組合員の獲得競争をするほどであったと聞いている。オープンショップとユニオンショップとで組合員の政治に対する受け止め方が違っているのか。オープンショップの職場では組合員が政治に対してどのように受け止めているのか。また30年前と意識が変わっているのかなどについて、どうでしょうか。

(この後につづく自己紹介は講師紹介欄に掲載しています)

オープンショップとユニオンショップなど協約上の違いはあるが相互理解が必要

難波  民間と官(公務)の溝の話が、連合が結成されてすでに30年以上経ったにもかかわらず、いまだそんな話がテーマになることがあります。私はお互いが理解する必要が非常にあると思っております。加藤さんの話でいえば、オープンショップとユニオンショップの労働組合は、それぞれ労働運動のベースがどうしても変わらざるを得ず、お互いが理解しなくてはならない。

 また、公務員の基本権問題については、加藤さんには民主党政権時代に歴史に残る作業をしていただきました。本当にワクワクするというか、これでようやく日本の労働運動が世界の中でも評価される、近代化というか世界基準にようやくたどり着くという期待感がありましたが、悲しいことに実現できませんでした。

国会でも述べたことですが、公務労働者に基本権をすべて与えると、行政サービスを含め大混乱を起こすのではないかと自民党は反対を主張しました。しかし、私はそうではないと考えます。私は過去に「官」でその後「民」になった。労働三権を与えられるということは、民間でいえば会社の経営であり、公務でいえば市民や県民に対するサービスに責任を持つことになるので、ストライキを勝手に打つようなことはありえません。私たちの仕事は市民の生活に大きな影響を及ぼすため、労働組合も責任を持って市当局や県当局と、教育現場を含めて緊張感ある対応が行われることになると述べていました。

おそらく民間の皆さんは、経済や雇用の問題が大変で、会社の経営一つで雇用がなくなる、職場がなくなるという厳しさを常に感じています。そうした点もお互いに理解しながら進める必要があります。連合が結成して30年を超えましたが、原点に戻って、各産別の置かれている環境が大きく変わってきました。グローバル化やあらゆる技術革新の状況の中で、日本がだんだん弱体化している。各企業は事業内容や方向性を大きく変えています。創業時の産業からはまったく違う分野にシフトしている企業がほとんどです。こうした企業の事業体としての変化を互いに理解し合う交流を行う必要があると私は考えています。もう一度原点に戻るという活動が改めて大事だと思います。

(注:「公務員制度改革法案」は、民主党政権下で2010年秋から文中の加藤を中心に党内とりまとめをすすめ、2011年6月3日に閣議決定された。しかし、法案そのものは、同年3月17日発生した東日本大震災への対応のため国会での審議にはいたらなかった。)

組合員の政治に対する意識の変化について

加藤  政治に対する意識が、組合員レベルで顕著に変化していることはありますか。

難波  JP労組も組合員の実態調査は継続して行っており、選挙後には必ず実施しています。立憲民主党の支持が高いのは事実ですが、一般の有権者とほぼ同じ動向が表れているという変化が生まれてきました。公務の場合は政治とは切り離せないし、政治に左右されることが多いので、公務の部隊は政治に敏感です。

加藤  国鉄や電電、専売の三公社と、郵政など五現業の民営化にともない、一貫して労働組合は苦労してきた。これらの事業の基本はかつて国会で決められてきたため、政治活動に力が入るのは当然のことといえる。また公務員などの賃金は人事院勧告で、おおむね民間準拠で決まる。一方、民間の労働組合では賃金闘争のウエイトは50%以上です。また、民間の賃上げは国際競争の影響を強く受けるが、反面、国内政治への関心はどうしても低くなる。

岡崎  かつては企業別労働組合から多くの議員が出ていましたが、今はほとんど出なくなり、地域の議員活動から組合が引いている形になっています。これを直さないと、組合=政治参加という構図では人数は増えないと思うがどうでしょうか。

加藤  企業城下町での例を挙げると、かつては企業単位の労働組合が県会議員や市会議員を多く抱えて地域を支えていました。顕著なところでいえば長崎では、大手の労組が県会などの地方議員を多い時で十数名抱えて、まさに地域を支えていた。しかし、現在では減少しています。2桁の議員を抱えるというのは並大抵のことではないわけで、似たようなことが全国規模で起きており、電機連合でいえば日立労組や松下(パナソニック)労組また他の多くの単組も、かつては多くの地方議員をだしていましたが、徐々に減少しています。

岡崎  減っている理由は、労働組合の中から人が出てこないことです。組合の中から出てこないために外部の人をオブザーバーで招く例が増えていますが、企業に残ったほうが将来を考えると有利であるため、候補者が不足し政治参加が減っていると私は見ています。

加藤  その通りだと思う。労働組合の政治参加が中心テーマだったが、人材にも焦点を当てて、立候補してもらえるのか、処遇できるのか、また選挙で当選させるための支援などについても議論をすすめたいと思います。組合員も議員になるために入社したわけではないのです。

昨日、中央労働事報の取材を受けた際に、「なぜ組合役員になったのか」が話題になりました。私の場合は当時の課長からエンジニアの仕事をするために入社したのだろうと言われながらも、組合専従になり、中央の労働運動を経験し、最終的に国会議員になりました。労働組合の役員になる人材を供給するシステムについて、取材の中ではいろいろと質問がありました。

組合役員になる人材の供給システムや人事のあり方には難しい課題があります。労働組合活動を担う人材は、期間限定で供給されており、その延長線上において地方議員を自前で出すことがほんとうに難しくなっています。役員になる組合員も減ってきています。

地方では議員のなり手が減少して、無投票当選が増えているが、労働組合からも候補者が出なくなっている

岡崎  全国の市町村、特に小さい地方議会では候補者がいない状況が増えており、無投票当選でよく分からない人が議員になり、問題を起こしたりしている。過去は組合や会社など、支援組織がしっかりした議員がたくさんいたので、議会運営も活性化されていたが、今は上手く回っていないということも悲しい現実です。

