遅牛早牛

当面の政治情勢と課題(2020年6月)「地方主権、議会主権、新たな立ち位置」

1.政治情勢

1)政権への評価について

すでに政権末期の様相を呈している。一番の要因は経済動向であり、これのV字回復は難しい。中小企業は3か月、大企業でも6か月が籠城限界といわれており、梅雨時から夏場にかけて雇用情勢は急速に悪化すると思われる。とくに、接客飲食サービスや観光旅行業が壊滅的状況にあり、従来にない不況パターンとなっている。

 感染症対策では、欧米などに比べ人口当たり死者数が少ないと評価する声もあるが、東アジア、東南アジアの中ではダントツに悪く、対応が良かったとはいえない。政府に対する評価は各紙のアンケート調査が示す通りであろう。他方、感染症のこれからについての見通しは不明で、第二波の流行の可能性もあり、地球規模での収束は簡単ではないと思われる。

 新型コロナウイルスによる感染症は、わが国が抱えているさまざまな問題すなわち弱点を厳しく衝き、病巣を白日のもとに晒した。とくに中長期課題への対応が不十分であったことが明らかとなった。少子化対策、非正規労働者対策、中小企業対策などをみれば、この二十年間、スローガンだけの政治であったことを改めて実感させられる。そんな中、都道府県の感染症対策については、少なからず評価が高まっている。それとは逆に官邸・内閣への不満が渦巻いている。

 従来、内閣支持率を支えていた柱のひとつが外交であったが、ほとんどの案件が停止あるいは休眠状態となり、全体として低迷している。また、何とか一年延期で落ち着いたオリンピック・パラリンピックではあるが、まだ開催の見通しは立っていない。夏の終わりには判断が必要だが、進退いずれも茨の道で、あらためて政治的力量と責任が問われることになる。モリカケ桜クロカワへの対応がもたらした政権への不信は消えていない。さらに、カワイ問題が致命傷になる可能性が高い。

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当面の政治情勢と課題(2020年6月)その1「政治情勢」

1.政治情勢

1)政権への評価について

すでに政権末期の様相を呈している。一番の要因は経済動向であり、これのV字回復は難しい。中小企業は3か月、大企業でも6か月が籠城限界といわれており、梅雨時から夏場にかけて雇用情勢は急速に悪化すると思われる。とくに、接客飲食サービスや観光旅行業が壊滅的状況にあり、従来にない不況パターンとなっている。

感染症対策では、欧米などに比べ人口当たり死者数が少ないと評価する声もあるが、東アジア、東南アジアの中ではダントツに悪く、対応が良かったとはいえない。政府に対する評価は各紙のアンケート調査が示す通りであろう。他方、感染症のこれからについての見通しは不明で、第二波の流行の可能性もあり、地球規模での収束は簡単ではないと思われる。

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時事雑考 「束ね法案とおとり効果」

◇5月22日、東京高検の黒川弘務検事長の辞職が承認された。賭けマージャン、産経新聞社記者が手配したハイヤーへの同乗などに加え緊急事態宣言下での軽率な行動にも激しい批判が寄せられ、一連の問題行動に対し訓告を受けた。処分の軽重をめぐり異論があがっているが、すでに辞職しているので処分は変わらないだろう。また、森雅子法務大臣が安倍晋三首相に進退伺を提出したが、慰留を受け、引き続き法相の立場で検察の信頼回復に努めることになった。

 この場合、検察の信頼回復の前に、首相の信頼回復が必要ではないか。

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時事雑考 「新型コロナウイルス感染症がもたらす変化(一層目)」

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらす災厄が三層構造であり、一層目は感染症そのものによる災厄、二層目が社会・経済が被る被害としての災厄、そして三層目が最終的に政治が受ける変化と変調としての災厄と、とりあえず分けたうえで、影響全体の把握を図りたいが、三層構造といっても当然層目が鮮明になっているわけではなく、それぞれの災厄を構成する個々の被害ともいうべき事象によっては、細部の形態に違いがあるので、結果、総覧したときにまとまりの悪さが残るかもしれないが、このことについてはあらかじめ容赦願いたい。

新型コロナウイルス感染症による直接的影響について

 さて、一層目の新型コロナウイルス感染症の影響であるが、直接的には医療分野に新たな変革がもたらされると思われる。それは、検査体制、入院、隔離、感染経路の探索、感染予防などの感染管理の分野から、治療法などの分野や薬剤開発分野など多くの領域において、感染力の強いケースを想定した方向で改善が図られると思われる。また、医療機関の物理的構造も大きく変わるであろうし、パンデミック時の緊急対応への備えも格段に強化されると思われる。

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時事雑考 「新型コロナウイルス禍にあって、松明を掲げるのは?」

まだまだ分からないことだらけ(新型コロナウイルス)

◇素人ながら、新型コロナウイルスについて耳学問とウェブ検索で、何かしら詳しくなったつもりであったが、まだまだ分からないことが多い。まあ自粛、自粛で時間の余裕もあるので、ゆらゆらと書きすすめたい。

◇レムデシビル、アビガン、アクテムラ、イベルメクチン。なんだか四銃士のようで心強いが、ここは五銃士、六銃士と続いて欲しいものだ。これらの薬剤などで効果的な治療法が確立されるなら、今ある不安の大部分は解消されるだろう。さらに、死者数が減少すればまるで何ごともなかったかのように、元どおりというわけにはいかないが、人々の気分は2019年の景色に戻っていく。

 

◇そのうえ、ワクチン開発が成功すれば、さすがのCOVID-19も普通のインフルエンザのなかま入りということか。いずれにせよ、抗ウイルス治療薬とワクチン、そして自己免疫抑制剤がそろえば少なくとも収束が射程に入るわけで、そうなった時点で、ようやく新型コロナウイルスの影響について改めての議論ができそうである。もちろん、いつごろかが最大の問題であり、近ければ楽観的に、遠ければ悲観的に議論は運ぶであろう。

