遅牛早牛

時事雑考「2024年4月の政局-裏金事件と日米首脳会談-①」

【まえがき 新年度となる4月には新入社員と新入生が桜の花にむかえられる。むかえる桜木は'染井吉野'がほとんどで、これはエドヒガンとオオシマザクラの交雑によるものの中の一樹を始原とする栽培品種であり、生まれは江戸時代後期の染井村、現在でいえば豊島区駒込のあたりで、当時は大名屋敷の植栽を請け負う植木業がさかんな地域であった。接ぎ木による栽培なので同一地域での開花時期がそろうことから、また花弁がややおおきく開花期間もすこし長いなど、ことのほか豪華でいわゆる花見が成立する品種(クローン)であるといわれている。

 多様性の時代にあっても、愛でるサクラは均一性、斉一性の象徴ともいえる'染井吉野'のクローンであるのがなにやらおかしくもある。そのクローンにむかえられる新人に求められるのが個性と創造性であるから'染井吉野'とは逆方向にということであろうか。

 ともかく、整然と散っていくサクラ吹雪が好まれるが、なにも散りぎわまで揃えることもないのにと思う。そういえば、同年同月同日に生まれんことを得ずとも同年同月同日に死せん事を願わんと『三国志演義』では劉備、関羽、張飛の三人がぶちあげる桃園の誓いはとてもよくできていて見事なクライマックスシーンとなっている。話の筋でいえば結局そうはならなかったが、「共に散る」ことが同志愛の頂点といいたいのであろう。清く壮絶でありまたなまめかしさをふくんでいる。

 なまめかしいといえば有名な『同期の桜』の原詩といわれている『二輪の桜』(西条八十作詩、雑誌『少女倶楽部』昭和13年2月号掲載)は少女のつたない恋の歌であろうか。詩は表むき軍装である。妖艶さにはさらに日を要するというのに、あと数日もすれば散っていくのだから、熟することのない青いままの恋であろう。などと想像はつきない。

 ところで、わが国の労働界では連合結成時から会長と事務局長として名コンビと称された山岸章氏と山田精吾氏にも別れの時が1993年におとずれた。1989年から2期4年の激務を終え山田事務局長が退任することになったのである。この時点において山岸会長の3期目に対しいろいろな声があがっていた中で、「散る桜残る桜も散る桜」と連合本部の役職員をまえに己が心境を良寛の辞世の句に託した。良寛というよりも海軍航空隊のにおいを感じたが、本人は一年後の退任を予告したかったのであろう。その場に居あわせたなら、だれだってそう受けとめたと思う。名コンビといえども「共に散る」ことはむつかしい。いや、散りぎわこそ思うようにはいかないのが人生である。

 散りぎわこそ思うようにはいかないというべきなのだが、二階俊博氏の次回不出馬宣言はさすがに手際がいいと感じてしまう。突き落とされるのであれば自分で飛び降りるといわんばかりに「全責任は自分にある」と決した。評論は勝手であるが実践はむつかしい。筆者などは二階氏がいなくなった自民党あるいは与党がうまくまわるのか疑問に思っている。ほめているのではない、それほど彼我の価値観にはちがいがあるのだが、さりとて貶(けな)すこともないのである。

 かなり塩味のきいたところと脱藩議員(失礼!)を自派に受けいれるあたりが「あしながおじさん」風であり、さらに主要紙から花まるなどをもらっていないところが本物ぽいということである。などと評価をすると、おそらく立憲民主党や日本維新の会からは「てんご(悪ふざけ)いうな」といわれるであろう。

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「研究会の準備と現下の政局についての一言」

【今回は、時事雑考ではなく定例の「研究会」の企画をテーマとしている。「研究会」については前回が2021年2月掲載なので丸3年間の空白がつづいている。感染症へのおそれが足の運びを鈍らせていたわけであるが、くわえて筆者の引っ越しも影響している。ということで「研究会」の再開をねらっての提案である。】

【さて、すでに新年度が視野にはいっているというのに政治の場では「裏金事件」の尾が切れず、ずい分と難渋しているようである。その原因のひとつが鳴り物入りではじめた政倫審が生煮えで終わったことであろう。政倫審への期待感を高めたのはマスメディアなのであるが、これは商業性をもつ組織としてはしかたがないことであると思う。「政倫審なんて大したことにはならない」と斜にかまえ、いかにも訳知り風にあつかっていたのでは報道にはならない。太鼓をたたいて期待感を高めないと商売にはならないのである。

 しかし、そうであったとしても政倫審がビッグニュースを生む舞台ではないことは経験からいっても報道関係者は理解していたと思うのだが、結果は予想通りもの足りないものであった。だから、真相が明らかになると期待していた人びとは不満を募らせることになったが、そういった不満を追い風に「証人喚問」をせまっていくのが野党とそのシンパの目論見なのである。この罰則をともなう「証人喚問」の心理的圧力は相当なもので、虚偽発言であることの証明が困難であるとわかっていても、応答はたいへんなのであろう。汗だくだくの場なのである。ということで記憶にあるなしについては外からその真偽を確かめられないことから「記憶にありません」という答弁が多用されてきたということである。このさき「証人喚問」をやるにしても「記憶テスト」になる可能性がたかいと思われる。