加藤  議会運営の不手際が実際に起きていると聞いています。また、組織内の地方議員が少なくなったので組合員も政治の話や地方議会を見学する機会が少なくなっている。そのような状況で参議院選挙に候補を出すから応援してくださいと言ってもなかなか協力が得られない。

岡崎  例えば、昔は組織内議員が組合事務所に常駐して、色々な問題を持ち寄っていた。それが今は出来ていないということでしょうか。

加藤  そうですね。地盤沈下が起こりだすと連鎖的に落ちていき、そして、それを盛り返していく手だてもなくなっていく感じですね。

地方議員には、処遇と家族の理解という二つの課題がある

難波  一つは地方議員の処遇や年金問題が影響しています。民間の場合は、活動などへの支援があると、聞いています。公務員の場合は支援がまったくできないため、年金しかない。

 また、公務員の身分を持って議員として生活するには岡山だと、県と岡山市と倉敷市しか1,000万円を超えない。それ以外の市町村はボランティアのようなもので会社に勤めていた方がよいという考えになる。

 郵政も民間になったので、県会議員までは会社に籍を残したまま立候補ができる(国会議員の場合は退職するしかない)。しかし、選挙運動ができない。選挙運動をやろうとすると年休でやるしかない。そのため、現実的に選挙で戦えない。

(注、民間企業では労働協約において、一般的に就業時間外での活動に限定していることが多く、それでは日常的な議員活動がまわらないので、休職扱いとするケースが多い。)

岡崎  議員の待遇でいえば、国会議員も同じで議員年金を廃止した。国会議員を退職後に食べられなくなる人が出てきている。企業に勤めていた人であれば、厚生年金がもらえるが、ポッと出でなった人が辞めると(十分な)年金がもらえない。議員宿舎も最初は低家賃だったが、今はきっちり取っている。考えてみると、国会に来るための居場所としての議員宿舎であり、本来は安くあるべき。しかし、マスコミに迎合して宿舎を普通の賃貸料金にしている。そのため、普通に暮らすだけでも二重、三重生活になっている。

国会議員の手取り額は意外に低く、月50〜60万円程度が平均です。公設秘書(第一、第二、政策)以外に私設秘書などを雇わないといけない。この金額で議員を続けられるかということ。

また、民主党時代に二世、三世議員はダメだという流れがあり、世襲議員が減ってきた関係でポッと出の議員が増えてきている。ポッと出の人は当選後に生活保障もないため、議員になっているときに何としてもお金を稼ごうとする人もいる。

難波  お金のために働いていたのかと、先輩に叱られたこともあった。しかし、志だけでは生活できず、現実というものがあるので、そこは難しいと思います。今の労働運動で組合員を鍛えようと思ったら、私は選挙しかないと思っている。会社の立場に立ってもリーダーや新しい人材を育成するためにも選挙は非常に有効な手段だと思っている。

加藤   実は昨日も同様の話をしてきた。私のケースでいうと、支部で職場活動をみっちりやってきた。その私が全民労協に派遣された。産別傘下の単組のそれも一支部の委員長が、中央共闘組織である全民労協の事務局次長にと要請された。その時に製作所(工場)の総務部長が反対した。で、私の人事上の扱いが議論になった。

 製作所の部長が労組本部の人事案に注文をつけるというのは普通はない。その時部長は、組合は人を出してハシゴを外す、出しっぱなしで面倒を見ない。しかし会社は採用した以上、先々も含めて活躍してもらいたいと考えている。組合は労連とかに出して、後のことは知らんふりをすると、そういったことを何回も見てきたので、部長としては反対だと主張された。最終的に会社に返すということを約束しないと了承できないとまで言われた。

 ということで、1996年には連合から企業別組合へ帰還した。連合時代は二重出向のようなもので、企業籍と組合員資格は変わらなかった。

 組織内議員の処遇については、労働組合として年金や退職金など、どこまで面倒が見られるのか、家族も含めて影響は計り知れない。当選後はそのまま職場と兼務的にというのも可能ではあるが、現実には専念しないと議員は務まらない。

 つまり、組織としてどこまで組織内議員の面倒をみられるのかという覚悟とそれだけのインフラを持っているのかが問われている。何とかやってこられたのは大げさではあるが奇跡的であって、一つ間違うと不本意な人生になるリスクもあった。もっとも自己責任の面もあるが。

 ということで55歳で当選してすぐに退職し、厚生年金・組合健保から国民年金・国保に切り替わったが、55歳までの積み重ねがあったので何とかやっていける。それでも同期に比べると国民年金に切り替わっているので、年金額はかなり少ない。もちろんその分国会議員としての歳費をもらっていたからいいじゃないかということです。

 先ほど岡崎さんが言われたように、周りが見ているものと実態とは違うということは確かにあると思う。

 平戸さんは衆院選にて公募から立候補された志の高い人であった。もし平戸さんがいなかったら、どうなっていたのかと思う。もちろん報酬だけではなく、家族が選挙に出ることに賛成できますか、という問題が大きいと思います。

岡崎  今、まともな会社に勤めている人で、家族が選挙に(出ることに)賛成する人は、ほぼいないですよね。プライバシーもすべてオープンになってしまいますから、大企業に勤めていて議員になると踏ん切りをつける人は少ないですよね。

難波  若い人が政治に参加することも重要ですが、政治に踏み出しにくい実状があるため、現実的な対処方法としては、60歳以上の組合員が地方議会に参加していくのが解の一つだと思う。60歳であれば年金や退職金も一定の保障が確立しているので、60歳以降まだまだお元気ですから、社会貢献や地域貢献を目的に地方議会で活躍していただくことも労働組合としてチャレンジしたら私は良いと思う。

