研究会抄録

ウェブ座談会「気にいらなければ政党を作ればいい?」

講師:井村和夫様、岡崎敏弘様、難波奨二様

場所:メロンディアあざみ野(横浜市青葉区)2026年6月30日14時30分から

 2月の総選挙の結果は自民党の大勝利に終わり、新たな政治状況の誕生となった。にわか仕立ての中道改革連合は比例で1000万余票を獲得したものの、多くの小選挙区で敗北し、存亡の危機に瀕したが分党で再起を期す構えと思われる。  研究会では労働組合と政治との距離を主題としてさまざまに議論を重ねてきたものの、最悪とは言わないが結構暗い状況にあると認識している。という状況下での座談会となったが、「気にいらない政党」がわが国の底流に流れるテーマであるから、引き続きあるがままの政党論を労働組合の視点から俎上に載せることに。  野党の危機は与党の好機のように思われるが、ライバルなきスポーツに似て堕落の道でもある。(文中敬称略、文責研究会) ーーー 目次 1.2月総選挙についての連合組合員意識調査の結果は衝撃的だが、鵜呑みはできない? 2.回答者に占める組合役員あるいは役員経験者の割合が結構高い 3.組合役員あるいは経験者の比率が高いにも関わらず自民党支持が高いのは 4.労使ともに現場は大きく変わっている 5.義務教育を含めて教育の場では、労働法とか選挙あるいは政治活動というのは出てこない 6.労働組合の若年層への影響力は弱まっているのか 7.政党名変更の今昔、情報伝搬の異常なほどの速さ 8.有権者とのコミュニケーション不成立時代の労働運動あるいは政治活動には工夫が必要9.では、政党はどうなのか、有権者とコミュニケーションできているのか 10.これから有権者が注目すべき野党の国際性について 11.連合の知られざる国際性、国際労働組合総連合の会長組織 12.職場から見た政党、生活者から見える政党、その距離感の変化 13.自民党が近づいてきている感じが職場にはある、政策制度は広範囲で難しい 14.議席数と民意とのギャップを感じる(こんなはずではなかった感) 15.やはりSNSの影響が大きく、とくに知っている著名人の発言の影響を受けやすい 16.労組組織率の実態についてと組織環境の急速な変化 17.政党を作るのは簡単、しかし政党として機能するのは簡単ではない 18.政党本部には最低でも60人以上の職員が必要 19.労働組合は政党に対してどこまで踏み込めるのか、別建てで政治結社をつくるべきか 20.政党活動の安定化のためには党財政の安定化が必須 21.連合の政治との距離感が重要といえるが、現状は豆乳状態が続いている 22.連合と支持政党の関係をふり返れば、本格化したのは1999年から 23.自ら変わらなければ相手を変えられない、労働組合はどうなのか 24.労働組合が政治参加をさらに強化する動機は民主政治への危機感からか 【座談会での発言内容は録音データからの書きおこしに基づいた要約であり、発言内容の一部には省略されたところがあります。また、本文中の政党名などの固有名詞はほぼ発言に沿った短縮形あるいは省略形を用いています。用語については文脈や文意との関係で編集されたものがあります。「」は表現上の必要から、また、()は注釈として編集段階で書き加えたものです。敬称は省略し、文責は研究会にあります。】
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加藤 本日はまず「職場からの距離感」として井村さんから、連合が2月に実施した衆議院議員選挙に関する組合員アンケートの結果について概略の説明をいただき、その上で意見交換をしたいと思います。

 余談ですが、若い方はデパートに並んでいる既製品のように政党があるものだと考えていて、それを選ぶという立場だと思っているようです。そこで、自分の意向や考え方に沿った政党とは何か、という視点からはさまざまな意見や態度があると考えられます。たとえば、「政党(そのもの)が嫌いだから選挙に行かない」「気に入った政党がない」「(政策や主張が)どれも遅れている」など、いろいろな理由を挙げて選挙に行かない、投票しない若者に対しては、では自分に合った政党を作って投票すればいい、と言いたいのです。(笑)
 ただ、そもそも政党とは何なのかといっても政党法は実はありません。政党助成金や政治資金規正法などから、逆に政党が定義されているのです。政党については岡崎さんからお話をいただき、そこから議論をつないでいきたいと思います。

 それでは最初に、組合員アンケートについて、井村さんからお願いします。

1.2月総選挙についての連合組合員意識調査の結果は衝撃的だが、鵜呑みはできない?

井村 5月の連合中央執行委員会の後だと思いますが、連合が組合員へのアンケート調査を行い、各政党の支持率が示されたということで、マスコミ各社から「支持政党は国民民主党が26.8%で最も多く、以下、自民党が15.5%、立憲民主党が11.3%、中道改革が4.6%だった」と報じられました。私もこの報道を見て興味を持ち、連合から資料を取り寄せ、関係者へのヒアリングも行いました。

そこでいくつか分かったことは、この数字を連合組合員の実態として、あまり鵜呑みにしない方がよいということです。まず、どういうサンプルなのかという点があります。約5万人へのウェブアンケートとのことですが、そもそも連合の組合員は、各産別の政党支持の比率で見ると、国民民主党を支持している産別の組合員が約6割、残り4割が立憲民主党系などに分かれています。つまり、もともとの母数として国民民主系が多いので、国民民主党の支持率が高く出るのは、ある意味当然です。加えて立憲系の産別が、中道改革連合結党に至る一連の動きや選挙結果への反発と憤りからか、一部の地域においてアンケートにあまり協力してくれなかったという話もありました。

2.回答者に占める組合役員あるいは役員経験者の割合が結構高い

井村 さらに、回答数全体約4万9千件の内訳は、組合役員経験なしが約2万件に対し、現在組合役員が約1万件、過去役員経験ありも約1万件です。連合全体約700万人の組合員に対して、地方連合からアンケートを配布していくのですが、例えばM労組本社支部でいうと連合東京から電機連合東京地協経由でおりてきますが、支部・分会にはおそらく10部来るか来ないかということになります。そうなれば組合員に依頼するのは面倒と判断して、大半を役員が答えてしまうことはよくある。この役員の回答結果が今回報道された数値には含まれているわけです。組合役員なら国民民主党支持、あるいは国民民主党の候補者に投票したと答える人が多いと思います。難波さんの出身労組でも、役員が回答したら中道に入れました、比例代表にも書きました、と答えるのではないでしょうか。 

 本来は一般組合員がどういう意識を持っているかを調査・分析しなければならない。すなわち組合役員経験のない層に絞って分析すべきなのです。私も電機連合あるいは連合時代にもこのアンケートに携わってきましたが、そこに絞った分析を中心にしてきました。ところが今回は外部への公表についても、全体概要資料をそのまま配布したらしく、それが報道につながったようです。そのため、センセーショナルに捉えられてしまった。

3.組合役員あるいは経験者の比率が高いにも関わらず自民党支持が高いのは

井村 一方で、役員がこれだけ答えているにもかかわらず、政党支持率で自民党が15.5%と国民民主党に次ぐ二番目であること。そして小選挙区および比例代表でどの政党に投票したか聞いている設問では、小選挙区では自民党が一番、比例でも自民党が三番目となっています。役員比率がこれだけ多いにもかかわらず自民党にこれだけ投票している結果は連合および各産別としての大きな課題だと思わざるを得ません。

 もう一つ、「労働組合の役員からの働きかけがありましたか」という設問があります。「全く働きかけを受けなかった」は24.2%で、過去の国政選挙時の10%台から増えていますが、今回は衆議院選挙ですが、過去4回分のアンケート結果はすべて参議院選挙です。参議院選挙では各産別が比例候補者を擁立しているため、衆議院選挙よりも一生懸命働きかけをする傾向にあり、両国政選挙の比較はあまり参考になりません。