 ということで真相解明という意味ではむだなように思われるが、疑わしい宙づり状態がつづくことが野党にとっては好都合なのであろう。くどいようであるが、検察と法廷以外の場で真相が暴かれることはめったにないのである。ただし、隠せばかくすほど、また白(しら)をきればきるほど、疑惑がふくらみ腐臭がひどくなるので、野党が真相解明と称しながらもろもろこだわるのは戦術としても意味があるからであろう。

 ここで、突きはなすようだが、知りたいことのほとんどはすでに明らかではないか。ただ、証拠がないだけで有権者の投票にあたっての判断材料としては十分だと思っている。もし証明できるのであれば検察はさらに多くを起訴していたであろう。国会は立法機関であって司法機関(裁判官弾劾を除き)ではない。権能においても不十分であるのだから、真相解明をてこに国会の時間資源を浪費してはならないと思う。とりわけ予算案は年度内に自然成立するのであるから、参議院での予算審議は貴重である。国会での質疑応答は予算執行にあたってのガイダンスの役割を負うことから細目もふくめ丁寧におこなうべきである

 また、3月17日には自民党大会が開催され「政治と金」への当面の対応がしめされている。さらに、不記載であった議員への処分も国会会期中には明らかにされるという。(それでは遅いことを多くの議員が理解しているので、党内的にも早められるであろう)それをまっての議論再会ということになるのではないか、と予想している。

 そこで、「どうせうやむやにするのだろう」という予断をもって酷評している向きも多いが、世の中そういう人々だけではなく実際のところ不十分な対応におわってほしいと期待している人たちがいることも事実であろう。一連の騒動には権力をめぐる政争という側面もあり、どうしてもドロドロとした策謀がうごめくことは止められないし、もっといえば内心では自民党にけじめをつけてほしくないという立場もあると思われる。とりわけ、自民党の支持者の間においても穏便な終息を期待する向きもあるのではないか。

 しかし、国民全体の視点でいえば、そういうことでは困るのである。国のかじ取りが難しい時であればこそ、政党が自らけじめをつけることで国民からの信頼をとりもどすことが一等重要であり、そのためには深甚なる反省がひつようなのである。もちろん政党に深甚なる反省などがありうるのかとも思うが、そういった反省過程を元からありえないと全否定したところで、政治の砂漠化を止めることはできないわけで、唯一手元に残っている投票という鞭を握りしめながらここは反省過程を厳しく見つめることに「被統治者である主権者」としては落ち着かざるをえないのでないかと思う。

 さて、今回の自民党の主題は「安倍派処分」と「長老引退(追放)」であると考えているのだが、野党においては岸田総理をさまざまな手で追及しているようにみえて、しかしじつのところは岸田さんに手を貸している面もあるように見うけられる。たとえば今回すすんで政倫審にのぞみ弁明したのは岸田文雄氏と西田昌司氏であったというあたりがなんとも象徴的ではないかと思う。つまり二人の発言の肝は「責任をとるべき者が居る」ことと、それは「小さくいえば自分もふくまれるが、大きくいえば自分はふくまれない」ということで、党内闘争宣言の趣きがあるように思われる。

 自民党内においては、派閥解消が30年来の宿題であったのだから、まだ半壊状態とはいえ筆者などは今回の暴走的決断を評価している。くらべるのは悪いと思うが、野党においても各党とも宿題をかかえているのだが、今のところ果敢に挑戦しているとは思えないのである。今回、派閥から金権を取りあげ政策集団化に成功すれば、残念ながら(?)またもや自民党が先頭にたつことになるであろう。ともかくもきびしい試練をうけたグループこそが鍛えられるということである。

 内閣支持率が歴史的な低水準にあることから、岸田政権がすこぶる脆弱であるかのようにうけとめられているが、しかし派閥が半壊状態にあるなかで、総理であり総裁である岸田氏が手にしている権限は、役職人事権、選挙公認権、資金配分権など絶大ともいえるもので、今でこそ十分発揮できていないのであるが、環境次第でさまがわりになると思われる。

 にもかかわらず脆弱というよりも虚弱と見られているのがふしぎではある。それは見かけというかスタイルの問題であって、やっていることを吟味するならば、狷介ではあるが結果において老獪でもあるといえるであろう。筆者が評した「暴走宰相」の面目躍如であって、世評でいわれるほどの低品質ではないと思っている。もちろん嫌われていることはまちがいないのであるが。

 つまり、プロセスこそ感心できないが(酷いと思うが)、やっていることはそこそこの内容であって、そういう成果の面に対してはほとんどの批判勢力が運といいたいのであろうが、3月段階での賃上げ率(連合集計5.28%)などは、政府は関係ないと大声をだしてみても結果は結果であって、すくなくとも政労使でタッグを組んでいることは事実であるし、連合もそれを否定していないではないか。運も実力のうちであろう。

 この点だけでいえば立憲民主党は損をしている。昨年の臨時国会では岸田総理が経済三唱、泉代表は賃上げをふくめ沢山三唱、玉木代表は賃上げ冒頭三唱となんか分かりやすかった。とはいえ2023年10月の段階でいえば、2024年春の賃上げが連合傘下では前年を上回ることはほぼ見えていたわけで、のこるのは円高などの急変時への対応が気になるといった程度であったと記憶している。賃金交渉に知悉していれば野党として「かっこいい立ち回り」もありえたのではないかと思っている。結局のところ、せっかくの賃上げ三唱のわりにはおくれをとっているのではないかとみられている分、損しているのではという意味である。こういった成果争いは非対称な関係であるから、単純な比較はアンフェアというべきであるが、連合が支持団体であることが、小企業、未組織、非正規からは縁遠いというか、非友好的な見方をされているように思われる。この分野では野党にも活躍の場があると思われる。