岡崎  だけど、活性化しないという課題はある。

渡邊  9月8日の広報発表を受け、現在、当社のネクストステージ支援制度がニュースなどでも話題になっている。将来のキャリアやセカンドライフについて、自分自身で深く考えることの重要性が増すなか、政治活動も選択肢の一つに入ってもおかしくないと考える。50歳や50歳台半ばの年齢層は、子育ても卒業し、趣味、社会貢献活動などに没頭する時間や余力がうまれる人もいると思われる。長年住みついた地域に貢献したい、住民の困りごとに寄り添いたいなどの思いを持つ人、すなわち議員の候補は探せば身近にいるのではないかと思う。

岡崎  議員を作るというと、昔は青年婦人協議会の活動が中心になっていた。その活動の中で若手のリーダーが生まれて、そこから議員になった人が何人かいた。最近は青年婦人協議会の活動も少なくなってきているのではないか。

渡邊  労働組合の若手向けも活発にしているが、交流行事など横のつながりが中心になっている。緑化活動やボランティア活動も若干あるが、会社に入った理由は何かと問われると技術や金銭面であり、いきなり政治家になってくれというのは、よほどの説明がないと踏切りがつかないと考える。

加藤  地方議会について、10年も経つともう半分ぐらいは無投票当選になると思う。人口構成から言っても人口減少、少子高齢化で地方議会を構成することは難しい。そのため、労働組合で経験を積み、組織運営の考え方あるいは予算管理や理路整然と要求を出せる人材を地方議会に出すことは有意義だと思う。そういう理屈で、労働組合はこれまで組織内議員を擁立してきた。

 しかし、現在は議員になる人がいない。無投票当選になっても出ない。やはり家庭を維持できるだけの処遇も重要だと思う。例えば政令指定都市の議会は問題ないが、隣の町になると、地方自治として議会が成立しないケースもでてくると思われる。

 人口減少の中で民主政治をどうやって維持させるのかという大きな課題がある。

岡崎  議員がいない地域ほど政治ニーズは高い。高齢化して街にも出ていけないお年寄りが多いけど、街は何もやってくれない。そういった市町村こそ政治に対するニーズは高いはずなのに、そういった市町村こそ議員が集まらないという悪循環が起きています。

オブ参加者  電機連合時代にさんざん議論してきた内容と同じです。電機連合も議員を増やす方針を立てたが全然増えなかった。その当時に比べて今がどうなっているかというと、さらに悪化している。

加藤  どうやれば議員を増やせるのか。これは電機連合だけではなくすべての産別が同じ課題を抱えている。日本の少子化による影響の一つです。報酬と自己実現と社会貢献などとの折り合いがつく人がどれだけいるのか。ただ、なりたいだけの人が無投票で当選していいのかという問題も出てくる。

 労働組合では、人材の適性を考慮しながら、議論の整理や政策に対するスタンスなども訓練された人が候補として挙がってくる。しかし、そのようなバックグラウンドを持たず知名度や肩書だけで当選した議員には当たりハズレがあると思われる。そのため、比例において政党が順位を指定することも合理的だが、順位をどうやって決めるのかという課題がある。

岡崎  議員になりたい人は同じ履歴書を持って各党へアピールしている。大きな使命感もなく、ただ議員になりたい人もいっぱいいるので、そういった人はどこかの党に拾ってもらえればラッキーという状態である。しかし、それではいい政党は出来ない。いい政党は基本理念をきちんと理解した人の集まりでなければならない。

 そのため、どこの党同士が連立を組んだとしても中身が変わらない。私は2回与党になったことがあり、1回目は細川政権で8会派あった。この時は一つのことも決められなかった。何から何まで党に持ち帰って議論するということで、この政権では政治はできないとみんなが感じた。2回目の民主党は1党であれだけ力があったのにできなかったのはなぜなのか。

加藤  議員として送り出す、人材供給システムが確立していない。民主政治の根幹である議員一人ひとりの質にかかわるインフラに不備がある。公募した人が選挙で通ったら議員になって、国の意思決定に参画する。事前のテストもなく議員になる。この国の命運を担う人材が、そういうラフな仕組みで選ばれている。

 政党法を作る議論の中に、議員を出すときの政党の責任を明確にしなければ、今起きている政治への不信感がなくならないのではないか、というのもあった。しかし、しっかりした体制を実現するためには500億円でも足りないかもしれない。ただ、このような体制があってはじめて影の内閣が機能する。労働組合、地方議員、国会議員それぞれの人材の供給源をどこに求めるのかが共通の課題だと思う。

人口規模に応じて議員数を減らして、処遇をあげるというのは?

藤田  人材の供給という観点では、小学校など義務教育から政治教育が必要だと感じる。また、人口が減少しており、市区町村の人口規模に応じて議員の人数を減らして処遇を上げるという選択肢もあると思いました。

加藤  そういう議論には一定の説得力があると思う。現在、国会議員一人にトータルで3億円かかるとして、国会議員の総数が700人強、その人数を半分にできるのか、日本維新の会がいう身を切る改革ができるのかということですね。

 現状として、要求の多様化や多党化が進んできている。今は人口40万人で一小選挙区という計算になっているが、50万人以上で1人とか、政令指定都市規模にするのか。また比例では定数176を88にすれば半分になりますよね。ただ、そうすると民意をすくいあげる機能が弱くなる。国民一人ひとりが不便を感じる、政治は実態を理解してくれないという声がある中で議員を減らすのは、複雑なものがある。

(注:小選挙区は定数1なので、どうしても死票が多くなり、対抗政党の議員不在区が増えるが、比例区がそれを多少なりともカバーしているのが現状といえる。したがって比例区を減員すれば民意を漏逸することになる。)