加藤 日常的に現場を抱えている現職の労組役員からこのアンケートの結果を踏まえての意見をお願いします。

渡邊 先ほどの話にもありましたが、恣意的な結果になりがちな面は、私たちも注意しなければなりません。無作為にアンケートを取ることが難しい時代なので、そこはニュートラルに見ないといけないと思います。役員経験なしの層にフォーカスせずに全体で見てしまうと、クロス分析をしない限り、表面だけではミスリードを与えてしまうと思います。

 また、無作為というのが非常に難しい。組合の役員が知人や同僚に声をかけてアンケートを集める仕組みでは、どうしても組合に対して距離の近い人が多くなり、組合寄りの結果になりやすいという点は理解できます。

さらに、自民党の支持が増えるのは、三菱電機のような職場ではあり得ることだと思います。防衛産業など当社の事業構造を考えると、国の予算や防衛政策の観点から与党に投票することもあり得ると思います。

加藤 小選挙区で自民党支持が多いのは、今回の選挙結果から見ても自然な面があります。7割を超えて自民党候補が当選しているのですから、所属政党で投票行動をせずに、人物評価や地域での働きぶりを見て投票した組合員が多いと考えます。「自民党だから入れない」というような感覚はあまりなく、結果として自民党のシェアが高くなるのも理解できます。ただし、これほどの圧倒的議席数を考えると、アンケートにはもっとリアルな傾向が出ていてもよかったのではと思います。そのあたりは、より詳しいアンケートでないと分かりませんね。

岡崎 連合の調査でも、労組役員がいる職場といない職場ではかなり温度差があります。マスコミ調査でも、大企業・中小企業ともに自民党が強く、選挙結果に近い数字が出ていました。だから連合でも本当は同じような数字が出るのだと思います。

加藤 本当の数字はもっと衝撃的なのかもしれない。アンケートでは国民民主党、立憲民主党、そして中道系が高めに、自民党が低めに出ていると考えられます。そういう点では、このアンケートの数字を全面的に信じてはいけないですね。今回は、自民党を勝たせる選挙という見えざる何かがあったというと変なんですが。

岡崎 このアンケートの結果が正しいのであれば、衆議院議員選挙の結果は全然違っていたと思う。そのため、アンケートの数字は鵜呑みにすべきではない。

4.労使ともに現場は大きく変わっている

難波[リモート参加] やはり、今の労働運動を見ていて、私どももそうですが、政治学習が、私たちがやってきた時代と比べて圧倒的に少なくなってきています。企業も同様の傾向があるのではないかと思います。高学歴化によって、企業も労働組合も、社会人教育や一般常識、さまざまな経済活動などについて、新しくメンバーに加わってくる社員や組合員への教育を、個人任せにしているのではないかという問題意識を持っています。

 労働組合は組織された労働者の組織です。組合の意思を組合員に伝えていく努力が、今こそ重要な時期にあるのではないかと思います。イデオロギーの方向に行ってしまうとまずいですが、そういう教育は今の若いメンバーには通用しないでしょう。自分で取捨選択もできるし、判断もつく能力を持っている人が多いと思います。私は公平な観点からの労働者教育、特定の考え方に誘導するのではなく、きちんと情報を伝えていくことが重要ではないかと思いました。

5.義務教育を含めて教育の場では、労働法とか選挙あるいは政治活動というのは詳しくは出てこない

加藤 何十年も政治学習とか政治教育をやっても、ものの見方や考え方、イデオロギー的な傾向について、それが話題になる時もありますが、変えることはできませんし、現実にそれをやっている労働組合は、もうほとんどないでしょう。

 そう考えると、高学歴の皆さんが、政治についてどの程度の知識を持っているのかという問題になります。当然、教養課程や専門分野を含めて、一般の人以上に高い知識を持っているはずだと思われがちです。また、本人たちも「自分たちは分かっている」と思っている一方で、選挙や政治を専門に仕事をしてきた立場から見ると、必ずしもそうではないのではないかといった疑問もあるのです。

 (2006年に)民主党鳩山執行部が発足したとき、20人ほどの大学のゼミ生に来ていただいたことがあります。私は党の労働局長をしていたので陪席しました。そのとき20人の学生に対して「労働基準法などの労働法規を一度でも読んだことがある人、授業を受けたことがある人は手を挙げてください」と聞きました。20人なので半分くらいは手が挙がるだろうと党執行部の皆さんも思っていたようですが、実際には3人だけでした。残りの17人は、労働関係法についてあまり知らないと言うのです。私にとっては非常にショックなことでした。

会社の中では労使関係は個別にも起こります。上司と自分との間で、残業命令をどうするかといった個別の労使関係において、本来なら労組法や基準法に基づいて自分の権利や立場を主張できるはずです。しかし、その知識すらない人が多い。団体交渉や不当労働行為を知らない人たちが、普通にいる状況ではなかなか前に進まないわけです。この点は執行部に入って初めて知る人も多いのですが。(笑)

政治の問題についても、3年に1回以上のペースで国政選挙が行われているのに、公職選挙法は旧態依然とした部分も多く、分かりやすくはないですね。とくに、若い人にはフィットしないでしょう。

また、8割の雇用労働者には労働組合がないのです。5人のうち4人が未組織という現実にあって労働法制そのものをどうやって守っていくのか、そもそも論があります。

ということは措き、労働組合が組合員に対してどう政治啓発活動を行うのか、今は大変な時代なので慎重さも必要ですが、きちんとガイドしていけるかどうかは大きなテーマです。この点について、岡崎さんはどうお考えでしょうか。

岡崎 私が入った民社党という政党では、年に20回ほど党学校というものがありました。三泊四日で、朝から晩まで缶詰状態で勉強する場でした。全国の同盟組織の電力、自動車、ゼンセンなどの幹部が集まり、地域の若い幹部たちが、年に20回ほどその勉強をしていました。選挙運動も含め、政治活動全般について学んでいたのです。しかし、その後の政党では、そういう勉強の場はほとんどなくなりました。民社党のように勉強していた政党は、そのほかには自民党の派閥、社会党の左派、公明党、共産党くらいだったと思います。
 それが今では自民党もやっていない、社会党はなくなった、公明党もほぼやっていない、立憲も国民もやっていないという状況です。だから、政党で働く人(職員)でさえ、政治のことについて、自分のテリトリー以外のことについては分かっていないのが現状だと思います。政治を大局的に見ることができなくなっているのが、大きな問題です。

加藤 そういう人が10人に1人でも居てくれて、しっかりとした知識、感覚をもって政治を見つめる、政治をジャッジするということは必要ですね。

岡崎 少し昔話をさせていただくと、民社党の綱領には「福祉国家の建設」と「左右の全体主義との対決」を綱領に明記して、綱領にもとづいて政策を肉付けしていました。そのため、綱領に賛成していない議員は入らない政党でした。しかし、現在は綱領がしっかりしている政党が自民党以外に存在しません。国民民主党や参政党は党首の考え方に依存しています。そういう意味では独裁的な政党かもしれません。極右を1で極左を10にしたときに、自民党や立憲民主党は3ぐらい、国民民主党や参政党は1まではいかないが、近いと思います。また、見方によれば極右と極左は紙の表裏のようにくっついていると考えます。あるいは民主主義と共産主義はもしかしたらくっついているかもしれない。例えばアメリカの例で言うと、民主主義国家ではあるがトランプ大統領がやっていることは独裁主義ではないか。この独裁を選挙で変えられるのが民主主義で、変えられないのが共産主義。それぐらいの違いしかないのかもしれません。

6.労働組合の若年層への影響力は弱まっているのか

井村 労働組合の政治教育の話に関連して、先ほどのアンケートでは「小選挙区選挙および比例代表選挙でその候補者、もしくは政党に投票した理由」という設問で、「労働組合の推薦」を理由に挙げている人は比例では31.4%、「政策や公約が良かった」を挙げている人は32.1%と少し多くなっています。これを役員経験なしの年代別に分析した結果につて関係者に聞いたところ昔と様変わりしているということでした。 