 また、国民生活とは直接関係しないといっても株価が4万円台を固めつつある。これも明るいことには違いない。さらに、TSMCの工場誘致で一地域とはいえ活性化している。ものづくり拠点を国内にとりもどすことは産業あるいは経済衰退への特効薬ではないか。くわえて国防を考えた時に、戦闘機は必需装備であることから英伊との共同開発は予算やメンテナンスだけを考えても有用であろう。不要なものはすぐ買えるが、ひつようなものはなかなか買えない、買うことができてもべらぼうに高いのである。高価な装備は継戦上の欠点である。戦闘機は不要であるというのであれば別の話と思うが。

 また、3月19日、日銀はマイナス金利をはじめ金融政策の見直しを決定し、正常化へ一歩を踏みだした。次は、小企業、未組織、非正規における賃上げであり最低賃金の引き上げであろう。連合もふくめ政労使スクラムの真価が問われる場面がきている。あわせて専任の総理補佐官の真価も問われるということであろう。

 すこし現政権をもちあげ過ぎのように思われるかもしれないが、仮に立憲民主党を中心にした連立政権ができたとして、たとえば先ほど記した項目について岸田政権とは違う方法でどれほどの成果がえられるのであろうか、また少子化対策において増税なしに有効な施策を打つことができるのであろうか。健康保険料というもっとも徴収しやすい、つまり不満がでにくい財源に着目するなど思わず「卑怯者!」とさけびたいが、5.28%もの賃上げによる保険料収入増が確実に発生するのであれば、連合として目くじらを立てるほどのことでもないと筆者などは安易に考えてしまうのである。近未来において立憲民主党などが政権を手にするのであればなおさらのことで、前政権のわだちを巧妙に活用してこそ、安倍政権のように長期政権が可能になるのである。大胆な現実路線を考える時期ではないかと思っている。

 最終的に雇用労働者の名目所得増がどのていど見込めるのかがまだ不明であるので生活支援策について断定的なことはいいがたいが、本年の6月には定額減税が実施されるので、おおむね6月7月の可処分所得は世帯あたり4万円(所得税3万円+住民税1万円を本人分と扶養親族人数分を税額控除)以上増えることになり、事務処理は複雑になるが生活面では中元手当などの一時金とあわせ砂漠のオアシス状態になると期待している。また、低所得者支援等も実施されている。これらは昨年の臨時国会で泉代表が提起したインフレ手当給付に相当するものといえるかもしれない。

 ところで、名目所得が増加すればとうぜん所得税等が増えることから税収が伸びることになり、今年中にもいわゆる課税最低限をあげることも可能であろう。少なくとも物価上昇分についての減税措置などは理屈がとおると思われる。また、春の賃上げから取り残される可能性の高い非課税世帯には直接給付を考えることになるのではないか。といったように、政権としてはいろいろなアイデアが浮かんでいると思われる。

 現時点では裏金事件もあって立憲民主党としては追い風的であるが、「安倍派処分」と「長老引退(追放)」の内容によっては人びとの政権への評価がかわる可能性もあると思われる。この点は用心しなければならないであろう。なにしろ相手は暴走宰相なので「まさかの一手」と野党のアイデアを臆面もなくとりこむのがお家芸であるから、油断は禁物ということである。

 そうなると野党は足元をすくわれるということで、与党の一角からだされた、年内のおそい時期の解散という異例の発信に驚いているが、まさか年末調整を視野にいれての発信であるのであれば、解散時期についての研究がそうとうすすんでいるということであろう。

 さらに、来月の訪米が支持率反転のきっかけとなるのか、これはだれにも分からないが、目先が裏金事件一色なので、逆に転機となるかもしれない。

 岸田氏にとって一擲乾坤を賭す解散総選挙はワンチャンスしかないのだから、おそらく必殺の構えであろう。だから侮ってはならない。前々回にも提起したように、立憲民主党は腰を低くしてすべてを譲歩してでも野党連携をすすめるべきであると思うが、あらためて薦める気はない。なぜなら、口先はともかく野党第一党指向が本心であるかぎり議員一人ひとりの当選戦略が優先されるので、最終的に選挙協力には期待できないということになる。

 ということで、泉代表も死にものぐるいの暴走宰相を正面でうけとめなければならない。それには単独ではとうてい無理である。合従策なしに勝機を迎えることはないとすべての人が考えていると思う。】

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時事雑考、「2024年3月 液状化に向かう日本政治と安全保障」

【2024年度予算の年度内成立が確定した。難航したがほぼ予定の着地といえる。民主主義は多数決ではないが、民主政治は多数決である。だから造反のないかぎり内閣提出法案は可決されるはずであるが、不祥事があると政治日程が不安定化する。今回は「裏金事件」が災いしたが国会日程への影響は軽微といえる。

 ところで、3月2日土曜日が休みにもかかわらず衆議院で予算審議がおこなわれたのは、与党側の要請を立憲民主党の首脳部が受けいれたからだと伝えられている。その理由は特別委員会の設置や政倫審の継続などの与党の譲歩がえられたことと、野党としてのまとまりを優先し日本維新の会や国民民主党の声を尊重したためということのようである。尊重なのか忖度なのかくわしいこは分からない。3月4日の月曜日でもよかったのではないかという声もあるが、それでは予算の自然成立日(参議院が、衆議院可決の予算をうけとった日から30日以内に議決をしなければ衆議院の議決を国会の議決とする)が4月2日となり、参議院の予算委員会の審議次第で年度はじめの処置が必要になる。現下の情勢を考えれば予算の年度内成立すなわち3月2日までの衆議院の可決に岸田総理としてつよくこだわらざるをえなかったということであろう。