岡崎  昔は、もっと議員数が多かった。その当時は問題に対して、多数の意見が出た。2、3日徹夜して議論したことも何回もあった。それが今は議員が少なくなって、議論も少なくなってきた。組合の組織内議員は、組合員を代表して相当突っこんだ発言をしてくれた。しかし、今は組織を代表していない人が議員になっているから、発言もなく静かである。そうすると議論が進まない。議員数を減らすことは反対だが、それに見合う議員を出さなければならないとも思う。最近は時間も限られているので、議論する時間も短い。昔は夜中の2時でも3時でも4時でも5時でも、議員も真剣に議論していた。そこが最近本当に変わったと思う。議員を減らしたら、もっと議論が減ってしまう。国会は議論するところであるべき。

加藤  TV番組を見て、議員を減らした方がよいのではないかという思い込みがあると思う。しかし、それは立証されていない。国会議員を減らした時に、知見と気迫と気概をもった人を十分揃えられるのか。私が議員をやっていた時の公設秘書は5本の指に入るぐらい優秀で、まあスタッフには恵まれたといえる。やはり、人材が課題ではある。

 また、国会に組合員がよく見学に来てくれていた。事務所としてもやる気があり、持ちこまれるアイデアや質問も質が高かったと思う。そういう意味でいえば、労働組合がやはりもう少し気合を入れて議員を出してほしいというのが、長年やってきた感想です。

参議院は衆議院の二分の一の人数だが、委員会は同数、どうやって回しているのか

オブ参加者  維新の身を切る改革は、自分の身じゃなくて、人の身を切る改革。大阪はみんな当選するから維新の議員数は減らない。

 ひとつ伺いたいのですが、衆議院(465人)と参議院(248人)で定数が異なっている。しかし、常任委員会の数は変わらない。参議院は少ない人数でどうやって回しているのでしょうか。

岡崎  参議院の常任委員会は大変です。人数が少ないにもかかわらず、参議院は委員会の掛け持ちができない。そのため、一番小さい委員会では10人程度しか議員がいない。10人で審議して、採決して法案とおすというのは大変で、これ以上議員数が減ったら委員会が構成できず、個別の審議ができなくなってしまう。それで例えば厚生委員会と労働委員会が合併したが、審議事項が多すぎて委員会が回らない。

 議員を減らすのは構わないが、それに伴って充実した議論ができなくなるので、国民の意見が軽くなる、国民の声が届かなくなってしまう。そのため、議員を減らすのは相当に難しい。

加藤  たとえば、この先提案されるスパイ活動防止法案(仮称)について、質問をしていくというのはすごく力がいる。すでにある法案についての議論は比較的容易だが、なかったことを新しく、こういう理由で規制をしますと、こういう法律は基本的に国民の自由を奪います。場合によると刑務所にというリスクを国民に求めるという法律の際は、そこまで質問するのかというぐらい細かく確認する。またバックアップする議院の法制局は、関連する法案との相互関係をけっこう精査する。これだけでも大仕事ですよね。小さな法律ならともかく、二十、三十もの構成要素を持つ法律であれば、関連する法律だけで百ぐらいあり、それを一つずつ潰していく。

法案については国会が責任を持たなければならない。国会では賛成、反対にかかわらず、その時に国会に属した議員が成立した法律に対して道義的責任を持つ。後日、それが違った適用をされた場合や、評価が悪かった場合も含めて。そのぐらいの気持ちが要ると思う。たとえば立憲のベテラン議員は緻密な質問をすることで知られています。与党の方はまだ質問するかとうんざり顔をしていましたが。

国会が責任をもって法案を通すためには、逐条審議をしていく必要があるが、今はあまり逐条審議ができていないと思う。私は大局的だとか、大綱的だとか、あるいはバックグラウンドの解釈とか、大きな話についてよく質問しましたが、それも大事ですが、細部も同様に大切なのです。

議員定数の削減と一票の格差問題の関係、さらに参議院の合区問題

難波  一票の格差というのは悩ましい。国民の有する権利である投票の価値が住んでいるところで違うということは、やはり問題がありますよね。いまは最高裁も認めてくれているが、衆議院は2倍以内、参議院は3倍以内が許容の範囲で、定数の削減をおこなえばこれからどんどん格差が広がっていく。首都圏に人口が集中しているわけだから、どんどん格差が広がり、また定数をいじると地方出身の議員がいなくなってしまう。

岡崎  今、調べていたら、JRの13路線が災害などで不通になっている。さらに国交省に聞いたら規模の大小はあるが、埼玉県八潮市での道路陥没に似たものが、令和4年で国道では127件、都道府県道では1,362件、市町村道では9,059件発生している。この陥没が起きているのは地方が多い。しかし、陥没などで事故が起きた時でも、地域を代表する国会議員がいないところは山のようにある。人口集中で国会議員が都市中心になっていくのであれば、憲法改正も考えないといけない。

加藤  憲法で、行政区分を代表する者に参議院の代表性を付与する、例えばある県の人口が30万人になっても、その県を代表する参議院議員を一人出す。これはアメリカの上院と同じ考え方ですね。アメリカはユナイテッドだが、日本は1国だから人口が少ないならしょうがないという割り切りを今はしている。しかし、それでそこに住んでいる人たちはいいのか。ダメならダメだとはっきり言うべきだと思う。でなければ動かない。しかし、ダメというところの議員がすでに少なくなっている。東京は1都で参議院議員が12名いる。徳島と高知は合区で、2県で2人の参議院議員しかいない。

岡崎  世田谷区は衆議院の選挙区が2つある。一方で区会議員は一区全部ですよね。そのため、国会議員よりも区議会議員の方が受けもっている面積が広い。国会議員がいくらえらそうなことをいっても地域の半分しか持っていない。それほど小さくなっている。一方で、高知と徳島は2県あって1人。