 その昔は、若年層は組合が推薦しているので投票しましたという人が多かった。しかしその後若年層は投票に行かない世代と言われていました。そして、今回どうだったかというとかなり投票に行っており、政策や公約が良かったから投票したという回答が多かったそうです。その政策をどこで知ったのかと言えば圧倒的にSNSとのこと。そして、支持政党は参政党や日本保守党などが他の年代に比べると高い傾向にあるそうです。前回の参議院選挙あたりから変わってきて、今回の衆議院選挙ではそれが顕著に表れたとのことです。

加藤 2024年11月の衆議院選挙(石破総理)で与党が過半数を割った時から2026年2月の衆議院選挙(高市総理)まで1年ちょっとの短期間でしたが、それでも傾向が変わっているのですね。

7.政党名変更の今昔、情報伝搬の異常なほどの速さ

岡崎 昔は、政党の名前を変えることは非常に大変だと言われていました。一度名前を変えると、その名前を覚えてもらうのに10年はかかる。衆議院選挙なら4回は必要だから、政党名は簡単に変えられない、というのが昔の定説でした。しかし今は、選挙前に名前を変えても、情報が早く伝われば人はそこに集まります。その意味で、今の時代は、本当に良いものであれば新しい政党でも一気に広がると思います。

加藤 岡崎さんの話は、長く関わってきた人ならではのリアルなものだと思いますし、私自身も経験的に感じるところがあります。30年前に、民主、民進、希望、立憲、国民、中道といった変遷をこの頻度で繰り返していたら、ぐちゃぐちゃになっていたでしょう。ただ、あの短期間で中道(比例)には1000万票余入っているという事実を見ると、有権者もよく見ているのではないかとも思います。今言われたように、内容のあるものは広がるのです。ということで、中道がダメだった原因については、別の機会にと考えています。

岡崎 地方の選挙区では、昔なら新しい政党ができても、おじいちゃん、おばあちゃんは知らないというのが普通でした。ところが今は、みんな知っている。安野貴博さんのところについて、私に聞いてくるお年寄りもいる。昔はそんなことは全くありませんでした。それほど情報伝達が早いのが今の世の中です。

8.有権者とのコミュニケーション不成立時代の労働運動あるいは政治活動には工夫が必要

加藤 このテーマの中には、SNSの伝播力や、政治に関わるコミュニケーションのあり方など、いろいろな要素があります。しかし、はっきりしたことは、いわゆるコミュニケーションが成立していないということです。

 このアンケートの対象は連合の組合員です。連合の組合員は、今の社会の中でどういう位置づけかというと、世間で言えば労働者・サラリーマンの勝ち組と言われています。たしかに、雇用は安定しており、賃金水準などの労働条件も高い。しかも労働組合としての経験が蓄積されているので問題への対応力があるなど、正直なところメリットが多い「恵まれたグループ」といえます。
 だから、そのグループの分析だけで全体像を作りあげると、一般的な中小企業で働いている7割以上の人たちとの比較において、「違いが生じる」のでかなり慎重に見なければなりません。

 少し雑談ですが、私は暇なときは「社会人講座」を受けるのが趣味です。今、日本語教育の入門講座を受けています。そこで聞いた話がとても興味深いものでした。簡単にいえば、日本語教育とは日本語のネイティブ話者以外のたとえばタイ語、ベトナム語、韓国語、中国語などを母国語とする話者が対象ですから、当然日本語は初めての方です。

 そこで講師が強調していたのが、まず第一に学習者のサバイバルを考えるとのことでした。つまり、教科の構成が小学校や中学校のの国語とは大いに違うのです。たとえば、「来い」「行け」「食え」「見ろ」などは、店長や上司はもちろん日常生活においては「NG」に近く、使わない方がいいのです。

 円滑なコミュニケーションのための日本語教育です。すこし飛躍しますが、日本語学習者とならんで講師としては学生とのコミュニケーションが大切で、いわゆる「学生言葉」「若者言葉」への対応も大切だそうです。というのは、日本語学習者が来日してからもっとも多く接するのが「若者言葉」や「学生言葉」で、それらについて授業の後で質問攻めにあうそうです。

「辞書には載ってないがどういう意味ですか」と。つまり会話のコンポーネントが不明なので会話が成立しないのです。

 古いですが、女子高校生を「JK」と呼びます。そうした人たちに、私たちが政 治や政策の話を説明するには、どんな言葉を使えばよいのか。多くの政党ではそこが全然考えられていません。仲間内だけの言葉にはバリア的なグループ空間の形成という意識が働いていると思います。そこでは政治、政策、制度という硬性の言葉が入りこむ余地がありません。よそ行きの言葉とは違うのです。一方で、参政党の人たちの話はとても分かりやすいですが、それでも話の中身をきちんと聞き取っている人はそれほど多くありません。語感やイメージとか、熱心、本気度が高い、見た目が「かっこいい」「右っぽい」といった印象だけで流れていくこともあります。政党は有権者に対して多くの情報を流していますが、論理や抽象語彙については、それを受け取る側がどれだけ消化できているのか、見ただけ、聞いただけで意味が分かっているのか大いに疑問があります。

難波 お話を聞いていて、私も同感する部分が多いです。例えば、SNSでさまざまな情報を得て、それが投票行動につながっていくというのは、ある意味では民主的なあり方だと思います。与えられた情報ではなく、自ら情報を取りに行き、その情報に基づいて判断するという点では、よい形での投票行動につながっていると捉えることもできるでしょう。

ただし、その情報が本当に正しいものなのかどうか、また、誘導的で扇動的な情報(内容)ではないのか、個人がきちんと選択できるのかという問題は、やはり含まれていると思います。

 政党の話と関連して言えば、自民党は47都道府県に強固な地方組織や後援会組織を持ち、圧倒的多数の地方議員を抱えながら選挙を戦い、票を掘り起こしていくことができている政党です。一方で、その他の政党、たとえば国民民主党や立憲民主党、あるいは中道にしても、労働組合がバックにあるとはいえ、今まで話があったように、強固な支持・協力関係があるわけではありません。

 私が伺いたいのは、本当に党首のカラーで多くの政党が生まれていくことが、民主政治にとってプラスなのか、マイナスなのかということです。もっと古典的に言えば、保守的な政党、あるいは労働者を代表する政党というものがあってはいけないのか、あってもよいのか。「オールド政党」と批判されることもありますが、それが本当に民主主義にとって悪いことなのかどうか、長い経験をお持ちの皆さんのご意見を伺いたいと思います。

9.では、政党はどうなのか、有権者とコミュニケーションできているのか

岡崎 私は、政党というのは基本的に、大局に立った基本路線がしっかりしていることが重要だと思います。内政も外政も含めてです。特に外国に対する問題でいえば、昔は社会党も民社党も社会主義インターに入っていました。社会主義インターは、ヨーロッパの国々とつながりを持つ場でした。

 今では、連合は国際労働組合総連合ITUC(2006年に国際自由労連ICFTUと世界労働同盟WCLとが統合)に関わっています。例えば消費税やガソリン税のような喫緊の問題だけではなく、政党の基本として、将来展望を持った政策をしっかり作らなければならないと思うのです。

そのときだけ自分が偉くなりたい、また自己実現のための政党を作っても意味がありません。次の世代も含めて、日本という国をきちんと考える政党でなければならないと思います。たとえば防衛費の問題もそうですが、今は非常に高くなっています。本当にここまで高くしてよいのかという疑問があります。今の日本で防衛費問題を考えるうえで最大の問題は北朝鮮です。北朝鮮とどうやって話ができるのか。拉致問題はもちろんありますし、解決しなければならないのは当然です。しかし、北朝鮮と外交関係を持っている西側諸国はたくさんあります。イギリスやフランスもそうです。だからこそ、社会主義インターを通じて北朝鮮にアクセスすることもできるはずです。労働組合である連合を中心に、ヨーロッパのさまざまな組織と連絡を取りながら、北朝鮮との関係をどう構築するかを考えるべきです。
 危ないから軍事費を増やしていくという方向そのものが違うと思います。そうした部分も見据えて大局を踏まえて政党は作ってほしい。
 次の選挙に勝てばよいという話ではなく、30年後、50年後の日本をどうするのかを考える政党を作っていかないといけないと思います。自民党も昔は先のことを考えていたはずですが、今はそうではなくなったように感じます。派閥をなくし、お金を締め上げていくことは、ある意味ではきれいになっているのかもしれません。しかし、本当に政党が国を考える方向になっているのかには大きな疑問があります。

