遅牛早牛

財政審、31年度予算編成等への建議について(「悲劇」ってなに?)

財政審の建議がらしからぬ表現

 財政制度等審議会(財政審)の平成31年度予算編成等に関する建議(11月20日)には「悲劇」が4回使われている。「共有地の悲劇」として2回、「悲劇の主人公」として1回、「悲劇から守る代理人」として1回。他に「負担先送りの罪深さ」、「歪んだ圧力に抗いきれなかった」、「憂慮に堪えない」、「エピソードに基づく政策立案」、「甘い幻想」と審議会にしては異例の表現を連ねている「平成財政の総括」という6ページほどの文章を一読して、これは言い訳なのか敗北宣言なのかはたまた何なのかと戸惑う。(以下「 」は同建議からの引用)

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「政党・政治の歴史を踏まえた今後の政治」ー電機連合NAVI №65(2018年Ⅰ号)から転載ー

目の前にある悲嘆と悲観

2018年は例年にも増して騒がしい年になるだろう。地球は一つ。国境はあるが宇宙船から眺めるとそんなものはない。だから壁を造らねばと、彼の国の大統領はいう。そんな中、壁があっても無くてもイエメンの惨状はさらにひどくなるだろう。港湾の封鎖は大量死への確実な一歩となる。

昨年12月末台風27号がフィリピンを襲い大量の雨を降らせた。気候変動を原因とする自然災害が多くの人々を害する。干ばつや山火事の被害ははかり知れない。

さまざまな紛争の出口は死者、負傷者、生活破壊、避難民の山である。終わりのない悲劇の中で当事者は自身の正義を叫ぶばかりだ。

世界人口の約半数36億人分の総資産と同額の富が8人の富豪に集中していると2017年オックスファムは伝える。富の集中は加速度的だ。タックスヘイブンに置かれている個人資産はおよそ7.6兆ドル。その推定節税効果は1,900億ドルで毎日1ドル1年間5億2千万人に配布できる額である。所得再分配における金の流れでいえば逆向きである。加えて異次元の金融資産集中。これで災いの起こらないはずはない。

強欲資本主義と指弾されたのはリーマンショックの後だったか。否もっと前から金融経済化の弊害は指摘されていた。働かない金が金を生むことをどう説明すればいいのだろうか。子どもたちに。

これらの悲嘆と悲観から本当に脱却できるのか、たしかなのは悲嘆と悲観の放置が暴力を生み、暴力はカタストロフィー(崩壊)を招くことである。

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閉会してはならない、結論が出るまでは

 けだるくて感じが悪い。国会を中心とした政治状況が、である。何かの病のようで、確たる病ではない。これが「未病」なのかと思いつつ、新聞に目を落とすと私大アメフト部の悪質タックルをめぐる騒動が長引いている。大学の運動部は華やかで、ニュース価値も高い。だから枠からはみ出た部分は何かと騒がれるものだが、今回のケースは「監督の指示による反則タックル」の疑いを起源とする連鎖反応型騒動である。

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三月十六日、即詰みの風景

 将棋ブームである。名人戦などでは別室に大盤が用意され、解説や予想でにぎわう。テレビ対局ではプロ棋士による解説が放映される。

 「詰んでますね。う~んと。」解説者がつぶやくと、見る側に緊張が走る。「いや、失礼しま~した。う、こうなるとわからないか。いやそうでもないか。」と独り言がつづく。どっちでもいいから、はっきりしろ。と内心いらだつ。

 一時間半の番組の中で、ここがもっとも面白い場面である。私のような素人には、5手先、7手先を読むのは難しい。詰将棋問題には正解があるからいいようなものだが、詰むのか詰まないのかが分からないと素人は途方に暮れる。ましてプロ棋士が読む何十手先の詰み手順の有無は素人には神がかりである。また詰み手順があると思えても完全に詰むかどうか短時間での検証は難しい。だから解説者もはっきりはいわないのだろう。

 また詰み手順があるにしても、対局者が間違えると詰まなくなる。手順が前後するだけで局面が変化する。よほどはっきりした手順でない限り解説者はいわない。即詰みがあるのにそれを見逃すことはプロ棋士の恥である。あからさまにいわないのは対局者への気遣いもあるのではないか。

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裁量労働制をめぐる答弁撤回ー答弁は政治家の責任ですー

 129日衆議院予算委員会において「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と安倍首相は答弁したが、216日午前の衆議院予算委員会では「129日の私の答弁は撤回するとともに、おわびを申し上げたい」と撤回した。

 首相の国会での前言撤回はきわめて珍しいことである。しかしこの時点で何がいけなかったのか、つまびらかではない。というのは216日午後、「データもあると話をしているわけで、これのみを基盤として法案を作成していない」との発言を朝日新聞は伝えている。確かにデータがあることは事実である。だから20157月の衆議院厚労委員会で当時の塩崎恭久厚労大臣も同様の答弁をしている。

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第48回総選挙(葦の髄から天井を覗く)

 奇襲解散からひと月。「自公再び3分の2」(朝日新聞23日朝刊)の見出しは何となく不満げである。「立民躍進、希望苦戦」と続く。「立民躍進」はその通りだが、「希望苦戦」との評価は議論を呼ぶ。現職5750に減少した点は明らかに苦戦である。しかし選挙戦をつぶさに見た立場からすればよく踏みとどまったと思う。当人達はよもや立民の後塵を拝すとは露にも思わなかったと思うが、台風並みの逆風の中50議席は立派なものではないか。いわば底値、でしょう。

 一方の立民(朝日新聞24日朝刊では立憲、したがって以降立憲とする)は現職1555に、一議席を他党に譲っての大躍進である。希望から排除されたか、されそうだったか、個別にいろいろあったと思うが、無所属組が自力で生き残りを決意したのに比べ、集団でスクラムを組んでの生き残り作戦が図に当たった。

 枝野代表の功績である。被害者然とし、かつ気丈に鎌首を持ち上げる姿に人々はある種の好感情を抱いたことは間違いない。しかしそれだけではないだろう。同情票だけで野党第一党の地位を築けるほど甘くはない。

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