オブ参加者  連合は合区解消に向けた勉強会を議員と識者で一年かけて議論し、憲法改正をせずとも合区は解消できるという考え方をまとめて、各党各会派に要請し、一応自民党も党として受けてくれた。憲法改正せずにというのは、まず参議院と衆議院を分けて考えた。参議院について、日本において都道府県という単位は政治的にも重要であり、参議院に地方の事情に精通した全国民の代表としての活動など、二院制のもとでの独自の役割を定めることによって解消できるとの見解である。

岡崎  参議院でも検討したが、通せるかどうかは微妙である。また、小さな政党は絶対に反対する。実際のところ自民党の議員しか当選しなくなってしまうので、自民党しか賛成しない。議席数だけを考えて、国のことまで考えられていない。

オブ参加者  連合の中でも自民党の議員しか当選しないからと反対した産別もある。ただ、それは国のことを考えていれば、1都道府県に1人出さないといけないと思う。合区というのは、そもそも合理的な考え方ではない。たまたま人口が少ない4つの県が徳島と高知であり、鳥取と島根と隣り合う県でしたが、ではその次に少ない県はどこなのと言ったら和歌山、佐賀、山梨、福井と隣同士ではない県になってくる。では、隣の人口が多い県と合区を組めばよいかと言えば、人口が多い県は合区にする必要性がないため、合区はそもそもこの先成り立たない。

加藤  合区の選挙区に行くのに隣の県を素通りして何十キロと選挙カーを走らせるのは現実的ではないよねという話になった。この国会議員の数っていうのは、これだけで博士論文10本はできるね。それぐらい議論すべきことはいっぱいある。

ときどき一院制か二院制かという話が降ってくるが

難波  衆議院と参議院の二院制を一院制にしようという議論もあり。私は二院制維持派ですが、参議院の役割を見直して民主性を維持する、民主主義を高めることはありだと思う。

加藤  昨日の中央労働時報との打合せでも同様の話題が出て、今の日本の二院制と任期について、海外の政治研究者からは、非効率ではないかという意見があるらしい。海外の研究者の大半は、日本は一院制にすべきだと言っていると。

参議院は、貴族院を廃止するときに、一院制では途上国じゃないかという意見もあって、参議院として残した歴史がある。しかし、欧米の多くの研究者は、参議院があることで決められない政治になっていると指摘していると聞く。その代わり一院制にするのであれば、600人ぐらいの議員定数が必要だと思う。

岡崎  参議院が最初にできたときに、一番強かったのは緑風会ですね。会派、政党に属さない人たちが参議院だけで緑風会を作って、その人たちが政権に参加した。だから、自由にものを言って政権を動かしていた。それが参議院の最初の伝統だと思いますが、今は政党に所属している議員ばかりで、意味がなくなっているのかもしれない。

加藤  参議院の6年という任期も問題指摘が多い。一回ひっくり返ると戻すのに最大6年かかる。その間、当選したときの民意で6年間活動し続ける。1989年7月の民間連合時代に「連合の会」があった。残念ながら3年も経たないうちに注目されなくなったという感じ。

岡崎  正直、国会の中から見ていても面倒くさかった。組合出身でもない推薦された個別の王様ばかりが出てきて、労働組合の言葉もつながらなかった。連合という名前はついていたが、バックに組合がついておらず、組合の代表でもない。

労働組合の政党支持は立憲、国民、共産の3党に分かれているが

加藤  任期が6年というのは長いが、かといって4年というのもどうかと思う。

 お聞きしたいのは、連合は民間産別が国民民主党、それから官公系、旧総評系、旧社会党系は立憲民主党、さらに労働界でいえば全労連は共産党という、いわゆる労働組合の政治との関わりということでいくと、大きく3つに分かれている。

 大きな塊を作るということがこの間に言われてきて、本日は2020年9月に合流した経緯、その前の2017年に前原さんが民進党の代表の時に選挙が苦しいから小池百合子氏の希望の党へ合流すると決めた経緯、その時は民進党の参議院はとりあえず状況を見守ろうということを決めたが、実はそうはならなかった。一つは小池百合子氏が、排除すると言ってしまったこともあった。

2017年の衆議院選挙は、結果的に枝野さんの立憲民主党が55議席を獲得した。希望の党は50議席だった。野党第一党を枝野さんの立憲が取り、その流れの中で、民進党参議院からも立憲民主党にぞくぞくと流れていった。支援者からは地盤が崩れるような現象に見えたと思う。ここの経緯をくわしく解明しないと、一つの塊は少なくとも参議院ではハードルが高い思う。

私はその時点では議員を勇退していたが、参議院は全員固まって、衆議院がどう展開しようとも一つの塊で対応する。衆議院は衆議院として、参議院は参議院として一体で対応するべきである。その背景には連合があるので、そういう体制が保てていれば、参議院を介して衆議院が連携していく形もありえたと思っていた。

しかし実態は参議院も同じように割れてしまった。

 現在、連合系は一つにはならないのか、連携できないのかということが議論されているが、ベースにある歴史的な経緯と、ユニオンショップをベースにする労働運動とオープンショップをベースにする労働運動の違いもあるのかもしれない。エネルギーをかけて一つにすることが合理的なのか。もう一つは、支援する党が二つあることを理解して、そこは決して喧嘩はしない。お互いに助け合うこともやれるのではないかという意味で、政党間共闘という新しい政党関係が可能なのか。

 組合員の気持ちを言えば、応援していることもあるので揉めるのは辛い。今でもOBOGの方からは、なぜひとつになれないのかと問われる。しかし、現実は1+1が2以下になる感じで。

 今回、残念ながら私鉄総連、過去には電機連合の候補も落選したことがあった。比例得票数では立憲民主党、国民民主党はそれぞれほぼ740万と760万で、合わせて1500万票であり、確かに自民党のそれよりも多いが、一緒になった時に1500万票以上獲得できるのかということを含めて、しっかり分析をしないと期待論だけで話を進めるととんでもないことになるかもしれない。職場からみてどう思いますか。