難波 私も全く同感です。多様な民意が反映されるのが政治であるべきだと思います。ただ、それがそのまま政党の数が増えること、多党化することとイコールかといえば、私はそうではないと思っています。やはり、きちっとした理念やバックボーンを持った政党が日本に根付く必要があります。苦しい時でも頑張っていけるような、そういう政党が必要なのではないかと思いました。

10.これから有権者が注目すべき野党の国際性について

加藤 現状は(野党は)多党化しています。この流れをどう考え、どう対応していくかという論点もあります。関連して労働組合はどういう役割を果たすべきか、というのは常に大きなテーマです。ただ、そこばかりをストレートに議論すると煮詰まってしまうので、少し視点を変えたいと思います。

 今、岡崎さんが指摘された国際的な関係、そうした視点から政党の機能を定義していくべきではないでしょうか。国際性を持たない野党が5つも6つもに分裂している状況で、それで本当に政党として成り立つのかという指摘もあります。法律で定めるものではありませんが、有権者の判断基準の中で、参政党は「日本人ファースト」だから好ましいと言ってしまえば、要するに海外からは排他的ではないかと見られる可能性があります。とくに、「日本ファースト」と「日本人ファースト」とでは意味が違います。それが海外からどう見えるのかという視点がまったくないというか、かなりドメスティックで、国内向けの発想になっているという批判もあるでしょう。

今の時代は、やはり国際性(国際関係)を前提にしないと国内政治は成り立たない。その点で言えば、連合は日本にある組織(中間団体)の中でも極めて高い国際性を持っています。あまり知られていませんが、外部に対するチャンネルが非常に多い組織です。そのあたりについて井村さんどうですか。

11.連合の知られざる国際性、国際労働組合総連合の会長組織

井村 国際労働組合総連合(ITUC)のトップはUAゼンセン出身の郷野晶子さんで、連合の立場はアジアでは圧倒的なナンバーワンですし、世界的に見てもアメリカやイギリスやEU各国と肩を並べる立場にあり、発言力も強い。一方で中国はITUCに加盟できていません。労使関係において、労働組合の自主自立性が担保されているとは見られていないからです。

 連合東京の団で北京へ行ったことがありますが、北京市総工会の会長は北京市の副市長との兼務でした。会社で言えば、会社役員が労働組合の委員長も兼ねているようなものです。そのため、組合の自主自立は担保されておらず、ITUCには加盟できないのです。日本が中国や韓国との関係が厳しい時でも、連合はそれらの国のナショナルセンターとの交流を積極的に行ってきました。北朝鮮に対しても、昔は連合東京が定期的に交流していました。最後に送ろうとしたのは、2000年頃、小泉総理になるかどうかという時期でしたが、何らかの事情(政治的)で中止要請があったようで、それ以降はなくなっていると思います。

岡崎 それまでは社会党も当然送っていましたが、今はそうしたパイプがほとんどありません。北朝鮮の問題でも、中国の問題でも、昔は自民党の派閥の中で動けたから、どこかが働きかけることができました。しかし今は自民党の中も動けず、他の党も動けないため、誰も動かない状況です。だからこそ、もっと政党や労働組合を含めて、いろいろなパイプをもつ組織を作るべきだと思います。

井村 経団連にも国際的な組織はありますが、世界的に活発に活動しているわけではありません。一方、連合はCOP(締約国会議、通常「国連気候変動枠組条約締約国会議」を指す)などの国際会議にも、コロナ期を除いて毎回参加してきました。オブザーバーとして会場に入るパスをもらい、ロビー活動を一生懸命してきたのです。それによって、CO2削減などについての日本の意見を通してきた実績があり、今でも続いています。

加藤 ILOでも、日本はオリジナルメンバーとして関わってきました。ITUCが大きな影響力を持っている三者構成のもとで、国際的な労働基準などをずっと議論してきたわけです。残念ながらトランプ氏の「アメリカファースト」の影響で国際協力がかなり後退したこともあり、現在の状況だけで議論するのはあまり面白くありません。

しかし、この先3年ほど経てば、再び国際協力の時代に戻り、一国主義はだめだという流れに必ず戻ると思います。そのとき、政党がどのぐらい国際性を持っているかは、有権者から見た魅力の一つになると思います。日本は、国際関係なしには成立しません。アニメひとつ取っても、海外で見られているからこそ価値があるのです。世界の若い人たちはアニメを見て育っているので、日本に対して好意的ですし、「日本に行きたい」と思ってくれています。海外からの評価があるからこそ、この国は成り立っています。その意味で、海外との関係を自ら否定するような姿勢はあり得ませんし、必ずどこかで(国際関係重視に)戻ると思います。

 今、政党が抱えている問題は、国際性や日本のソフトパワーを自分たちの中に取り入れるだけの器量があるかどうかです。国際的なことをやっても票につながらないからやらない、という狭い考え方があります。逆にそこが、自国主義に傾いている自民党あるいは与党に対して野党がアドバンテージが取れる点ではないでしょうか。国際性は右寄りの保守層を抱えるだけに自民党の弱点といえるので、そのあたりが野党にとってのチャンスだと思います。

 また、中国が日本とディスコミュニケーションに陥っている状況では、対立を煽るような言動が長引くほど、関係がこじれます。「悪いのは中国の方だ」という発想だけでは外交とは言えません。仮にそうであっても、いつまでもこの状態は続かず、どこかで必ず軌道修正が必要になります。緊張と緩和の根は同じですから、振り子が逆向きになれば平和主義的な政党の方が支持を増やす可能性が高くなるかもしれません。東シナ海が穏やかになることが不都合なのか、と聞きたくなるほど今の政権は強直化していませんかということです。

 結局のところ、今の政党が何をどのぐらいのスパンで考えているのか。SNS対応しか考えていないようでは、政治の質は下がる一方です。若者が新聞を読まず、テレビも見ないとなると、情報はSNSからしか得られず、その中で誰の意見を聞くのかという問題になります。そういう時代の中で、流動性の高い貴重な一票が動き回っている。700万票が動けば政治どころか社会を変えるほどの影響力をもつのです。だからこそ、こうした状況の中で政党のあるべき姿をどう考えるか、そういう議論が必要なのだと思います。

12.職場から見た政党、生活者から見える政党、その距離感の変化

加藤 職場から見た政党と、生活者から見える政党とについて、またその距離感を含めて、どのように見えているのかを議論したいと思います。職場からの視点については藤田さんから、生活者の視点については中堤さんから、お願いします。

中堤 大学時代からずっと感じているのですが、政党というのは弱い者の味方なのか、強い者の味方なのかという見方があると思います。社会党などは、働く人たちの味方というイメージがありましたし、自民党は権力や資本主義側に立っているという印象がありました。そのため、社会党が伸びれば暮らしがよくなるのではないかという固定観念が以前はありました。しかし今は大きく変わっています。
 自民党であろうと社会党であろうと、あるいは他の政党であろうと、自分たちの生活を良くしてくれるのは誰なのか、という見方に変わってきています。

岡崎 昔は、ストライキなどで苦心している人たちの給料を上げる側にいたのが社会党で、それに対抗したのが自民党でした。ところが今は、給料を上げるのも自民党になってしまったので、どちらが労働者の味方なのか分からなくなってきています。これが最大の問題だと思います。