 この点について3月4日の参議院予算委員会では、立憲民主党の議員がえらい剣幕で岸田総理にせまっていたが、のがした魚は大きいということであろう。つまり、参議院予算委員会を舞台にしたかけひきにおいて、さらに参議院の政倫審をふくめて野党優位の審議をおこなうという目論見であったということであろう。

 しかし、その目論見ははずれ参議院予算委員会としてはふつうに、できれば29日までに来年度予算案に対する参議院の意思を決定するひつようがあるので、攻守の立場が逆転というよりも元通りになったということであろう。

 予算の年度内自然成立が確定したことで、岸田政権は一息つけるわけであるが、引きつづきの政倫審もきな臭いようで、さらに順調そうに見えるが賃上げにも中小・非正規の壁があり、日銀の金融政策も袋小路のようで、課題山積といえる。とくに、実質経済成長のマイナス化が不気味で、いいのは株価だけという政治的には嫌味な空気である。

 さて、政治資金をめぐり関係議員一人ひとりの政治責任を追求する声は次の総選挙までつづくと思われる。安倍派なのかそれとも旧安倍派というべきかふと手がとまるが、安倍派の人たちがとくべつにグルーピングされるのは、天下無双の派閥として権勢をほしいままにしていたことが災いしているのであろう。世間では「盛者必衰の理」と受けとめていると思われる。そこで、グルーピングの通称として「裏金議員」というのは烙印がきつすぎるので賛成しかねる。(といっても、そうなるだろうが)また「還付議員」というのもあるが水漏れしそうで笑ってしまう。あるいは「簿外議員」というのもあるが、べつの意味あいが哀愁をよぶので止めたほうがいい。ともかく、世間のきびしい風を覚悟すべきだし、有権者には選挙で白黒をつける責任がある。これで投票率がさがるようでは有権者の負けということかもしれない。

 保守派用語である「禊(みそぎ)」をつぎの選挙でうけるという発想があるのは有権者を甘く見ているからだろう。禊は選挙の前にやれということで、選挙で禊をやる議員は落選ということではないか。

 あれこれいっても、まとまりの悪い野党にとって「裏金議員」追放の御旗をかかげられることは、政策の一致といった高いハードルを越えることなく、すり抜けられるという意味でホクホクであろう。野党連携の成功率が高くなるといえる。また低迷気味の立憲民主党がそれらの小選挙区で譲歩に徹すれば自民党を議席減に追いこめるかもしれない。

 そういった野党連携に道をひらく機会を与えないためには、選挙の前までに党内できびしい処分をくだすこと以外に手がないのではないか。起訴されなかったからといって罪がないということではない。また、単純なミスともいえない。派閥が指示をするという意図的組織的な不記載であり、法違反である。岸田総裁には処分という大仕事がのこされている。で、処分される人たちはどうするのか。処分の内容にもよるが、公認の可能性があるのであれば受けいれ反省することになるであろう。そうでなければ集団離党するか引退するか、それとも党内で反抗するかなどパターンはいろいろ考えられるが、不記載という違反をひっさげての反抗では先が見えている。想像以上に前途多難である。

 岸田総理の評価がわれている。それよりも、正直いって派閥解消が事態を複雑にすると思われる。つまり、自民党内の政局は派閥関係であったので分かりやすかった。しかし、派閥を解消すると今までの方程式がつかえないから、先が見えない。先が見えないと何ごとも決められないことになるのではないか。

 それと法案の取りまとめ、あるいは内閣提出法案の事前審査などの本来の議員任務がどうなるのかも重要である。立法府なんだから審議がおろそかになっては困る。全般的に法案審査の水準がさがっているようで、省庁への対応力もよわくなっていると心配する人もおおい。

 年度内成立が確定したなどと喜んでいるようであるが、その予算にしても112兆円をこえる膨満ハリボテ予算ではないか。財政規律や行政改革はどこにいったのか。借金でつじつまをあわせているだけで、後世へのつけまわしではないか。いつまでも続けられるとは思えない。今のままでは危うい、と思う。

 いまさらガラガラポンとはいわないが、せめて底にたまったドロドロだけでも何とかしなければ内憂の集積場になる。ということでやはり、「安倍派処分」と「長老追放」が岸田総裁の歴史にのこる大仕事であると思っている。

 あとは、日米同盟の新定義であるが、「是々非々」というのは「ノーといえる日本」であり「任怨分謗」とは「なにがあっても支えていくから」ということで、どちらを選ぶのか。分断症状の米国だからわが国の選択は値千金といえるのである。彼は危険と分かっているのに賭けてしまう、そんな政治家かもしれない。】

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時事雑考「2024年2月の政局-政治と金から賃上げへ-」

【この時期、酒蔵がひらかれ新酒がひろうされる。秋に収穫された新米が仕込みをへて35日ほどで酒になる。灘、西宮、伊丹と近隣の酒どころでは蔵びらきに酒好きが列をなす。その一人としてならんでいる。ならぶことが楽しい。30分ほどで番がきて、利き酒セットを紙製ホールダーにのせる、そしてたかだか50ccほどをゆっくりと口にふくんでいく。多く飲むことがかなわなくなって久しいが、陶然とあたたかい海にしずんでいく感覚にかわりはない。ということで2月の生産性は低下してしまうのである。