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時事雑考 「新型コロナウイルスがもたらす三層構造の災厄」

人類の歴史は感染症の歴史でもある、過去に学ぶ謙虚さが大切である

◇「感染症が歴史を変える」とわけ知り顔にいってみても、もう少し分かりやすく説かなければ話は前に進まない。もちろん、話をどれほど前に進めても未来は常に不確定であるから、話は話に終わり、なんの役にも立たないことが多い。

 新型コロナウイルスの蔓延が引き起こした災厄は実のところ、いとも簡単に感染していく私たち人類の問題であって、ウイルスに責任(?)があるわけではない。保健所の数を減らしたのはウイルスではない。人口当たりの医師数を抑え込んでいるのもウイルスではない。医療用マスクや防護服を海外依存にしたのもウイルスではない。2009年の新型インフルエンザに学んだはずなのに、すべてこちらの問題なのだ。

   

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時事雑考「感染症対策に政治の力量を見るー騒動を起こすなー」

◇忌々しいと思うが、敵はウイルスで正式な生物ではないそうだ。何が正式なのかよくわからないが、生物の細胞内でないと長らくは生き(?)られない。この「長らく」が時間単位なのか、日数単位なのか、またどんな環境下なのか、それらの内容によって対策が変わるのだろうから、研究成果が待たれる。

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時事雑考 「感染症対策には、ためらう時間などない」

◇ 三月は去り、新年度を迎えたが、世界は新型コロナウィルスに翻弄され、今も災禍は続いている。春なのにブルーとグレイの四月になるのか。

◇ 事態を甘く見たことは間違いない。いつものことだが、第一報を耳にした為政者にとって、得体のしれない「その出来事」は余計なこと、少なくとも彼はそう感じたに違いない。想定外の事態だしもちろん未経験。微視情報はあるが巨視情報はない。そこで、キリッと立ち上がり「手順」にしたがって采配をふるえば、最善でなくとも次善の策を講じることができたであろう。

 しかし、多くの為政者にとって、長らく座り続けた椅子の表面には接着剤がべたっと着いていて、どうしてもキリッと立ち上がれない、のだ。

 そうでなくともやることは山のようにあるのだ。次の党大会はうまくいくかしら、主席はどう思っているのだろうか、来週の集会は成功するのか、最近の次席の動きが気になる、といった人々から見れば些末なこと、それが接着剤の成分である。

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遅牛早牛「気持ちはザワザワ、通りはサムザム、問題はゴロゴロ」

◇  「ⅭOVID‐19」まるでロボットみたいだけど、3月11日世界保健機構(WHO)はパンデミック(世界的大流行)を宣言した。宣言したからといって、何かが起こったり、変わったりするわけではないらしい。

パンデミックとは「全世界の人がこの感染症にさらされる可能性が高いと考えられている状態」(同マイク・ライアン氏)というが、以前からそう思っていた、ほとんどの人が。

◇ 本欄2020年1月24日付「2020年からの課題と予想-②-フェイク・ニュースと解散風が政治を劣化させる」で、嘘と噂から人々を守るのが政治の役割だと書いたが、現状は嘘と噂が蔓延している。免疫は医学用語であるが、免疫力は医学的に確認されていないという。にもかかわらず、メディアでは氾濫している。食品などの宣伝の場面でよく出てくる。はっきりしない用語を使って食品などを宣伝するのはよろしくないのではないか。とくに、深刻な症状の方の前では使わない方がいいと思う。

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「2020年からの課題と予想 ④ 労働運動と組織率(2)」

各国の労働組合組織率の動向と労働協約適用率

 昨年、2019年のわが国の推定組織率は16.7%で、おおよそ雇用者6人に1人が労働組合に加入していることになる。時系列でみれば、1947年以来長らく30%以上(最高56%)であったが、1983年29.7%と30%を下回って以降、2008年から2010年を除き前年比下降を続けてきた。他の主要国もおおむね低下傾向にあるが、2018年の同組織率は、イギリス23.4%、日本17.1%、ドイツ16.5%、韓国11.8%、アメリカ10.5%、フランス8.8%となっている。(「労働政策研究・研修機構、諸外国の労働組合組織率の動向」から)

 また、イタリアは30%を超え、北欧3か国やデンマーク、ベルギーは50%から70%近くになっている。

 統計データの国際比較は、統計の定義や調査時期あるいは調査範囲などに違いがあり、完璧な比較は難しい。傾向を知るだけならOECDの資料が使いやすく、労働統計については各国の労働法制の違いが大きいことから、共通性を持つOECD諸国内での議論が中心になっている。

 OECD諸国の中では、わが国の組織率は低いグループに位置する。他に、フランスは8.8%と最下位グループではあるが、労働協約が適用される労働者の割合(労働協約カバー率)は90%台である。このように、組織率と労働協約カバー率はセットで議論されることが多く、とくに、ヨーロッパの主要国では組織率よりもカバー率の方がはるかに高く、産業別団体交渉の成果が広く波及する傾向にある。ドイツは組織率では近年日本とあまり変わらないがカバー率は50%を超えており、労働組合の社会的影響力はわが国よりはるかに高い。ちなみに、わが国のカバー率は、ほとんどの労働協約が企業別で締結されていることから交渉の成果が企業の枠を越えられず、また協約未締結ケースもあり、労働組合組織率よりも低くなっている。これは国際的には珍しいといえる。

 労働組合組織率と労働協約カバー率の比較は各国の労働法制、労働組合の歴史、社会からの認知、産業構造など多面的な分析が必要で、全体像をつかむのはなかなか難しい。

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