中堤 私自身、年金生活者ですが、その立場から見ると、立憲民主党は何となく助けてくれそうだという感覚があります。政党は、自分が何を基盤にしてどのような行動を起こすのかを、看板や綱領の原理として示すものだと思います。立憲民主党は、どちらかというと同業者の味方、つまり働く人たちの立場に立つ政党というイメージがあります。

加藤 立憲民主党への支持が厚いのは、60歳以上、70歳台の層で比較的意識高い系だと思います。

岡崎 今は、与党と野党の区別が分かりにくくなっています。例えば、この前の補正予算(令和8年度一般会計の補正)です。かなり大きな予算額でしたが、補正予算に賛成するということは、昔の野党では考えられませんでした。理由は、補正予算の中にある予備費の問題です。3.1兆円の補正予算のうち、2.5兆円が予備費でした。(名目は中東情勢等対応となっていますが)予備費とは、政府が勝手に使えるお金です。2.5兆円もの金を自由に使ってよいという予算案に、野党が何の条件もなく賛成するのはあり得ないことです。本来であれば、何に使うのかを明示させるべきです。それが条件であれば理解できますが、今回はそうではありませんでした。しかも補正予算だけでなく、本予算にも賛成する野党がいます。
 本予算は、国会に出る法律のうちの90%以上が予算に関連しており、100本以上の法律が関わっています。それに賛成するということは、その100本以上の法律にも賛成するのと同じような意味を持ちます。予算の中には、各省庁から出てくるさまざまな問題のある内容が含まれています。それを拾って、「これはだめです」と言うのが野党の仕事です。しかし、予算に賛成してしまうと、反対ができなくなるので何のために野党があるのか分からなくなります。(地球上の各地で)戦争が起きているから仕方ない、という見方もあるかもしれませんが、そういう話ではありません。何に使うか分からない大きな金額に賛成する野党があること自体が、まず問題だと思います。過去に国内災害のように、特定の事業に使われると分かっている場合なら賛成することもありますが、ここまで大きなものに無条件で賛成することはありません。その意味で、与党と野党の差が分からなくなってきています。

加藤 野党は反対ばかりするので必要ない、という声があります。しかし、反対するのが野党の立場とする考えもあります。SNSでは「(野党が)また文句を言っている」、また「不満を言うだけでは政治ではない」といった主張もあり、政党に何を期待するのかという点がかなり変わってきています。

 野党が反対することを嫌悪し、攻撃するのは専制政治への道ですから、そういう点では一部かもしれませんが国民の政治への理解水準が落ちているように感じます。その原因としては、野党の必要性とともに野党それぞれの考え方が十分に理解されていないことがあるのではないかと。これは日本だけでなく、国際的にも同じような傾向があります。職場の方ではいかがですか。

13.自民党が近づいてきている感じが職場にはある、政策制度は広範囲で難しい

藤田 職場も、自民党は経営者寄りの立場で、国民民主党や立憲民主党が労働者の代表と認識している。

 しかし、官製春闘で賃上げしたと感じている組合員もおり、自民党を支援すべきという人も一定程度います。私たち労働組合は、未来の幸せをどうつくるか、政策を実現するにはどうするかという観点から考えています。その意味でも、与党の方が政策を通しやすいという声も聞いています。

 組合役員は、国民民主党を応援することを理解していますが、組合員とは少し温度差が生じていると思います。

また、選挙で投票先を決める際には、政策制度よりも人柄や印象が重視される傾向が強まっています。たとえば、動画や配信で人となりが伝わると、支援したいという思いが募ってきます。政策制度を知るよりも、人柄を見て判断する流れが強くなっていると感じます。

加藤 政策制度は複雑で難しい。連合時代から労働戦線統一の目的のひとつは政策制度の実現と言いながら、700万人の組合員の要求に等しく合致する政策制度というものは、きわめて少ないのです。そういう意味では政策制度には跛行的側面があり、不利益を受ける人もいます。その調整は厄介だし難しいのです。政策制度で支持政党を決めているということですが、可処分所得を増やす、手取りを増やすというのは1980年代の全民労協時代のメインフレーズでした。最近それらが脚光をあびていますが、政党としてはそのような政策だけが注目されるのはどうでしょうか。

中堤 国民民主党の手取りを増やすということだけではなく、今後も見据えた大局的な政策が必要と感じます。

藤田 政策制度が本当にどれほど重視されているのかというと、手取りが増える、可処分所得が増えるといった分かりやすいテーマの方が強く響いています。こうした言葉はとても分かりやすく、参政党の「日本人ファースト」のようなフレーズも響きやすいのだと思います。ただ、響きやすいということと、中身が十分に理解されているかどうかは別の問題だと思います。

14.議席数と民意とのギャップを感じる(こんなはずではなかった感)

難波 衆議院の議席を想像すると、7割方が自民党でひどく不安に感じる。政治は多数決が基本ですが、この間の選挙が本当に民意を的確に反映した結果なのかというと、選挙制度の問題もあるとはいえ、少し不安に思います。有権者の側からすると国会は遠い存在です。その議席数がどのような影響をどこに与えるのかが理解されないまま進んでいくと、今回のような結果を生み出すことの危険性があります。民意の反映というと聞こえはよいですが、数の拮抗こそが、多様な民意を政治に反映していくための原点であり、土台になるのではないかと考えています。

加藤 投票総数に対する獲得票率という意味でいえば、自民党は50%には達していないのです。しかし議席では74%を占めています。50%弱の得票率で70%余りの議席を得るというのは、選挙制度特有のバイアスが効いたからで、その結果として巨大な政党ができているのは事実です。

そこで、渡邊さんにお聞きします。今の若手組合員の日常生活や職場での立場から、政党を見たときにどう見えているのか。

15.やはりSNSの影響が大きく、とくに知っている著名人の発言の影響を受けやすい

渡邊 組合員だけに限らないがSNSの影響も大きいと思います。SNSを見ると、一度でも興味を持ったものは学習され、次々におすすめが出てきます。そのため、最初に何を見たかが個人の判断にかなり影響します。さらにその中身を疑ってみる時間もあまりないのではないかと思います。職場でも、そうした形で考え方がそちらに寄っていってしまうことがあります。

自分が知っている著名人が発言すると、あるいはトランプ氏に対する刷り込みのようなものが起きると、その影響を強く受けます。アメリカの歌手が発言したことなども取り上げられますが、やはり自分が知っている著名人が何を言うかで、流されてしまう傾向があると。

加藤 その傾向は、変わりませんね。SNSの使用を制限することや、そうした誘導を規制することが議論されていますが、実際には難しいでしょう。ということで、今後の国政選挙の結果はSNSなどの影響を受け、かなり流されやすいものになると言うことですね。

一番気になったのは、SNSなどでの「日本人ファースト」という言葉です。なぜ「日本ファースト」と「日本人ファースト」の区別がつかないのか。「アメリカンファースト」とは言いません。排他的な印象を与えるからです。
 そこは区別したほうがいいのですが、意図的に区別せずに何かを狙っているのか、分かりませんが。「日本人だから損をしている」といった、意味のよく分からない方向に誘導される可能性もあるでしょう。(外国人)免許証の切り替えは是正されつつあるようです。外国人による犯罪率などもフェイク情報が多く、閲覧数稼ぎが目的のようにも思われます。

渡邊 逆に、組合としてはそこをリアルに伝えていかないと組織票が伸びていかないと思います。

16.労組組織率の実態についてと組織環境の急速な変化

加藤 組織率の問題について言えば、16.1%という労働省発表の数字は、やはり低いように感じますね。本当はもっと高いはずで、連合総研では20何%と推定する研究もあるようです。その数字にも驚かされますが、結局約8割の働く人たちには労働組合がないわけです。その8割に対しては労働組合からは情報がまったく発信されていない。SNSで情報を取っている人たちがいる、そうした層を前提にすれば、労働組合が一生懸命発信しても、雇用労働者の8割の人たちには届かない状態です。