 ところで、昨年10‐12月期の経済成長率がマイナス0.1%となり年率換算では0.4%の減速となった、尋常ならざる驚愕の落ちこみである。良くないとは思っていたがまさかマイナスになるとはと多くの専門家も驚きを隠せない、とか気楽にいってんじゃね~よ(失礼)と毒づきたくもなる。そりゃ実質賃金が前年比で2.5%も減少しているのだから、個人消費が失速するのも当然のことであり、個人消費がふるわなければ経済はマイナス成長となるのは必然といえる。だから経済専門家は想定の範囲内であったというべきであった。

 ゆゆしき事態の原因は「物価にノックアウトされた賃金」すなわち昨年の賃上げが不足していたことにあるわけで、まさにこの国の経営者の多くがケチで予見力がないことの証左であるといえる。

 といいながら、岸田政権の責任はひとまず措くことにする。それは、なんでもかんでも政府の責任にして一件落着とするマスメディアや経済評論家の無為無能ぶりをまずは浮きぼりにしたいためであって、政権政党にたいする責任追求はこのさい有権者にまかせて、ここでは反政権を装いながら、本当のところは自分ではなにも考えてない「ブルシット・ジョブ」にいそしんでいる連中にたいして最大級の罵詈雑言でなじりたおしたいのである。

 ほんとうに賃上げ不足であった。昨年の賃上げ率が連合や経団連また政府調査においても近年まれにみる高さであったことは事実ではあるが、それで充分ではなかったのである。本当は秋の物価上昇を想定し9月にも賃金交渉を再組織すべきであったと思う。大手のためではなく未組織、小企業のためにである。

 神経質な筆者の気分の反映のようではあるが、経済運営において、この時期年率換算で0.4%もの落ち込みは致命的とさえ思うわけで、本文でもふれているが、2024年の賃上げでは実質賃金の落ち込みをどこまでリフトアップできるのかが焦点となるであろう。とくに連合傘下の労働組合が要求満額を確保できたとしても国全体としてみれば昨年の物価さえもリカバリーできない可能性のほうが高いことから「岸田賃上げ路線」は逆風にみまわれるのではないかとじつは心配しているのである。経団連と連合は当年度の物価状況を見ながら年央にも追加交渉にふみきることを考えるひつようがあるのではと思う。

 なぜなら4月には5000以上の品目の値上げが予定されている。2月は消費の底である。消費者の不安が最高潮になれば1-3月の成長率がさらに下振れするであろう。また中小組合への回答は5月が山で、未組織、小企業での賃上げは夏場の最低賃金と連関している。つまり8月の実質賃金の水準次第では半永久的に雇用者所得の回復が見込めないという氷河期にむかうような雰囲気になるのではということである。

 そういうことで、賃上げの確証もないのに「物価安定目標2%」をかかげてきた日銀の能天気な庶民窮乏化策に怒りをおぼえるのであるが、与党や霞が関からそういった声がでないのはどうしてなのか、と首をひねっている。さらに経済政策では役にたたなかったということで与党の存在価値も疑われる季節にはいるのではないか。ということで、今回は「裏金事件」にゆれる永田町と賃上げへの期待を中心にまとめた。】

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時事雑考「2024年の計-主要野党の対応(その3)支援団体の動き」

はじめに 昨日の1月26日国会がはじまった。150日間の会期である。「政治と金」については、自民党の政治刷新会議の方向性もふくめ分かりやすい議論を求めたい。とくに簿外金(裏金)の使途の解明については何のためにどのような議論をするのか、事前に与野党でしっかり詰めてもらいたいものである。そうしないと、この手の議論はややもすると乱打戦にながれやすく華々しいすれ違いに終わることが多かった。それでは国会資源のむだづかいだと思う。

 さらに、政治資金規制法の改正もひつようであろう。しかし、同法への連座制の導入については慎重に議論すべきである。よく公職選挙法の連座制が参考例として紹介されているが、そもそも二つの法律には性格の違いがあって、同列に論じるには無理があると思う。たとえば収支報告書への不記載・虚偽記載についての共謀が立証されない(できない)事案について、連座制で議員の責任を追及し、辞職に追いこむことによっていかなる正義が実現されるのであろうか。さらに、金額の多寡が起訴基準にあるようだが、金額だけで違反の悪質性についての判断ができるのかなど課題もある。何でもかんでも司直の手にゆだねる流れについては、検察国家をめざすのかという危惧さえ覚えるもので、そもそも政治に金がかかるという理屈の中に有権者とのかかわりや交流の存在が指摘されている。適正に処理されている事例のほうが多いわけで、一部の派閥や議員の不始末で全体に重荷をかすのは本末転倒ではないか、という声も強いことから全体の議論が迷走する可能性もあると思われる。今さらややこしい議論をするよりも、有権者が次回選挙で投票によって審判する方がはるかに合理的だというのが、筆者の意見である。

 ちなみに、公職選挙法の連座制は1925年普通選挙制の導入時から規定されていたが、いく度となく改正強化され、1994年(2回)の改正では「拡大連座制」ともよばれた。筆者としてはきわめてきびしいルールだと受けとめているが、選挙は民主政治の根幹であることからやむをえないと考えている。また、「おとり行為」や「寝返り行為」などの免責規定があるなど、なかなかにむつかしい規定で異論も多い。

