遅牛早牛

遅牛早牛「気持ちはザワザワ、通りはサムザム、問題はゴロゴロ」

◇  「ⅭOVID‐19」まるでロボットみたいだけど、3月11日世界保健機構(WHO)はパンデミック(世界的大流行)を宣言した。宣言したからといって、何かが起こったり、変わったりするわけではないらしい。

パンデミックとは「全世界の人がこの感染症にさらされる可能性が高いと考えられている状態」(同マイク・ライアン氏)というが、以前からそう思っていた、ほとんどの人が。

◇ 本欄2020年1月24日付「2020年からの課題と予想-②-フェイク・ニュースと解散風が政治を劣化させる」で、嘘と噂から人々を守るのが政治の役割だと書いたが、現状は嘘と噂が蔓延している。免疫は医学用語であるが、免疫力は医学的に確認されていないという。にもかかわらず、メディアでは氾濫している。食品などの宣伝の場面でよく出てくる。はっきりしない用語を使って食品などを宣伝するのはよろしくないのではないか。とくに、深刻な症状の方の前では使わない方がいいと思う。

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「2020年からの課題と予想 ④ 労働運動と組織率(2)」

各国の労働組合組織率の動向と労働協約適用率

 昨年、2019年のわが国の推定組織率は16.7%で、おおよそ雇用者6人に1人が労働組合に加入していることになる。時系列でみれば、1947年以来長らく30%以上(最高56%)であったが、1983年29.7%と30%を下回って以降、2008年から2010年を除き前年比下降を続けてきた。他の主要国もおおむね低下傾向にあるが、2018年の同組織率は、イギリス23.4%、日本17.1%、ドイツ16.5%、韓国11.8%、アメリカ10.5%、フランス8.8%となっている。(「労働政策研究・研修機構、諸外国の労働組合組織率の動向」から)

 また、イタリアは30%を超え、北欧3か国やデンマーク、ベルギーは50%から70%近くになっている。

 統計データの国際比較は、統計の定義や調査時期あるいは調査範囲などに違いがあり、完璧な比較は難しい。傾向を知るだけならOECDの資料が使いやすく、労働統計については各国の労働法制の違いが大きいことから、共通性を持つOECD諸国内での議論が中心になっている。

 OECD諸国の中では、わが国の組織率は低いグループに位置する。他に、フランスは8.8%と最下位グループではあるが、労働協約が適用される労働者の割合(労働協約カバー率)は90%台である。このように、組織率と労働協約カバー率はセットで議論されることが多く、とくに、ヨーロッパの主要国では組織率よりもカバー率の方がはるかに高く、産業別団体交渉の成果が広く波及する傾向にある。ドイツは組織率では近年日本とあまり変わらないがカバー率は50%を超えており、労働組合の社会的影響力はわが国よりはるかに高い。ちなみに、わが国のカバー率は、ほとんどの労働協約が企業別で締結されていることから交渉の成果が企業の枠を越えられず、また協約未締結ケースもあり、労働組合組織率よりも低くなっている。これは国際的には珍しいといえる。

 労働組合組織率と労働協約カバー率の比較は各国の労働法制、労働組合の歴史、社会からの認知、産業構造など多面的な分析が必要で、全体像をつかむのはなかなか難しい。

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2020年からの課題と予想 ④ 労働運動と組織率(1)

労働組合組織率は低下傾向にあるが、屋根も壁も取っ払えば 

21世紀に入って早くも20年が過ぎた。しかし、労働を取り巻く環境はあいかわらず厳しく、その運動は停滞気味といわれている。仮に、1897年の労働組合期成会の結成をわが国労働運動の起点と考えるなら約120年の齢を重ねたことになる。