岡崎 現在の組合員教育について、どのようなことを実施していますか。

渡邊 社員外従業員との接点を増やすことを重視しており、賃上げ交渉の効果を最大化するためにも、職場で働く非正規の方々にも波及させるよう支援している。職場の課題も組織で分けずに対応しています。

岡崎 昔は、賃金闘争のときに組合員に説明する機会が結構ありました。今もそうした機会はありますか。選挙のときにも集会をたくさんやっていただいたと思いますが、今も同じようにやっているのでしょうか。

渡邊 職場集会に来る人たちには、例えば、職場集会が開かれる部屋の壁一面にポスターを貼っておき、参加者に「ああ、こういうつながりが労働組合にはあるのだ」と自然に理解してもらうやり方です。参加者にはパンフレットも配っています。

井村 私が電機本部にいたときの話ですが、春闘の時期には職場集会の開催回数が一番多いだろうと思っていました。会社との団体交渉があれば報告義務があるので、ビラ配りだけでなく、小さな単位で職場集会をやっているだろうと考えていたのです。そのため、7月の参議院選挙に向けて候補者のアピールも合わせてできるはずだと思っていました。しかし、「今時そんなものはやっていない」と言う回答がかなり多く、春闘の交渉状況も共有していないのかと2000年代前半の話ですが少し驚きました。

難波 結局、同じことをやれば、同じくらいの(得票)結果が出るはずです。あの候補者がいいかどうかという話ではないのです。新しい選挙のやり方をしていて、その結果、票が19万から11万、さらに9万へと落ち込んだと見ています。

結局、汗をかかない選挙運動をして、楽をして議席を得ようとする傾向が非常に強くなっていて、私とは少しぶつかりました。

17.政党を作るのは簡単、しかし政党として機能するのは簡単ではない

加藤 岡崎さん、政党は簡単にできますか。

岡崎 政党を作ろうと思えば誰にでもできます。東京なら東京都の選挙管理委員会に届け出をするだけです。お金も基本的には必要ありません。つまり、政党を作ること自体は簡単です。自分がどこかの選挙に出たいときも同じです。届け出をすれば政党を作れます。

政党助成金の話をすると、お金を受けるには、国会議員が5人必要です。その5人を集めれば、政党として認められ、政党助成金も受けられます。

 議員の集め方ですが、私は民社党、新進党、民主党など新党ブームを含めて、ずっと新党づくりに関わってきました。その中で、議員をどう集めるかによって政党の個性が変わってしまうのです。基本理念に基づいて人を集めるのか、好き嫌いで集めるのか、政策で集めるのかによって違ってきます。理念に基づいて集めれば、その理念に賛成する人もほどほどの人も含まれるので、比較的健全な政党ができます。しかし、個人の人気や好き嫌いで集めると、その人が好きな人だけが集まってきてしまい、そのトップがいなくなった後の展望がなくなります。また、一つの政策だけで人を集めると、その政策がなくなった後に政党としてつながらなくなってしまいます。

 本当は、綱領や基本理念がしっかりしたものを作り、それに基づいて人を集めるのが、政党としては正しいと思います。私の考えでは、連合のように大きな組織母体がある以上、連合が中心になって連合の政策を基に政党を作っていけば、民主的な政党ができると思います。

加藤 ここでいう「民主的な政党」とは、現実にある政党に本当に民主主義があるのか、という問いにもつながります。党内での民主主義が確立しているのか、執行部の中に民主主義があるのか、そうした議論がありますが、民主的でも選挙で負けたら終わりという声もありますね。それは措いて、私は今回、政党そのものを問題にしたかったのです。

 前回は、議員さんは大変だという話をしました。家族を守るのも大変ですし、経済的にも実は大変です。歳費などをたくさんもらっているように見えても、そうでもないという視点から、理解してほしいと思ったのです。その理解が政党を支えるのではないか、近ごろはやけに冷たいなと思っています。

18.政党本部には最低でも60人以上の職員が必要

岡崎 本当に政党を作ろうとしたら、私もいろんな政党を作ってきたので分かるのですが、本部から支部まで含めて、本部には最低60人は職員(スタッフ)が必要です。なぜなら、一つの政策を考えるとき、相手は省庁だからです。政党側は、どんなに人を出しても、一つの省庁に一人つけられるかどうかという程度です。自民党でさえ、省庁ごとに1人か2人くらいしかいません。自民党は与党なので省庁は味方ですが、野党の場合は省庁が敵側です。そのため、政策の穴や矛盾点を洗い出す作業が必要で、非常に大変です。
 そうした作業をするには最低60人は必要です。60人というのは、組織や他の部門も含めた人数であって、政策セクションだけでも10人から15人は必要です。省庁ごと1人いて、ようやく本部として機能します。議員が5人でも10人でも100人でも、政党を回す機能としては同じで、最低でも60人は必要だというのが私の考えです。
 それに加えて、地方ごとに47都道府県の選管へ届け出をし、政党として正式に立ち上げるなら、事務所も作らなければならず、人件費もかかるので、非常にお金がかかります。国民政党を一つ作るには、かなりの資金が必要です。政党助成金があるから何とか持っているのが現状だと思いますが、維持するためには議員が最低40人から50人は必要です。本当の意味で、政党を作るための条件には、経済的な要素や人的な要素など、さまざまなものがあります。

加藤 最近、専門政党のようなものができていますよね。たとえば「この分野だけ頑張る」といった政党です。でも、10人程度で何かを頑張れるわけではありません。新しくできたばかりのミニ政党が政党足りうるのか、また民主主義から言って民意を反映できるのか。

岡崎 たとえば、労働法制だけを専門にする政党を5人で作ったとしても、その政党が国会で議論する場、たとえば社会労働委員会に入れるかというと、実は入れません。委員がゼロでは無理なのです。つまり、国会の議論に参加するためには、それなりの議席が必要であり、参加する権利も伴わないのです。そのため、「うちの政党は労働法制だけの政党ですから、票をください」と言っても、実際には法律づくりに参加できない。それでは無理です。小さい政党は外に向かって主張することはできても、実質的には大きな力にはなりません。

加藤 若者の政治参加についての議論もありますが、小規模政党では実際には活動の継続は難しいですね。浮き沈みがあり、政治は資本主義なので、信念だけでは成り立ちません。最初に資金がないと政治は動かないし、政党は成立しないということでしょう。

岡崎さんの言う60人であれば少し違ってきます。それでも60人規模と言えば、旧労働団体規模でしょう。現在の連合は150人規模です。しかし、霞が関の政策官僚は何千人単位でしょうから、仮にそれに対抗していくとすれば、連合本体だけでは限界があります。もちろん、全面的に対抗する関係ではありませんが、人的勢力については役割期待との関係で重要なポイントなので、ざっくりとした数字だけでも念頭においたうえで、議論をすすめるべきでしょう。政治評論家の中には激励を込めて野党に厳しい要請を語られる方がおられますが、数も資金も足りない集団には重すぎます。それよりも、要求レベルを下げてむしろ環境改善を議論すべきでしょう。

19.労働組合は政党に対してどこまで踏み込めるのか、別建てで政治結社をつくるべきか

加藤 政党は作るのも簡単で、ムードだけでもできるということになります。実際、今日でもそうした流れで新しい政党が生まれています。しかし、生まれては消えを繰り返して、それが本当に政治としてよいのか、という疑問があります。

 労働組合が、ある意味で労働運動の重要な領域での連携組織として政党を捉えているのであれば、その規模についても関心を持つべきでしょうし、その上で政党に対してどこまで踏み込むのかが問われます。たとえば、労働組合として候補者を出すということ自体には「政治への参加」として意義があると考えます。ただし、候補者として何人立てるのかは大問題です。つまり、踏みこむ程度については労働組合としての合意形成が必要で、労働組合が政党の連帯保証人になっていいのかは現状では慎重に対応すべきであるということでしょう。安請け合いの愚は避けなければいけません。