職場の組合員にすればよく分からないというのが本音ではないか

渡邊  結局、何の媒体を信じたらいいのか分からない。メディアやSNS、媒体もいろいろある。政党運営に直接かかわっている関係者の話を直接聞ける立場であれば、情勢を正しく職場の組合員に伝えられると思うが、常日頃、最新情報を手元に持って組合員と接しているわけではない。連合傘下の立場、電機連合傘下の立場、過去の歴史なども正しく知る必要もある。連合と関係性が深い二つの政党の、とくに国民民主党の勢いが増してきたからこそ、過去の立ち位置、いまの立ち位置などをていねいに組合員に説明していかないと、理解は得られにくいと思っている。

岡崎  国民民主党と立憲民主党の今の幹部だけを見ると、一緒である。過去に一緒にやっていた間柄でもあり、しかし幹部はみな組合出身者ではない。枝野さん、安住さん、玉木さん、榛葉さん皆さん組合出身者ではない。他党も、参政党も日本維新の会もみんな幹部は組合と関係ない人たちである。

今回、参政党や国民民主党に大きく票が流れたのは、結局自民党に対する批判票がどこに行くかという話だけである。それが立憲民主だと民主党のイメージもあって、左に行き過ぎている。左に流れていないということで、国民民主党と参政党に票が流れたというのがマスコミの分析である。

もっと自民党の批判票が集まる組織があればよいと思う。私は連合の議員がまず一塊になって、その周りにオブザーバーの議員が入る組織になれば、誰からも信用される新党ができて、票の分散がなくなると思う。

今はどちらの党をとっても代表する人がいない。そのため、まずは組合から本当に政党を背負って立てるような人を議員として送り、一つの政党をやっていけば流れは変わる。逆にそれぐらいの気概を入れないと変わらない。

今のままであれば、立憲と国民には絶対くっつかない。

連合が主張する「大きな塊」の実現性は

加藤  絶対にくっつかないということについて、感想はどうですか。

難波  それは一つの事実ではあるけど、理想は追い求める必要もあり、環境を整える努力をいろんな人たちが役割を果たさないといけない。

加藤   ただ、ご指摘の幹部にかぎらず、なんかそういう気分にはないように見える。議員になった時に先輩議員から「連合、連合とあまりいうと嫌われるよ」という一言があった。

それは先輩議員の経験則だと思う。そういう雰囲気があったことは事実だと感じている。連合がリーダーシップを発揮すれば嫌われるということかな。しかし、連合の組合員が手弁当で運転する街宣車にのって走っているのも事実で、みんな世話になっている。人間には、世話になった人は気にしないという癖があるのかしら。

難波  前段でも話があったが、連合のトップも(選挙で)勝てるかどうか、議席が取れるかどうか、そこに頭がいく。立憲から出て参議院比例で何議席取れるか、立憲と国民が一緒になるより分かれていた方が、多くの議席を獲得できるのではないかと連合トップが考えていると思う。1+1が2になるような組織を作るエネルギーよりも、組織内議員を通すためにはどの方策が一番良いのかと考えていると思う。

加藤  いきなりのストレートですね。結局、芳野連合会長が言っていることと、産別のトップが差配している内容に矛盾があるということかしら。言っていることと、内心は違うのではないかとか。

 しかし、それを私が言っても世の中が良くなるわけでもない。むしろ現実として、先ほど言ったように二つあることをとりあえず認めた上で、本当にこの国に貢献するということは何であろうかということを、連合の中の産別がそれぞれ本気で話をしてほしい。しかし、私の経験で言えば、その議論こそが連合結成以来できていないというか。表向きは連合として一つになったらいいというが、実際は個別の選挙優先という実態になっている。

労働者ベースの議員でひとつにまとまっていくという大きな建前があるが、現実は産別の判断を尊重するということで、その判断に対して連合があれこれと言う構造にはなっていないようだ。

また二つの政党とも、労働運動がわかっていないのではないかという声を聞くことがある。幹部の多くが労働を中心に置いた価値体系をもっているのかといえば、ちょっと違うと思う。それぞれ国民政党をめざすという意味では、有権者の中で労働者は部分集合でしかない。というよりも労働運動が下に見られているのではないかとさえ思う時もあった。さらに労働運動の実態あるいは内実をどれだけ理解しているのかな、とも思う。

労働者の政党、労働党を作ったらどうかという声もあった。本当に労働者の代表だと言うのであれば、本気で労働者の立場にたって、立法作業をしたことがあるのかと。しかし、5千万人を超える雇用労働者自体が労働者という認識が薄いわけだから、政党のほうもそこは足元を見ていると思う。連合自体も労働党を作る覚悟があるのか、それぐらい腹を決めないと労働組合が政治に関わる意義が薄れるのではないか。と強くいっても、時代を戻すことはできないし、、。

結局、労働者政党は難しいのか

難波  700万連合で、議員を10人を通そうと思ったら(参院比例で)1100万票がいる。ただ、正直そんなに難しい数字とは思わない。しかし、今回の参議院選挙において700万連合のうち、組織内議員の票が130万票ぐらいしかない。これでは迫力がない。労働党を目指すエネルギーが湧いてこない。しかし、それに納得してしまうと労働組合が政治活動をする意味があるのかという問いになる。

加藤  問題を避けても現実問題として、組合員は直感的にそれを感じとっている。一方で、130万票で9議席獲得して、効率がいいなと。ただ、昔の全国区の時はひとつの産別で100万票ぐらい獲得していた。それに比べたら9万票台から20万票ぐらいで、見方によれば効率いいなという声もある。次の選挙では110万、その次は90万票と静かに票を落としていくような感じで、組合員もそう感じているのではないか。

岡崎  時代が違うのかもしれませんが、会社の中での横の付き合いが減ってきている。昔は付き合いがすごく多かったから、隣や斜めの人のことも良く知っていた。しかし、今は全然知らないという。そうすると、組合で一つ集まっても、まとまって何かをやろうとはならないですよね。