 他方の政治資金規正法は資金の動きを開示させるいわば形式を求めるルールである。形式といいながらも重い刑罰が科せられているところに特徴がある。とくに公民権停止は政治生命にかかわるもので、かぎりなく重いといえる。公正な選挙で選ばれた議員の形式違反と選挙そのものへの不正行為に対する違反への処罰が、連座制という責任追及としては合憲違憲ギリギリの手法を同列にあつかっていいのかという論点において、大いに疑問が残るものである。

 まあ、権威主義国が好んで使いそうな手法であって、とくに選挙で選ばれているが気にいらない議員を辞職させるのに格好の手段になるのではないかと、未来小説的ではあるが気にしているところである。

 わが国が全体主義とははるかに遠いと安穏と構えているだけでは民主政治を守ることはむつかしい。190をこえる国連加盟国のうち全体主義とはいえないまでも選挙に公正さを欠いている国は想像以上に多い。また議員活動に国家権力が介入する国もさらに多い。抽象的な「民主主義の危機」が病症として具体化しているのが世界の現実なのである。厳罰化というのはもっはら司直にゆだねることでその恣意性についてのリスクを負うだけでなく、主権者の怠慢を助長することで民主政治の向上にはつながらないと思う。

 野党は選挙で決するべきである。政治の場に検察権力を多々導入することはけっしてためにならない、とくに野党にとってはそうではないか。連座制適用の主要事例をふりかえればまたちがった考えも浮かんでくると思うが。

 この国会は、とくべつのむつかしさを抱えている。表層的な問題も多いし重要である。さらに深層にも大きな課題がよこたわっている。とくに外交防衛でいえば、対米関係であろう。日本も小さくなったが、米国もしかりである。日本もふらついているが、米国もしかりである。本当に多極化を受けいれるのか。であれば、隣接国との関係を整理するひつようがあるかもしれない。台湾有事よりも半島有事少なくとも北からの挑発の可能性は高いと考えるべきではないかとも思う。

 それもあって世界は同時多発紛争の危機に直面するであろうし、地域と規模と程度によってわが国の対応も変わらざるをえなくなるであろう。危機に瀕すれば国民の選択肢は狭められる。国民は自粛するであろうが、それがあらたな政治危機を生むと予想される。

 ということで今回は、主要野党を対象にらくがき帳のように書いてみた。書けば書くほど労働団体の役割が浮上するのであるが、冷えた雑煮は雑煮ではないということなのか。あるいは16.3パーセントの限界のなせるものなのか。

 昨年、日米関係について「任怨分謗」か「是々非々」かと問題提起をしたが、筆者自身いまだに結論をえていない。

 さて、賃金交渉の季節となった。小企業での賃上げ、価格交渉が焦点であろう。この領域で成功すれば歴史的成功との賛辞をおくりたい。中小企業ではない、対象は小企業なのである。これがわが国の課題の筆頭であり、産業構造問題における核心である。この問題にかぎれば岸田政権を応援したくなるのだが、新しい資本主義の二の舞にならないことをせつに祈るばかりである。

 「裏金事件」は「簿外金事件」と表記を引用をのぞき変更した。おもな理由は「裏金」のニュアンスが多様であり、事実をこえて憎悪感情を生むおそれが強いと考えたからで、インパクトには欠けるが「簿外金」のほうが正確である。

 -コラムの構成については、(その1)(その2)(その3)となっているが、執筆が3週間程度で元のラフスケッチに順次肉付けをしている。したがって後にある文章のほうが新しいはずであるが、ラフスケッチでの構文を軸に書きこんだ場合はときおり前に書いたもののほうが、視点としては新しいことがあって奇異に感じられるかもしれない。作文法に由来するものなので理解願いたい。】

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時事雑考「2024年の計、主要野党の対応について(その2)緊迫する現下の動き」

はじめに 「岸田文雄首相は18日、自らが会長を務めていた自民党岸田派(宏池会)の解散を検討する意向を表明した。」(日経新聞電子版2024年1月18日19:29)暴走宰相の面目躍如であろうか。四囲の情勢から先手をうたざるをえなかった面があるにしても、局面を動かしたということであろう。もちろん党内に課題を残したものの対外的には先手を取ったことから1月29日の集中審議はすこしだけ楽になったといえる。それよりも、場合によっては年内解散それもわりと早い時期の可能性がにわかに上昇ということかもしれない。さらに、党内がこじれれば大再編にいたるかも。世界の動きをみればこの程度で驚くことはないと思う。

 前回は、非自民非共産のゾーニングで野党協力あるいは連立については、立憲民主党(立民)が主要政策でそうとうな譲歩をする以外に成功の道がないことをしつこく述べた。憲法改正反対、安保法制破棄、原発廃止にこだわらなければという条件について、さっそく関係者に声をかけてみると、そんなこだわりをもっているのは少数であるとの話であった。立民の多数がそうであるのにその方向に動かないということであれば、よほどの制動力がはたらいているのか、それとも休眠しているのか、あるいは表裏を使いわけているのか、本当のところは分からない。 

 動かないということは熱量不足ということかもしれない。制動しているのが支持者であれば政策変更は難しいのではないか。よく高山では気圧が低すぎて沸点がさがりコメが炊きあがらないという。似ていると思う。