 とくに財政的支援については、団体寄付には限度があります。、政党の財政が民主政治の質を決めるといえばいささか大げさではありますが、資金のもらい方は重要な点ですから、少なくとも連携を担保するのであれば政党の財務への関心を高めるべきでしょう。

岡崎 連合の考え方というのは、やはり日本人の考え方の中心にあると思うのです。組織も中心ですし、考え方も中心だと思います。ここで一つの政党を作れば、信用もありますし、いろいろな意味で誰かが動くのです。信用があり、さらに何かあればすぐに切り替えられる。民主主義というのはそういうものです。今ある政党より、よほど信用があると思います。

 政党の事務局をやっていたので分かるのですが、候補者として選挙に出たいと言って履歴書を送ってくる人たちがいます。多くの場合、一つの政党だけに送ってくるわけではありません。私のいたところに届く応募(履歴)書は、共産党や公明党を除けば、ほかの政党にもほぼ来ているのではないかと思います。その中から誰を選ぶかというのは難しい問題です。

 各政党が調査をかけたり、「この人は他にも応募している」と聞くと、関係の近い人同士では情報が回ってきます。「こういう問題があるからやめたほうがいい」と教えてくれることもあります。そうすると、こちらもやめる、あちらもやめるとなります。調査をかけられない政党に応募する人が、候補者として残ることもあります。

 だから、一つの政党だけに履歴書を持ってきてもらうというケースは、こちらからお願いしに行く人以外には、ほぼいないのです。やりたいと言ってくる人は、みんな多数の政党に応募してくるのが現状です。いろいろなケースがあって一般化はできませんが、いい会社(仕事)を辞めて、選挙に出る人などほとんどいないということであれば、そういった人は、政党が自分の手で探すべきでしょう。

加藤 連合の構成組織を見れば、組合員の皆さん方の社会的ポジションは高く影響力は大きいと言えます。岡崎さんが言われたように、この国の安定を支えているのは、ある面では連合組合員の持つ「確からしさ」といえると思います。

ただし、その人たちが政治とどのようにかかわるのか、という課題があります。たとえば3年後には課長になる、さらに5年後には部長になるといった人生を思い描いている可能性は高いでしょう。大企業の部長なら新聞にも載る、親戚からも「よくやった」と言われる。

 前回も議論しましたが、議員の地位は不安定でリスクがある。変な電話も架かってくるし、子どもも大変、奥さんも大変です。そうしたリスクを踏まえて本当に選挙の候補者としてやっていける人を募集できるのかという、微細な課題のようですが、政党にとっては普遍性のあるテーマですね。

私が言いたいのは、連合の組合員として政治の健全化を目指すという気持ちがあるのであれば、年間1万円を政治寄付として出せるのではないかということです。労働界の政治結社として透明な100億円も用意すれば、「政治とカネ」問題でも浄化に大きな力になります。ただし、それが本当に実現し運営できるのかというと問題は山ほどありますが、二大政党体制に共感するのであれば、主要野党の資金力を強化するというのが確実で早道だと思います。野党は資金力で負けているのではないか、という見方は当たっていると思います。

井村 電機の政治団体では、年間1000円の寄付で1億円を目指しているのですよね。政治活動資金として、一人1000円を集めるだけでも大変です。

岡崎 そのお金を集めるなら、そのお金とともに何をやるのか、という基本をきちんと立てて、それに基づいて人を集めるようにすればよいと思います。

加藤 もちろん、(政治結社ですから)全員でなくてもよいのです。しかし、今のままではいけない、社会をもう少しきちんとしたい、という気持ちを持って、100万人が集まるような政党なら、利害関係だけの党員ではなく、主体的にそうだと思って参加する政党になるでしょう。そういった意識をもった100万人が集う政治結社、政党は、日本の歴史でまだありません。理想論に走り過ぎですが。

岡崎 最初から100万人の理解があれば、すごい政党になりますね。

20.政党活動の安定化のためには党財政の安定化が必須

井村 民主党その後の民進党、立憲民主党や国民民主党も、党員・サポーターを集めてきました。党費が年5000円くらいではないでしょうか。それすら集めるのが大変です。そんな中で、参政党は月1000円あるいは2500円の党費を集めているわけです。昔、総理大臣が解散を言ってから、(最長で4週間)たとえば2週間後の公示日までに全国の小選挙区すべてで選挙準備が整えられる団体は、4つしかないと言われていました。自民党、共産党、創価学会、連合の4つです。しかし近年では、すべての選挙区とは言わないまでも、参政党はそれに近いことができています。たった数年で、5つ目の勢力になったのです。資金も集まるし、人もいる。


21.連合の政治との距離感が重要といえるが、現状は豆乳状態が続いている

加藤 民主主義が本当に機能しているのか。民主政治について真剣に考えるべきところに来ていると思います。

 今回のテーマは、「政治参加とは何か」ということです。一人一人が政党を作ろうとする前に、「こうあるべき」という考えを持つことが第一歩であって、それがないと現在の「政党政治」との接点を見いだすことができません。
 接点がなければ、結局自分たちで新しく作るしかない。しかし、それでは周りに広がらないし、資金もない。自分たちで手づくりしたところで直ちに役にたちそうもない。そうなると、次善策としてどうすべきか、という話になります。そこで、政党は全員が納得する100点満点の政策を追求しないで、幅を広げて、80点、70点のレベルでまとめるわけですから、20%、30%の不整合は残るわけです、まあ嫌いなところも残る。それでも、合わないところや嫌いなところは我慢して、70%、80%のよいところを生かしていく。100%合うところなど、永遠にできません。自分で作らない限り無理です。

私たちの政治への対応も同じです。政治活動において労働組合が政党と連携するにしても、嫌いなところは我慢し、好きなところを見つける妥協が必要です。とはいっても、「原発ゼロ社会」と妥協できるラインがありえるのかは、関係する産業別労組としては実際難しいです。

一般的な有権者の立場としては、部分否定が過ぎて全体否定に走るのは、集団組織(団体)を通して政治意思の実現を図る政治の場では合理的対応とは言えません。 

 ということで、有権者とくに野党支持の有権者には融合に向かう「発想の転換」を期待したいですね。このままでは、政治の砂漠化が酷くなると感じています。

22.連合と支持政党の関係をふり返れば、本格化したのは1999年から

井村 連合ができたのは1989年です。当時、連合としては支持政党を持っていませんでした。
旧総評、旧同盟、旧中立労連がそれぞれ支持政党を持っていたのです。その後民主党ができ、連合結成から10年後の1999年に連合として民主党を支持政党とすることを大会で確認しました。さらにその10年後の2009年には政権交代が実現しました。一貫して連合は民主党と二人三脚でやってきました。特に2007年参議院選挙以降は、政権交代を目指して連携が進んでいました。

2016年3月に民主党は維新の党と合流し民進党となります。ところが翌2017年秋の希望の党騒動後、国民民主党と立憲民主党に分裂し、2019年参議院選挙を戦うことになりました。では、なぜ民進党は分裂していったのか。分裂した当時、連合にいた立場からすると、政策ではなくイデオロギーの問題だったのではないかと思います。2015年の安保法制の頃から、民主党が共産党と組み始めたのです。連合本部としては「だめだ」と言っていましたが、その後の国政選挙及び地方選挙においても共産党との共闘は進んでいきました。さらに産別の中には「いいではないか、どんどん共産党とやれ」とトップが指示するところもありました。それでは連合全体はおろか地方連合もまとまりません。

安保法制にとどまらず、エネルギー政策においても原発のない社会を掲げる産別もあれば、原発の現場を抱える組織もあります。憲法についても、連合は改憲とも護憲とも言っていませんが、実質的に護憲の立場を取る産別もあり、まとまりは取れません。