加藤  そういう組織の実相でしょうね。過去の青年婦人活動は運動のエネルギー源というか、モーターだと言っていたのは、表現も含めて、やっぱりそういう時代だったということでしょうね。

岡崎  そして賃金闘争と政治闘争をみんなで一緒にやって、例えば青年婦人協議会で一緒に仕事した人たちが結婚することも多かった。いろんな意味でみんな近かった。

コストカット配当重視の株価経営に対抗するには、ストライキの旗が必要ではないか

加藤  私はストライキを、企業のためにもやるべきだと思っている。今の経営陣にとって、労働組合は脅威ではない。反抗はしないし、苦しい労働にも耐えてくれる。そういう意味で非常に安定している。そのため、外資が威張ってくる。もの言う株主としてどんどん介入してきて、最後はコストカットをしなさい、配当を増やしなさいという。この傾向は国民経済にはマイナスであったと考えている。

 しかも、労働分配とは一言も言わない。そういった偏った経営に対しては、ストライキを前提にして、経営会議で労務担当がきちんと賃金上げないとダメです、スト決行になりますと、役員会で外資系役員相手にビシバシやって怖いことがあるんだぞ、お前達責任取れるのかということを言わないといけないと思う。

 やはり、労使関係が会社の経営を普通にしていく。今は労働分配率がどんどん下がり、当然のように配当性向が上がっている、要するに株価中心の経営になっている。これではまともな経営とはいえません。労働者が貧しくなります。

オブ参加者  私はストライキ経験者です。出身単組はこの10年でも争議行動を何度かやっている。そういう意味でいうと私の出身企業では経営陣が労働組合を怖い存在と感じている。

加藤  電機の統一ストライキというのは、私が職場委員、執行委員時代には、ほぼ毎年やっていました。特にストライキに入らなくても、時間外拒否、休日出勤拒否っていうのが、これが一番効く。会社にとって辛いのは2週間以上、時間外労働拒否と休日出勤拒否が続くことです。会社は2日ぐらいならストライキを打たれてもなんとか生産回復はできる。しかし、時間外拒否と休日出勤拒否は経営的には意外と厳しいといえる。

怖がられないと、社会はまともにならない。やはり舐められてはいけません。最近の経営は本質的に労働者を舐めていると思う。また、80%が組織化されていないからストライキすらできないというのでは社会的な影響力を失う、という意見もあるようです。では、時間もきましたので締めたいと思います。

------------------------------ 以降、余談 ---------------------------------

オブ参加者   統一地方選挙は4月にあり、春闘は3月に終わる。20年前ぐらいの当時の結果を見ると春闘の結果がいいと組織内議員の得票数は増える。

難波  今回の参議院選挙について不思議に思う。賃金については大幅に上がっている。物価上昇率と逆転しているということはあるが、それでもかなり上がっている。普通であれば組合の求心力が高まって票がもっと取れても良かった。なぜ、今回票が取れなかったのか。すべてのどの産別もおしなべてそうなっている。

岡崎  それは賃金を上げたのが与党(政府)だから。

難波  組合員はよく見ているし、すべての産別も票が下がったという結果になったことは、連合全体で総括した方がいいと思う。

岡崎  マスコミの某社が選挙後にアトランダムに調査した際、千人以上1万人以上の大企業、おそらく連合加盟組織の組合員がどこに入れたかっていうと一番は参政党です。大企業は全部だいたい参政党が一番、社員数が小さくなるといろんな政党に分かれてくる。大企業の大きければ大きい組織ほど参政党というのは面白いデータだなと。

加藤  それは各産別で総括すると思います。私は組合員の中で少なくとも2割は参政党に入れていると思う。それはなんとなく分かる。

岡崎  私はびっくりした。会社や組合の支持政党として国民民主や立憲民主と回答した人が、どこに投票したかというと一番多いのが、やはり参政党。

加藤  立憲もそうだと思う。公務員、自治労のデータを見たら分かると思うが。

岡崎  それで国民民主が票を伸ばした最大の理由はそこの層もあるんだけど、立憲と自民から票が流れてきている。

加藤  過去は、支持政党以外へ投票する、いわゆるスイッチングがなかなか起きにくかった。しかし、今回最低500万票はスイッチしていると思う。支持政党と投票先政党が一時的に異なっているということかな。支持政党を変えるというのは、投票者にとってはひとつのチャレンジである。

岡崎  確かにそれもあると思うが、解説の方がいうには、政党の違いがわからない。参政党がどういう政党かわからない。その違いが出ているのが共産党と公明党である。ここは何もブレない、支持者の80%から90%が全部そのまま入っている。

加藤  有権者でわざわざ投票所に足を運ぶ人は、その人なりに理屈を持って投票していると思う。その理屈がどうなのかを解明しないと、今の(調査の)やり方では解明できないと思う。もう少し工夫して、今言ったスイッチングがどうなっているのかも踏まえて、連合としてどういうバランス効果を狙うのかを考えてもらうのがいいと思う。

ところで、21日の首班指名が近づいていますが、連立政権の経緯はどうだったのか、何か情報がありますか。

岡崎  高市さんが当選して一番先に玉木さんに会いました。玉木さんに会ったということは、高市さんは公明プラス国民民主を想定していた。その時に玉木さんの方からきっと総理なら受けるという話をしたと思います。高市さんは総理を譲る気はなかったので、公明と維新との連立の話が出てきたと思います。

いろんなマスコミの裏情報を含めて聞いてみると、高市さんは最初からほぼ人事を確定していますから、そこで玉木さんに割り込まれると全部狂ってしまうし、自分の立場もなくなってしまうので、方向転換をしたんじゃないかというのが裏の見方です。

加藤  今日は10月17日ですので、いずれくわしい情報がでてくるということですね。ありがとうございました。

2025年10月17日午後5時終了(文責研究会) 