 ところで、「ポスト岸田?」といった思わせぶりな記事がときどき顔をみせるが、いつの話なのか。また内容が「タラレバかもしれない」の大安売りで、筆者のものと大差がない。新しいようで実のところは陳腐なのである。】

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時事雑考 「2024年の計、主要野党の対応について(その1)」

【あけましておめでとうございます。しかし、1月1日の能登半島地震と羽田空港航空機衝突事故には虚をつかれました。また衝撃的でしばし言葉を失いました。まだ不明の方も多く救助・救援活動がつづくなか、ひたすらご生存を祈るばかりです。さらに被災地域の一日も早い復旧と復興を心から願っております。ここに、亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、被災された皆さまにお見舞い申し上げます。】

【さて、年末に引きつづき2024年の政局について、主要野党を中心に分析をこころみたが、妄想がかなり多くなった。確かなことがいえないのである。それほど不確実であり、また国際情勢の影響をもろに受けるということであろう。たとえば、韓国がユン大統領に交代したとたんに、日韓の風景が一変したことが強烈な印象として残っている。同様のことが頻発するかもしれない。いわば良い目がでるか悪い目がでるかに似た不確実な世界ともいえる。

 さらに、米国の握力が弱くなると世界各地で紛争がおきるということなのか。そうなると、ウクライナ、パレスチナの次は半島かしら。とか、いえばいうほどその確率があがりそうで怖いから慎むべきか。と言葉に自縛される日々となっているのである。

 「これでは、検察のクーデターではないか」と匿名引用で伝えられているが、本当にそういったのか、安倍派の中堅幹部が。であれば傲慢感を伝えるに十分なひと言ではあるが、信じがたいことである。

 やはり、賃上げが物価上昇に追いついていないというより大きく差をあけられているようだ。毎月勤労統計調査(速報)によると、昨年11月の実質賃金は前年同月比3.0%減で、4月(3.2%減)以来の低水準となり、20か月連続で減少している。統計の不連続があるのだろうが、日本経済の生命線というか、経営者の意思で決められる賃金であるのに、これほど難渋するのはどういうことなのか。やはり賃上げは力で獲得せよという啓示なのか。この春の結果次第で、大・中堅企業を中心とした労使関係モデルでは間に合わない、時代に合わないということになるかもしれないと思う。そうなると、そうとうな危機ではないかしら。「岸田さん、システムダウンが近づいていますよ」ということで、あとは「狂乱賃上げ」だけかな、特効薬は。

 漢字かな比率は気をゆるめると漢字過多になる。また「言う」よりも「いう」をもちいているが、かながつづくと切れ目が判じづらくなるので、例外的に漢字を使うことがある。同音異義語がある場合も紛らわしいときは漢字使用としている。などなど、ルール化しているつもりでもAIではないので、不徹底の儀は容赦ねがいたい。例により、字数超過につき(その1)(その2)に分割した。】

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時事雑考「岸田総理にとってチャンスではあるが、空振りも心配な年末年始」

【2023年もそろそろ帰り支度で、何かしら寂しい気がする。日本国憲法前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とある。初めて目にしたときは「崇高な理想」があると思った。また諸国民は「平和を愛する」ものと思ったし、「諸国民の公正と信義」を信頼しようとも思った。

 あれから60年、今さらそれらを否定しようとは思わない。しかし、「われらの安全と平和を保持」する前提としての「諸国民の公正と信義」に対する国民の認識がおおきく揺らいでいることも事実である。

 一国平和主義が行きづまってから久しいが、さりとて集団的安全保障の議論がすすんでいるわけでもなく、なんとなくやむをえないと追認するばかりである。それで日々おさまっているのだから、波風をたてることもないと思う。それでもたまには侃々諤々の議論をしてもいいのではないかとも思うのである。というのは国防強化論もそろそろピークアウトしそうで、そうなると新たな平和論が求められるのではないかと感じている。現実を踏まえたうえでの平和構築のための立論がなければ国民は安心できないのではないか。これが政権交代の条件式であると思う。

 さて今回は、政治資金パーティー売上金還流裏金事件について、思いつくままに書き流したが、平家物語の書きだしを思い浮かべた人も多かったと思う。しかし「奢れるもの久しからず」だけで終局させるわけにはいかない。出口はあくまで令和政治改革であり、衰退日本に歯止めをかけることであると思う。

 そのためには「人を代えない」ことが一番で、いつも問題がおこるとヘッドを代えてごまかしてきたが、いまわが国が直面しているのは支持率問題ではなく政治システムそのものであるから、ヘッドではなく権力構造を変えなければ良くはならない。そういう意味では金権派閥にメスを入れるべきである。ではよいお年を。例によって文中敬称を略する場合あり。】

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時事雑考 「低々支持率をめぐる騒動を越えて岸田政権は中道へ向かうのか」

〔くる年の暦丸めつ店仕舞う。コロナ後は人手不足で閉店する飲食店が多いと聞く。労働者はどこへいったのか。長年粗末にあつかったことの報(むくい)などとはいいたくないが、たしかにこの国には労働者を消耗品のごとくあつかう癖というか作風があるようで、これを改めないかぎり消費と生産のバランスのとれた経済にはならないであろう。また、労働者を使い捨てる風土で労働生産性を伸長させることはむつかしい。というのが筆者のベースラインである。とにかく労働者を中心とする考えなので、まあこのぐらい偏向すれば誤解されることもないわけで、気分はこのうえなく涼やかである。