民主党が政権を取るまでは、そうした矛盾が顕在化しないように連合は支援してきたわけですが、2012年に再び自民党政権に戻ってから、特に2015年の安保法制以降、いくつかの産別がイデオロギーを表に出し始めたことにより、その矛盾がどんどん顕在化してきました。結果、連合と民主党その後の民進党との間に大きなズレが生まれてきたのです。岡崎さんが、連合が中心となって政党を作ればいいのではないかという話をされていましたが、連合にいた立場からすると、それはかなり難しいです。

労働政策のような部分ならまだしも、国の根幹に関わることについて、連合は実は明確な政策を持っていません。たとえば今話題になっている皇室典範についても、連合には政策がないのです。国旗損壊罪についても連合は考え方を持っていません。国民民主党も共同提出しているようですが、だからと言って国民民主党を支持している産別は何も言わないのはどうなのか。連合が国民民主党を支持しているわけではないので、何も言わないのかもしれませんが、果たしてそれでよいのかという疑問は残ります。

岡崎 だからこそ、連合を中心に、そうした部分の政策をもう一度立て直す必要があります。連合の中で、まとまらないと困ります。連合でまとまらないものを(支持を期待している)政党でまとめられるはずがありません。連合として「まとめてほしい」というのが本音です。
 議員がまとめないなら、後ろから支える選挙母体の側がきつくものを言って、こちらにまとめてほしいというのが私たちの感覚です。結局、政党の方ではまとめきれないので、連合にお願いするしかないのです。

23.自ら変わらなければ相手を変えられない、労働組合はどうなのか

加藤 岡崎さんの主張がまさしく政党側としての立場と言えます。しかし連合側としては、そんなところまでは調整できない。先ほどの井村さんが指摘されたいくつかの政策上の不整合について、本当に連合の中でしっかり揉んで、きちんと決着をつけていれば、現在の野党は大きく変わっていたでしょう。場合によっては政権に参加していたかも知れません。もちろん、憲法・安全保障・エネルギー政策などの方向性を決めて、現実的に詰めていればの話ですが。連合への期待感は理解しますが、連合の力を借りなければ「大きな塊」を作れないというのもおかしな話ですね。意気軒昂と「中道」結成に走ったのだから、今さら感、終わった感があるかもしれませんね。

 世間は、結局のところ政党の基本政策の方向を見ているのです。会長はじめ連合本部も今はかなり難しい立場にあるのでしょう。自民党に対抗できる野党を作るためには、いろいろな面で「嫌われ者」にならなければならない場面もあるでしょうね。

 産別に対して、この政策は諦めろと言わなければならない。しかし現状は、各産別のリーダー層を説得できる人はいないし、統合路線の見当もついていない。そんな路線変更の議論をはじめたら、産別本部の責任者(会長や委員長)の立場や、これまで積み重ねてきた運動の歴史を否定することになるかもしれないので、なかなか捌ききれないと思います。

ということで、ただいまの議論はなかなかに難しいですね。本日はこのような議論を交えながら政党のあるべき姿を議論してきました。この先も理想論と現実論の間で揺れ動くと思いますが、若い人たちが政治に向かっていく中で、今のような政党の状態をそのまま受け入れてよいのか、という点をさらに整理できたらと思います。

連合について言えば、政治、政党との関係では役割の再定義が必要ではないかと。それは、連合本部よりも構成組織である産業別労働組合あるいは地方組織がどこまで脱皮できるのかということであり、さらに労働運動が既存の活動分野での伝統を引き継ぐ点に軸足をおくのか、それとも未組織労働者を視野に置いた労働者全体の運動を目指すのかという簡単には結論の出せない、峻嶺を越えるような議論だと思います。最後にそれぞれの感想を伺いたいと思います。まず渡邊さん、いかがでしょうか。

24.労働組合が政治参加をさらに強化する動機は民主政治への危機感からか

渡邊 確かに、一人一人からお金を集めて、その目的に沿って使うことができればよいと思います。今の苦しい現状をどう打破するかを、改めて考えさせられています。ただ、結局のところ、強制的に徴収することができないのも現状です。組織内議員が実現してきた政策制度や活動をきちんとひとまとめにして訴求すべきです。労働者の観点から、こういう政策制度を実現しているのだと伝える必要があります。ただ、見方によっては、たとえば子どものいない方にとっては、子育て支援の話はあまり響かないかもしれません。しかし、労働者の代表としてこういう人たちがいて、それぞれが成果をきちんと出してくれた、ということをもう少し伝えられるようにしたいのです。今の見方だけで判断してしまうと、まだ難しいところがあります。もっと広い視点で、労働者として主張していく必要があると思います。

また、組織内議員が本当に労働者の代表として発言しているのかどうか、チェックしていく必要もあると思います。

加藤 「労働者」という言葉は、私も80年近く生きてきて、(笑)ずっと使ってきた言葉です。今でも、気持ちは卒業できていません。しかし、労働者は実際のところいないのではないか、という考えもありますが、言葉としてどう使うかは重要です。昔の労働者教育、労働学校でそうした議論をしてきましたが、非常に難しいテーマでもあります。岡崎さん、何かございますか。

岡崎 私は、政党は30年後、50年後を見据えたものを作るべきだと思います。目先の課題も必要ですが、長期を見据えたしっかりした政党を作るためには、本来、連合の皆さんが協力して政党を作るのが一番よいと思います。

藤田 民主主義が本当に成立するのか、という問題もあります。組合もそうかもしれません。最近は個が優先される傾向が強く、各自の意見が尊重されます。それぞれ違う思いを持ち妥協できないという人も増えてきていると思います。そのためにも、時間をかけて説得していく労力が、今はなかなか確保できていません。そのため、アメリカや中国のように、独裁主義的に進めたほうがスピード感はあるのかもしれません。そう考えると、民主主義は今、非常に難しい局面にあると思います。

中堤 参政党に代表されるように、今の(保守系新党が乱立する)政党状態は、少し放置すると非常に混沌とした感覚的に恐ろしい状況になるのではないかと感じています。立憲民主党や国民民主党には、もっと国民を代表できるような政策立案をしてほしいです。国民民主党も、もう少し自分たちが何を問題にして進むのかをはっきり示し、リードできる政党になってほしいと思います。そういう意味で危機意識は感じます。

加藤 立憲民主党と国民民主党が、最終的に一緒になったほうがよいとか悪いとか、単純には言えません。当事者にその気があるのなら違う対応があったのではという声も確かにあります。

 基本政策もそうですが、人の顔を見ながらという面もあるかもしれません。ただ、今の小さな政党が次々と乱立している状況は、野党サイドの国民にとって最適な状態なのかという疑問があります。政党の基本形をもう少し考えてみよう、ということでしょうか。

難波 2時間以上議論してきて感じたのは、2月に総選挙があり、立憲民主党、中道は大敗北し、120人以上の現職議員が落選したにもかかわらず、5か月が経過しても、新しい何かを生み出す兆しが見えないのが証左だと思います。それを放置したままでよいのか、というのが今日の熱い議論だったと思います。

私はいつも申し上げていますが、政治も労働運動も、ロマンがなければだめだと思っています。
年齢は重ねていますが、皆さんと一緒にまた頑張っていきたいと思います。今日はありがとうございました。

加藤 議論はまだまだ続くと思います。本日は本当にありがとうございました。(6月30日16時40分終了)

(了)

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【講師】井村和夫様、岡崎敏弘様、難波奨二様

講師の岡崎敏弘様、難波奨二様さらに事務局の中堤康方、渡邊佳正、藤田悦康については前回をご覧下さい。
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井村和夫(いむらかづお)様   
1962年秋田県生まれ 
1987年法政大学工学部卒業
1987年ティアック株式会社入社
1991年~2001年ティアック労働組合(支部副執行委員長、中央執行委員、副中央執行委員長)
2001年~2005年電機連合東京地方協議会事務局次長
2005年~2014年電機連合(政治センター専門部長、政治センター中央執行委員)
2014年~2022年連合(政治局局長、総合政治局長、総合政策局長、総合企画局長)
2022年~2026年独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構監事(6月退任)
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