 この間、苦節苦渋の歴史ではあったが、1989年の連合結成は戦後の労働運動にとっての金字塔といっても差つかえないであろう。

 その連合結成から30年余、すでに多くの組合員の脳裏には労働4団体の言葉はなく、彼ら彼女たちにとって組合加入時からナショナルセンターは連合中心であった。

 しかし、30年を超える歴史を重ねても依然として組織率の低下が止まらない。厚生労働省「令和元年労働組合基礎調査」(2019630日現在)によれば推定組織率は16.7%で前年比0.3%ポイント減である。もちろん組織率の動向と連合運動が直結しているわけではない。つまり、連合だけの責任ではないだろう。しかし、キャッチフレーズ的精神論は横においても、歯止めのかからない組織率の低下が運動全体にマイナス効果をもたらしていることは間違いない、だから、何とかならないものかと関係者が思い悩んでいると推察しているが、考えてみればこれこそ難問中の難問ではないかと思う。

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2020年からの課題と予想-③-国内政治は波乱含み

 今年の国内政局の焦点は(1)解散総選挙の時期と結果、(2)中国最高首脳の来日、(3)景気の悪化、(4)野党の協力体制の成否、などであるが、夏から秋にかけての風水害や新型肺炎も微妙に影響をおよぼすものと思われる。総じて小局にこだわり、大局を失う流れになるのではないか。

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2020年からの課題と予想-②- フェイク・ニュースと解散風が政治を劣化させる

字数が多いので結論を記す。「政治家は嘘と噂から人々を守るべきなのに、近ごろは嘘と噂を利用し、あるいは嘘と噂を作り始めている。規律の問題である。」

 この年明けに、ニューヨークでは桜が咲き、千葉ではヒマワリが咲いた。すぐさま気候変動に結びつける気はないが、吉兆とはいえない。では、凶というべきか。否、花の咲くのを凶とは無粋に過ぎるではないか。凶ではないが、不穏である。

 さて、今回はこの世を惑わせる不穏なるもの、人々を狂気の世界へいざなう「フェイク・ニュース」とわが国の政治をどこまでも劣化させる「解散風」を2020年の重要課題と見立て、ささやかな論考を試みる。

 それにしても、人は嘘が好き、噂が好き、そして嘘と噂に踊らされるのがもっと好き、なのである。

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時事雑考「国会が始まる!国会に専念せよ、国民民主党」

 応援団だからいわせてもらいますが、政治に専念されたらどうでしょうか。大きなかたまりを作るために、いろいろご苦労されてきたと思いますが、来週からは通常国会が始まります。大型補正予算に来年度予算。大判振る舞いともいえる金額です。1000兆円を超える借金を抱えるわが国、大丈夫でしょうか。多くの国民は心配しています。また、生活の実態はどうでしょうか。子供の貧困は改善されたのでしょうか。米中通商摩擦の影響は、今年の景気、特にオリパラ後大丈夫でしょうか。ほかにも、外交関係も山のように課題があります。

 このような大切な国会審議を前に準備はできましたか。安倍首相は何かと逃げているようですが、与野党協力して国民のための国会審議をお願いいたします。

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2020年からの課題と予想-①良いことも悪いことも米国から

新冷戦時代に突入か?

 正月早々剣呑な話ではあるが、米中経済闘争が感じの悪いことになって、いよいよ新冷戦の始まりということらしい。まあ熱戦ではないから、死者や負傷者が出るとは思えないが、いろいろと不都合なことが起こるのか。いずれにせよ、同盟国日本にはそれなりの覚悟が必要であろう。

 思えば、1989年から30年を経て、社会主義国家の中でソ連に代わり中国が国力を伸ばし、昨今では経済規模で世界第2位となったが、その経済力を軍備拡張や諸国篭絡に活用し、今や米国を凌駕しようと、本当にそうなるか分からないが、気分はそうなりつつある。というタイミングでのトランプ大統領が放った2017年のファーストパンチは、米中関係がすでにハイテクなどの技術分野に限らず広範囲の覇権をめぐる対立構造にあることをあらわにした。たとえばそれは、西太平洋における米中の力の均衡線をどこに定めるのか、米国の軍事覇権に中国がどこまで肉薄しようとしているのか、米国に対抗する国際グループをどのような方法で構築しようとしているのかなど中国による挑戦ストーリとして取りざたされている。