 とはいっても世にたとえば労働党なるものがあらわれたとしても、それが労働者の代表だなんてちっとも思わない。どんな政党であれ「私たちはあなたがたの代表だ」という呼びかけには嘘がまじっているから、「あなたたちは、ほんとうに私たちの代表なのか」としつこく問いただしつづけないと、いつか手にした如意棒とともに飛びさり見えないところで何かをして、都合が悪くなると帰ってくる孫悟空になってしまうのである。労働者はいつも仕事でいそがしい。だからといって見張りを怠ってはいけない。政治家の中には飽きっぽく、支持者との同床異夢関係をすこしも気にしない強い人たちがまじっている。だからよくよく見張っていなければ、どちらが「ご主人さま」か分からなくなる。(選挙の時だけははっきりしているのであるが)

 たしかに政務三役の任命責任もあるが、有権者として選んでしまった責任もあるように思う。(これからは納税証明書もいるのかしら)

 ところで、師走は一年をシメて新年をうかがう月であるのだが、ウクライナもパレスチナガザ地区もこのままではシメようがない。残念なことに悲惨は立ち去らないので、2023年をシメることはできず、新年を祝うこともできないのか。

 さて前回は「任怨分謗か是々非々か」とかいいながら、日米同盟をどこまで深化させるべきかと悩んでみたが、現在の非対称な関係であるかぎり軍事同盟としては十全に機能するとは思えないというのが結論であった。とくに、「米軍は矛で自衛隊は盾」という役割分担論も「日米安保は瓶の蓋」論の各論にすぎない、つまり自衛隊を盾に閉じこめておけば対外的には無害であるという理屈なのである。だから、専守防衛論が実戦上機能するのかといえば、専守だけでは防衛上不十分なところが出現すると思われる。

 もともと専守防衛というのは、有事ではなく無事を前提とした考えといえる。この点を神経質につめていくと敵基地攻撃をふくむ反撃論が浮上するのであるが、理論上は100点をねらえても、実戦で100点がとれるかは不明であるから、結局のところ国民の犠牲の程度をどう考えるかである。

 仮に国民のゼロリスク追求レベルが高く、かつ反撃能力の保持を否定するのであれば、受動化した防衛では、莫大な費用を用意しなければならないであろう。とうていGDP比率2パーセントには収まらないと思われる。それ以上に現在北朝鮮が開発中の攻撃アイテムに対して有効な対処策には技術面での困難がともない、どんなに予算をかけても対応できないケースがでてくるかもしれない。

 となれば、ゼロリスクをあきらめ報復攻撃のための強力な打撃力を用意した抑止策に切りかえるひつようがでてくるかもしれない。いずれにしても反撃能力の保有がなければ成立する話ではない。ということで、ロ朝の軍事連携がすすめば東アジアの安全保障のステージを激変させると思われる。

 2024年は、気分としてはブルーで、危機管理ランプはオレンジあるいはレッドの可能性が高いであろう。仮定の話ではあるが、まことにおぞましいことといえる。例により、文中の敬称は略す場合もあり。】

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時事雑考「日米同盟の向こう側『任怨分謗』か『是々非々』か」

【10月、11月はなぜか忙しくてペースが落ちた。(ファイルの日付が10月23日だから20日近く抱え込んでいたのである!)それとは関係ないが、岸田内閣の支持率も落ちている。「6月解散がラストチャンス」であったと考えていたのだが、案の定、年内解散はないことになったらしい(11月9日)。

 ところで、減税案が不人気のようだが信じがたいというのが一般論ではある。そりゃ給付金のほうがてっとり早いとは思うが、税の増収分の還元策という理屈からいえば、減税のほうが本筋かなと思っていたら、財務大臣によると全部使ってしまっているので還元の原資はないということらしい。これには「なんじゃそりゃ、ホイ」と思わず合の手をいれたくなった。

 さらに、少子化対策の財源あるいは防衛力強化のための増税などが出番をまっているというから、誰しも「ちょっとまて、オイ」といいたくなるであろう。まさか「なんじゃそりゃ、ホイ」「ちょっとまて、オイ」が響きわたる合の手国会になることはないと思うが、なんかギクシャクしていて、また暴走的で、そのうえ刹那的ではないか。

 いまだに実質賃金の下落が止まらない。物価に連敗の賃金。来春まで待てない、生活が持たない。これほど生活がピンチなのに減税が嫌われるなんて思いもしなかったが、やはり来年の話だから超遅すぎるということであろう。

 まさか、減税の実施時期に総選挙をぶつけるつもりなのか?そうであればすごい仕込みと思うが、それだと品質期限切れになるのではないか。

 ところで、岸田さんはいじられキャラなのか。あるいは誰だかわからない匿名者によるいじり過ぎなのか。メガネを疑似標的にするあたりは手練れの仕事で、大げさにいえば諧謔的殺意を感じる。

 そういえば、立憲民主党の泉健太代表も似てきている。政権を狙うのは5年先というのは本音だろう。それでも意欲的すぎるという声さえあるのだが、多くは、まあそんなものだろうと思っているのではないか。しかし、代表が本音をいうのはまずいというか、「5年先までもつわけないのに、なに呑気こいてんだ。」ということかもしれない。第一党と第二党の党首が似た者どうしではないかという指摘はどうだろうか。そのためにも、早く党首討論をやってくれ!】

 

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