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【講師】岡崎敏弘様、難波奨二様、オブ参加者様

自己紹介
岡崎敏弘さん
私は昭和の54年に民社党に入りました。最初は機関紙局というところにいたのですが、一年で組織局に動かされて、その一年後に国会対策委員会に動かされて、そのまま国会対策委員会の仕事は最後までずっとやることになりました。その間に党としての事務局長を3回、参議院の事務局長は、30年近く続けました。
国会議員、加藤先生、難波先生をはじめ、国対委員長の下で30年間仕えましたので、いろんな先生とのお付き合いもありましたし、国会議員の数でいけば、自民党も含めて500人ぐらいの方とお付き合いがありました。
いろんな経験をしてきたので、政治は今回の政治を見ていても、そんなにテレビのいうような綺麗なことではなくて、裏を見るとそうではないなっていうのはすごく感じました。

難波奨二さん
難波です。どうぞよろしくお願いします。私は岡山県の中山間地にある美星町で生まれました。今は合併して井原市美星町になりましたが、字のごとく美しい星の町で天文台もあります。今の時代は光害条例という光が空に漏れないように傘をかけて夜空を守る町です。標高は400メーターぐらいあり、本当に岡山県の中でも暮らしにくい便利が悪い、私の集落はもう6件しかありませんでした。上水道が来たのも私が高校を卒業して、五年ぐらい後でしたので、私はずっと山の湧き水を飲んで大きくなったような人間なんですよ。
父親を小学校六年生の時に亡くしたので、以降は三反ぐらいのわずかな土地でしたが、稲を作ったり、米を作ったりしてきました。
そういう話をすると、だいたい私の人となり、わかっていただけると思いますが、不条理が許せないんですよね。社会の矛盾が許せない。レールに乗ったらもうレールに乗りっぱなしで、一度レールから外れるともう復活ができないような社会がもう絶対認められない。生まれ育った環境で、その子供たちの人生が変わるような社会じゃなくて、みんなが夢を持って希望を持ち、助けを求め合いながら、生きていく社会を作っていきたい。
 高校を卒業して、すぐ郵便局に就職して、労働運動にも没頭しました。政治闘争ももう18歳から没頭いたしまして、そういう意味では選挙大好き、労働運動大好き。まあ、そういう人間でございます。その後、自ら出て議員になりました。
もう少し話をさせていただくと、私に近い方が今はもう連合の役割が終わったんじゃないかと言われるんですね。私は全逓という組織に所属していました。労働戦線の統一は、私の先輩である宝樹文彦が最初に労働戦線は統一するべきだと打ち上げました。当時は全く歯牙にもかけていただけない。そこからスタートして、連合が結成した時の喜びや細川連立政権ができた時の感動は、鳥肌が立ったような思い出があるわけで、私はやっぱり分裂というのは、決して組合にとってもまた利用者の皆さんにとってもベターな話じゃなくて、働く者が同じ思いを持って、職場や、あるいは社会を変革していこうというエネルギーは、これからもどのような社会環境や経済環境になったとしても、労働運動の大きな役割とそんな思いがしております。

研究会事務局長
中堤康方
中堤です。よろしくお願いします。三菱電機に計算機の開発設計で入社して、その後に縁があって組合に入り、組合を少し長くやらせていただきました。
 直近の会社の仕事でいえば懇話会といって、労働組合のない関連会社で懇話会という組織を作って、春闘の情報や労使関係をいろいろ会社のスタッフと緩やかに意見交換していました。それが最後の仕事で十年間近くやりましたが、良かったですね。労働組合の中でまとめる組織もあるが、会社の方で関係会社含めて、春闘や研修をまとめる事務局がある。人事部の部門の下で組合と違う視点で、十年間対応してきました。

研究会事務局
渡邊佳正
渡邊でございます。よろしくお願いします。実は労働運動に参加したのは最近であり2020年まさにコロナ禍の時からとなります。兵庫県尼崎市に三菱電機の研究所がありますが、その研究所地区、三菱電機労働組合西部研究所支部にて副委員長、委員長を務め、2024年8月より本部の役員となりました。中央執行委員を経験せずに、中央の副委員長となった。歴代含め、それ相応の役員経験を経たうえで、本部三役を務めるケースが多いなか、私の経験値は浅い。現体制の三役から学べるところは積極的に学んでいきたいと考えている。特に、支部から本部の役員となった一つの思いとしては、組織力強化への思いがある。本部からの交付金に基づき支部は活動する。支部で予算編成を行い、計画を実行する。支部に裁量が与えられており、色々なチャレンジもできたことが、支部役員としてのやりがいであった。一方で、支部ごとで予算配分や活動計画も異なることから、支部間での横通しや連携が意外と難しいことも経験した。支部や分会ごとに組合役員はいるものの、けっして人数が多いわけではない。単組の組織力をさらに高めたい、情報共有を活性化させたいとの思いで、本部にきた。過去の歴史を重んじつつ、三役の一員として、新たな取り組みも推進していきたい。
なお、組合役員になる前の会社生活では、三菱電機の製品群、例えば、FAシステム、社会インフラシステムの製品に搭載されるセンサーの技術開発や研究に従事していた。入社10年目の節目で、広島県福山市にある製作所に異動となり、研究所で生まれた要素技術をいかに製品や事業にするのかなど、企画職も経験した。その後、再び研究所に戻り、2020年4月から2022年8月までは研究開発の取りまとめ役なども担っていた。

藤田悦康
藤田です。私は今から九年前に福岡で非専従役員を2期4年経験し、一度会社に戻った後、去年の8月から本部へ来ました。本部では社会活動を担当しており、先の参議院議員選挙では平戸さんの当選に向けて活動をしてきました。当選を果たせたものの、個人票が減っており、現在要因を分析しています。今回の座談会を通じ、政治の日常化の進め方を考えていきたい。





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