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時事雑考「令和元年を振り返る、あの麦わら帽子はどこへ行くの?」

◇令和元年が過ぎていく。この年は皇室と憲法と国民の関わりについて少しく考える機会があたえられたのに、改元行事に目を奪われているうちに暮れようとしている。

 世界は、米中経済闘争、ブレグジットだけでなく複雑にして難解な多くの課題に直面している。残念ながらシリア難民、ロヒンギャ難民の苦難は続きそうだし、南米では強権政治が跋扈しはじめ、中国は香港・ウイグルをじわりじわりと扼しつつある。人権思想発祥の地を誇る欧州では移民流入をめぐり社会が揺らいでいる。東アジアでは、3回の首脳会談を経た米朝協議が頓挫し、この先の見通しが立っていない。

地球温暖化は確実に自然災害の規模を大きくし、人々の生活を破壊している。地球は水浸しで乾いていて燃えている。

振りかえるには手元の時間が足りないほど難題多発の一年であったし、なんとかしなければとの焦燥の一年でもあったといえる。反面、金余り株高に市場は沸き、富裕層への富の集積が加速し、経済格差が拡大している。

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時事雑論「立憲民主党が政権を射程に入れるための要件」

◇ 立憲民主党が政権を射程に入れるためには何が必要であるのか、もちろん論点は多くそれらの全てを論考することはできないので、とりあえず三つの分野について考えてみる。一つは、近隣外交。二つは、人材。三つは、政策である。

◇ 近隣外交とは何か。それは、連立を組む相手との良好な関係づくりである。昨日までの立憲民主党は「近攻遠攻」であった。遠い自民党と近い国民民主党を攻めた。よくいわれる遠くとむすび近くを攻める「近攻遠交」は戦国時代の戦略であり、連立時代にはふさわしくない。近くとむすび遠くを攻める「近交遠攻」が正しいといえる。

 同党は、夏の参議院選挙の結果を受けてすこし軌道修正し、共同会派ができた。行政監視機能を高めることは長期政権がもたらすマイナスを国民視点からチェックするためにも有意義である。また、共同作業を通じて「近交」が深まる効果もあろう。衆議院においては雰囲気がずいぶん良くなったようである。しかし、参議院には木枯らしが吹いている。

 つまり、向こう三軒両隣と誼(よしみ)を通じあえないものがどうして天下を語ることができようかということである。また、「与えることは取ること」が理解できなければ外交を担うことは難しいであろう。立憲民主党が連立の盟主になるには、まず約定を整え、それを明らかにし、堂々たる近隣外交を展開すべきである。ただし、外交は主権国家同士の交わりであるから、「参院選で国民民主を解体し、総選挙に臨む」などといってはいけない。

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時事雑考「サクラ問題に権勢の落日を見る」

◇ 「桜を見る会」をめぐり野党の攻勢が強まっている。会期末まで2週間を切り、予定されていた法案が積み残されることもあり、法案審議に力点を移すべきとの声がテレビでおなじみの評論家連から発せられている。

 まあそうではあるが、だからといってサクラ問題を放置してよいとはならない。いろいろな理屈をならべて問題の矮小化をはかる向きもあるが、この問題には性質の悪い病巣が潜んでいる。

◇ その一つが、無責任体質である。「内閣総理大臣 安倍晋三」の名前で招待状が送られているが、どうしてその人に送られたのか、はっきりしない上に、誰ひとり説明できないし、説明しようとしない。くわえて、肝心の名簿はシュレッダーで破棄したという、急ぐ必要もないのに。後世の検証を不可能にしたこれらの行為は行政として責任あるものといえるのか。これでは適切な対応であったことの証明ができないではないか。説明責任を意図的に放棄する行為である。それにしても、電子データがないなんてこのご時世に誰が信じますか。

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